白い人形
沢登りをしていた時の事だ
通いなれた山道を歩き、川の近くに荷物を下すと、水にぬれてもいいような格好に着替える
沢登りは危険ではあるが、何度も通っているのでそこまで心配はしていない
一応、一人暮らしではあるが、万が一の時のための準備もしてある
準備を終えて小さな滝になっている部分を登っていく
すると、滝の上から白っぽい人形のようなものが落ちてくる
白目しかない目と視線があった気がした
俺は一瞬気を取られ、コケで足を滑らせてしまった
滝つぼは浅く、川底に背中を打ち付けてしまい、「ごほっ」と息を吐いてしまった
俺はそこで死を予感し、意識を失った
気が付くと病室だった
「運が良かったですね。たまたま人が通りかからなかったら危なかったですよ」
俺が言うのもなんだけど、あんな場所に人が通るとは思えない
「どんな方ですか? お礼を言いたいのですが」
情報を得ようと看護婦さんに問いかける
「私もそう思って救命士に聞いたんだけどね、お礼も何もいらないと言って救急車に乗らなかったらしいのよ」
俺も詳しくは無いのだが、こういう時は警察も事件性うんぬんで動くんじゃないだろうか?
そう思っていると、警察が来たようだ
「ご加減はよろしいですか? ちょっと話を聞きたいのだけれど」
「ええ、大丈夫ですよ」
幸いにも打撲のみで話をする分には支障がない
「この人に見覚えはありませんか?」
写真を見ると、あの人形がフラッシュバックした
「……川を流れていった気がします」
「そうですか……」
その話を信じたのか、警察は写真をしまう
「3日前に行方不明になっていた男性で、あなたに抱き着いた状態で発見されたんですよ」




