もしもーし
私は小学3年生の山内花林と言います。
私はいわゆる「見える人」です。
事故の現場や自殺の名所などを見ると、そこで死んだ人が見えることがあります。
今日は、塾で少し遅くなってしまいました。
冬も近く、街灯が点きまじめてきました。
市営住宅が並んでいる道を通っていると、電柱の影に不気味な人影が見えました。
その人影は女性で、黒髪は長く、マフラーを巻き、赤色のコートを着ています。冬に近いとは言え、まだマフラーをする時期ではないので不思議に思いました。そして何より、首が90度曲がった状態で立っていました。
私は、飛び降り自殺者かな?と嫌な気分で足早に横を通り過ぎようとしました。
女性の前を通り過ぎたとき、後ろから
「もしもーし、もしもーし。」
くぐもったような声でそう呼びかけられました。
私は、返事をしてはまずいと思い、無視して家に向かいました。
女性は、私が家に向かう間中、「もしもーし、もしもーし。もしもーし、もしもーし。」とずっとつぶやいています。
私は怖くなり、家まで走って帰りました。
ちょうど玄関に母が見えたので、急いで家に入りました。
「どうしたの?そんなに慌てて。」
「なんでもないよ、久々に幽霊をみちゃって。」
「それならいいけど、ところで後に居た女性はだれ?」
女性は幽霊ではなく、人間だったようです。もし、母が玄関に居なかったらどうなっていたのでしょうか・・。
私は安心して2階の自分の部屋に入ると、かばんを置いて着替えることにしました。
「もしもーし。」
窓から、そうつぶやく声が聞こえました。
1話完結型を続けて連載にしたいと思います。