サンキューサンタ
クリスマス。きっと世界中で一番、贈り物が溢れる日。
誰のところにも、一年元気でがんばったね、えらいね。のご褒美が届く日。
子供たちは毎年この日を楽しみにしている。
とある国のとある町のとある家の男の子、りんたろうはクリスマスの数日前から
せっせと何かをこしらえていた。
お気に入りのクッキーの缶にお気に入りの折り紙をぺたぺたはったり、
お母さんにもらった便せんにクレヨンやペンで何かを書いたり
自慢の宝箱の中をごそごそしてああでもないこうでもないと小さな頭をひねっている。
お母さんやお父さんが「何をしているの?」と聞いたって答えてくれない。
ただ夢中で何かをこしらえている。
楽しそうだからまあいいか、とお母さんもお父さんもりんたろうのことをそっと見守っていた。
りんたろうがせっせと何かをこしらえていたのと同じ頃。
今、世界中で一番いそがしい人がわめいていた。
「おおーい!その袋はこっちのソリのぶんじゃあ!!それはあっちじゃあ!!袋に行き先を
書いた紙をはってあるじゃろう?注意して見ておくれー!!」
世界のどこかにあるサンタクロースのプレゼント工場。
クリスマスを数日後にむかえ、工場のいそがしさは最高レベル。
サンタクロースの指示であっちこっちとプレゼントをソリに運ぶ、お手伝いのノームやトナカイも
汗だくになってがんばっている。
「はあー。毎年のことじゃが大変だわい。クリスマスが終わったらゆっくりして疲れを
取りたいのう・・・」
毎年同じことを呟いては、疲れのたまってきた肩や首をコキコキと鳴らしているのであった。
そしてやってきた、クリスマス。
クリスマスイブの夜、みんなの家にサンタクロースがやって来る。
えんとつがなくたって
くつ下がおいてなくたって大丈夫。
サンタクロースはちゃあんと、みんなの枕元にプレゼントをおいてくれる。
りんたろうの家にも、その時はやってきた。
ひゅいっと魔法を使って、瞬間移動。足音もたてずにサンタクロースは
りんたろうの部屋に立っていた。
じつは、起きてサンタクロースに会うんだとはりきっていたりんたろうだけど
今はすやすやと自分のベッドで眠っている。
サンタクロースはそんなりんたろうの寝顔を見てにっこり微笑んで、
枕元にプレゼントを置こうとした。
「・・・・ん?」
小さな声で、サンタクロースはつぶやいた。
自分がプレゼントを置こうとした場所に、何か置いてあったからだ。
なんじゃろう・・・?
そう思いながら、サンタクロースはその包みを持ち上げた。
色とりどりの折り紙で飾られた、クッキーの缶だった。
リボンがかけられたその缶に、手紙が一通、そえられていた。
あまり音をたてないように、サンタクロースはその手紙をあけてみた。
『サンタさんへ
サンタさん、いつもいつもクリスマスにぷれぜんとをありがとうございます
サンタさんはいつもいつもボクのほしいものをぷれぜんとしてくれます
ボクはサンタさんにあったことないのに、サンタさんはボクのほしいものがどうしてわかるのかとってもふしぎです。
サンタさんはすごいです。そんけいします。
サンタさんはいつもいつもクリスマスにたくさんのこどもたちにプレゼントをあげてます
とてもいそがしいだろうねってママがいってました。
サンタさんはすごいです。そんけいします。
でもボクはおもいました。
サンタさんはクリスマスにぷれぜんとをもらっているのかな
サンタさんはいそがしいからおうちでくりすますぱーてぃーをするじかんないかもしれない
サンタさんにはだれがぷれぜんとをもってきてくれるんだろう。
ふしぎにおもいました。
だからボクはきょうのくりすますはサンタさんにぷれぜんとしようとおもいます。
ボクはサンタさんじゃないからサンタさんみたいにサンタさんのほしいものが
わからないので、ボクのたからものをあげることにしました。
とっておきです。
サンタさんにあげます。
うけとってください。
サンタさん
いつもありがとうございます。
りんたろう 』
色んな色のペンで書かれた、手紙。
缶の中には、石ころやキラキラのシールやちいさなぬいぐるみのついたキーホルダーや消しゴム。
色んなものが缶にぎっしり入っていた。
りんたろうのとっておきが入っていた。
「なんと・・・ありがたいのう・・・」
サンタクロースはにっこり笑顔になって、そっと、起こさないようにりんたろうの頭をなでた。
そうして、そっと、もらったプレゼントと入れかえるように、持ってきたプレゼントを置いた。
「メリークリスマス、りんたろうくん」
そうつぶやいて、サンタクロースはひゅいっと魔法を使って
りんたろうの部屋からいなくなった。
心がぽかぽかになった、りんたろうからのプレゼント。
「お礼をしなくてはのう」
サンタクロースがしたお礼とは。
朝になって
プレゼントがもらえたことより、自分が置いておいたプレゼントがなくなっていたことに
興奮するりんたろう。
「ちゃんとサンタさんはプレゼントもらってくれたんだ!」
ノリノリのりんたろう。
それを優しく笑って見守るお母さんとお父さん。
そのとき
「あ!」
りんたろうは叫んだ。窓の外をみて叫んだ。
だって
窓の外、空から真っ白い雪がふってきたから。
「ゆき!ゆき!」
嬉しくて踊りだすりんたろう。
どうしてかわからないけど、ふってくる雪を見ていたら、心がぽかぽかしてくる。
それが嬉しくて
りんたろうは雪にあわせて踊った。
そんなりんたろうを
おかしそうに笑って見守るお母さんとお父さん。
天気予報は晴れだったけど、ふった雪。
心がぽかぽかする雪。
きっとサンタクロースのお礼の、雪。ありがとうの、雪。
「メリークリスマスじゃ♪」