第6話 幼女だけど金のためには働く必要がある
ルイも私もピカピカになったところで銭湯を出た。真昼間のお風呂ってどうしてこんなに気持ちいいんだろう?
「ルイ、早速だけど探検隊組合行こう」
「探検隊組合?」
「うん。私が持ってるお金もそのうち尽きるし、その前に稼がなきゃだから仕事探さないと」
「仕事・・・」
私はルイに旅をしていると伝えたが、正直な話この旅には終わりがない。当たり前だ、ただ家が嫌になって逃げ出してきただけなのだから目的なんてある訳が無い。その日暮らしをして1日1日を消費していくだけだ。そのためにはやっぱりお金が必要だし動けるうちに稼がないといけない。
ルイの手を引いて探検隊組合のヒュデール支店にやってきた。依頼カウンターに向かい、カウンター内にいる虎獣人のお兄さんに声をかける。
「すみません、職業斡旋の依頼なんですけど」
「職業斡旋?・・・まだまだちっこいガキなのに大変だな。まあいい、希望職種はあるか?」
「子供でも出来る内容ならなんでもいいです」
「あー・・・そうだな。雑用はどうだ?住み込みで衣食住の保証付きだ」
「えっそんな好条件があるんですか?」
「ああ。まああれだ、ここは所謂孤児院だな。子供だし丁度いいだろ」
「・・・一応職員って扱いなんですよね?」
「雑用なんだから当たり前だ。ここに入っている普通の子供と違って里親に引き取られることはまずない」
まさか一発目でこんな好条件の所を紹介されるとは思わなかった。このご時世、孤児は珍しくない。この虎獣人のお兄さんも私達を孤児だとでも思ったのだろう。衣食住が付いていてお金が稼げるなら万々歳だ。この孤児院の位置を聞くと、私が元いた街からかなり離れていた。集落と言っても過言ではないほどの小さな小さな村からまたさらに離れた所にある。アクセスはかなり悪そうだが逆にそれがいい。
「じゃあ、ここで働かせてください!」
「はいよ。二人一緒か?名前は?」
「私がエレナで、こっちがルイです」
「エレナとルイ、な。この孤児院は人手不足で困ってるみたいだから猫の手も借りたい程なんだ。掃除くらいは出来るよな?」
「はい!」
「なら大丈夫だ。連絡するからちょっと待ってろ」
そう言うと、カウンターの奥の方に引っ込んで行ってしまった。隣で黙っているルイを見ると、興味深そうにカウンターの奥を覗いていた。髪を切るのを嫌がったから目を見ることは出来ないが、多分初めて見る光景に気分が高まっているのだろう。今まではあまり外に出たことがないと言っていたから・・・あ、なんか心が痛くなってきた。沢山楽しい経験させてあげないと・・・。
数分ほどして、虎獣人のお兄さんが戻ってきた。孤児院の人との連絡が取れたから今からその孤児院に向かうらしい。地上からの移動代は孤児院持ちらしいが、料金の上乗せをすれば空での移動に変更する事が可能だそうだ。少し迷ったが、出来るだけ早く孤児院に向かいたかったから料金の上乗せをして空を選んだ。なによりルイが空での移動に興味を示していたから、これは空一択だ。
「じゃあなガキ共。頑張れよ」
「お兄さん、ありがとうございました!」
「あ、ありがとうございました・・・!」
「これが仕事だから礼はいらねえ。ほら、さっさと行った行った」
そう言いながらシッシッと追い払うような素振りをしたお兄さんは支店の中に入っていった。それを見送り、目の前にいる長髪のお姉さんに「よろしくお願いします!」と頭を下げた。お姉さんはニコニコしながら移動中の注意事項を話し、ドラゴンに変身した。このお姉さんは変身魔法が得意なようでドラゴンに変身して依頼者を背に乗せることが多いらしい。注意事項はたったひとつ。移動中は手を離さない。それだけ。
「それじゃあ行くわよー。ちゃんと捕まっててね」
「はーい!」
「は、はい!」
ブワッという風が巻き起こり、一瞬でかなり高いところまで浮上した。さらば、ヒュデール・シティ。