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第1話 実質上の軟禁宣言されたから逃げます

 


 転生?トリップ?生まれ変わってチート無双?前世の知識と経験を活かしてニューゲーム生活?出来るわけないだろそんなもの、こちとら低賃金で使い放題されてた社畜保育士だぞ、転生先で何を活かせばいいんだ壁面製作か?残念だったな、製作すら型紙がないと何も作れない雑魚ですわ!



「エレナ、エレナ!また手元が疎かになってますよ!」

「ごめんなさーい」

「ごめんなさいではなく、申し訳ありませんでしょう!」

「・・・申し訳ありません」



 エレナ・ルルフル、5歳。母親とピアノのお稽古なう。

 使い古されたような内容だが、社畜保育士だった私は死んで生まれ変わってどこぞの魔法ファンタジー世界のご令嬢になった。ストレスで酒浸りになってたから、多分死因は急性アルコール中毒だと思う。親が泣くぞ・・・。

 閑話休題。さて、前世が保育士ならピアノのお稽古なんて御茶の子さいさいの筈だけど私はピアノが大の苦手だ。専門学校に在学中はピアノの単位を落として再履修になったし、再テストを5回くらい受けてオマケのオマケで合格させて貰ったようなものだ。しかも就職してからはCDを使ったりアカペラだったり他の保育士さんに頼んだりして自分では弾かないようにしていた。そんな人間が生まれ変わってからピアノを弾けると思う?答えは簡単、NO。弾ける訳がない。



「はあ・・・アイナはあんなにも優秀な子なのに・・・どこで間違えたのかしら・・・」



 私を産んだのが間違いなんじゃないですかね?内心半ギレである。私は私だしアイナはアイナだ、別人を比べることが間違っている。ちなみにアイナは私の双子の姉だ。頭が良く、運動神経も良く、ピアノも上手で完全無欠と言っても過言ではないほど優秀だ。しかも性格もいい。これで嫌味ったらしい性格クソ女だったら遠慮なく嫌う事ができたのだが、いわゆる落ちこぼれの私に優しくするものだから嫌う要素が全くない。聖人君子かと思った。本当にアイナは5歳なのか?



「もう、今日は辞めておきましょう。私も暇ではないのです。いいですか、エレナ。この譜面が弾けるようになるまでこの部屋から出ることを禁じます。食事は1日3回給仕に持ってこさせます」

「ずっと弾けなかったらどうなるの?」

「どうなるのですか、です」

「どうなるのですか?」

「ずっとこの部屋から出られないだけです。本来ならこんな初歩の初歩すら弾けないなんてありえないのですけどね」



 そう言うと母親は私に背を向けて部屋から出ていった。なるほど、そう来たか。あーこれ見限られたなー、実質軟禁宣言だなー、A4用紙8枚分とか弾けるわけないじゃん。シャープもよく分からん記号も多すぎだし結構レベル高いって。これが初歩の初歩とかありえないでしょ・・・せめてお片付けの歌とかにしてよ、スタッカートばかりだし短いからアレは簡単なんだけどなぁ。



「そうだ、逃げよう」



 この家はダメだ、死ぬ。多分あの母親、私をこの部屋から出すつもりないわ。アイナだけいればそれでいいって思ってるわ。社会的に殺されそう。逃げよう。

 幸いにもこの部屋は窓があるし、3階とはいえロープがあれば降りられそう。ロープは無いけど馬鹿でかいカーテンはあるしハサミもペン立てに突き刺さってる。ハサミでカーテンを裂いて結んで繋げれば即席ロープの完成だし、カーテンレールにでも括りつければ降りられる。5歳児の体重なら途中で落下することもない・・・はず。多分、きっと、おそらく。まあ失敗したら失敗したでその時に考えよう。思い立ったら即行動ということで早速作業に取り掛かった。部屋にある机や椅子をカーテンレールの下に移動させてカーテンを取り外して、ハサミで細長く切る。で、結ぶ。ロープ状になったカーテンをカーテンレールに結びつけて完成。よしよし、後は今後生きていく上で必要なものを持ち出すことにしよう。

 今いる部屋は私の私室だから私の持ち物が沢山ある。私が持っている中で1番大きいリュックを引っ張り出して、5歳児に必要なのかと思えるほど与えられたお小遣いを貯金箱ごと放り込む。あと、基礎魔法について載っている魔法書。この世は魔法世界だしある程度使えて損は無い。ついでに魔法の杖。3歳の誕生日に与えられたもののあまり使ったことは無い。だけどせっかくだから持っていく。



「えっと、後はなんだろ・・・そうだ、着替え持ってかなきゃ」



 下着、靴下、シャツ、ズボン、上着、帽子・・・可愛さなんて必要ないね、動きやすさ重視のものを選んで突っ込んでいく。念の為靴もだ。あとはネックレス類の貴金属。お金が無くなった時はこれを売って金にしよう。親に与えられたとはいえなんの思い入れもない。



「2度目の人生なんてロスタイムみたいなもんだし、好き勝手に生きていいよね」



 人生2週目、強くてニューゲームが出来る訳なく現実はそう甘くないので逃げます



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