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第三十八話「ミリア対ティエラ(前編)」


 すでに何度目の攻防だろうか。


 俺の右前蹴りは軽く左手で左方面に捌かれ、外側側面(アウトサイド)を取られる。そして膝下に右腕を差し込まれ持ち上げられる。

 そのまま膝関節を上に押し曲げられつつ体を密着させられ、重心の乗った左足踵にティエラの右足の踵が触れる。

 そして上体を軽く旋回させられると、それだけで体勢を崩されてしまう。

 転倒する俺の顔面に、ティエラの拳による鉄槌が寸止めで叩き込まれる。

 実戦なら貫手によって首を貫かれて絶命していてもおかしくない。


 文句無しの一本だ。


 諦めずに俺は距離を取り、跳躍して接近する。

 俺の放った左サイドキックを避け、ティエラは再度左右反転した動きで外側側面(アウトサイド)を取り同じ技を狙う。

 が、直前に風圧力場(エアブースト)を使用。空中二段跳躍でライダーキックの体勢からを無理矢理サマーソルトキックの動きで旋回する。

 横回転で旋転し、無理矢理追撃を狙うも――。


――俺の無防備な横っ腹と首にティエラの手が添えられる。



「なかなかに良い動きやけど、あんまポンポン飛ぶんは悪手やで」



 本来であれば腹部側面に貫手と、引き裂く爪のような指先で抉る攻撃が喉に決まっていた。


 また一本だ。


 なればこそと、今度は相手が動いてくるのを待つ。


 そちらさんが来ぃへんなら、と言わんばかりに素早い跳躍でこちら目掛けて突進してくるティエラ。

 鋭い貫手判定の右拳が放たれる。

 肘でのブロックによる迎撃を狙う。

 が、その伸ばされた手は即座に引っ込められる。


――フェイント!?


 上体を肘でブロックした体勢。無防備にさらけだされた腹部にティエラの右脚前蹴りが鋭く伸びる。


――ならば!!


 体を左旋転させながら上半身を背後に倒して伏せ、両手を地面に着けた体勢で、その体勢にいたるまでの体を捻るように旋転させた動きによる勢いをそのまま込めた左後ろ回し蹴りを凪ぐように放つ。


――龍尾下旋(ダルガニス・ヴィレ)


 現世地球で言えば躰道の卍蹴り。カポエイラのような変則的な蹴りだ。


 当たる! 完全なタイミングだ! 蹴りを放ったバランスの悪い姿勢に横からの追撃。避けられるはずがない!


――そんな風に考えていた時が私にもありました。


 なんとティエラは喰らった勢いごとひねり回転しながら側面へと跳躍。

 蹴りの威力を回転の流れと跳躍で殺し、完全に受け流してクルクルとトリプルアクセルみたいに回転しながら、そのまま体が横向きになった瞬間に膝を抱え込むように足を曲げ、それを伸ばしてミサイルキック!?


 丁度蹴りの体勢からフォームを正した俺は即座にクロスアームブロックでそれを受け止める。


 蹴りの勢いで前方空中三回転を決めつつ着地して距離を取り、攻撃を受けた横腹をさすりながら、ティエラが嬉しそうに言葉を放つ。


「惜しかったなぁっ。後一歩やぁ」


 身構え、じりじりと距離を詰めながら楽しそうにティエラが噛み締めるようにひとりごつ。


「いやぁ。ええなぁ。あれをあーかわして、あんな風に返してくるとはなぁ~」

「それはこっちの台詞だよ。あれ避ける? 普通」


 ティエラちゃんは純粋に戦闘を楽しんでいるようだ。


「楽しいなぁっ」


 顔には満面の笑みが浮かべられていた。


 これでなんとか、初めて返し技で即座に一本取られるのだけは防げた。


――けど、勝てない。


 油断すると、いや。油断なんてしてないのに。何度やっても、どんなやり方を試しても、全て一瞬で返されてしまう。


――強い。


 でも。だからこそ、やりがいがある!


 冒険者になるって目標は、ちょっと危険だから無しにしようかと思っていたけど、強くなりたいって思いは同感だ。


 この世界、何がどこで起きるかわからない。

 何か起きたときに身を守るためにも、最終的には自分の力を伸ばす必要がある。


 それに、半獣人族って奴は強くなりたがる傾向があるみたいで、俺の中の私ちゃんもやる気まんまんみたいなんだよな。

 強くなりたいって想いが、心の奥底から感じ取れる。



――だから、俺は諦めない!



「ええなぁ。ここまで本気出しても諦めへんからミリアは好きやでぇ。けど、だからこそ手加減は無しや。来ぃや!」

「うん!」


 もう何度目の挑戦になるだろうか。


 私はティエラに向かって風圧力場(エアブースト)を駆使した全力の跳躍を行った!



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