過去の瞬き
短。その二。
牢獄にしては快適なのは、私が他国の者で、人だからでしょうか?
鉄格子の中ですのに一つの部屋のようです。
衣服は罪人の、何も持ち込めないストンとしたワンピースになりましたが、母国の罪人の様に同じ場所に色々な人が詰め込まれていません。
あそこは誰も寄りたくない場所です。
小さな格子窓から見えるのは星。隔離塔のようです。気を失う前にホンの少し見えたので多分。
私。担がれて運ばれたのですが、細身の為にぐらぐらと揺れて気分が悪くなりその後をあまり覚えていないのです。
ここには看守もおりません。
格子には堅牢な鍵が付いていますし、ひ弱な私には破れないからでしょう。
少々寒くなったので、窓の鎧戸を下します。触れると温かく部屋を暖める不思議な温石まであります。有難く使わせていただきます。今までは同室の二人の侍女様に温石のような物は占領されていたのでこんな贅沢はありません。
姫様。あれからどうしたのでしょう?お靴を磨いて、お衣裳を用意するのは侍女長がしてくれるでしょうか?もう一人の方はプライドが高くて綺麗な仕事しかやりたがらないのです。ああ、違いますね。イブリースの優秀な侍女達がやって下さいます。
きっとカナンも今ならそつなくこなすでしょう。
カナンがお衣裳を破いてしまった時の事を思い出したら少し笑いが漏れてしまった。不謹慎ですね。
繕う私が大変でした。
繕い終えた頃、王様が新しい服を姫に送られてよくお似合いでした。
姿見の前でソレを当ててみる姫に目を細める獣王。
私は新しい衣装を直す場所を開ける為、手に持った繕い終えた衣装を開けぬ箪笥の中に仕舞い込んだんでした。