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侍女長とその他大勢

R15

セリフだけなのに胸くそ展開

苦手な方はおススメしません。かっ飛ばして下さい。

仕方がないのです。

彼女は平民ですので、

王城は貴族方の務める場所です。

異物である彼らが無下に扱われるのは詮無きこと。


どんな目に合おうとも、命無くすとも黙るしかありません。


『侍女長』の肩書を持った女の言葉に、尋問官は無表情を貫くのに集中せざるを得なかった。


ですが、私ではありません。

私はあの子に無体は働いておりません。


「それは、王国から来た別の者がやったと言いたいのですね」

侍女長は黙る。

「貴方は見て見ぬふりをした」

むっとしたように尋問官を睨んだ彼女は、目があったとたん怯えて俯いた。



感謝して欲しいものです。あの子には・・・。

ここに来なければ もっと酷い事になっていたでしょう。

若く まだ可愛らしい平民の娘。それに姫様に途用された妬みもありましょうから。

「そうでしょうとも。この国は弱き者を蔑んだりしない」

失礼な。私は蔑んだ訳ではありません。


それに私はここが安全といったわけではなく・・・。

「無く?」

こ、ここなら、あの子を・・折檻する人物も・・・減る。


減る?なんと酷い事か。行わないという選択肢は無いのか。


取り調べは王妃の人の使用人全てに行われた。自分に関係ないと思っているのか、奴らは簡単にボロを出した。


「乱暴したわけじゃない。ちょっと遊んでやっただけで、あいつも喜んでた。嫌がってない!本当だ。誘われたのは自分の方だ」

侍従二人を別々に聞けば年の若い方は口が軽くなった。

「俺は・・・あいつがやってるからちょっと混ざっただけだよ。おっさんが見張ってろっていうからその通りにした。騎士は騎士でもおっさんは貴族じゃないから侍女殿には相手にされないんだよ」

笑ってすらいて吐き気がする。


 貴族で無いと年下の侍従にすら言われた騎士は口は堅かったが、姫の宝飾品をくすねていた事を問いただせば口を開いた。

「あいつが俺に勝手に貢いだんだ」

騎士の部屋にはバラした宝石がいくつもあった。逃れられない。彼女の血の匂いは寝台の上で宝石には男の匂いしか付いていなかったが、コイツに教えても無駄だろうと尋問官は無言でやり過ごす。


「躾がなってなかったから正した、少々熱が行き過ぎたかもしれないが先達としての義務を果たしただけだ。君たちにも解るだろう?身の程を弁えさせる重要性が」

年よりの方の侍従はさも当然の様に胸を張って言った。

「叩くと手が痛くなるから蹴ったんだが。そうすると直ぐ仮病を使って休むから棒で叩くぐらいにしておいた。ここには焼きごてはないからな。躾も骨が折れるよ。」


「爵位も無いゴミ風情が私と同じ侍女なんて、少し弁えたら良かったのに、私と同じ生活をしようなんてとんでもない女だったわ。私は母国では貴族令嬢なのよ。手違いで。今はこんな所で侍女をしているけど」

この侍女は暇さえあればサボるとケイラから報告があった。


もう、聞きたくない。と、尋問官は思った。


「アレは剣の磨きが足りなかった。だから罰はしょうがないのでは?貴殿らもそうであろう?」

騎士はもう一人の侍女と良い仲になっている。カナンが呆れていた。

「嗜虐趣味の侍従殿と一緒にしないでくれ。どうせ磨きなおすなら、一度試し切りするぐらい構わないだろう。死にはしないんだ。感謝して欲しいな」


付き従ったのはクズばかりだった。

あちらでも扱いあぐねていた連中なのだろう。あの国は何かやらかすと思っていたが。

これほどとは・・・。


尋問官は、警戒させぬ為に用意された貴賓室のような尋問部屋の席を立つ。


彼らの匂いの残るここを早く去りたい。


 振り返ると、危険回避の為に控えさせておいた兵士が睨んでいた。私ではなくさっきまで居た人の座っていた椅子をだ。

うるるると鳴る喉。

鎧を着た黒狼が怒りを抑えて毛を逆立てている。さっきまでよく耐えたものだ。

「リュウ殿。他言は無用ですよ」

「・・・・解っている」

リュウという兵士は「ただ」と呟いた。


解っていたのに何もできなかった。血の匂いは女であればする時もあるだろうと、一人で無い男の匂いも、見た目に寄らず身持ちが軽いのだろうと。皆が遠巻きに見ていた。話しかけてもどこか違和感しかなかった。・・・何故、勘に鋭い筈の我らが知ろうとしなかったのか。

悔やむ彼の肩を叩き労わる。


早く、この報告を終えたいと部屋を後にした。




 獣王グレンは王妃に事実を隠そうとしたが、これらの事実は姫に知られた。王妃は彼女だけを良く傍に置いて居た為気付かなかった事も、彼女が居なくなって目を向け気付いたようだった。自分の愚かさに泣く王妃は嘆くだけをやめ、真実を知る事を決めた。




使用人達は、皆故国に返された。


 侍女長は帰ったら行き場が無いと泣いて縋ったが姫は振り向きもしなかった。愛らしく優しいだけだった姫様の慈悲はもう無い。

 やっと帰れると言った侍女と騎士は微笑み合っていて、もう一人の騎士は青ざめていた。侍従と弟子は唖然として、しばらくすると互いに罪を擦り付け合う。



 彼らがどうなったかは知らない


 国境近くまで丁寧に送られた彼らの行く末は国を越え響いてこなかった。




最後に、獣王は王妃に叱られていた。

 実に惨めなしょぼんとする王が見られたそうだ。王はただ妃に自分を責めて欲しくなかっただけ。家臣としては守られ満足しているだけの姫では困る。

 麗しいだけに見えた姫は少しは強い方だったらしい。

気付かなかった私の罪

あの子に恩赦を

しかし王家暗殺は大罪。王は首を縦に振らない

妃の望みは別の意味で叶う

まだ先の話しだ


集団になると正義が変わる怖さ

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