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犬の独白

ロッド視点

城兵に所属する俺は普段は城内外の警備でうろうろしている。

所属は警備隊。

警備隊の人員がほとんど平民上がりなのは、普段は王城を守る一般兵として仕事をしているが、王命を持って罪人に落ちた貴族なんかの捕縛の権限も与えられているからだ。お貴族様は汚れ役をしたがらない。

更に、警備隊の中には内部監査役が紛れているので、王城勤めの貴人方にはうっとおしい存在だろう。



王妃に成る為に来た隣国の姫にはお付きの人が数名いた。それを見張る命は即下った。


 時々見かける小さな女。

 良く動き良く働く彼女は、この城ではとても目立つ。本人にその気はなさそうだが、他の使用人がワザと目を逸らし、嫌味を聞えよがしに呟いていたりするから、無口で、しかも食堂に現れる彼女はかなり人目を引いていた。

細々動く彼女が小動物のようでつい目で追ってしまう。

真っ黒い髪。少しだけ日に焼けた肌色。毛に覆われて居ない手。


興味が湧いて近くに寄れば、気負わない返答が返ってくる。交流の無い国に来たっていうのに、変わった女。


ふわり、動きに合わせて匂う香りに違和感を感じたが、そのままにしてしまった。


その内、顔を見る機会もあるかと思っていた矢先。

彼女は捕まった。

王妃暗殺の容疑者で。





尋問も要さず殺せと王は言った。

嘆く王妃を思ってだ。

だが、宰相以下は反対し、塔に閉じ込められた彼女の尋問までは少しかかった。

彼女の尋問は人に警戒されにくい容姿の俺と、獣人らしい容姿のウィーヴィに決まった

飴と鞭ってやつか?


彼女を迎えに行き、怖く聞こえる様に怒鳴る。

だのに、顔を上げた彼女は妙に静かだった。

髪と同じと思っていた目は茶に緑の入り混じった不思議な色。

あどけない顔立ち小さな頭。どこもかしこも小さくて可愛らしい・・・。


顔に力を入れ、俺は大げさなほど彼女を乱暴に扱った。




それからも、失態だらけだ。

血の匂いに慌て、丁寧に手当してしまう。

声なく笑うウィーヴィの気配。

(うるさい!)


何度確認しても同じ返事の彼女にイライラが募る。

あんな場所で鼻の利く俺たちの前でやる必要があるのか?



怪我を確認するために腕を掴んだウィーヴィを剥がそうとして、他にもある傷に気付く。

確かめる。

まだまだあった。


酷い跡

焼いたような

抉れたような

擦れて、切れて、裂いた・・・


酷い  誰だ




ウィーヴィが塔からの帰り呟く。

王国の方が蛮族だな。

獣王の国、少なくとも王城の者は弱い生き物を虐げるのを良しとしない。


いつまでたっても癒えない傷の匂いに我慢ならなくなった俺は、彼女を医師の元に連れていった。


そこで、間抜けにも初めて彼女の名前を知る。


「ラフィア」


綺麗な名前だ。


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