プロローグ
投稿したい熱発病で投稿。
修正しながらなので、不定期更新かと。
ネッビア王国の宮殿ではさめざめと泣く侍女たちの姿が幾人も見られた。
五年ほど続いた戦が終わりを迎えたからでも、優勢だったネッビアが劣勢を強いられたこの一年を嘆いてでもない。
王国が戦を挑んだのは、新興国イブリース。王国の南。大きな川を跨いだ向こう側にあった。
イブリースは建国五十年をやっと超えたばかりの、獣人と呼ばれる二足歩行の野蛮な生き物の国である。
昔、長く奴隷の地位にあった獣人達。彼らを統率し自由を勝ち取った戦士初代王である王の素性は諸説あり未だ謎が多いが、その王も数年前に亡くなった。生涯独り身で、跡継ぎも居ないと言われていたイブリースの王。
そこを狙ったのがネッビアなのだが、予想に反してあっという間に新たな王が誕生し、ネッビアの出鼻は挫かれた。始めこそ優勢だったものの、徐々に後退し疲弊していく軍部。
それもその筈。傭兵として戦っていた歴史もある獣人には、屈強な戦士も多い。建国してから知力を蓄え、統率力まで付いたのだ。ネッビアを伺いつつイブリースを狙っていた諸国もどんどん手を引いて行った。ネッビアは五年の内に孤立してしまった。
そんな折、イブリースの現王『グレン』から親書が届く。
〈お互いに戦を止め、平和的解決をしよう〉
弱ったネッビアの王はその申し出に飛びついた。
〈平和解決の証しに王が一番大事にしている姫を我の妃に迎えよう〉
王は三番目の姫を一番大切にしていた。
どの姫よりも多くの侍女と騎士をつけ大切に大切に育てていた。
美しい物、良き言葉。幸せな風景だけを見せて育てた。
王の嘆きは姫の輿入れまで続く。
何より可愛そうなのは、姫にかしずく大勢の侍女、騎士も獣の国に行くとなると尻込みし減り続け、とうとう姫の付き人は王国の姫としてあり得ない人数になった。別れる姫への手向けの荷を積んだ馬車馬の方が従者より多いという事態とあいなった。
イブリース側は姫たった一人でも構わないと言っていたから、これを見越しての発言だったかもしれない。