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第十二章 全員のコーダ

「・・・・遅くね?」


 あれから一時間。ゲームをしながら同じところでずっと待っているのだが、一向にフィアが戻ってこない。


「普段そこまで時間かかるっけ?」


 いつももまぁまぁお化粧直しの時間は長いが、ここまでではない。確かにいつもよりお化粧はしっかりしてるけど、流石にこれは遅すぎる。


「ちょっと見てくるか・・・・。」


 流石に男子トイレには入れないが、とりあえず男子トイレの前まではいってみよう。誰かが倒れてたりしたら、それなりに騒ぎになっているはずだし。



 * * * *



 どすっ


「あ、すみません。」

「・・・べつにだいじょうぶ。」


 いやー、華奢だから吹っ飛ばしちゃうかと・・・ん?


「もしかして・・・シラユリさんですか?」

「ゆりはくろゆり・・・・。」


 あ、本当だ。目が紅い。というか、隠しキャラじゃん。会えてラッキー。まぁ、隠しキャラじゃないのに、もっと会いにくいキャラクターもいるけど。いや、あれも隠しキャラなのか?


「ごめんなさい。クロユリさん。ところでフィアーノがどこにいるかご存知ないですか?」

「ふぃあーの・・・?ごめんなさい・・・。ゆり、どこにいるかしらない・・・。」

「そうですか。ありがとうございました!」


 クロユリ・・・美少女だよなぁ。完全に。これが男とは・・・。


 ふわっ


「えっ?」

 今、誰かとぶつかったんだけどぶつからなかった。というか、ぶつかったはずなのに感触がなくて、ただ通り抜けた。


「・・・・・・・。」

「あっ、ごめんなさい。」

「・・・・・・・。」


 美しいメイドはちらりと虚ろな目でこちらを見た後、すっと消えた。いや、マジで。空気に溶けた。・・・というか今の、ハルサフランじゃ?なんであんなところに?というか、さっきのはなに?


 どすん


「ごふっ!」

「あ、ごめん。」


 と、言って軽い感じで謝ってくるのはクロユリと同じ見た目をした美少女。


「大丈夫です・・・。」


 中々に痛かったけどな。


「ところで、フィアーノを見ていませんか?」

「え、見てないけど。」

「そうですか。ありがとうございました。」

「バイバーイ。」

「あ、待ってください。メアド交換しましょう。」

「え?」

「お願いします!!」


 フィアとヒロインをくっつけなくては!!


「ごめん、いきなり知らない人にメアドを教えるのは・・・。」

「ですよねー。いいんです。ごめんなさい、困らせちゃって。ありがとうございました。」

「ごめんね、バイバーイ。」


 うーん、シラユリちゃん、やっぱりいい子だなぁ。今度から積極的に話しかけてみよう。そうしたら・・・


 どんっ


「んごっ!?」

「・・・なんだね?」


 いや、なんだね?って聞かれても・・・ぶつかったんですよ。お宅の肩と。とはいわずに、


「えっと・・・フィアーノを見かけませんでしたか?」

「フィアーノ?見てないのだよ。君は・・・・確かフィアーノと同室の者だね?」

「はい。」

「ふん。あんな厄介な男と同室とは不幸なマリオネットだね。」


 アンタもだいぶ厄介だけどな。


「そうですね。ありがとうございました。」


 ミスルトゥ・・・。現実だと厄介なんだよなぁ・・・。


 どn


「危なかったですねぇ!危うくぶつかるかと!!」


 いや、ほとんどぶつかってたけどね。


「すみません。」

「いえいえ、こちらこそ!!」


 こうやって接するとこの人もいい人っぽいんだけどね。


「と、これはこれは!!貴女でしたか!どうやら、神は私に味方しているようです!!」

「はぁ・・・?」

「フィアーノさんから貴女へ伝言を預かっていますよ!!」


 お、これは有力な情報だ。


「草木も眠る頃、ヴィナグラート音楽堂にてお待ちしております。とのことですよ!!」


 ヴィナグラート音楽堂!?遠いな!?というかなぜ!?突然すぎるだろ!?お化粧直しにそこまでいくか!?普通!!


「・・・えっと、草木も眠る頃?」

「丑三つ時・・・・おっと、間違えました☆午前二時ということではありませんか?」

「ああ・・・・。」


 草木も眠る丑三つ時ってことね。


「今は

 

 ゴーンゴンゴーン


 0時を知らせる音が時計塔から響く。


「あと二時間ですね。では、頑張ってくださいね!!」

「え、あの、」

「・・・ああ、そういえば!フィアーノさん、貴女が時間までにこなければ死んでしまうとかなんとか・・・言ってたような、言ってなかったような!」

「言ってたんですか!?」

「さぁ?どうでしょう?とりあえず、綺麗は穢い、穢いは綺麗!さぁ飛んでいこう霧の中!!ということで!!」


 なんじゃそりゃ・・・。

 まぁいい、とりあえず私は急いでヴィナグラート音楽堂に行かなくてはならない。


「それでは、ありがとうございました。」


 そういうと、私はロゼさんにくるりと背を向けて、その場から立ち去った。


「・・・・もうおまえは戻っては来ない、二度と、二度と、二度と、二度と、二度と。・・・なんてね。アデュー、死に魅入られてしまったお方。・・・・さて、面倒な仕事も終わったことですし、私もソレルのところに戻りますか。」



 * * * *



 さっ


 ぶつかりそうになったところで、ギリギリで避けられた。とんでもない運動神経だな。


「すみません。」

「ククッ、構いませんよ。こちらこそ申し訳ありませんでした。」

「いえいえ。でも、」

「そう気にしなくてもよいのですよ。実際にはぶつかっていませんしね。」


 いやいや、でも今ぶつかりそうになったのはどう考えても走ってた私が悪かったし。しかも、こんな暗い庭の中で。


「それでは失礼します。」

「あ、はい。本当にすみませんでした。」

「ククククッ・・・・。」


 ・・・・・いやー、気品がありながら艶やかな雰囲気を持ってる優しい人だったなー。慈悲深い感じ、で?・・・・いや、今の人、よーく考えてみればスノウじゃね?あのドMでドSの。ヤバい性嗜好をお持ちでいらっしゃる、あのスノウじゃ?・・・深入りしなくてよかったー・・・・。下手したら殺されてたかも。



 * * * *



「・・・・・ついた。」


 今は、午前一時頃だ。確実に約束の時間には間に合っている。


 ギイッ


 私はウィナグラート音楽堂の重々しい木の扉を開いた。




これまで出てきた攻略対象(&シラユリ)、全員集合!!という感じでしたね。ルタ、人にぶつかりすぎじゃね?というツッコミはなしで。

ちなみにハルサフランはゲームの強制力によって、眠りながらも幻として一瞬だけ舞踏会に参加しています。ハルサフランはこのことを夢の中で一瞬見ましたが、目覚めた瞬間に忘れています。なんでこんなところでいきなりゲームの強制力が働くんだ、というツッコミもなしの方向でお願いします。

わからないキャラクターが居た方は他の『花園』シリーズの登場人物紹介を見て頂ければ恐らくわかって頂けるかと思います。

次の話で最終話です。

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