序奏
『花園』新シリーズです。どうかよろしくお願いします。
「・・・どうか、どうか僕を殺して、殺してください・・・・。」
そういいながら、私と同じ部屋の人間が自らの身体に刃を向ける。
「フィ、フィア・・・・落ち着こう!!なにも怖くない!!ほら、少しも怖くないわ!!!」
「ありのままの僕なんて・・・・。知ってます・・・。知ってますよ。ルタだって内心僕のこと、面倒臭い奴だと思って馬鹿にしてるんでしょう・・・・?」
「うっ、それは・・・いやいやいやいや、だからといって馬鹿にしてるわけじゃ!!!」
このThe面倒臭い奴は私の花園学園の寮での同居人、フィアーノ・ルレザンである。こいつ、女の子みたいな見た目をしているが、男である。私は女だ。なのになぜ、私と同じ部屋なのか。それは簡単だ。彼は『眠れ死の夢』という、自らが発した音で全てを眠らせる能力を持っているのだ。・・・・眠らせる、というのは勿論普通に眠らせるということでもあるが・・・・うん、永眠という意味も含んじゃうんだな。まぁ、手を叩いたぐらいだと、眠らせるくらいが限界らしいけど、芸術性のあるもの・・・・例えば、ヴァイオリンを弾いたりとか、歌を歌ったりとかすれば、その音が聞こえる範囲にいる人は皆眠るようにして死んでしまうのだ。やだ怖い。そして、私が持っている能力は『ミュート』である。うん簡単だね。音を消せるんだよ。半径五十センチ以内の音を全て。それはフィアの発する音も該当するわけだ。そうだよ・・・!!この能力が原因だよ!!フィアと同じ部屋にされるのは!!!うん、私の能力、私の近くにいなきゃ全然意味ないし!!他にもっと範囲を広く音を消せる人を同じ部屋にしてあげなよ!!と思うが、範囲が広いは広いで、周りの人も巻き込むということで丁度いい感じの距離で、幼馴染で、フィアより腕力の強い・・・いや、逆にフィアより弱い人なんていないが、私が選ばれたのだ。ガッデム。
「ほら、面倒だとやっぱ思ってる・・・!!」
「死ぬ死ぬずっと言ってるやつを面倒だと思わない奴がいるかよ。」
「ルタを殺して僕も死んでやります・・・!!」
「フィアが言うと冗談っぽく聞こえないからやめて・・・・!!」
「冗談じゃないですからね。」
「やめて!!!」
あ、ルタは私のあだ名ね。サルタナ・ツリフネソウが私の本名。
「ところで、ルタはどれがいいと思いますか?」
「え、なんの話?」
とりあえず、その包丁をおろそうか。
「死に方の話です。」
「ああー!!!今日も空が青いなー!!!」
うん、今日も元気に過ごそう!!!
「今日は曇りですよ。」
「いいんだよ!!心の空模様は晴れてるから!!!」
はれ、てるか・・・・?
「・・・ああ。僕が死ぬということで喜びが隠せないんですね。」
「違う!!違う!!なにその喜び!!そんな喜びいらない!!」
「いいんですよ。別に・・・僕なんて・・・・。」
「やめよう!!そのマイナス思考!!」
割と本気で!!
「あ、ほら!!ほら!!なんかさ、音楽のこととか考えよう!!」
こいつは音楽の天才である。演奏するときの雰囲気からなにからなにまで最高なのだと、皆は言う。・・・私はあんまりあのときのフィアは好きじゃないけど。なんだか・・・いや、なんでもない。でも、フィアの音楽の才能はすごいと思う。
「そうですね・・・。ルタはなんの曲が聞きたいですか?呪われたもの?賛美の生贄と祈り?恐るべき御稜威の王?怒りの日?」
「なんで全部レクイエムなんだよ。」
レクイエムとは死者のためのミサ曲である。
「僕は・・・好きです。」
頬を赤らめていうのやめようぜ。誤解される。
「うん・・・・。じゃあ、愛の喜びで。」
わざとフィアと正反対っぽい曲をセレクトしてみる。フィアはこういう曲を普段は絶対に弾かない。
「わかりました・・・。」
「え?」
マジで?
マジかよ・・・と思っていたら、ヴァイオリンを取り出して、目を閉じ、ゆっくりと息を吸った。・・・あ、マジだ。
~♪
・・・・・ん?ちょっと待て。この曲・・・・。
「愛の悲しみじゃねえか!!!!」
なに正反対の曲弾いちゃって、
「・・・・・え?」
バタン
私は突如異常な眠気に襲われ、意識を失った。
『お巡りさーん!!隣に私を殺そうとしている奴がいるので今すぐ助けて欲しい件について!!』の登場人物紹介、投稿いたしました。