女の子の恋事情
せーの、初めましてーーーー!!!!
いや〜やっと私たちの出番がやってきた・・・別にあれだよ、やりたくてやるわけじゃないからね!ただやるだけだから!
本当にね、でも私も初めてだからちゃんと言えるかわからないよ。
大丈夫だと思うよ〜、蒼君と冬君も出来てたし〜
あの口下手の蒼が出来るんだから私たちもできるよ。
ちょ、皆まず挨拶とかしないと・・・私がやらないとダメね。
はいというわけで今回は天使ちゃん、佐奈、花梨ちゃん、瑠花さんと私こと鈴音が語り手としてやっていきます。
前回にもあった通り夏祭りが今回のテーマになります。それで語り手のパターンなんですけど、前に蒼君と渉君が二人で語り手した感じでやればいいのですけど、五人もいるのでそれが不可能ではないけど色々とごちゃごちゃになってしまうので、一人一人やることにしました。
順番にやって行くのでよろしくお願いします。
最初は天使ちゃんです。
天使ちゃん頑張って!
頑張れ〜応援するよ〜
あんまり緊張しないで。
うっ・・・応援されてそんなにう、嬉しくないけど・・・ありがとう・・・
さて、最初は私がやるよ。あ、あなた達のためにやるから、感謝しなさいよ!
それじゃあ・・・どうぞ。
今日は夏祭り、私と蒼の初めて二人で出かける・・・で、デートじゃないからね!
前から二人で出かけようとしたけど蒼が何かと理由をつけて行かなかったけど今回は私が行きたいと言ったら別にいいよって言ってくれたから行くことになった・・・べ、別に嬉しくなんてないんだから!何よ、地上界のお祭りがどんな感じか知りたくて何が悪いのよ!!
それにしても・・・遅い、遅すぎる!
私はとっくに準備出来てお祭り会場の近くの公園で待ち合わせなのにかれこれ30分ぐらい待っているのに!
え?なんで一緒に行かないのかって?それは・・・色々と理由があって・・・とにかく理由があるの!それに私が行く時は蒼いなかったし、メールで待ち合わせしてるだけよ。
私は待ちくたびれて、連絡しようとすると
「おーい、ミカエルー!」
遠くから蒼の声が聞こえてきた。
少し薄暗くて、よく見えなかったけど確かに蒼が手を振りながら走ってきた。
蒼は私の目の前に立つと息を切らしていて膝に手をおき体をうつむかせ、汗を流していた。
そんなことはお構い無しに私は文句を言った。
「遅い!何分たってると思ってるのよ!」
息を切らしていた蒼は、体を起き上がらせて
「はぁ、悪い、ちょっと服選びに時間かかってよ」
服選びって、まぁ全身見たら・・・た、多少はオシャレかもしれないけど、そういえば蒼って意外とオシャレとかに気を配る人だったっけ?服とかも結構かっこ・・・いいわけないけど!
「ま、まぁ、少しはオシャレじゃないの?」
少し本心を口に出して言ったら
「マジで?良かったー、服選んで正解だったな」
こんなことで喜ぶなんて、子供ね。
「あれ?それより・・・お前その格好、浴衣じゃないか、それどうしたんだ?」
やっと気づいたの?・・・べ、別に蒼に見せるために着たわけじゃないけど。
「こ、これはあなたのお母さんのよ!
夏祭りに着てく服を選んでいたけど、お母さんが昔に着てた浴衣があるからそれ着たら?って言われたから着ただけよ。
か、勘違いしないでよ!べ、別にあなたに見せるために着てるわけじゃなからね!」
「へ〜、結構似合ってんじゃん」
突拍子もなくそんな言葉を送られた。
・・・嬉しい・・・嬉しくない!う、嬉しくなんてなんともないよ!!なんなのよ!ただの一言で嬉しいなんてちっとも思わないわよ!それに、蒼よ!蒼なんかに言われても別にへえ〜って感じだけだし!嬉しくなんか無い!!
「おい、顔赤いぞ?大丈夫か?」
はっ、いつの間にか私はうつむいて顔が真っ赤になっていた。体も熱いし・・・
「あ、暑いからよ!季節は夏よ、体が火照ってきてるだけ!
ほら、行くよ!」
私は蒼の手を引っ張って夏祭り会場に走った。
「ちょ、ミカエル!?」
名前を呼んでいたけどそんなこと関係なしに私は手を引っ張って走っていった。
「お前、いきなり過ぎるだろ、もう少しゆっくり行けないのか?」
「楽しみしてたの、あなたが遅いせいで出遅れたじゃない」
私と蒼は人混みの中に紛れていた。お祭り会場はすごく人がいっぱいで、くじ屋をやっているちょっと胡散臭いおじさん、金魚すくいでずっと金魚を眺めている少年、唐揚げの独特な匂い、りんご飴を楽しみにしてる女性、チョコバナナの大量に買う男性、色々と楽しんでいる様子のお祭り。
「地上界のお祭りも、中々盛り上がってるね」
地上界と言う言葉に反応した蒼は
「天界にもこういう祭りあるのか?」
と言う質問をしてきた。
「お祭り自体はあるわよ、ただ地上界のお祭りとは違って屋台とかは無いのよ。
天界のお祭りは本当に神様をお祝いするいわゆる式典みたいなかんじだから、あんまり楽しくは無いよ」
「へぇ〜」
「だから、こう言うお祭りに来たのは初めてのことなの。
元々地上界のお祭りには興味があったからね」
・・・あれ?蒼の反応が薄いわね・・・
私は蒼を見ると、スマホをさわりながら歩いていた。
その姿に私はイラッとして蒼のスマホを取り上げて
「私の話聞いてる!?」
「ちょ、今いいところなんだから、やめろよ!」
逆ギレしてきた蒼にさらに怒った。
「なんなのよ!私の話はどうでもいいってこと?
それにあなたからこの話をふってきたんだから話ぐらい聞きなさいよ!!」
意表をつかれたような顔になった蒼は、言い返す言葉が無いかのように、焦り出した。
「まったくもぉ、これだから彼女出来ないのよ」
私は腕を組み、嫌味的な事を言った。
「関係ないだろ!それに出来たら、こんな態度とらないよ!」
「付き合う前からそんなこと言う人は同じことするのよ」
「お前だってまだ彼氏いないじゃないか!
俺にそんなこと言える立場じゃ無いとおもうけどなぁ〜」
「うっ!う、うるさいわね!わ、私は出来ないんじゃなくて出来るけど作らないだけよ!」
それに・・・私には本当に好きな人が・・・ま、まぁ、いないけど・・・
「と、とにかく!私の話は逐一聞くように!」
話がちょっと違う方向に行ったけど、私は話を聞いて欲しかっただけなのよ。
「はいはい、携帯返せよ」
あっそうだ。
私は蒼にスマホを返した。
はぁ、なんか一気に台無しになった気分・・・あっ。
「蒼、蒼!」
蒼の袖を引っ張った。
「なんだよ?」
「私、あれやりたい」
「えっ、あぁ、ヨーヨーつりか」
ヨーヨーつりが私はやりたいのもお祭りに来た理由の一つ。ヨーヨー、前から欲しかったのよね。
「ヨーヨーつりやるのか?」
「う、うん・・・ま、まぁ別にヨーヨー欲しいってわけじゃないけど単なる暇つぶし程度にやるだけよ!」
・・・なんでだろう、蒼にだけはどうしても強がってしまう・・・なんでだろう?
「はぁ、しょうがないな」
私と蒼はヨーヨーつりをやりにいった。
蒼はヨーヨーつりの店員さんのお姉さんに
「いくらですか?」
「2回で300円です」
「今どきのヨーヨーつりで2回300円は安い。
普通なら2回だったら600円、下手をしたら900円ぐらいするところもある」
ボソッと蒼が聞こえるか聞こえないかの声で独り言を言った。
お姉さんが私に針を渡して
「ではこれですくってください」
一個渡された。
私はしゃがみ、大量にあるヨーヨーをすくいにいった。
ヨーヨーの縛ってある部分に輪っかがありその輪っかに針を引っ掛けてすくうのだが、私はすぐにすくえると思って1個のヨーヨーを針に引っ掛けて持ち上げたら、ヨーヨーの重さですぐに針が落ちてしまった。
予想外の事に私は驚いた。あんなにヨーヨーが重いなんて。
「まあ、初めてだからしょうがないか」
蒼が笑っている。
・・・なんかムカつく・・・
なぜか頬を膨らましていた。無意識のうちに。
「はい、もう一回」
お姉さんはもう1回分の針を渡してきた。
でも、大体の感覚は分かった。ヨーヨーの重さ、針の耐久性、何秒で落ちるか。
私は人間じゃない、天使。
それを蒼にみせてやるわよ。
私は研ぎ澄まされた集中でヨーヨーを見た。
おそらく一回しかできない、針の耐久性から考えて。
そして、さっき落としたヨーヨーを目にも止まらぬ速さですくいあげて、私の手の上に乗せた。針は無くなっていた。
蒼とお姉さんはア然となっていた。
そんなお姉さんに笑顔で
「ありがとうございます、大切にしますよ」
そう言い残して私はその場から歩いていった。
歩いていると、蒼が後ろから走ってきて
「ちょ、おまっ、えぇ!今さっきの完全に人間技じゃないだろ!あれって・・・」
「まあ確かに人間は無理かもしれないけど天使なら出来る事よ」
いちいち絡むのめんどくさいから適当に流しているけど
「いやいやいや、見せていいのか?天使だってことバレたら」
「バレないわよ、一人しか見てないのに」
「でもそれにしても・・・」
「しつこい!もう済んだ話でしょ」
あまりにも突っかかってくるのでちょっと怒った。
「俺は心配してやってんだぞ!」
「いらない心配よ!」
「人の優しさなんだと思ってるんだよ!」
「なんですって!あなたに優しさがあったの!?驚きだわ!」
「なんだとー!」
その後しばらくケンカがあったのは別の話・・・
佐奈:天使ちゃんの次は!私と!
鈴音:鈴音がやりますのでよろしくお願いします。
佐奈:いやー、まさか今回は二人でやるとわね、でも鈴音ちゃんとやるんだったら心強いよ!
鈴音:前回の蒼君と渉君がやったようなダブル語り手としてやっていきます。
佐奈:鈴音ちゃん、今回は私と鈴音ちゃんが一緒に夏祭り行く話だよね?
鈴音:うん、そんな感じ。
まあこの後もまだ天使ちゃんの話は続くけどひとまずは私たちがやる感じ。
佐奈:それじゃ!始めましょうか!
鈴音:それでは楽しんでください。
鈴音:私と佐奈は一緒に夏祭りに行くことになっていた。元々昨日の花梨ちゃんの家に行った時から二人で行く話をしていた。
鈴音:7時に待ち合わせしていたのだが6時50分に着いてしまい私は佐奈と待ち合わせしている場所に早く着いてしまった。もちろん待ち合わせ場所には佐奈はいなかった。
鈴音:私の格好は浴衣ではなく私服。
一応浴衣は持ってるけど、あんまり着たいとは思わない。なんでなのかしらね。
「鈴音ちゃ〜ん!」
佐奈:私は一足早く着いた鈴音ちゃんを見て走った。
あっ、ちなみに私は浴衣ですよ。
鈴音:あなた、浴衣で来たの?
佐奈:そう言う鈴音ちゃんは私服なの?
しかも・・・ショートパンツだし・・・
鈴音:何よ?何か問題があるの?
佐奈:それは・・・読者のみんなには見えないからいいけど、足がキレイすぎて皆鈴音ちゃんの虜になるかもしれないから。
鈴音:褒め言葉はありがたいけど、足だけで虜にはならない、ごく一部の人以外わ。
佐奈:そう・・・かな?
鈴音:そうよ、そんなことより早く行きましょ。お祭りは地味に楽しみにしてたんだから。
佐奈:うん!行こ!
私と鈴音ちゃんは夏祭りの会場に向かったの。
「ワイワイガヤガヤ」
佐奈:お祭りの会場はやっぱり人がいっぱいいて、楽しそうな雰囲気が充満していたの。
何食べよかっな〜
鈴音:もう食べることしか考えてないの?
佐奈:だって!お祭りと言ったら食べ物じゃない?
唐揚げにたこ焼きにチョコバナナに・・・
鈴音:ヨダレたらしながら話さないでよ。
私はお祭りと言ったらそうね・・・やっぱり金魚すくいとかそういう遊びの方が思いつくわね。
佐奈:あっ!私金魚すくいしたい!
鈴音:食べ物どうしたのよ?まぁいいけど。
私たちはお祭り会場を歩いていると、知ってる二人を見つけた。
「ねえ、次はたこ焼き食べたい」
「たこ焼きって屋台あったのに、戻らなくちゃいけないだろ」
「歩いていたらあるかもしれないでしょ」
「本当かよ?まぁ歩くか」
佐奈:ねぇ、鈴音ちゃん、あの二人って蒼君と天使ちゃんじゃない?
鈴音:えぇそうね、あの二人も来てたのね。
佐奈:ねぇねぇ、声かけない?おーっ。
鈴音:佐奈、ダメ。
佐奈:えっどうして?
鈴音:天使ちゃんの顔をよく見なさい。
「案外楽しいもんね、お祭りって」
佐奈:天使ちゃん、あんなに笑顔で笑ってて
すごく楽しそう。
鈴音:今は二人の時間を邪魔したらダメなのよ。
佐奈:私と鈴音ちゃんは蒼君と天使ちゃんを声をかけずに見てるだけにした。
鈴音:・・・天使ちゃんもしかしたら、蒼君の事が好きなんじゃないかな?
佐奈:えっ!天使ちゃんが!?
鈴音:まぁ確定じゃないからなんとも言えないけど。
佐奈:ん〜でも蒼君天使ちゃんのことはあんまりそう言う風に見てないかもしれないかも。
鈴音:どうして?
佐奈:だって一緒に住んでるんだよ、そうなったらもう家族みたいなものじゃん。
家族って恋愛対象にはならないものじゃない?
鈴音:それは人それぞれだからわからないけど・・・二人の関係は二人だけのもの。
あなたと私の関係も私達だけのもの、それでいいんじゃないの?
佐奈:なんか話が結局全然違う方向に行ってる感じがしてるけど、まあ今日はお祭りを楽しむ!
・・・あっ!鈴音ちゃん!あれ見て!
私はある屋台を指さした。
鈴音:指さした方向を見たら、金魚すくいの屋台だった。
佐奈:鈴音ちゃん、私やりたい!
鈴音:うん、やればいいじゃない。
佐奈:よし!やるぞ!!
私は金魚すくいのお姉さんに、一回300円のポイを買って、金魚をすくおうとした。
鈴音:佐奈、出来るの?
佐奈:まかせて、金魚ってすくったときにバタバタしてポイがやぶけるらしいけど、あれって本当は金魚の体を動かしてやぶけるのじゃなくて、しっぽが主にポイに当たってやぶけちゃうんだって。
だから、しっぽをポイの外側に出したら比較的に取りやすいんだって。
鈴音:それどこの情報よ。
佐奈:テレビで前にやってた。
よし、狙いを定めて・・・ここだ!
金魚をポイに乗せて、ちゃわんの中に入れようとしたけど意外と金魚が体を動かしてポイが破れてしまった。
「あっ、もうダメだ!」
佐奈:そう思った瞬間、上手いこと金魚の落ちた先がおちゃわんの中に落ちて、そのままゲットした。
「すご〜い、初めて見たわよそんな捕まえ方」
佐奈:お姉さんが褒めてくれた。
ちょっと恥ずかしいけど、取れたからよかった!
袋に水を入れて、さっき捕まえた金魚を袋の中にいれてくれた。
鈴音:よかったね、金魚捕まえれて。
佐奈:うん!私子供の頃からずっと金魚すくいやってるけど一匹も捕まえられずにやってたけど、初めて捕まえられて今すごく嬉しい!
鈴音:子供の頃からって・・・どんだけ下手なのよ。
・・・おっと、ここで一応私と佐奈の語り手の時間は終了のようね。
佐奈:もう終わりなの!?
鈴音:まぁまだあると思うけど、とりあえずって感じかな。
佐奈:そっか、ならいいや。
じゃあ皆さん、またね〜
鈴音:切り替え早い子ね。
それでは、続いての語り手は花梨ちゃんです。
どうぞ。
わ〜い、語り手だ〜。
みんなこんばんは〜花梨だよ〜
今日は渉君と一緒に夏祭りだ〜
何かと楽しみにしていたから、ウキウキしてる。
それに初めて浴衣を着てみたけど、似合ってるかどうかわからない・・・渉君の目からはどう見えるのかな?もしかして変な目で見られるかもしれない。
今は渉君と待ち合わせしてるけど・・・今からでも普通の服に変えてこよっかな・・・まだ渉君来てないし、変えよう。
私は待ち合わせ場所にあった、ベンチに座っていたけど、急いで立ち上がり、家に戻ろうとした時
「花梨、待ったか?」
わ、渉君の声が後ろから聞こえた。来ちゃった・・・渉君・・・覚悟を決めて振り向いた。
渉君の視線が怖くて目を閉じていたけど、目を閉じたら視線とかともかく渉君の顔が見れない・・・渉君、どういうふうに見てるんだろ、見てみたい。
ゆっくり、本当にゆっくり目を開けると、黒の浴衣を渉君は着ていた。
わ、渉君が浴衣着ている!?意外だった、渉君の事だから私服とかで来ると思っていたけど、まさか浴衣で来るなんて・・・しかもすごく似合ってる。
「わ、渉君、浴衣で来たんだ・・・い、一緒だね〜」
取り乱した心に嘘をついて普通に接していかないと、どう思われるかわからない。
「浴衣なんて夏祭りぐらいしか着ないからな。
大人になったらもっと着なくなる、だったらここで着ておいた方が思い出にはなる」
確かに、女の子はともかく男の子は大人になっていったら浴衣を着なくなるかもしれない・・・それにしても渉君の声を聞く度に心臓がドキドキする、なんでだろなぁ〜
「それにしても、花梨も浴衣か」
えっ!あっ、そうだ!!渉君との話ですっかり忘れてたけど私浴衣だったんだ!
どうしよ、この姿、受け入れてくれるかな?
「浴衣、変かな〜?」
平常心を保つ事は出来ないけど、言葉だけはいつも通りにした。
渉君は浴衣に関してはコメントした。
「別に変じゃない。
逆に似合ってると思う」
・・・似合ってるって言われた。
嬉しい、体から火が出るくらい嬉しかった。
「・・・うん、ありがとう」
「行こうぜ、祭りは楽しまないと損だぞ」
渉君は私から180度振り返って夏祭りの会場に歩いていく。
本人からしては何気ない言葉だったって分かるけど私にとってはどれだけ嬉しい言葉かどうかわからない。
「花梨?行かないのか?」
少し先で顔だけ私の方に向けて言ってくれた。
「あっ、待ってよ〜」
渉君の後を追った。
お祭りの会場に着いた私と渉君は横並びで歩いていた。渉君はずっと前を向いて歩いているけど、私は1分に2回ぐらいチラチラ見てる。あんまり笑わないから渉君の感情はあまりわからないけど、多分楽しんでいるに違う無いと思うよ。
・・・会話が無いよ〜、なんとなく空気が重い・・・なんとなくじゃなくって重いよ〜
会話、早く会話しないと潰されちゃう。
「わ、渉君的にお祭りの醍醐味ってなんだと思う〜?」
う〜、なんかテキトーな事言っしゃったよ〜
「まぁそうだな、金魚すくいとか遊びが思いつくな」
やっぱり普通だなぁ。
「そう言う花梨はどうなんだよ?」
「私はそうだな〜、私も遊びとかかな〜」
「へぇ」
・・・会話が弾まないよ〜、確かに渉君って寝ていることが多いから学校でも話す機会あんまり無いから、どんな話したらいいかわからないよ〜
落ちついて落ちついて、まだ祭り会場に着いたばかりじゃない。そこまで慌てることはないと思うけど・・・何か話さないと。
でも話題が無いよ〜、どうしたらいいかわからないよ〜
「それにしても、こうして花梨と二人で話すのはあまり無いな」
わ、渉君から話をしてきてくれた、これなら気がまだ楽になるよ。
「そうだね〜、確かにあんまり話さないね。
でも渉君がずっと寝てるからあんまり話せないと思うよ」
「それは悪い、俺も最近休憩の時は起きてるんだけどな」
前は渉君休憩の時も寝てたけど今は起きててみんなも話している。それも前に私が渉君を押した時から。改心してくれたのかな?わからないけど。
私と渉君はそんな話をしながら歩いていると、私はとあるものに目が移ってしまった。
それは、射的の景品のうさぎのぬいぐるみだった。大きさは赤ちゃんぐらいの大きさ。
私はぬいぐるみが大好きなの。可愛いぬいぐるみには本当に目がいってしまう。
歩いていた途中でとまったから渉君も止まって
「どうした?」
と、訪ねてきたけど、そのぬいぐるみの事で頭がいっぱいになってしまってて言葉が返せなかった。
渉君も私の目線に目を移したら
「ぬいぐるみか?」
即座に気づいた様子。
「あれは・・・射的の景品か」
射的なのも分かったらしいけど、やっぱり勘がすごいなぁ。
「・・・欲しいのか?」
「うん、本当に可愛いの」
「しょうがないな、取ってやるよ」
・・・えっ、渉君があれを取ってくれるの?
渉君は射的の前に立ってお兄さんにお金を渡した。
私は横に立って様子を見たの。
射的の玉は5発、5発で落ちるかな?うさぎのぬいぐるみちょっとおっきいし、いくら渉君でも難しいんじゃないかな?
渉君は玉をてっぽうの入れて、構えた。
てっぽうを片手だけでぬいぐるみに近づきもせずに、そのままぬいぐるみに向かって撃ったけど、ポンって当たっただけでなんともなかった。
そのまま続けて3発同じように撃って同じように当たっただけで、動く気配が無いよ。
やっぱり渉君でも無理じゃないのかな〜?
最後のてっぽうの玉を入れた渉君だけど、何か少し違う気がした。何かこう、狙ってる。
集中して渉君は最後の1発を撃ったら、うさちゃんのぬいぐるみは頭に当たってそのまま倒れた。
私は驚いて、かける言葉が見つからなかった。
お兄さんも驚いていた。
ぬいぐるみが手渡されて
「ほら、取ったぞ」
私の手に渡してくれた。
改めて思ったけどやっぱり渉君ってすごい。
「うん!ありがとう〜」
感謝の言葉は言わないと。
「行こうぜ」
渉君は先に歩いていった。
私も後を追って、横に立って話しかけた。
「やっぱり渉君ってなんでも出来るね〜」
「別になんでもは出来ない。無理な事はある」
「射的でも最後の1発って落ちたじゃん〜」
「あれはどこが一番動くかどうか確かめてただけだ」
どういうことだろ?
「あの4発はそれぞれの体を当ててたんだ。
頭、体、両腕って感じで撃って一番動いたのは頭がだったから頭にめがけて撃ったら倒れただけだ」
・・・すごい、そんな計算高くできないよ普通。
「まぁ、基本たまたまだけどな、あんなに綺麗に倒れるとは思わなかったけど」
「へ、へぇ〜」
たまたまで倒れるとか、どんなリアクションしたらいいかわからないよ。
まだまだ始まったばかりだけど、驚愕な事が多すぎてもう疲れてきたよ〜
あっ、とりあえず私の出番は終わりのようだよ〜、また天使ちゃんに回るから見てね〜
はぁ・・・せっかくの夏祭りなのに、半分ぐらい口喧嘩になっちゃった・・・べ、別にあいつと一緒に行って楽しくなんて無いんだからね!
でも・・・それなりに、その、楽しめたかな。
「いや〜、意外と楽しかったな」
横で一緒に歩いている蒼がつぶやいた。
「意外って何よ意外って」
もう、ひねくれたことしか言えないのかなこの人は。
・・・えっ!待って!!
「蒼!今何時!?」
「え、もうすぐ9時だけど」
私は蒼の手を引っ張りながら走った。
「お、おい!なんだよ、どうしたんだよ!」
そんな蒼の言葉を無視して、走った。
そして、人気のないところまで蒼を連れて走ってきて私の天使の翼を広げて、蒼を掴んで飛びたった。
「ちょ、ここで!?」
蒼にこの翼を見せるのは3回目ぐらいかな。
でも今回は訳が違う、これは私とその、蒼のためって言ったら響きが良すぎるけど、でもアレを見たいの。
あんまり人がいなくて、静かな所で見たいの。
そう・・・初めて見る、綺麗な光景を。
鈴音:やっぱり、お祭りは楽しいね。
佐奈:うん!こんな充実したお祭りは久しぶりだよ!!
鈴音:そうね・・・あれ?
佐奈:どうしたの?・・・うわぁ、キレイ〜。
鈴音:そうね。
渉君と一緒に歩いていた私だけどちょっと歩くの疲れたから、近くにある神社で座って休憩していた。
「今日はありがとね〜」
「俺も楽しめたし、ありがとな」
渉君ってしっかりとありがとうとか言えるから偉いなぁ。
なんでも出来るし、完璧って多分こう言う人の事を言うんだろうなぁ〜
月の明かりが暗闇を照らしていた。蒸し暑い夏の空気だけど、どこか涼しい感じもある。
ぱっと渉君を見たけど、空を見ていた。多分月を見てるのがわかった。昔、蒼君達と話している時に月が好きって言ってたような気がしたけど、本当だったんだ。
・・・なんだろ、空気は重たくないけど体が今は重い。風邪とかじゃないけど・・・よく考えたら今、渉君と2人っきりだよね。
うぅ・・・なんか、ドキドキしてきた。
・・・・・
「わ、渉くん・・・」
聞こえないくらいで声を出した。
すると突然、大きな音が鳴った。
「花梨見ろよアレ」
空に指をさした渉君。
あ、アレって・・・
私は蒼を連れて少し高い丘のような場所に来た。
「どこだよここ」
「いいから黙って見てなさい」
困惑する蒼を黙らせて、丘の上から空を見てみると
「あっ、蒼!見てよ!」
私は指をさした。
「・・・うわぁ、すげぇ」
その光景に感動していた蒼。
そこには満開に咲いた花のように美しく華々しい花火がそこにはあった。
人が少ない分花火の音も充分に聞こえてきて、何より、ここで見る花火は本当に大きく見てて綺麗だった。
初めて見たけど、ここまで美しくて綺麗だったなんて思わなかった。
「ここまで綺麗に見える花火は初めて見たな〜
これを見せるためにわざわざこんなところに連れてきたのか?」
「べ、別にあんたに見せるために連れてきたわけじゃないからね!一人で見ても味気ないから仕方なく連れてきただけだからね!!」
「いや、それでも・・・こんな光景を見たら感動するよ。
ありがとな、ミカエル」
・・・だから不意にそんな言葉言わないでよ。
私は・・・そんな言葉の対策して無いんだから。
そして・・・私に火をつけるのね。
・・・蒼が悪いんだからね。
「・・・蒼」
蒼は私の方を振り向いた。
「どうした?」
その花火は今日一番大きくて音も大きかった。そして、一番綺麗。
振り返った瞬間、私は蒼の顔に近づけて、その唇と私の唇を触れ合わせた。
舌は入れてない。そこまでの勇気は無かった。
いや、今のこの状況でも勇気はいる。
目を閉じていたから表情はわからないけど多分急なこと過ぎてびっくりしてると思う。
後悔は少ししてるよもちろん、だって私の初めてなんだもん。
体感時間は5分ぐらいにかかったけど、時間にしては多分10秒もいってないきがする。
ゆっくりと唇を離す。
目を開けて蒼を見ると、どうしたらいいのかわからなくなっていてずっと口元を触っていた。
少し蒼は震えていたが話しかけてきた。
「お、おま・・・ていうか今さっきのって・・・俺もその初めて・・・」
思考が回ってないのが丸わかりだけど、それは今の私も同じかもしれない。
だって話しかける言葉が出てこないもん。
「あ、あれって、よ・・・その、き、キス・・・だよな・・・?
え、えっと、い、いきなり・・・あぁ・・」
本当に冷静でいられなくなっているのね。
顔真っ赤っかだけど、多分私もそうなっているのね。自分でも分かる。
やっと私も話せるようにはなったけど思考はまだ回復してない。
とっさに言い訳みたいな事を言ってしまった。
「これは・・・その・・・て、天界での感謝をする時にするやつで・・・け、決してあなたの事が好きな訳じゃないからね!
天界のお礼だから!天界の!!」
すべて天界のせいにしたけど、バチとか当たらないよね?わからないけど。
「・・・そ、そうかよ」
蒼は疑っていたけど今はそういうことで通しきったようだ。
静まりかえったこの場に花火の音が大きく鳴り響いた。あんなに綺麗に見えた花火も今は何か違うようなものに見えてしまう。
顔を向き合わずにいた。
「・・・悪い、先に帰るよ」
蒼は走ってその場を立ち去った。
・・・そうよね、いきなりあんなことされたら逃げ出したくなるよね。
家に帰って話せるかどうかもわからないし・・・嫌われたかな・・・
・・・あれ?なんでこんなにも涙が溢れてくるんだろう?こんな嫌われるだけで・・・
・・・考えても仕方ないし、私も帰ろう。
私は天使の翼を広げて飛び出した。
涙をぬぐい色々考えているとあることに気がついた。
「そういえば、蒼あの丘の事知らないのにどうやって帰るんだろ?丘を降りたらちょっとした森なのに・・・」
まぁ、蒼の事だから大丈夫でしょ。
そのまま私は家に帰った。
楽しい思い出もあったけどなんか最後はちょっと切なかったな。今回は私が悪いんだけどね。自業自得とは言えなんかやるせない感じ。・・・謝ろかな、でも蒼だって私の初めてを奪わせてやったんだし、お互い様よね。
私の語りは一応終わります。もう少し話すかも知れませんけど・・・ちょっと休憩します。まだ気持ちの整理がついてないから。
佐奈:うわぁ〜キレイ〜。
こんなに近くで花火見るの初めてだよ!
鈴音:私と佐奈の前に大きな花火が上空高くに綺麗に咲いた。
確かに綺麗ね、私も思わず見とれてしまうわ。
佐奈:すごいね・・・まるで・・・
鈴音:まるでの次はなんなのよ。
佐奈:いや〜なにかに例えようとしたけど何も思いつかなかった。
鈴音:まったく。でもあなたらしいね。
佐奈:・・・最近さ、私誰かの事が好きになるのかなって思い始めたの。
鈴音:どうしたの急に?
佐奈:なんかさ、恋ってきっとするもんじゃない?
鈴音:そうね、人生の中では必要なことね。
佐奈:でしょ。
それで私もきっと恋すると思うとドキドキしちゃうの。
鈴音:ドキドキはするでしょね。
佐奈:それでね、最近なんかわからないけどいきなり胸がきゅうってなる時があるの。
鈴音:え?どういうこと?
佐奈:胸が苦しくなるって言うけど本当になるんだぁってその時思ったの。
鈴音:・・・佐奈。
佐奈:ん?なぁに?
鈴音:それが、恋って言うのよ。
佐奈:・・・これが、恋?
で、でも私、気になっている人とかいないよ?なのにどうして。
鈴音:最近誰かの事を考えたりしない?
考えただけで胸が苦しくなったりとか?
佐奈:それは・・・あっ、でも・・・
わからない。もし、もしこれが恋だったら誰かの事が好きってことだよね。
鈴音:そうなるんじゃない?
佐奈:でも、今は誰が好きなのかわからないの。今まで誰かのことを好きになるってことしなかったから・・・ねぇ鈴音ちゃん。
私って悪い人なのかな?誰かを好きにならないってダメなのかな?
鈴音:そ、そんなこと無いわよ。誰かを好きになるなんて特別なことがない限りならないことなのよ。
佐奈:でも皆絶対に好きな人いるかもしれない。それなのに私だけはっきりしてなくて、こんな気持ちじゃ絶対だめなのに!
佐奈:自分の中で自問自答を繰り返していたらどんどん自分が悪く思ってきた。
鈴音:さ、佐奈、お、落ちついて・・・
佐奈:わからないよ、私は・・・ダメな人なのかな・・・鈴音ちゃん・・・
鈴音:佐奈は人目を気にせずに私の胸に飛び込んで声には出してないけど泣いていた。
佐奈の気持ちは私にはわからない。
私だって気になっている人はいるから。
だから励ましの言葉が浮かばない、いえ、浮かぶけど不用意に発言は出来ない。
鈴音:・・・ずっと佐奈の頭をなでていた。
かける言葉が出てこないから。
佐奈:・・・・・鈴音ちゃん・・・
鈴音:落ちついた?
佐奈:うん、ちょっとね。
鈴音:大丈夫、佐奈は悪い人なんかじゃない。素直でいい子よ。
佐奈:・・・ありがとう。鈴音ちゃん。
私、頑張るよ。
今は、それしか言えないけど。
鈴音:頑張るって言葉は気軽に言える言葉じゃないと思うよ。それしかなんて事は無いよ。
鈴音:私と佐奈はその後もお祭りを楽しんで帰った。佐奈にとっては本当につらいことだと思うけど、それと同時に自分が恋をしてるってこともわかったと思う。
佐奈は今はちょっと一人にさしてあげて。気持ちを整理させてあげて。
鈴音:これで私達の語り手は終了します。
少しでもいいので佐奈に元気を分けてください。あの子も今元気を取り戻そうと頑張っていますから。
「花火だ〜」
私と渉君は花火を見た。
「花火か、これも夏の醍醐味の一つだな」
「渉君は花火が好き?」
「ああ。すぐに無くなるのはあんまりだが、上空に咲く花は綺麗だ。
大きく鳴り響く音もいいからな」
こっちを振り向かずに、花火を見ながら言った。
・・・そうなんだ・・・
その言葉すら出なかったよ・・・今は渉君は私に夢中になってない・・・決心してたんだけどなぁ。
でも、言うって決めたの。それが私の今出来ることだから!
「ねえ?渉君・・・」
名前を呼ばれ私の方を向き
「どうした?」
と返してきた。
意を決した。心の中で深呼吸をして
「渉君って私の事をどお思ってるの?」
突然のことに渉君も少し戸惑っていた。
「どおって、友達、かな」
「そうだよね」
やっぱりそんな答えだよね。
少し間があったのか、渉君がこう話してきた。
「友達、じゃないのか?」
えっ・・・そういうことじゃないよ!友達でもなくなったら私・・・
違うの、そういうことを言いたいわけじゃないよ。ただ・・・
「なんだ?はっきり言ってくれ」
渉君?・・・そっか、渉君って確かはっきり言わない人があんまり好きじゃなかったよね。・・・私は胸の中にあるすべての言葉を渉君に伝えた。
神社の階段に座っていた私達だけど私は渉君の前に立った。
「花梨?」
つぶやいた渉君。
深呼吸をして、心を整理して・・・
「私は渉君事が好きなの!!
だから、付き合って!!!」
大声ではちきれんばかりの声で気持ちを伝えた。
言った瞬間の顔は見れなかった。その時に目を閉じてしまったから。
ゆっくりと目を開けて渉君の顔を見たら。
片手で顔を抑えてうつむいていた。
渉君の心の中がわからない。何を考えているかわからない。
少し間が空きどっちも声を出せずにいた。
その時だった、渉君が顔を上げて私の方を見て口を開いた。
「俺と付き合っても楽しく無いぞ」
小さめな声で私に言ってきた。
首を振り
「そんなこと無い!
だって・・・私が初めて好きになった人なんだから」
何言ってるんだろ私・・・初めて好きになった人だからなんなのよ、バカ・・バカ・・・
そして、渉君は答えを口にした。
「・・・ごめん、付き合えない」
・・・・・
「俺、まだ皆には言ってないけど、昔に信じられる奴が病気で死んだんだ。
そいつは俺が初めて心を許せるやつだった、だからこそ、まだ自分の中にそいつの事が忘れられない。こんな状態で付き合っても申し訳ない。だから・・・付き合えない」
・・・そうなんだ。渉君も過去に色々あったんだね。
渉君の顔が見れない。見たらこみ上げてくる感情が抑えられない。
声を出したいけど声が詰まって話すことすら出来ない。・・・心の中でも話すのが精一杯だよ。
「・・・悪いとは思う」
そんな言葉かけないでよ、全部私が悪いんだから。
顔は見れないけど渉君は立ち上がって
「俺の事を嫌いになってもいいからな」
渉君は私の横を通り過ぎて歩いていった。
私も振り返り、渉君の背中を見た。
まだ話したい・・・まだ遊びたい!
待って・・・いかないで!!
・・・そんな言葉出てたらもっと上手く伝えられたはず。
一人ぽつんとなった。花火が終わりあたりは真っ暗だった。
「・・・そっか、私、失恋したんだなぁ〜」
いつもの口調に戻って、少し笑みを浮かべた私はその瞬間我慢していた感情が溢れ出てきて・・・
・・・すいません、ちょっと待っててください。
私は家に帰るために人目が無い所で翼を広げて帰っていた。
人のいない神社の上を通過しようとした時だった。
「あれ・・・人がいるけど・・・あれって花梨ちゃん?」
花梨ちゃんだと思い、翼をしまい地上に降りて話しかけようとしたけど、そこにいた花梨ちゃんはしゃがみこんで大声で泣きじゃくっていた。
花梨ちゃん!?あんな姿初めて見た。
どうしたんだろ?慰めたほうが・・・
「渉君・・・えぐっ・・・」
渉君?なんでいま渉君の事を・・・そっか、花梨ちゃん渉君の事が好きだったんだね。
それで告白をして、振られちゃったんだね。
・・・今は一人にさせてあげたほうがいいかな・・・また会ったときになぐさめてあげよう。
私は声をかけずに翼を広げて家へと向かった。
花梨ちゃん・・・あの子も恋してたってことだよね。私は蒼を・・・なんとも言えない。
今は、考える時間なんだよね、だったら答えはまだ出ないよ。
・・・・・すいません、ちょっと泣いてました。やっと落ち着きました、油断したらまた泣いちゃうけど。
私の語り手はこれで終わるよ〜
なんだかんだでお祭りは楽しかったし、このぬいぐるみも大切にしないと。
これを・・・渉君として見れるかな?
よし!気持ちを切り替えよう!みんな〜今日はありがとうね〜
やっと私の出番ね、まぁそんなに長くないけど。
やっほー皆さん、瑠花ことルシファーだよ。
さて私はお祭りが目的では無い。ある人に用があるから蒼に頼んで呼んでもらった。
長いことこんなこと言っても嫌だから本編行きま〜す。
お祭りの会場から少し離れた小さな森のような場所に私とその人がいた。
「いや〜ごめんね。こんな場所に呼んで」
「いやまぁ、お祭りに行くんじゃ無いんですか?」
彼は冬。昨日蒼達と一緒に内と一人。
お祭りに一緒に行くと嘘をついてここに呼び出した。
「お祭りは興味があるけど、ちょっと話がしたいからさ」
「話、ですか?」
「そ、昨日会った皆のこと」
私はまだ蒼の友達の事をよくわかってない、ならば話を聞くまでのこと。
冬君は訪ねられるとは思わなかったようで、首を少しかしげて
「皆のこと?」
「うん、あの感じから見てあの子達、皆がみんな誰かの事が好きに見えるのよね」
「えっ、そうなんですか?」
一目見ただけで分かったよ。
「なんで、そう言い切れるんですか?」
やっぱり疑問に思うよね〜一般的にそうだと思うけど。
「私ってなんか人間離れした目って昔から言われるの」
「人間、離れ?」
「誰が誰を好きって事が分かるの」
と、そんな口から出たでまかせを言った。
人間離れなんてうそうそ、天使の特権みたいな感じかな。それに私だけの。
天使にはそれぞれ固有の能力があるの、それも人には絶対に出来ないこと。
私の能力は見透かす目。人の思っている人や好きになった人の事を見抜ける能力。
その気になったら全員の心の中を見透けるけどそんな面白くないことしたくないからやんないけどね。
あの中にいた蒼の友達は興味本位で見透かしちゃったけどまさか皆がみんな誰かの事が好きだなんて、ふふ皆青春してるのね。
「たとえば蒼はあの佐奈ちゃんって子が好きなんでしょ?」
冬君も疑心暗鬼になっていた所をこの言葉で驚いて
「あっ、当たっています」
少し小さな声で言ってきた。
「他にも・・・」
他の人のことも言うとしたら
「待ってください。
ここで皆の事は言わないでください」
「ふーん、どうして?」
ちょっと気になった
「確かにみんなが誰かのことを好きだってことは僕も気になります。
だけどここで聞いてしまったら皆を今までの目で見られないと思うのです。
相談とかは別ですけど、僕はそんなことを聞きたくないです」
・・・ふふ、素直な子。でも本当にいい子。
皆を同じ目で見たいのね、心が綺麗な証拠。
「そうね、言うおとした私が間違っていたわ。
ごめんね。私の中だけで留めておくわよ」
冬君は微笑んだ。
そして、彼を呼んだもう一つ呼んだ理由は・・・
「なんか、瑠花さんって人じゃ無いみたいですね」
笑顔で言われて私は冬君の方に振り向いた。
怒ってると勘違いした冬君は慌てた様子で
「あっ、いやそういうことじゃ無いですよ!
人じゃないってことはあの〜」
・・・この子だったら、良いかな。
「それはそうだよ〜だって人じゃ無いんだもん」
「・・・えっ」
私は冬君の前にミカエルと一緒のような翼を広げた。
「驚いた?私の本当の名前はルシファー。
ちなみに私の妹、天使って名前だけど本当の名前はミカエルって言うの」
冬君は言葉を失って、腰を抜かして、驚いている様子を想像していたが予想外のことだった。
驚いてはいたけど・・・何か違った。
「・・・驚かないの?」
そう訪ねたら、これも予想外の答えだった。
「それはもちろん驚いていますよ。
けど、初めて見たってことでもないと思うんですよ」
・・・まさかの答えにこっちの方が戸惑ってしまった。初めてじゃない?絶対におかしい、人が天使を見ることはまず無い。地上界で翼を広げることは特殊なこと以外は無い。
つまり・・・彼は見た事があるってこと。
口にはしないけど、彼を呼び出したもう一つの理由は、あの時皆の心を見透かした時に彼の心だけは見透す事ができなかった。
それで今回も心を見透すことにして呼び出したけど今のこの距離でも見透すができない。
天使固有の能力はすごいけど、人だけにしか能力は使えない。
これはどういう意味かと言うと、彼は、人ではない。
確定ではないけどね。
でも私たちに近い存在ってことだけはわかる。
でも、彼から天使の面影は見えない・・・もしかしたら・・・
「ルシファーさん、ルシファーさん!」
彼に大声で呼ばれて我に返った。
「あっ、ご、ごめんボーッとしていたわ」
とりあえず今は考えるのはやめよう、またにしようこの件。
「それにしても、さっきからこっちを見ている人、出てきなさい」
どうにも話していると視線を感じてしまう。誰かに見られているような。
こう言ったら、木からある人が出てきた。私たちもよく知っている人だけど。
出てきた人を見て冬君は驚いていた。
「あ、蒼!?なんでここにいるの?」
視線の正体は蒼だった。
「い、いや、帰ろうとしたけどちょっと迷っちゃって。
それで迷いながら歩いてたら、二人を見つけたんだけど・・・ルシファーさん」
「何?」
「冬に見せて良かったんですか?自分が天使だってことを」
「まあミカは怒るでしょうけど、この子だったらいいかな〜って」
「それはまぁ、冬は信用できる人だからいいけど」
蒼も冬君の事を信頼してるのね。
「あの〜話がついていけないんだけど」
冬君の事ほったらかしにしてた。
私と蒼は冬君に全てを教えた。
「つまり、天使さんはミカエルって言う天使で天星玉と言う天界に入る証明書みたいなものを蒼が壊しちゃって、治るまでこっちの世界にいる。
それで天使と言う事は他言してはならない。
そしてルシファーさんはお姉さんと喧嘩してこっちの世界に居候している。
そういうことですか?」
「ざっくり言ったらそんな感じね」
なんか読者の方この話の重要な所が分かってないのかなって思いまして、冬君に長々と説明させてもらいました。冬君ごめんね。
「俺も最初は混乱したけど、もう慣れた。
ちなみに渉もこのことは知ってるから渉にもこの話はしていいぞ」
「うん、多分すること無いと思うけど」
・・・あれ?そういえば
「ねえ蒼」
私の方を向いて
「どうしたんですか?」
「ミカと一緒じゃないの?」
この言葉にドキっとした感じになって私から目をそらした。
ふ〜ん、これはなんかあったね〜
どうしよっかな〜見ちゃおかな〜み〜ちゃお。
私は少し目を閉じて蒼の心の中を覗いた。
「言えない、絶対に言えない。
姉のルシファーには絶対に。ミカエルのやつが俺に急に、その、キスをされたことなんて・・・」
私は目を開けた。
へ〜ミカのやつけっこう頑張るじゃん。
まぁ本人に言ったら怒るかもしれないけど。
後で蒼にも言うけどそんなことで私は怒らないからね。ミカはミカ、どうするのも自分で考える子だから私は何も言わないわよ。
今は冬君もいるから何も言わないけどね〜
「さて、もう夜も遅いし、今日は帰ろっか。
ありがとね冬君。色々聞かせてもらって」
「いえ、僕も驚くことがいっぱいあって、何よりあなたの正体が天使だなんて驚愕の事をしれただけで良かったと思います」
「ふふ、ありがと」
こうして私と蒼は冬君と別れた。
あの子本当にいい子だけど・・・色々調べなきゃいけない事があるわね。
帰ってる途中、ミカとキスをしたことで蒼をからかっていました。
そして、帰ってきた家に入ると、蒼のお母さんの藍璃さんが来て
「蒼、ミカエルちゃんがご飯も食べずにもう寝ちゃったんだけど、何かあったの?」
藍璃さんも気になってるのね。あと、ミカも恥ずかしかったのね。
「まあ、ちょっとしたことだよ」
そう言って、二階の階段を登りながら
「俺も今日はもう寝るよ、疲れたからさ」
そう言って二階に上がっていった。
藍璃さんは頬に手を添え
「あの二人、どうしたのかしら?」
悩んでいるところを私が一言。
「青春ってやつですよ」
その言葉に藍璃さんは微笑んだ。
「そうね、そういうことね。
ルシファーちゃん、洗い物手伝ってくれる?」
「もちろん!よろこんで」
私は藍璃さんの手伝いをして、今日の幕を下ろした。
さて、こんなものかな。
いかがでした?私の語り手をすることはレアですよ。
ただ・・・冬君の事は気になるわね、私たちに近い存在か・・・少し調べないといけないわね。
ちなみに、まだありますよ。
ミカと私のベットで二人っきりの会話ですけど、ミカの気持ちがわかるかもね〜
じゃあねぇ〜
今は夜中の1時ぐらいかな。
全然寝付けない、蒼の唇の感触が今も残ってる。
添い寝状態でルシ姉も寝てて、ベットの下には蒼が布団を引いて寝ている。
眠れない夜、長い1日が終わったと思うと少し寂しかった。昨日のような事がまた今後あったら私・・・
「み〜か、起きてる?」
心の中で声が聞こえた。この声はルシ姉ね。
天使は声に出して話すこと以外に天使同士でテレパシーのような心と心で会話することが可能である。
「ルシ姉、どうしたの?」
私もテレパシーで返した。
「あなた今日、蒼にキスしたでしょ」
「な、なんでそれを知ってるのよ!」
「蒼の心覗いちゃった」
あぁ、ルシ姉の能力ね。
「もう、プライバシーも何も無いわね」
「ふふ、でもミカにしたら頑張ったんじゃない?」
「・・・そうかもしれない。蒼、なんか言ってなかった?」
「別に何も言ってないよ、今のまま接したほうがいいよ」
「でも、もし嫌われてたら・・・」
「話さないほうが嫌われると思うよ、大丈夫、蒼はそういう子じゃないでしょ」
「・・・そうね・・・べ、別に蒼に嫌われても私には関係ない話だからね!」
「そうね、頑張って。おやすみ〜」
・・・テレパシーを終了した。
そうね、私が頑張ったら蒼だって私の事を・・・頑張ろ。
ふ〜やっと終わった〜
皆、お疲れ様。
今回はそれなりに長かったからね。
みんながみんなしっかり言えたから出来たことだよ〜
しっかりやったら出来るってことね。
ま、まぁこれで終わりだけど、べ、別に見て欲しいわけじゃ無いけど、その、感想とかあったら言ってね、それなりに嬉しいから・・・
読者のみなさん、読んでくれてありがとうございます!
みんな〜ありがとうね〜
出来たかどうかはわからないけど、皆努力はしましたよ。
さて、最後は鈴音がしめます。
次はこの夏祭りのあとの話です。
皆のその後はどんな感じなんでしょう。
それでは、また会いましょう。さようなら。
ま、また、見に来なさいよ!!