喫茶店前の二人
こんにちは、山吹 鈴音です。
私の話のときはちょっと重要な話が多かった気がしますけど今回は普通の回です。
あんまり普通じゃないかもしれませんが私にとっては普通です。普通、かな・・・
それはもう読者の皆様の判断におまかせします。
では、お楽しみください。
「やっぱり俺は一人の方が気楽でいい」
「そ、そんな・・・」
「悪いな、鈴音」
「待って、お願い!行かないで渉君!」
私は目を覚まして今起きたことを理解した。
「夢・・・良かった」
さっきのは夢。現実には起こってないこと。
渉君がそんなこと言うはず無いよね・・・無いって思いたい。
だって・・・
『鈴音、俺はお前が好きだ!』
あのときの言葉を思い出して枕に顔を埋めて恥ずかしさを分散させた。絶対に顔も赤くなってる・・・一人で何をやってるんだ私は。
とりあえず起きよう。いつも通り六時半ぐらいに起きて、顔を洗って、いつもの食パンを食べて七時半ぐらいまで勉強かな。
前に渉君が教えてくれた勉強方法がわかりやすくて効率もいい。こんな勉強法があったなんてなんで今まで気がつかなかったのか不思議なくらいよ。
でもそこをしっかりと的確に教えてくれる、それに優しくて顔を見るたびにイケメンって思える・・・リア充ってこういうことなのかな?
あんまり最近の言葉はわからないけど、リア充ぐらいはわかる。最近は意味のわからない言葉があるけど、マジ卍とか草が生えるとか。多分私は使わないけどね。
もうでも時間が来て出ていかないと。勉強をしてるとどうしても早く時間が過ぎてしまう。
私は支度を済まして家を出て行った。
それにしてもあの夢・・・なんで今になって見たんだろう。渉君と付き合ってからあんな夢一度も見たことないのに。それにあの夢を見てからどうもモヤモヤしている。何かが変わるんじゃないかなって。
「・・・鈴」
あれは一応悪夢の一つになるのかな?見た瞬間はすごい嫌な気待ちになったし。
「・・・鈴音」
でもリアル過ぎて悪夢じゃなくて本当に起こることなのかな・・・それは考えちゃダメ。今の幸せをしっかりと噛み締めて行かないと。それでも
「鈴音!」
後ろから私を呼ぶ声がした。呼ばれていたことに私は気づいていなかった。
振り返ると渉君が私を呼んでいた。
「わ、渉君」
夢のこともあって少し動揺している。実際に顔を見ると何故か緊張してしまう。
「呼んでることにも気づかないなんて、一体何を考えていたんだ?」
流石に不自然を感じてる。確かに近くで何回も呼んでるのに気づかない方がおかしい。
「べ、別に。ただ次のテストの範囲はどれくらいか考えてただけ」
本当のことは言えないからなんとか誤魔化さないと。
「ふ〜ん、本当に勉強のことばかり考えてるんだな」
「良い点数を取ったら、その分嬉しいから」
「たまには息抜きとかしろよ」
「わかってるわよ」
もちろん渉君はいつも通り。私の方がおかしくなってるのね。
とりあえずその後はこの状態を保ちながらバレずに学校に向かった。
学校に着いた。ただ渉君と歩いただけなのに疲れた・・・
教室に入り椅子に座ってぐったりとしてると
「鈴音ちゃんおはよ。どうしたの?」
佐奈があまりこんな姿を見せない私を心配している。
別に佐奈にならこのことを話しても問題は無いかな。渉君とは席も離れてるし、寝てるから聞こえないはずだし。
「おはよ。実は・・・」
私は佐奈に今回の夢の話をしてみた。
「夢で渉君が別れ話?」
「そう、夢だからあんまり気にしないのはわかるけど、どうしても不安で仕方ないの」
「う〜ん、それって初めて見るの?」
「それはまぁそうだけど、この先また見るとなると気になって眠れなくなる可能性もあるから」
私が佐奈に相談するって珍しいって自分でも思ってる。普段は逆だけど。
かなり真剣に考えてくれている佐奈は突然
「わかった!」
手を一度叩いて何か閃いたようだ。
「鈴音ちゃんはまだ渉君と付き合って不安しか感じてないからじゃない?」
「不安しか?」
「あんまり大きな声では言えないけど渉君ってすっごくモテるでしょ?」
「う、うん・・・この前も三人の女の子に告白されたらしいけど」
「それで自分は渉君とは釣り合ってないって思ってる?」
「・・・それは確かに少し思ってる」
佐奈の言っていることは全て当てはまっている。渉君の彼女って肩書きがどうしても自分を苦しめているように感じる。
告白されて付き合ったときは幸せを感じていたけど・・・あのときの感情は今は蘇らない。
「それに、私から見てるとなんだか付き合う前と付き合った後の二人ってあんまり変わらないと思うよ」
この言葉が一番ショックだった。
「それって理由があるのよね?」
動揺とか隠すのは得意だけど完全に震えた声だった。
「渉君が鈴音ちゃんに勉強を教えたり話したりするのはよく見かけるけどそれは付き合う前からしてたことだから。付き合った後もそれを繰り返して見ているから、あんまり付き合っている感じには見れないよ」
無意識だった。私はそれで幸せを感じていたなんて・・・
「だから夢を見たんじゃないかな?」
佐奈からの言葉でようやくわかった。私は付き合ってるって自覚が無いんだ。まだ渉君を友達として見ている自分がいるんだ。
「・・・佐奈、私どうしたら」
「ここは渉君に近づくことが肝心だよ!」
「近づくって、距離を?」
「まだ二人は心の距離が微妙に空いてると思うから、その距離を近づくためにも!
今日渉君を放課後誘って、一緒に何か食べに行く!これでバッチリだよ!」
かなり自信を持ったように佐奈は言ってる。
かなり無茶なことだけど距離を縮めるのにもまずはそこからやっていった方がいいかもしれないわね。
これ先の未来のためにも。
「ありがと佐奈。私、やってみるわよ」
「うん!応援してるよ!」
「これなら佐奈に彼氏が出来るのも時間の問題かもね」
「それは言わないでよ!」
朝のチャイムが鳴りスイッチを入れ替えて勉強に集中することに。
戦いは放課後にする。
今日の授業はすごく早くに終わった気がする。集中と何を言うかを考えたらいつの間にか終わっていた。
渉君の席の方を見ると帰る準備をしながら蒼君と話している。話の内容はわからないけど蒼君が渉君をしつこく誘ってるようにも見える。
遊びに誘ってるんだったらまずいわね。こっちも話に行かないと。
教科書とか鞄に入れる前に少し小走りで渉君に向かってドキドキしながら
「渉君今から時間って空いてる?」
「空いてる」
「えっ!」
即答過ぎて私が焦ってしまう。全然私のプランと違っていた。最初は渋りながら行くことになってって感じだったのに・・・
「俺そっちのけかよ」
蒼君は不満はあるらしいけど。
「あたりまえだろ。お前と鈴音どっちと遊ぶって言ったら鈴音だろ。お前でもそうするだろ」
「まぁ、それはそうだけど」
「諦めろ。お前には一生無理な話だ」
「黙ってろ!」
「いっその事メールの友達全員に告ってみたらどうだ?誰かしら反応するだろ」
「どこの病人だよ!」
「あ、お前女友達のメル友いないか」
「相手ぐらいいるわ!」
二人の会話を聞いてると、どうしてもクスって笑えてくる。漫才してるみたい。
「わかったよ。今日は大人しく帰るよ。
おーい冬、今から」
「帰るんじゃねえのかよ。
さてあいつの事はどうでもいいとして、鈴音どこ行くのか決まってるのか?」
急に話を振られたから一瞬戸惑ったけど目的地はもう決まっている。
「うん。駅前に喫茶店が出来たの。そこで大丈夫?」
「ああ、なら早く行こうぜ」
ここからは完全に二人きり。
私と渉君は一緒に並んで喫茶店に向かって歩いているけど・・・会話が無い。
いや、会話自体はあるけど長続きしない。この場合の想像はしていなかった。
あんなに考える時間があったのに、いざとなったら大体思い出せなくて忘れてる。学年二位が笑わせてくれるわね。果たして次のテストでキープ出来るのか・・・
って今はそれどころじゃない!朝はある程度話せてたのになんで今になって話せないのよ。トーク力ももっと勉強しないといけない。
「鈴音、ここか?」
「え、あぁ、ここよ」
色々と考えてたらもう着いてるし、どうしよ、ここに来るのも初めてだし、地味に渉君との初デートだし、頭がフルに動かない・・・
「鈴音、緊張してるのか?」
私の気持ちを察したように聞いてきた。
「うん、少しね」
「平常心でいい。もう俺達は付き合ってるんだ。周りの目とかも気にしないでいいだろ」
「そうだけど」
「それに、朝から今日はどうも様子がおかしかっただろ?何か俺に言いたいことでもあるんじゃないか?」
渉君は真っ直ぐな目で私を見ている。何から何まで全部わかっていた、私の変化に一瞬で気がついた。
「で、でもこれを言ったら・・・」
「俺が信じられないか?大丈夫だ、今の俺は何があっても鈴音を見捨てることが出来ないんだ」
ーーー!!!か、かっこいい。こんな一言言われたら言うしか無いよ。
「・・・うん、実はね、今日夢で渉君が私に別れ話を言ってきたの。佐奈は私の不安でこんな夢を見たって言うんだけど、本当に不安ではあったの。このまま続くのかどうか。だから今日こうやって誘ったの。一歩でも近づきたいって」
言っちゃった・・・でも後悔なんて、
すると、渉君は私のおでこに指を押して
「ばーか。夢は忘れるためにあるもの。その夢が忘れられないんだったら、鈴音の心には俺がいるってことだ。
だからまぁ、夢でそんなことを言わないような男になってやるよ」
渉君は指を離して優しく微笑みを見せてくれた。
やばいキュンキュンしてる。身体が喜びを感じている。あんなセリフを言われたら・・・恥ずかしいけど、恋をしてるって実感出来る。
「じゃあ、一歩近づいたりしても」
「一歩どころか百歩ぐらい近づいてるだろ、俺達は」
不安とか感じていた自分が馬鹿だった。こんな優しくてイケメンな人を私は・・・
「ごめんね渉君。変なことで心配してくれて」
「別にいいって」
でもまだドキドキしてる、緊張もあったけど何より渉君のセリフが全部かっこよかったし私に刺さりすぎて震えているの。
この気持ちを落ち着かせるには・・・もうあれしかない。
私は思い切って渉君に何も言わずに目を閉じて唇を結ばした。
目を閉じているから何が起こってるのかはわからないけど、渉君がどんどん近づいてくるのがわかる。
あのときはみんながいて出来なかったけど今は違う。私の初めてを渉君に捧げるよ。
私はそれで、幸せになるんだから・・・
「鈴音、周りをよく見ろ」
渉君に話しかけられて目を開けて周りをよく見ると、通りすがりの人とか喫茶店に入る人とかが私達を見ていた。それに喫茶店の店員さんもいるし
「お客様、当店の玄関でそのような行為はおやめください」
女の店員さんに苦笑いで言われた。
・・・あまりにも恥ずかしすぎる、渉君の顔も見れない。
私は手で顔を隠して悲鳴をあげながらその場から走った。
もう、あんな夢だけはごめん。
後から渉君に励ましてもらったけどそれはまた別の話。
これにて終了でございます。
結局あれはまだ後回しになりますけど、これで渉君との信頼も上がったと思います。
それにまた色々と佐奈に教えられたから何か佐奈にごちそうしたいと思います。
次の人は・・・後二人だから想像出来ると思います。
では、さよなら。




