ラスト十五秒
お久しぶりです皆さん。
もう私のことを覚えていない人がいる・・・絶対にいるけど、今回語り手をやらさせていただきます。
私のことを知っていますか?
私はメインヒロインの白石 佐奈の妹の白石 紀乃と、申します。
前回の登場から一年以上も経ってようやく語り手まで来ました。そもそも最後に登場したのは一年前以上ですから完全にモブみたいになっていましたが。
登場する回数が少なすぎる・・・作者さんどうなってるの?
文句を言っても仕方ない、やりますか。
言っても今回は私の身の回りのことを言うだけですけどね。
ではまぁ、どうぞ。
ここは一年生の教室、夏休みも終わってほぼ全員が学校に慣れたころ、一年の中ではある話題でいっぱいになっていた。
ちなみに私もその話題に取りつかれてる人なんだけど。
その話題と言うのは・・・
私は自分の机に突っ伏して顔を埋めていた。
すると私の前の席から
「いい加減元気出したら?」
慰めの言葉を言ってきてくれた。
彼女は私の友達の桜井志穂。
「だってさー、渉先輩に彼女が出来たなんて・・・」
全生徒の憧れの渉先輩に最近彼女が出来たらしく、あまりにショッキングの事実に女子生徒は絶望したり涙したり二日休んだりと、学校の中では社会現象並の衝撃だった。
私は休んだり泣くことは無かったけどショックではある。
まぁ最近は会ったりすることも無かったからちょっと冷め気味、になってる部分もあるけど。
それでもなぁ。
「まぁ渉さん色んな人にモテてたから逆に良かったんじゃないの?」
「どういうことよ?」
「言ってたじゃない、付き合ったのが鈴音さんだから良かったって」
お姉ちゃんの親友の鈴音ちゃんと付き合ったのは確かに良かったよ。鈴音ちゃんなら渉先輩を任せられるし、納得できるよ。
「それに最近は空君ばかり見てるでしょ?」
空君?
「なんで私が空君を見なきゃいけないのよ」
「気づいてないの?」
あ、空君って知っていますか?空君も私と一緒で不遇の扱いを受けている一人です。
花梨先輩の弟の空君です。
多分あっちは全然気にしてないと思いますけど。
「空君って顔はイケメンだけど結構接しずらいじゃん。何も喋らないし感情ほとんど出さないし」
空君の特徴は言葉を何も喋らず、基本的に無表情なところである。
コミュニケーションは頷くか、行動で示す。
ルックスのせいもあるけど行動力があるから友達も作らずとも多い。本人はそれをどう思ってるのかはわからないけど。
私は結構空君と話す機会が多い。話すって言っても私が一方的に話していからだけど。
聞いてくれているのかは表情とか声とか出さないからわからない・・・でも愚痴とか色々聞いてもらってるから良い人には違いない。
「私は単に友達として話しているだけだから。
気があるわけじゃ無いから」
「そう、ならいいけど」
この際だから渉先輩のことは忘れて次の人探そーと。渉先輩レベルの人は全然いないと思うけど。
放課後になった。
「紀乃、今日って暇?」
志穂が誘ってきたけど
「今から部活なの」
「そっか、じゃあまた明日ね」
「うん、ごめんね」
この高校のバスケ部に所属している私。
ここは良いところまでは行くが準決勝や決勝でだいたい負けてしまうと言う、中堅バスケ部である。今年の夏の大会は準決勝までだった。もう少しで新人戦があるから張り切っている。負の連鎖を止めないといけない、この新人戦で優勝してチームに勢い付けないと。
体育館に行きユニフォームに着替えシューズを履き練習を始めた。
今日はシュートの練習。私はパス回しとかドリブルは上手いって言われるけどシュートの成功率がなかなか安定しない。
得点のためにもちろん入れるけど、十回シュートして七回入れば良い方。普段では五回ぐらいしか入らない。
これを安定するために最近はシュートの練習しかしてないけど、どうも結果が出ない。
シュートのやり方があるのか、私のシュートが間違っているのか、先輩とかにも相談してみたけど明確な答えは得られないし。自分には自分のやり方があるって言われたけどそのやり方がわからない。
誰かしっかりと教えてくれる人いないかな・・・
「おぉー」
向こうサイド、男子バスケ部が使っている。
バスケのコートで練習しているけど半分は女子が使ってて半分は男子が使っている。
その男子サイドから歓声が聞こえてきた。
「何?盛り上がってるけど」
他の部員に聞いてみると
「なんかシュート三十回連続で決めたらしいよ」
三十回!?人間が出来るのそれ?
誰がそんなに、見に行ってみるとそこには
「空君?」
シュートを連続で入れていたのは空君だった。
言い忘れていたけど空君も同じバスケ部。男子の方はあんまり知らないけど空君のバスケはプロも注目しているって聞いたことある。
確かこの高校もバスケの推薦で入ったらしいし、運動神経も抜群。すでに次のキャプテンも筆頭。
バスケも出来て顔も良い、友達も多い訳ね。
「一年生の桃谷君ね。上手いわね〜」
「綾芽先輩」
女子バスケ部キャプテンの赤井綾芽先輩。
先輩には本当にお世話になって、今の私のプレーが出来るのも先輩のおかげでもある。
「桃谷君って紀乃と一緒のクラスでしょ?バスケの話とかしないの?」
「いやほとんど喋らないですから話もあんまり出来ないんですよ」
「ふ〜ん無愛想なのね。でもあの正確なシュートを見てたら勉強になるんじゃない?」
空君のシュートを?でも男子だから全然違う気が
「紀乃、今日の練習は空君の練習を見ること。
今日の部活中はボール触っちゃダメだからね」
え!!
綾芽先輩は持っていた私のボールをひったくり、私抜きで練習を再開した。
見るって言っても何を見ればいいのよ。
見てるだけで練習になるの?
コートを外れて男子サイドに行き、空君のプレイを見ていた。
・・・すごい、動きに無駄がない。来る人、来る人をまるで動きが読めているみたいに抜いていってる。
シュートも、スリーポイントシュートばかり決めてる。(本来シュートを決めると2ポイントだが遠くから決めると3ポイント入る)
うずうずしている。あのプレイを真似してみたいって体が言ってる。ボールを触りたい。
またシュートを決める空君。シュートを決めた直後私と目が合った。
私が見てるの気づいたのかな?
「おい空!どうした?」
先輩に呼ばれてまた急いで練習を開始した。今の空君、何か私に訴えていたのかな?気のせいだと思うけど・・・
その後もずっと空君を見ていた・・・けど、見ているだけであって実際は絶対にあんなプレイ出来ない。口だけならなんとでも言える、私の実力では・・・
「どう、桃谷君のプレイは?勉強になったでしょ。今日はもう終わり、帰るわよ」
綾芽先輩が私に部活の終了を知らせたけど、私は
「キャプテン、今日は居残ります。空君のプレイを、覚えている内に真似したいですから」
一人で練習する。チームのために、私のために。
「そう、鍵を渡しておくからしっかり鍵をかけて帰るのよ」
居残ることを察していたようで鍵を渡してくれた。
こうなることを、最初からわかってたのね。
やっぱりキャプテンになる器を持ってるってことね。
みんなが帰った後、一人、バスケの練習を始めた。
空君のプレイしてるイメージを思い出して私は私のプレイをする。完全に真似をすることなんて出来ない。だからこそ自分なりのやり方でする。それが上手くなる近道だから。
イメージを元にシュートをしてみると確かに入る回数は増えた。でもまだ安定したとは言えない。今日出来ても明日出来ないなんてことはよくある。
だから体を覚えさせる。このシュートを頭じゃなくて体が覚えたら自然に出来るはず。
一人だからボールをつく音でもすごく響く。さすがにちょっと寂しい。
それにこのシュートはいつもと違うから慣れてない、足がどうしても痛くなる。
それでも頑張らないと上達なんてしない・・・
「きゃ!」
連続でシュートをやっていたせいか足をくじいてしまった。そこまで深くは無いとは思うけど痛い。
でもこれぐらいの怪我ならなんとかなる。早く体を覚えさせないと。
シュートを決めようとしたが足に力が入らずボールも入らず、ゴールに弾かれて飛んでいった。
あんまり歩かせないでよと、思ったとき飛んでいったボールが帰ってきた。
慌ててボールをキャッチして、飛んできた方を見ると、帰ったはずの空君がいた。
私は驚いて一瞬声も出なかった。
空君はどんどんこっちに近づいてくる。ずっと見てたからもしかして怒ってるのかな?集中を乱したから・・・
怖くなって目を閉じてしまった。何をされるかわからなかったから。
・・・何もしてこない?恐る恐る目を開けると、冷却スプレーと包帯を持った空君が不思議そうな顔で私を見ていた。
「それって、私の足のために?」
空君は頷きコート外に誘導した。
私は座り捻挫した足を見せるとスプレーを振って足に吹いた。
染みる・・・
「怪我の扱い、慣れてるんだ。自分で怪我をした時もこんな感じなの?」
包帯を巻きながら頷く空君に私はさらに話しかけた。
「それにしても空君バスケ本当に上手いね。私見ててなんだか感動しちゃった、まるでプロ選手を見てるみたいで。
いつも練習は体育館なの?それとも自分だけの特別な場所とかあるの?あんな動き出来るってことは相当練習しないと無理だから一人でもずっと練習してのよね。羨ましいなぁ、私も空君みたいなプレイ出来たら注目を浴びて有名になることできるのになぁ」
「・・・・・」
・・・ずっと私独り言を話してるみたいになってる。本当に何も喋らないし、無表情なのね。何か昔にあったのかな。
すると空君は足に包帯を巻き終えると、ボールを持ってコートに行った。
来て、と私に手で誘い私もコートに入った。歩いて見たらすっごい楽で痛みが嘘のように消えていた。あれだけでこんなにも効果があるんだ・・・すごい。
空君は私にボールを渡して、ゴールポストに指を指した。
「シュートすればいいの?」
私のシュートを見たいようで頷いた。
何が見たいんだろうと思いながら何気なくシュートをすると案の定入らなかった。
「あはは、私シュート苦手なんだ」
作った笑いで悔しさをごまかすと、外して転がっていたボールを拾った空君が自分に指を向けた。
「自分のシュートを見ていろ?」
こう解釈すると当たっていたようで頷き、ボールを地面にバウンドさせてシュートを放った。綺麗なフォームで一発で入れた。
間近で見たけど明らかに遠くで見ていたときよりも全然違う。何かこう、うまく表現出来ないけど、リラックスしてるって言ったらいいのかな?絶対に入れてやるって欲があんまり感じないんだけど。そっちの方が入るの?
「流石ね。私じゃあんなの・・・」
そう言いかけたとき、空君は四つ折りの紙を私に渡した。
「なにこれ?」
その紙を広げてみると、シュートのコツや理想的なフォームの作り方が手書きで書いてあった。
「まさか、これを書いて渡しに来てくれたの?」
空君は頷くと、用が終わったらしく体育館から出ていこうと歩いていった。
こんなことしても空君には意味が無いのに、それに知ってたんだ、私がここで練習してるの。・・・優しいのね。
どうせ返事は返ってこないと思うけど
「ありがとう!これで頑張るね!!」
体育館に響くぐらいの声で言うと空君は右手を上げて手を振った。
顔はわからなかったけど、笑ってたらいいな。
よし!この紙を見て、練習ね!!
詳しく書かれてあったおかげでなんだか前よりも上手くなった・・・気がする。
後日、土曜日。
新人戦が行われ、練習の成果やチームワークのおかげで見事に決勝戦まで進んだ。
そして試合も終盤に差し掛かり、時間も十五秒弱。点数は一点差で私達が負けてる。
タイムアウトを取っているため今は時間が止まっており私達は作戦会議をしていた。
ここからは私達の真剣な話になります。
「残り十五秒で一本ゴールを決めないと負ける。どうするのキャプテン?」
「どうするも何も絶対に決めるしか無いわよ」
「どういう感じでゴールに行くつもりですか?」
「時間も無いし、確実にゴールに近づける方法で行く。パスでどんどん近づくのが最適ね」
「でもそれじゃあ時間が」
「無理して一人でドリブルで行ってボールを取られた時点で即ゲームオーバーよ。それに長いパスもダメ、こまめに慎重にパスを回す。
時間はかかるからチャンスは一回だけ。
でもチャンスがあるだけありがたいと思った方がいいわよ」
「オッケー、あとは最後のシュートを誰がやるかね」
「ここはキャプテンがシュートを」
「いえ、綾芽はパス回しに行った方がいい。
パスは綾芽の得意分野、私達の貴重な力。それにみんなに指示を出すためにもパスに回った方がいいと思う」
「じゃあ誰がシュートを・・・」
この超重大場面、シュート一本でも外してしまうとほぼ負けが確定する。
・・・だからこそ、練習した意味を見せないと!
私は手を挙げて
「私にやらせてください!」
みんなは驚いて一人の先輩が
「紀乃、焦る気持ちもわかるけど状況を見てみなさい。このプレッシャーに勝てるの?」
「わかっています。この新人戦がどれだけ大切な大会で、このシュートで勝敗が決してしまうのも。でも、誰かがやらないといけないのなら私がやります!今まで努力してきたこと今ここでやりたいです!」
「でもだからって・・・」
「紀乃」
先輩の会話の途中で綾芽先輩が
「自信はあるの、あのゴールに入れる自信は?」
綾芽先輩の目は真剣そのもの。生半可な気持ちでは出来ない重大なこと。
それでも私はやってみたい、このチームで勝ちたい!
「必ず入れてみせます」
私も真剣な目で綾芽先輩と目を合わせた。
五秒ぐらいだったと思うけど私は一分ぐらい見つめあった気がした。
私の気持ちに答えるように綾芽先輩は
「よし、決まりね。みんな、紀乃を全力でサポートするのよ!」
最後のシュートをまかされることになった。
「あ、綾芽!本当にいいの?」
「誰かを指名してやるよりも、自分から名乗りあげる方がよっぽど自信があるってことだし、それに紀乃なら必ずやってくれる。私はそう信じたい」
「・・・綾芽がそこまで言うなら私も信じるわ」
「そうこなくちゃ」
私達は円陣を組み綾芽先輩が
「最後の十五秒で試合が終わる。でも何があっても後悔はしないように!
絶対勝つぞ!」
「おぉ!!」
ついにラスト十五秒が始まる。
綾芽先輩がボールを持ち、時間が進み出した。
私は自分がシュートを一番しやすい位置まで近づいた。あまり近づきすぎるとマークされるから。
その間綾芽先輩やみんなは短く早いパス回しでボールを取られずにちゃくちゃくと前に、ゴールに近づいている。
残り時間は八秒。シュートをするチャンスは一回だけ。
心を落ち着かせるのよ。空君に教わった通りにすれば必ず!
私は一気にシュートをする位置まで走った。
そして綾芽先輩が
「紀乃!」
私にボールを渡し、掴んだと同時にシュートを放った。
みんなの想いを込めて・・・結果は。
「紀乃!!やったわね!」
最後、私が放ったシュートは見事決まり、チームを勝利に導いた。
正直入らないと思っていたけどまさか入るなんて、自分でも驚いている。
「あのプレッシャーの中よく入れたわね」
「居残り練習してたおかげね。成果が出たんだと思うよ」
気持ちいい。悪くない感覚ね、こんなに褒められるのは。
「でもボールを回して来てくれたのはみんなのおかげ。みんなのパスが無かったらシュートすら出来てないから」
私一人の力じゃどうすることも出来なかった。チームの団結力があったからこその勝利ね。
でも、本当に良かった。新チームになって初めての大会だったからどうなるかと思ったけど、想像以上に団結力が高くて強い。
これは、もしかしたら今年は行けるかもしれない!
「今回のMVPの紀乃にある人を呼んでるわよ」
え、人?
「おーい!桃谷く〜ん!」
綾芽先輩が観客席に手を振ると、空君が立ち上がった。
「空君!来てたの!?」
「私が呼んでおいたの。紀乃の師匠でしょ?」
「そんな師弟関係じゃないですけど・・・」
私は大声で空君に
「空君!私、空君に貰ったアドバイスでここまで出来た!本当にありがとうね!!」
お世辞じゃ無しに本当に今の気持ちを伝えた。
こんなに言っても何も返ってこないのはちょっと残念だけど・・・
「・・・別に」
小さな声だったけど確かに聞こえた。それになんかすごく可愛い声で、空君?
「何か言った?」
確かめてみると、空君は顔が赤くなってそのまま振り返って帰っていった。
「紀乃、桃谷君を怒らせたんじゃないの?」
綾芽先輩が心配そうに聞いてきたけど、今のでわかった。
「違いますよ。空君は単に、恥ずかしがり屋なだけですから」
なんだか、空君って可愛いわね。
これにて終了です。
久しぶりの出演だったからなんだか疲れちゃった。
まぁそれなりにこれからも出番はあると思いますので、覚えていてください。
次の人は確か・・・忘れちゃった。
別にいっか、楽しみにしていてください!
それじゃあバイバイ。




