渉の中学時代(後編)
はい、では今回は渉の過去話の後編です。
語り手は風間 蒼ですよろしくお願いします。
大部分は前編の話を見ればわかると思うのでそちらを参考してもらったら幸いです。なんならURLを・・・ここからじゃ飛べないか。
それではどうぞ。
俺達は教室に戻って昔の渉を話した。
「中学の時の渉は知ってるけどその前は全部渉に聞いた話だから俺も全部はわからない。けどなるべく詳しく話つもりだから」
この事は全員うなずいた。
「まずは琴海ちゃんと渉についてだけど、二人は小学生のときに知り合ったらしいんだ。渉は別に友達が欲しいわけじゃないから友達作りは積極的にはやっては無いらしい」
すると冬が
「そもそもやってたの?」
「渉が言ったから多分・・・やってない可能性のほうが高いけど」
しかも結構嫌々言ってたからテキトーに言っただけかもしれない。
「そんな中で琴海ちゃんが渉の前立っていきなり
『ウチと友達になりましょ!』
って言ったらしい。最初は変なやつって思ったらしいけど断る理由も無かったからそのまま友達になって、そこから毎日渉に話しかけてきたらしい」
ここで佐奈さんも口を開けて
「琴海ちゃんの周りには絶対に誰かといるか渉君といる。クラスでも大人気の子だし顔もすっごく可愛くてずっとニコニコして愛嬌も抜群だったから渉君結構男子に嫉妬されてたし、逆に琴海ちゃんも渉君とずっといるから女の子に怒られていたこともあったのよ」
怒られたってことは、あいつ小学生のときも女子からチヤホヤされてたってことだよな。昔も今もあんまり変わらないってことかよ、なんなの?マジで。顔が良いだけでこんなにも有利になるのかよ。
さらに渉の劣等感を感じながらも話を続けた。
「それで渉も毎日話しかけてくるから話していたら、いつの間にか心を許せる相手になっていたってこと」
渉も別に小学生のとき琴海ちゃんとだけ話したりしてたわけじゃないけど一番の友だちが琴海ちゃんってことかな。渉が孤独になることは多分これからも無いと思う。あいつは周りから人を集める、いつの間にか友達になってることが多いから将来もあんな感じになると思うけどな。本人は少人数の方が良いって言ってたけど。
「それで二人は一緒の中学に進学して渉の無二の親友になった。そもそも俺と渉が初めて話したのは・・・」
風間 蒼、中学一年生、小学生から上がり友達が別々になったから一から友達を作らないといけないけど、かなりキツい。別に俺は人見知りとかはしないから話したりはしてるけど友達って言う友達がまだいない。結構バラバラにクラスの人に喋っているけどあんまり長続きしない・・・このままじゃ孤独で中学を過ごしてしまう!
やっぱりなんか最近の話題を知った方がいいのか・・・最近の流行りとか全く知らないから帰りに雑誌とか買ってみるか。
今日の授業が終わってコンビニに寄って帰ろう。帰る準備を済まして教室を出て下駄箱がある曲がり角を曲がったときだった。
「うわわわ!危ない!」
「えっ?」
「ドンッ!」
真っ直ぐに走ってくる女の子に気付かずにぶつかってしまった。
ぶつかった女の子はすぐに立ち上がって
「ご、ごめんね!出ちゃうよー!」
また走っていった。
「なんなんだ?」
思わず俺は口ずさんでしまった。あんなに急ぐ理由ってあるか?それにあの子俺と同じクラスの・・・名前が思い出せない。
明日確認すればいいと思って俺も立ち上がって帰ろうとすると、女の子が走ってきた方向からポッケに手を入れて歩いてくる男が来た。
男は俺に
「悪かったな、俺の友達が」
さっきの子の友達?それにクラスの変わった名字の人だよな。なんて呼ぶんだあれ?
「確か同じクラスの、えっと・・・」
ダメだ、呼び方がわからない。結構失礼じゃ
「林翠 渉」
え、りんすい?
「俺の名前だ」
あれ林翠って言うんだ、初めて知った。でも絶対また読めなくなるから
「じゃあ渉だな、林翠って呼びづらいし」
「呼びづらいか?」
俺と渉が話していると
「ふー、スッキリした。あれ、渉に・・・あ!さっきはごめんなさい!」
後ろからさっき俺にぶつかった女の子が帰ってきて謝ってきた。
俺は振り返って
「別にいいよ謝らなくて、それよりなんであんなに急いでいたの?」
「普通にトイレだよ、もう少しで漏れちゃうところだったよ」
それは急がないと危ないな。
「確か同じクラスのえーと、風間 蒼君だよね?」
俺を知ってるのに驚いて
「え、俺を知ってるの!?」
「え、当たったの!?クラスの男の人をテキトーに言っただけだけど」
何気にそれはショックだな・・・何も言えないんだけど。
「ウチは琴海って言うんだ、気軽に琴ちゃんって呼んでいいよ」
初対面の人にいきなりあだ名では呼べないなぁ。
「いやだったら琴海ちゃんでいい?」
「なんでもいいよー」
俺との話を終えて渉に近づき
「渉って蒼君と知り合いだったの?」
「さっき知り合った」
「へ〜なんか仲良さそうだった」
「逆に初めてなのに仲悪そうなのもおかしいだろ」
「それもそうだね、じゃあ帰ろっか」
二人は幼馴染なのかな?めっちゃ仲良いんだろうな。俺もあんな存在がいたらなぁ。
「さぁさぁ蒼君も帰ろうよ」
突然のことに俺は戸惑い
「お、俺も?」
「いいよね、渉?」
「どっちでもいい」
「じゃあ決定!渉とウチはもう蒼君の友達!これからよろしくね」
その一言が俺を救ってくれた。不安になっていた気持ちもどこかに行った気がする。
友達か・・・やっぱりいいもんだな。
「ああ、よろしく!」
「そこから俺と渉と琴海ちゃんの付き合いが始まった。琴海ちゃんが俺にぶつかっていなかったら今の俺と渉の関係はなってないだろうな」
とりあえず俺達の出会ったことを説明すると
佐奈さんが
「なんだかすごいロマンチックな出会い方だね。すごい運命を感じちゃうよ」
いや琴海ちゃんは単にトイレに急いでいただけだからロマンチックでは無いと思うけど。
「そういえばこんなことあったっけ」
昔の話をしていたらあることを思い出した。
「俺達が帰り道に・・・」
俺と渉と琴海ちゃんはほぼ毎日一緒に帰っていった。まぁたまたま皆帰る道が一緒だったから帰っているだけだけど。
そんな俺達は二年生に上がってまた全員同じクラスになった。
俺と琴海ちゃんは喜んでいたけど渉は別にって感じだったけど実際あいつも嬉しかったはずだろう。
そんなある日の帰り道のことだった。
俺と渉と琴海ちゃんはたわいのない会話をしながら帰っていると琴海ちゃんが突然大声で指を指して
「渉!蒼君!あそこに!」
指を指した方向を見るとそこにいたのは
「ね、猫?」
高い木に登って降りれなくなっている猫がいた。
「渉!助けてあげようよ!あのままだったら可哀想だよ!」
渉の身体を揺らして助けを求めたが
「ほっとけよ、登ったやつが悪いんだろ。俺達が助ける必要もないだろ」
「お前冷たすぎるだろ」
「正論だろ」
正論かもしれないけどそれでもなぁ。
「もぅ!渉!」
怒った顔を渉に見せるがなんの効果も無かったらしく、次は俺に
「蒼君!・・・お願いできる?」
琴海ちゃんが俺に上目遣いで見てきた。やっぱり琴海ちゃんって可愛いんだよな。そういえばこの前二人のイケメンから同じ日に告白されたって言ってたな。
俺の周りって美男美女多すぎだろ。
上目遣いの琴海ちゃんに負けて
「よし!俺にまかせて!」
俺は鞄を下ろして軽快に木を登った。登るのはいいけどこの木結構高いぞ。俺が思ってるのより意外に高い・・・これ結構キツくなってきた。それによく考えたら俺が近づいたら猫逃げるんじゃないか?完全に野生だから人間の耐性なんかついてないだろ。どうやって近づけばいいんだ・・・やばい疲れてきた。
俺はもう少しで猫に手が届くぐらいで木の枝に捕まり休もうとしたときに
「蒼君!猫ちゃんが!」
琴海ちゃんが猫のことを気にかけ猫を見るとそこには猫がいなかった。
「どこに・・・」
キョロキョロと見渡すと猫は木からジャンプして落ちていっていた。
やっぱり俺が近づいたから怖くなって・・・
猫が地面に落ちるところを見てられず目を閉じた。・・・しばらくして目を開けるとそこにあったのは、落ちそうになった猫を渉が抱いて助けていた。
「渉!」
抱いた猫を離して猫の頭を撫でて
「もうあんな所に登るなよ」
と、言葉をかけた。
猫は「にゃー」とだけ鳴いてその場を立ち去った。
渉に琴海ちゃんが近づいて
「ナイスキャッチ!」
「たまたま俺の腕に落ちてきただけだ」
その光景を木の上から見ていた俺は
「結局いいとこ取りされただけか」
と、微笑んだ瞬間掴んでいた木の枝が折れて俺はそのまま木から落ちていった。
「マジかよ!?」
そのまま真っ直ぐ落ちていき地面に激突した。
「いてててて」
流石にあの高さからだったら痛いな。
「大丈夫!?怪我とかしてない?」
「いてて、大丈夫大丈夫、これぐらいなら」
心配されたけど怪我とかは無かったから別に良かった。
「どんくさいやつだな」
渉にイヤミを言われた。別に言い返す気は無いけどちょっとムカつく。
「気を取り直して帰ろっか」
そのまま俺達は帰り道を歩いていった。
「あのときは本当にドタバタだったな。まぁ猫が無事で良かった」
猫事件を話したら
「本当に仲良かったんだね、三人は」
佐奈さんが微笑んだ。
「確かに仲は良かった。基本的に三人でいたから」
今思い返すと中学生は楽しかったなぁ。今ももちろん楽しいけど、あのときは何も考えずに笑いあっていた。琴海ちゃん・・・
「なのに、どうして亡くなったの、琴海ちゃんは?」
鈴音がついに本題となる話を切り出した。
俺もあんまりこの話はしたくはないけど、信じられる人しか今はいないから、渉を少しでも知ってくれる人がいるなら俺は
「元々琴海ちゃんは病弱だったんだ。薬を飲んで病気の進行を遅らせていたんだ。それを俺と渉には言わずに常に笑顔で平常心を装っていたんだ。もちろん俺は琴海ちゃんが病気なんて知らなかった。多分心配されたくなかったんだと思う。誰かに心配されるのは苦手って言ってたから」
知っていれば、結末は変わっていたかもしれないけど今後悔しても遅いけどな。
「そして、三年生になってまた俺達は同じクラスになった。三年間一緒になるって奇跡だったよ。
何も変わらずに秋になったときに琴海ちゃんが『渉、蒼君!今日星を見に行こうよ!』突然すぎてよくわからなかったけど俺は賛成したけど渉はかなり嫌がっていた。それでも琴海ちゃんが押し切って仕方なしに渉も付いていくことになったけど、そこで事件が起きた」
俺達は満天の星を見たけど、めっちゃ綺麗だった。いつも見てる星は遠いし雲もあってはっきりとは見れないことが多かった。けど山を登って星を見ると、今まで見てきた星とは別格だった。一つ一つが綺麗でキラキラしてて、オリオン座とか本当にあったんだな。
俺達は満足して帰ろうとしたときだった。
俺と渉は横並びで帰ろうとしたときだった。
「今日はありがとうね二人共。ウチのわがままに付き合ってもらって」
後ろにいる琴海ちゃんがいきなり感謝の言葉を俺達に話してきた。
「別にいいよ、あんなに綺麗な星を見れたんだし、こっちも感謝だよ」
逆にお礼を言いたい。星のことを知れたことについて。
「なんだかさ、渉と蒼君はいっつもウチのわがままに付き合ってもらっちゃってるけど二人は快く受け入れてくれる。本当に優しいよね。ウチは幸せ者だよ」
笑顔の琴海ちゃんに、どうして今そんなことを言うんだろう。別に今日で別れるわけじゃないのに、なんで?
「琴海?」
渉も不思議がってる。見たことないんだろう、多分。
「さて、もうそろそろ限界かな。しばらくは遊べないね、でも絶対に帰ってくるから、待ってて・・・ね」
琴海ちゃんは倒れてきた。
渉がとっさに倒れ込む琴海ちゃんを支えて
「琴海!おい!琴海!!」
大声で呼びかけたが返事はなかった。俺は呆然と立ちすくんでいた。一体何があった?なんで琴海ちゃんが・・・
「何をボーっをしてる!早く救急車呼べ!」
渉の呼び声に頭を整理し直し
「あ、ああ!」
俺は急いで救急車を呼んだ。
俺達は急いで山降りたと同時に救急車が来て琴海ちゃんは運ばれていった。夜が遅いこともあって俺達は同行できなかった。
「琴海ちゃん、大丈夫だよな?」
「・・・・・」
渉は何も言わなかった。でも渉の気持ちもわかる、友達の危機に何も言えないのも。
これ以上は俺も何も言わなかった。ただ、琴海ちゃんの無事を信じて。
俺達はその後、琴海ちゃんが病弱であり薬で進行を遅らせていたことがわかったがついに倒れてしまって本格的な治療をすることを知った。
琴海ちゃんがその事を言わなかった理由は自分を普通の友達として見て欲しかったかららしい。心配されたくなかったから・・・言って欲しかったよ。
今でも信じられない、あんなに元気で笑っている人が、今まで遊んでいた友達が入院だなんて。渉も初耳だったらしく表情は驚いてはいなかったけど、内心は悔しいはずだろう。気づいていたら防げたはずなのにって。
学校に毎日会っていた友達がいないとかなり寂しいなぁ・・・
しばらくして俺は学校帰りに琴海ちゃんの見舞いに行った。渉も誘ったけど今日は家の用事があるようで行けなかった。そんなときだった。
病院に着き、琴海ちゃんの病室に行き扉を開けて
「琴海ちゃん、元気にしてる?」
窓から見える景色を見ていた琴海ちゃんがこっちを振り返り
「蒼君、今日は一人なの?」
「うん、家の用事があるようだったから」
「そうなんだ」
どこか寂しげな表情をした琴海ちゃん。やっぱり渉と一緒の方が良かったかな。
「病気はどうなの?」
「今は落ち着いているけど、またいつ悪化してもおかしくないんだって」
「そう、なんだ」
そんなに、深刻なんだ。無理してたんだ・・・そう思うとなんか自分でも落ち込むよ。
「治るといいね、早く」
「そうだね、ウチもすぐに治したいよ」
・・・沈黙が続いた。俺も何も話せないよ。本当は本人が一番苦しいはずなんだ。病気なんて軽々しく発言していいものじゃないんだ。俺は・・・
「もしウチがこのまま死んだら悲しむかな?」
沈黙の状態から突然こんなことを言われたら
「何言ってるの、そんなことを言わないでよ」
琴海ちゃんがこんなにネガティブなことを言うのは初めてだ。いつもはポジティブで明るいのに・・・
「蒼君は悲しい?」
「逆に悲しくなかったら今ここにはいないよ」
本心を口にすると
「ありがと、蒼君。・・・一つお願いできる?」
頼み事?俺に?
「渉を、お願い。ウチの代わりに」
この言葉には何も返さなかった。いや、何も返せなかった。この意味は・・・このお願いは、やりたくない。もしやりとげる事は、そういうことだから。
その後俺は帰ったけど、どうしたらいいんだ、俺なんかが考えたところで、どうすることもできないんだけど。今は信じるしかない。琴海ちゃんは帰ってくる。
そしてまた時間が過ぎて高校受験の時期になった。渉は天才レベルだから超賢い高校に行くと思ったら俺と一緒の高校だった。ただ俺に合わせたわけではなくどうやら琴海ちゃんが俺と一緒の高校に進学するらしいから渉もこの高校を受験するらしい。
「別に俺がどこに行くかなんて自由だろ。ただ知り合いがいたらまぁつまらなくは無いと思うからな」
・・・相変わらずだと思ったけど俺も嬉しかった。また三人一緒になるのが。
そして高校受験。見事に全員合格。琴海ちゃんも病院で勉強してたからテストも良かったらしい。これでまた三人一緒になるはずだった・・・
高校の進学が決まってクラス中安堵の雰囲気になったいた。俺もその中の一人でやっと勉強に追われる心配は無い。渉はテストを満点だったらしい。高校受験のテストを満点ってかなりやばいな。
残りの授業を受けているときだった。
普通に黒板に書かれたことをノートに書いていると、俺の席より前の席に座っている渉が先生にバレずに携帯を触っていた。珍しいと思っていたら、いきなり渉が立ち上がり
「先生、早退します」
と、言ってカバンも持たずに教室から走って出ていった。
「り、林翠!」
先生がこう叫ぶと同時に俺の脳裏に琴海ちゃんが浮かんだ。まさか、琴海ちゃんが!
俺も先生に
「先生!俺も早退します!」
俺も教室を出て急いで渉の後を追ったが渉が速すぎて付いて行けなかった。確かあいつ50メートル走5秒台だっけ、陸上部入れよ。
そんなことはどうでもいい。急いで病院に行かないと。渉より遅くてもいい。とにかく行かないと!
ノンストップで走り続けた。額に流れる汗も拭かずに、横腹が痛くても走り続けた。止まったらダメだ!走り続けろ俺!
そして病院に着き、手で汗を拭き、琴海ちゃんの病室に行くとそこにいたのは渉と琴海ちゃんの両親だった。
「渉・・・」
そうつぶやくと渉はこっちに来て俺に何も言わずに病室から出ていった。
渉の様子・・・まさかと思って俺は琴海ちゃんに近づいた。
「琴海・・・ちゃん、嘘、だろ」
目をもう二度と開かない、口も二度と開かない、あの笑顔をも二度と見れない。けどどこか安らかな表情で静かに、二度と起きない琴海ちゃんがいる。
何もできなかった俺は膝から崩れ落ち
「俺、まださよならも、ありがとうも、言ってないのに・・・」
流れてくる涙を抑える気にもなれない。後悔だけが俺を襲った。・・・言葉にできないよ・・・
流石に琴海ちゃんの両親だけにさせないとと思って、ようやく涙が収まって、病室から出ていった。何も考えられない。いや、考えられることはできるけど、考えたくない。今の俺の精神状態は崩れそうだよ。
病院の待合室で休もうとし、行ったら、渉がいた。
俺は渉の隣に座った。気づいているとは思うがこっちは振り返らなかった。
しばらく、何も話さずに、自分の気持ちが整理したときに
「琴海ちゃんと話したんだろ、何か言ってた?」
渉は琴海ちゃんと話したはず、だから最後の言葉を聞きたい。
「お前に、よろしくって」
少し鼻声だった。悲しんでいるのかな?一番の親友が死んだんだから。
「・・・ありがとう、だってよ。最後の言葉がそれだ」
「琴海ちゃん、らしいな」
・・・・・・・・・。
「もう少し、話せたらな」
振り返らなくてもわかる、涙を流していることが。こんな姿は初めてだけど、俺も涙が出てくるよ。琴海ちゃん・・・ありがとう。
「琴海の分も生きないとな」
俺達は泣き止んでこれからのことを話した。
お願いされたからには、やりとげないとな。渉をよろしくってよ。
「よし!高校生活、頑張るか!」
「これが、渉の中学時代。壮絶だったよ」
俺が知っている全てを全員に話した。包み隠さず全て。
渉の過去があまりにも壮絶すぎるためか全員口を開かずにただ黙っていた。
あのときは俺も辛かったけど渉の方がもっと辛かっただろう。・・・友達を失うのは悲しくなるなぁ。
「渉君はまだこのことを引きづっているのかな?」
鈴音が沈黙の空気を壊した。
「多分な。だから、誰とも付き合わないんだろう」
渉は琴海ちゃんの事を忘れられてない。
「だから、僕にあんなことを・・・これで意味を理解した」
冬も渉と何かを話したんだろう。聞かなくてもわかる。
今思い返してみると、改めて琴海ちゃんがすごいってわかる。病気を隠し続けるなんて普通はできない。苦しかったり、痛い思いだってしたはず。それを何も感じさせずにただ笑顔でいるなんて、俺にはできない。
だからこそ知り合えて良かった。気持ちが大事ってことを教えてくれたから。
「今から渉君に会いに行こうよ」
鈴音?何言ってんだ。
「渉君、今でも自分に責任を感じているんだったら言ってあげないと。今は私達がいるって」
花梨さんも便乗して
「私達が助けてあげないと。私では琴海ちゃんの代わりにはならないかもしれないけどそれでも信じて欲しいよ。友達だったら助けないと」
渉を助けるつもりなのか?
「行こ!花梨ちゃん!」
「うん!」
二人は走って教室を出ていった。
「鈴音ちゃん!」
「花梨さん、ちょっと待って!」
佐奈さんと冬も二人の後を追っていった。
俺も・・・でも今の渉を考えると、どうしても戸惑ってしまう。
とりあえず教室を出て廊下で追うか考えていると
「勝手に話されたら困るな」
聞き慣れた声が聞こえた。まさかな。恐る恐る声のするほうを振り向くとそこにいたのは
「渉、なんでここに」
多分全部聞いていたと思われる渉がいた。
「だいたい俺が帰ってたらお前が来るけど、来なかったから嫌な予感がして来た。案の定俺の昔話とは、するなって言っただろ」
やばい普通に怒ってる・・・
「わ、悪い・・・でもじゃあなんで止めなかったんだよ」
するなって言ったのに一切止めなかったのはなんでなんだ?
「別にあいつらに知られても問題ない。悪用しなければ誰に話しても構わない」
この話を聞いて悪用するやついるか?ネタにされるだけだと思うけど。
「今さっき鈴音達が通ったはずだけどバレなかったのか?」
「隠れたからな。バレたらまた面倒になるから」
「会ってやれよ、皆はお前を助けようと」
「大きなお世話だ。自分のことは自分で何とかする」
「そんな言い方無いだろ!心配してるんだぞ!」
「言ったろ、大きなお世話だって」
こいつ、皆の気持ちを踏みにじりやがって!
「てめぇ!」
俺は渉に殴りかかった。
結果は・・・
「お前が俺に勝てるわけ無いだろ」
逆に腹部に一発貰った・・・苦しい。
「わ、悪い、俺も熱くなったから」
流石に渉には勝てないか。無謀な挑戦はするもんじゃないな。
「でもお前もこれで少しは気が楽になったんじゃないか?」
一応これで皆知ってることになったから相談できる相手は増えて良かったんじゃないかな。
「・・・まぁ、前よりかは」
なんだ、結果オーライじゃないか。この際だ琴海ちゃんのことも言ってやるか。
「まだ琴海ちゃんのことが忘れられないかもしれないけど、また新しい恋でも探したらどうだ?」
「新しい恋?」
「え、琴海ちゃんのことが好きなんじゃ」
「俺は一度も琴海を恋愛対象で見たことは無いぞ」
・・・え?
「いやいや、まさか、お前が琴海ちゃんを好きじゃないわけ」
「琴海は俺の友達なだけだ。好きとかそういう感情は琴海には持たない」
あまりに衝撃すぎる事実に驚きを隠せない。
「でも、お前なんか花梨さんとか冬に何か言ったんだろ?琴海ちゃんのことを忘れられない的なことを」
「花梨には俺の親友が死んで、精神的にまだ不安定だから付き合えない。冬には親友を幸せにできなかったからって言っただけで、あの後思ったら琴海は幸せ者って言ってたから別にそんなことないか。冬にはだから少し嘘をついたようになってしまった」
「なんだよそれ!どんだけ回りくどい言い方してるんだよ!そんなの誰だって勘違いするわ!」
「なんでお前が勘違いするんだよ」
「お前と琴海ちゃんの様子見てたらほとんどカップルだからな。それは勘違いするよ」
「それはお前が悪いんだろ。あと聞いてたけど俺別に琴海に対して責任とか感じてないからな。琴海の代わりとか別に俺いらないから」
「いらないってどういうこと?もう会いたくないってこと?」
「そういう意味じゃない。代わりがいなくても今の俺は幸せだってってことだ」
・・・やば、なんかグッときた。過去が過去だからどうなると思ったけど、今が幸せならあのとき琴海ちゃんが言った私の代わり、一応俺は全うできてるのかな。
「さて、帰るか。眠いし」
「俺も帰るよ。あでも鈴音達はどうしよう」
「明日俺があいつらにも何か言う。責任とか感じてないって」
「ならそういう感じで」
「お前がまとめるな」
こうして渉の過去は全員に知れ渡ったけどあんまり渉に対する接し方は変わらないだろ。もっと渉のことを知っただけになった。
なんだかんだ、結果オーライってことだ。
あれ?琴海ちゃんが好きじゃないなら・・・
「お前さ、琴海ちゃん好きじゃないなら今好きな人いるのか?」
「・・・別に」
どっち?なんかでも照れてたような・・・
これで渉の過去話は終わりになります。割と長めに話しちゃったけど大丈夫だよね。
まぁでも皆の気になっていたところを明かしたから、良かったかな。
それにしても最後の別にってどっちなんだろうな。また気になるところが出てきたよ。
それではまた次回。




