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友達想いな友達

・・・眠い。


俺が眠たいのはいつものこと、別に眠たく無い時だってあるけど、まあ基本的に体育の時以外は授業は寝てるからそう思われてもおかしくないか。


それにしても眠い。4限ぐらいは寝て過ごしたけど、どうにも眠気は収まらない。

完全に熟睡してないからかもしれないか。それもこれも全部横の奴が悪い。


昼休、弁当を食べてさっさと腕を枕替わりにして寝ている俺の横で


「はあ・・・」


と、ため息ばかりを吐いている男が俺の眠りの邪魔をしている。


「はあ・・・はあ・・・」


ため息を吐きながら机に顔をうずめた。あまりにため息を吐くため俺は怒鳴った。


「うるせーな!眠れねえじゃねえか!」


机も軽く叩いた。


うずめていた顔を起き上がらせずに顔だけを俺のほうに向け


「ああ、ごめん渉」


覇気の何も無い声だった。こいつの名前は蒼、普段はこんなやつじゃないけどな。


あ、そういえば俺の紹介してなかった。

今回の語り手は林翠 渉でお送りします、どうぞよろしくお願いします。


「お前どうしたんだよ、ここ2週間全然元気無いぞ?ため息も1日200回ぐらい吐いてよ」


こいつが元気が無いのは今に始まった事では無い。

2週間前、ちょうどあの神原が転校してきた翌日から元気が無くなっていた。

まあ、神原から呼ばれて何言われたか知らないけど、ここまで落ち込む内容だったのか?

まあなんにせよ、こいつがこのままため息ばかり吐かれても俺が困るだけ、だから理由を聞いてみた。


「いや、別になんでもないよ。ただ疲れているだけ」


俺に笑顔を見せてきたけど、完全に自然の笑みでは無いし、何より顔が疲れている。

ただの疲れでは無い、多分肉体的にでは無い。精神的に疲れている。


俺はあえてこれ以上何も言わなかった。


多分聞いても何も答えてはくれないだろう。


こいつの性格はよく知っている。あまり人を巻き込みたくないこともよくわかる。

だから俺を巻き込みたくないんだろう。

変なとこで意地はりやがって。


こいつとも少し長い付き合いだし、困るのは俺だし、こうなった理由でも周りに聞いてみるか。



そして放課後になり、俺はあいつが早々に帰るのを見て、蒼の周りにいる人に聞いてみた。


まずは・・・神原に聞いた方がいいと思うけど、ひとまず冬に聞いてみるか。

俺が寝ている間に聞いているかもしれないしな。

それに冬は蒼の相談によく乗っている、今回も聞いているのかもしれない。


俺は帰ろうとしている冬を呼び止めた。


「冬、ちょっと待ってくれ」


名前を呼ばれた冬は後ろを振り向き俺を見て


「渉が僕を呼ぶなんてめずらしいね。で、どうしたの?」


まあ、本来冬とは遊んだりするけど基本的に冬から話しかけてくるし、よく話すから話を合わせやすい。

これが誰にでも出来たらいいのにな。


「最近、蒼のやつに何かあったか知らないか?どうにも元気が無いからさ」


「確かにここ最近元気な姿を見せて無いね」


この様子だと何も知らなさそうだな。


「でも、最近天使さんと付き合ったって聞いたけど本当なのかな?」


え、あいつが神原と?いやそんな訳ない。

だってあいつは完全に佐奈の事が好きなはず、好きな人がいるのに付き合うなんてあいつに関しては考えられない。


「それって本当なのか?」


「まあ、単なる噂だからそんなに本気になることは無いよ」


「でもなんでそんな噂になっているんだ?

付き合うってひょんなことでは始まらないぞ」


「ごめん、僕も詳しくは知らないんだ」


冬も知らないのか・・・


「そっか・・・悪いな呼び止めて」


「うん、じゃあまた明日ね」


そう言って俺に手を振って帰っていった。


ひとまず情報は入ったな。


あいつと神原が付き合っているか・・・あいつが佐奈の事をあきらめるのか?


俺に好きとは言ってなかったけどチラチラと1日50回ぐらい見るし、前に鈴音と学校帰りに買い物に行ってる所を気づかれないようについて行ったり、あそこまで行くとストーカーだな。


まあさすがにあの時は俺が気づいて止めたけどな、もし気づかれでもしたら最悪警察沙汰になっていたかもしれないしな。

とにかくあいつが佐奈の事を好きなのは確実なはず、それなのに神原と付き合う訳が無い。


もう少し誰かに聞いてみるか、蒼の事を知っているやつにたずねるか。


次に蒼を知っているやつか・・・


「ドーーンッ!」


突然俺が後ろから突き飛ばされた。

少し前に前進したけど別にそんな力が入ってた訳では無いから前進しただけで収まった。


誰がやったかは大方予想はついてるけど。


「どう?どう?びっくりした〜?それとも驚いた〜?」


びっくりと驚いたは意味一緒だろ。

後ろを振り向くと、ニヤニヤとして悪い目をしている、こんなことするのはやっぱり花梨か。

花梨のやつは行動が理解できないことをたまにする。

ついていけないな。


まあ、なんか反応してやらんとな。


「あぁ、少し驚いたよ」


俺がそう言うといきなり笑顔になりガッツポーズをとり


「やった〜渉君を驚かせる事をできた〜!」


なんで喜んているんだよ、よくわからんな。


「渉君寝てばっかりであんまり学校楽しそうじゃなかったから少しは刺激を与える事ができてよかった〜」


・・・そんなことで俺を突き飛ばしたのか。まあ、周りから見ればそう見えているのか。少し気を使わせてしまったな。これからは少し寝る事をやめるか。


「そうでも無い、これはこれで楽しめている。

気を使わせて悪かったな」


一応俺を元気づけてくれたんだ。礼の一つでも言っておかないとな。


俺の言葉を聞いて、なぜか少し照れる様子を見せて俺に笑顔見せた。


あ、そうだ聞いておかないと、蒼の事。


「なあ、蒼の事で何か知らないか?」


「え〜?蒼君何かあったの?」


逆にこっちが聞かれるとはな、何も知らないなこれは。


「蒼が最近元気が無いんだ。なんか知らないか?」


「そうかな〜?いつもと一緒じゃないかな?」


やっぱり鈍感だな。まあ、別にいいけど。


「あ、でも最近天使ちゃんと蒼君が一緒に帰っている所をよく見るけど・・・今日だって一緒に帰っていく所を見たよ」


一緒に帰る?あいつと神原が?

・・・まさか本当に付き合っているのか?情報が足りなさすぎる。

・・・結果を急ぎすぎてもダメだな、まだ二人にしか聞いてない、情報が足りないのは仕方ない。


「・・・そっか、ありがとよ花梨」


「え、う、うん・・・じゃ、じゃあね〜」


花梨は足早に帰っていった。何をそんなに急ぐ事があるのかな?

・・・いや、まさかな・・・仮にそうだとしても俺は・・・



「渉・・・ありがとう・・・」


「おい・・・おい!起きろ!起きろよ!」



・・・嫌な事思いだしたな。


もう、あいつのことを思いださないようにしていたんだけどな。


気を取り直すか、情報を集めるか。


次は・・・佐奈に聞いてみるか。


佐奈はもう少しで中間テストだから教室で勉強している。親友の鈴音と一緒にな。


二人に近づき話を聞こうとすると


「ねえ、鈴音ちゃん

ここってどうやって解くの?」


「ここは、こうこうこうやってやったら解けるわ」


「えっとこうこうこうやって、あ、出来た!」


「でしょ」


見る限り鈴音が佐奈の先生って感じだな。


机に向かって勉強をしている二人に俺は訪ねた。


「佐奈、鈴音、ちょっといいか?」


二人は俺の方を見て


「渉君、どうしたの?」


佐奈が言ってきた。


「他のやつらにも聞いているけど、蒼のやつに何かあったか知らないか?聞いていると神原と何かあったようだけど」


「確かに蒼君の様子がおかしいと薄々気づいていたけど、何かあったかは知らない」


佐奈は何も知らないようだ。


「そうか・・・」


人から聞くのをあきらめ、神原から直接聞く事にしようとした時だった。

鈴音が蒼と神原の事を知っていたようだ。しかもかなり衝撃的だった。


「蒼君と天使ちゃんって一緒に住んでるって聞いたけど」


す、住んでる?あいつと神原が一つ屋根の下で一緒に・・・あんまり想像したくない。


「え、蒼君と天使ちゃんって一緒に住んでるの?」


佐奈も知らなかったようだ。


「うん、天使ちゃんから直接聞いた。

なんか、一人暮らししようとした時に借りるマンションがいきなり潰れて行く宛の無かったから蒼君の家に住まわせてもらっているって聞いた」


そんな突然潰れるか?

しかも、それでなんで蒼の家に住むことになるんだ?あいつ知り合いでもなんでも無いのに・・・


もしかして、あの呼び出しはそのことを伝えるために呼び出しのか?


でも、なんであいつあんなに元気無いんだ?何かと理由があるのかもしれない・・・

仕方ない、こうなったら神原に聞いてみるか。今日はもう帰っていないから明日だな。


「そうか、悪いな、勉強がんばれよ」


とりあえず俺も帰るか、眠たいから。


俺が佐奈と鈴音から離れようと後ろを向いたが、俺の手を佐奈が掴み


「どうせだったら三人で勉強しようよ!

渉君、1年生の時学年トップでしよ?鈴音ちゃんに渉君がいれば鬼に金棒だよ!」


鈴音だって学年4位だぞ?鈴音がいれば俺はいらないだろ?


と、言いたかったけど、佐奈の性格上そう言ってもどうせ言い返してくる。

だったらさっさと教えてさっさと帰った方がいい。


ただ教えるのがめんどい、少しため息を吐いて


「ああ、わかったよ、どこわからないんだ?」


この言葉を聞いて佐奈は俺の手を離し


「ありがとう!

えっと・・・ここから10ページと後75ページから109ページまでが中間テストの範囲なの。鈴音ちゃんに聞いているけど、これ以上鈴音ちゃんに迷惑はかけられないの」


・・・相当めんどい事を引き受けたものだな。乗りかかった船だ、最後まで付き合ってやるか。


「ああ、さっさと覚えろよ」


「うん!私、がんばる!」


それから4時間ノンストップで佐奈に教えてと頼まれた。苦手科目だってのはわかるけど時間をかけすぎだ。


おかげで辺りは真っ暗、学校にここまでいたのは久しぶりだな。


やっと終わり、俺もさすがに疲れた。


「うーーーん、やっと終わったーー!ありがとう渉君、私の勉強に付き合わちゃって」


大きな伸びをして俺に礼を言った。


「ああ、別にいい」


「渉君宿題とかやってるの?」


俺のことを心配してくれたが俺は


「俺はとっくの前に終わらせてある」


「え!いつの間に・・・」


「2年に上がって一週間で全科目の宿題を終わらせた」


俺達の学校は少し特殊な宿題を出す。

2年に上がった瞬間に1年間の宿題が一気にくる。

出来るところはやれと言うことなのかもしれないけど授業と同時進行でやっていけって事なんだろうな。


俺はそんなこと関係ないから、全部やった。わからない所はほとんど、と言うより無かった。ちなみに全部正解だったらしい。

だから俺は宿題に追われる事は無い。


「す、すごいね!勉強を死ぬほどやっているんだね」


「いや、別に言うほどやってない」


すると突然鈴音が俺に向かって


「あなたは天才過ぎるのよ!」


と、指をさされた。


「俺が天才だったら鈴音も天才だろ」


「なんで習っても無い所をすらすらと出来るのよ!それに渉君は授業中寝てばっかりじゃん、それなのに分かるってどういうこと?」


それは・・・確かになんで分かるんだろうな?自分でもなんでかはわからない。

問題をだされてもすぐに解けるから、授業を受けてもすぐにわかって覚えられる。


そもそも最初に教科書を見ただけで基本的に覚えるから授業は退屈でしょうがない。


「どうしたの?黙り込んで?」


時間をかけすぎたか、答えないとな。


「いや、別に・・・とにかく俺は天才じゃない」


鈴音はそれ以上は何も言わなかったが、どうにも納得のいかない顔になっていた。


「・・・あーー!そう言えばお母さんに遅くなるって言って無かったーーー!」


突然佐奈が大声を出した。


「え?連絡は?」


佐奈は鈴音に携帯を見せて


「電池切れなの・・・」


携帯を見て鈴音はため息を吐き


「だったらすぐに帰ら無いと、お母さん心配しているわよ」


「そうだよね・・・渉君今日はありがとう!

また明日ね!!」


佐奈は自分の鞄に勉強道具を入れて足早に帰っていった。


「忙し子ねほんとに。

じゃあまた明日ね渉君、バイバイ」


鈴音も鞄に勉強道具を入れて俺に手を振って佐奈の後を追った。


既に夜遅くまでクラスにいたため教室には俺1人しかいない、異様な静かさ俺を包んだ。


他の生徒や先生も見当たらない、多分この学校に生徒は今は俺しかいないのだろう。


帰ろう。俺は自分の鞄を持って教室の電気を消して、鍵を閉めた。


廊下は所々明かりがついていて、暗さで迷うことは無い。


しかし俺は窓を見てあえて明かりを消した。

そして、廊下の窓を見ると満月の月明かりが俺を照らした。


俺は月が好きだ、あの何色にも染まらない明るさや色に惹かれる。

俺もいつかはあの月のように大きく明るい大人になりたい。


俺はしばしば魅入っていたがそろそろ行かないとと思い歩きだすと、1人の女子生徒が驚いた表情で立っていた。

あまり顔なじみが無いから後輩だろう。


「わ、渉先輩・・・どうしてここに?」


名前を知っていたのか、まあ去年の学年トップだから名前と顔ぐらいは知っているか。


「どうしてって、友達に勉強を教えていたから」


「そ、そうですか、私も友達に勉強を教えていて遅くなっていました。

奇遇ですね同じ理由で遅くなったって」


「まあ、そうだな」


・・・どうにもぎこちない、会話がはずまないな。それに俺の目を合わせてくれない。

先輩だからか?男だからか?それとも・・・


すると、突然驚く事を聞かれた。


「渉先輩って誰かと付き合っているんですか?」


・・・いきなり過ぎて言葉を失った。

名前も知らない後輩から突然こんなことを聞かれるのは初めてだ。


「いや、誰とも付き合って無いけど、どうして?」


「いや・・・あの・・その・・」


なんだこの感じ、まさか、まさかだけど・・・


「私はその、渉先輩の事がその、気になって、と言うか・・・好き、というより・・・付き合って欲しいと言うより・・・」


顔を真っ赤にされて口をもごもごされても俺はどういう反応をしたらいいかわからない。

でも、それだとしても・・・


「はっきりしてくれ」


俺ははっきり物を言わない人をあまり好まない。

どんな事にしてもはっきりと言ったほうがいい。


声をかけた瞬間俺の目を見て覚悟を持つ感じで言ってきた。


「私は渉先輩の事が好きです!!だから付き合ってください!!!」


頭を下げながら手を差し出してきた。


告白か・・・初めてでは無いけどどんな返しをしたらいいのかとか、どうやって受け答えしたらいいのかとか・・・頭をフルに使っても最適な答えが出ない。


彼女の告白に俺は俺の答えを返した。

関わりが無いのに等しいけど俺も少しドキドキしながら言葉を返した。


「・・・悪い、俺まだ色々と気持ちがまとまっていないから・・・ごめん、付き合えない」


俺の答えは、付き合えない。


気持ちを踏みにじる事は百も承知だけど、あいつのことを少しでも思い出すだけで、気持ちの整理がつかない。


こんなんで人を幸せにすることは出来ない、だからこそ振ることにした。


悪いことした。

俺を嫌いになっても構わない。


俺の答えを聞いて少しその状態で固まっていたが、彼女は顔を上げて、またしても俺に驚くことを言った。


「・・・そうですか・・・まあ仕方ないですね。

気持ちに整理がつかないのは誰にだってある事ですから、でも私はまだ渉先輩の事が好きです!だから、まだ諦めないです!!」


そう言い残して後ろをむいて走っていった。


諦めないか・・・俺のことを嫌いにならなかった、むしろまだ好きって言った。


それが彼女答えなんだろう、自分の信念を貫いていた、俺も色々と見習わないとな。


そう言えば名前を聞いていなかったな、まあそのうちまた聞く時がくるだろう。


俺は教室の鍵を職員室に返し学校を後にした。


今日はいろいろなことがあったな。


いろいろと思いかえすことはあるけど全部ひっくるめて俺が家に帰ってすることはただ一つ


「寝る」



翌日、いつものように学校に着いて自分の席に行くと横には顔を机につけてうずくまっている蒼がいた。

蒼の後ろには変わらず笑顔で友達と話している神原がいる。


二人の関係はわからないけど、今日神原に聞いてみるか。蒼とどういう関係かを。


昼休になり、俺は早々に弁当を食べて神原を見ると、神原も弁当を食べて花梨と話していた。


内容はわからないけどそこまで重要では無いのなら呼び出しても構わないだろう。


「神原、少しいいか?」


花梨と話すのをやめて俺の方を向き


「どうしたの?渉君、私に何かようかな?」


俺に対しても他の人と同じように笑顔で話してくる。


「用があるから来てくれ」


神原を誘った。


俺が歩き出すと、神原も椅子から立ち上がり俺についてきた。


俺は誰もいない屋上に神原を連れてきた。


連れてこられた本人は俺に連れてこられた理由がわからないから少し怯えている感じになっていた。


「お前、蒼と一緒に住んでいるんだって?」


すぐに切り込んだ方が話がしやすい。


「うん、住んでるよ」


戸惑いもせずにすぐに答えを言った。


「なんで蒼の家に住んでいるんだ?理由はどうあれ同性の方がいいんじゃないか?」


「別に。ただ一目見てわかったの、蒼君はすごくいい人だって。

だから蒼君の家に住んでいいってお願いすることにしたの。

お願いしてみたら喜んでいいよって言ってくれたからお言葉に甘えて住まわせてもらっているの」


それだけの理由で?


一目見て人柄なんてわかるものなのか?それにあいつが考えもなしに住むことを早くに決めるか?


でも、多分あそこまで元気が無いのは神原のせいであることは間違いない。


あいつは女性に対して優しすぎる一面がある、だからこき使わされているんじゃないか?


・・・聞いてみるか。


「最近蒼が元気が無い。何か知らないか?

一緒に住んでいるんだ、わからないか?」


「う〜んなんだろうね?元気ないのはいつものことじゃないの?」


そっか、いままでの蒼を知らないから元気がないイメージがついているんだ。


俺がさらに問い詰めようとすると、昼休みの終わりのチャイムが校内に鳴り響いた。


もちろん屋上にもそれは聞こえ、神原そのチャイムに


「ほら、早く行かないと授業に遅れちゃうよ?

話はまた今度にしようよ」


そう言って屋上の扉を開けて教室に戻っていった。


あんな逃げるようにしたってことは、何かあるな。


蒼を呼び出したのも住むように頼むために呼んだのに違いない。


・・・でも、まだ、確信に近づいていないようなきがする。


よし放課後、蒼に聞いてみるか。あいつは何かと理由をつけて話をごまかしている。神原と絶対に何かあるに違いない。


俺は放課後まで待つことにした。全ての確信に迫るために。



そして放課後、ホームルームが終わるとすぐに帰る蒼。


前まではそんなこと無かったのに、やはり何かあったんだな。


帰る間際に俺は後ろから蒼を呼び止めた。


「蒼、ちょっと待て」


蒼は少しだるそうに俺を見て


「なんだよ?」


「お前、神原と住んでいるんだって?」


俺がそう言うと、蒼は慌てたようになり


「な、なんでお前がそんなこと知っているんだよ!」


「鈴音から聞いた、どういうことだ説明しろ」


俺が問い詰めるとさっきまで目を合わせていたのに、目をそらして


「べ、別に説明しろって、ただ住まわせているだけだけど・・・」


蒼の顔を見る限りどこか悩んでいる感じだった。


元気が無いのはこの悩みから来ているのか?だとしたら無理には話さないかもしれない。


蒼は悩んでいる時は基本的に一人で解決する、人を頼ろうとしない。


「・・・いや、無理には言わなくていい・・・

でも悩んでいるなら誰かしら頼れよ?

俺じゃ無くてもいいからよ、この状態だとお前友達が減っていくだけだぞ」


俺は厳しい言葉をつけて帰ろうとすると


「渉!俺の話を聞いてくれないか?」


ようやく話す気になったか。


「でも、皆が帰ってからでいいか?人に聞かれたらまずいからさ」


まずい?何がまずいんだ?

どんな内容なんだよ。


教室から全員いなくなり、俺と蒼の二人だけになった。


向かい合って椅子に座り蒼が俺に全てをぶつけてきた。


「これから話すことは嘘でもでっち上げでも無くて本当の事だから信じてくれ。

後誰にも言わないでくれ、約束してくれ」


「ああ」


「あの、天使のことなんだけど」


やはり神原のことか。


「神原がどうしたんだ?」


「俺と一緒に住んでいる神原 天使は正真正銘の天界から来た天使なんだ」


その言葉を聞いた俺は一瞬言葉を失い、声が出せなくなった。


「・・・は?」


さすがに疑問形になる。


天使?何言っているんだ?天界とかよくわからない単語が出てきて、頭が回らない。


「やっぱり、そうなるよな」


知らずに信じてない目になっていたようで、蒼は下を向いた。


「・・・天使、あの羽とか生えているあいつ?」


とりあえず話を進めるか。


「そうそう!本とか漫画に出てくるような天使」


「その天使がなんでここにいるんだよ?」


「それは・・・俺が悪いんだ」


こいつが悪い?よく分からんが悪さをするようなやつでは無い、ましてや相手は天使、喧嘩を売ろうにもどう売ればいいんだよ。


「前にさ俺が見せたキラキラした割れた玉あっだろ」


「キラキラした・・・あぁ、お前が道端でひろったあの割れた玉か」


「それ、あれさ、天界に入る証明書みたいなんだ。それ、俺が割っちゃったんだ。

直るけど時間がかかるみたいで、今は俺の家に住んでいる。

俺をまるで召使いのようにしてくるんだ」


「それがきついってことか?だからあんなに精神的に疲れていたのか?」


蒼が急に大声で言った。ストレスたまっていたんだろう。


「そうだよ!あんな雑用みたいな扱い受けてさ!

なんだよ、ジュースくんできてかとさ、

コンビニであまいもの買ってきてとかさ、

スーパーでお菓子を大量に買わされたりとかさ、

とにかくもう疲れる一方なんだよ!」


・・・そんなことであんな元気なかったのかよ、なんか心配した俺が損だな。


「でも、天使とか全部本当なんだよ!信じてくれ」


こいつがここまで強く言う事は俺の中で初めてだな。


「・・・まあ、嘘じゃないとか最初に言ってあったからな、一応信じる。

お前があんな状態だったら俺もゆっくり眠れないからな」


そう俺が言うと、明るいいつもの蒼の顔になり、笑顔を取り戻した。


「ありがとよ、なんか胸につっかえたものが吹き飛んだ感じだよ。やっぱ持つべきものは友達だなぁ〜」


その言葉におれは息をはいた。


だがここで俺の予想外の事が起きた。


「蒼、なんで話したの?」


教室の扉から声がした。


その声を聞いて蒼はゾッとしたようになり、椅子から立ち上がり


「み、ミカエル!」


ミカエル?あの声は多分神原だよな、ミカエルってあの大天使の・・・


すると突然突風が俺達を襲った。


なんだこれ!いきなり台風でも来たのか!?


いや仮にそうだとしても部屋の中、風が来ること自体おかしい!


俺は風が来る方を見ると、目を疑った。


そこには、神原が蒼の言う、天使の羽が背中から生えていた。


蒼の言っていることはこの事だったんだな。


突風は一瞬で止まったが、羽が生えているのは変わらずに、こちらに近づいてきた。


神原は、蒼の前に立ち


「なんで言ったのよ!

私が天使だってのは、あなたの家族とあなただけが知る秘密だったのよ!

なのにあなたの友達に言うってどういうことよ!」


かなり怒っいるようだ、まあ秘密をバラされたら誰だって怒るか。


「・・・しょーがないだろ!

俺だってストレスが溜まって仕方ないんだ!お前に色々とこき使わされて、誰かに言わないと収まらないんだ!」


「私にそんな口を聞いていいの!

どうなっても知らないわよ!」


なんでかわからないけど聞いてるとイライラしてくるなこの会話。


多分俺だけだと思うけど。


これ以上会話を伸ばすのはちょっと無理だな。


「お前ら少し落ち着け。俺も色々と混乱している、状況を説明してくれ」


俺がそう言うと、二人は少し落ち着きを取り戻した。


ここからは俺が話さないといけないな。


「さて、まず神原・・・いや、蒼がミカエルって言ったから俺も言わせてもらう。

大天使ミカエル」


大天使と言うと、蒼が俺に


「大天使?なんのことだ渉?」


「知らないのかよ、詳しくは知らないけど、

ミカエルって言うのはお前の言う天界で最高地位を持つ天使界の中ではトップの天使だぞ」


蒼は一瞬固まって


「・・・えええぇぇぇーーーー!!!!そうなのか!」


「逆に知らない方がおかしいぞ、ミカエルって結構有名な天使だぞ。

しかし・・・」


俺はミカエルを見ながら


「天使とは言うけど姿形は完全に人間なんだな

人間離れしていると言えばその羽ぐらいか」


「まあ、絶対に隠さないとだめだから。

私は天星玉が直るまでここにいるつもりだから」


天星玉?・・・蒼の言う証明書みたいなものか。


「まあ天使だって事は隠すのはわかる、バレたら大騒動になるからな。

でも、大天使でもあるお前がなんでそんな所にその天星玉を置いてあったてのが俺の中では疑問だ」


確かに天星玉を割ったのは蒼だが、問題はどうしてそこに置いてあったかだ。


「え、それは・・・それはたまたま天星玉を落として・・・それを蒼がたまたま踏んで割れたってこと。

私だって失敗の一つや二つするんだからね」


・・・本当にそれたまたまかな?

そんなうまい具合に蒼が割るか?

まあミカエルがそう言っているかはそうなんだろうな。


大天使ミカエルか・・・


天使を見たのはもちろん初めてだし、その天使と一緒に住んでいるやつを見るのも初めてだ。


にしても蒼がここまで全て偶然で通して来ているけど、俺から見るとどうも偶然には思えない。


もしかしたら、もしかするのかもしれないな。


すると、突然蒼がミカエルに話しかけてきた。


「でもよ、ミカエルももう一人ぐらいなら言っても問題無いって言ってたじゃん。

むしろもう一人話した方が気持ちが楽になるって」


「そ、そんなこと言った覚えないわよ!

ば、馬鹿じゃない!私の正体は誰だって内緒だって言ったじゃない!」


気持ちが楽になるって、やっぱりミカエルもストレスを抱えていたんだな。


まあ正体を隠しながらいくってのも難しい話だからな。


「でもよ、渉にだったら正体がバレても問題ないだろ、こいつは信用のあるやつだからよ。

なあ渉、お前は誰にも言わないだろ?」


「まあ、な」


俺は隠しごととか秘密の話は基本的には話さない、

自分の信用とか失いたく無いし、

なによりその人のことを思うと俺を信頼して言った人たちを裏切るってことになる。


それだけは、俺は絶対に出来ない。


この言葉を受け入れたかのように、ミカエルは俺に向かってうつむいたまま


「本当に、言わない?」


上目遣いで言ってきた。


別に上目遣いされても俺はなんとも思わないけど、目を見たら俺をまだ少し疑っている事がわかる。


「ああ、言わないよ」


こればっかりは言わないとな。


俺が言わないと言ったら、上目遣いをやめて


「べ、別にあなたを完全に信用するわけじゃないからね!少しよすこーーーしだけ信用するだけだからね!」


・・・え?ツンデレ?


リアルツンデレは初めて見た、まさか本当にいるなんてな、漫画とかの世界だけだと思っていたけど、


いや、天界とかの時点でもう別の世界があるってことだよな。


もう訳がわからなくなってきた。


「まあ、めでたしめでたしだな」


めでたし・・・か?



こうして俺は神原の正体や蒼の元気が無いのを全て知ることができた。


天使か・・・秘密は守らないといけないな。


あの後、蒼はいつもの元気に戻り、いつもの生活に戻った。


神原も俺のことを信用したみたいで、よく俺と話すようになった。

もちろん他の人も蒼にもよく話す。


なんか色々と疲れたな・・・


え?俺が友達想いだって?


・・・他の人から見ればそうかもしれないけど俺はただ自分のためにやっただけ、あいつはついでってことだ。


・・・何?信じられない?まあそれは人それぞれだから、それは皆さんにまかせますよ。


これでようやくゆっくり寝れる。

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