冬と花梨
皆さんこんにちは雨宮 冬です。
僕が語り手をするのは二回目ですね。
現段階では僕はまだ皆の事情を知りません・・・皆大変なんですね。
今回は僕がちょっと散歩に出掛けた話になるんですけど、ある人と会います。あんまり濃い話では無いですから過度な期待はしないでくださいね。
さてそろそろ本編の方に行かせてもらいます、よろしくお願いします。
夏祭りから三日、普通の高校生と同じように寝て、勉強して、ご飯食べて、ちょっと外に出たりと、変化の無い一日を過ごしていた。
蒼の家にいるルシファーさんは天使だった時の衝撃はあったけどどうも初めてって感じじゃなかったんだよな〜、もちろん見たことも無いしそもそも天使の存在自体あんまり信じて無かったし・・・なんだろうあの感じ?
それにどこか懐かしいって感じもあったし・・・気のせいかな?
まぁ深く考えないでおこう、僕だけそんな感じになるってことにしよ!
今僕は昼の一時に部屋のベットに横たわり目を閉じながら
「暇だな」
つぶやくぐらい暇でやる事が無かった。
宿題も今日やる範囲を終わらしているし、蒼と二人で行くAfter 〇 Rainのライブもまだ少し先だし、ゲームも僕そんなにしないし・・・本当に暇だ。
ずっと目を閉じていたけど目を開けてベットから立ち上がり
「散歩でも行くか」
僕は玄関に行き靴を履いて外に出ていった。
そよ風が吹いて、太陽は夏の暑さを象徴している中で、僕はあてもなく歩いていた。
あてもなく歩いたりするのが好きだった。街の変化、色んな人々、草木が風でなびいて音が聞こえるのを見て楽しむ事が多い。見るということが好きなんだろう。僕には今のこの時間はとっても充実していて幸せだった。こうして木の成長を見て自分もこの木のように成長していると思う気持ちと、嬉しいと思う気持ちもある。
こうして歩いていて風に当たるととても気持ちよくて清々しい気持ちになる。
別に一人が好きってことでも無いけど、こうやって歩くのは基本的に一人の方がいい。
優雅に歩く自分かっこいい!・・・て言うのは嘘ですけど、この時間だけは一人の方がいいかな。
僕は散歩道の住宅街を歩いていた。この住宅街は休日に歩くと子供の声など聞こえてあまり静かには歩けなかったが、こういう平日とかなら住宅街とは思えないほどののどかで静かな道になる。
今のこの道は僕にとっては最高の散歩道だ。
物静かに歩いていると、一人の女性が歩いてきた。
まだ離れていて顔はわからなかったけど、完全に負のオーラが出ていたのははっきりとわかった。
はっきりとわかる、ここまで落ち込んでいる人は初めて見る・・・なんかこっちまで落ち込みそうになる。
できるだけ目を合わさないでおこう。
僕はすれ違って終わりだと思っていた。でもどんどん近づくと、どうも似ていた。
「・・・まさか、ね」
顔をはっきりと確認できる距離まで来た時にパッと見たら、僕が想像していた人だった。
思わず僕は声をだした。
「か、花梨さん?」
名前を出して読んでしまった。
すると、女の人はこちらを見て少し驚いていたがすぐに微笑んで
「冬君、こんちには」
やっぱり花梨さんだったんだ。負のオーラとか言ってしまったけど大丈夫かな?
挨拶されたなら僕もやらないと
「こんちには、花梨さんはどうしてここに?」
「ちょっと散歩でも思って歩いていたの。そういう冬君こそ散歩?」
「うん、散歩好きだからさ」
「そうなんだ」
・・・なんだろう、いつもの花梨さんじゃ無い。
いつもはなんてゆうか、こう、ほんわかしてて話しているとこっちまで和やかに気持ちになるのに、今の花梨さんは違う。ゆるくないし和やかでもない。何より、顔が笑顔じゃない。花梨さんはいつも笑顔で僕達に話していきているのに、今日の花梨さんは笑ってはいるけど全然感情がこもっていない感じだ。
愛想笑いしてるのかな。
それに、なんだか悲しそう。・・・この三日間に何があったんだろう?
でも直接言ったとしても答えてくれないだろうな〜、こういう状態の人って基本的に信頼してくれる人じゃないと話してくれないからなぁ。花梨さんとは2年生からの付き合いだし、二人きりとか無いし、友達だけどあっちはあんまり僕のことを信頼してないんじゃないかな?
わからないけどね。
それにしても何を話そう、むやみに変なことを言ったら傷つけそうだし、天気の話なんてあんまり面白みないし・・・
「冬君ってさ、好きな人っているの?」
突然の質問に対して一瞬言葉を失った。
「いない、かな」
わからないけどとりあえずこう言った。好きな人は・・・正直今の自分ではわからない感情だから。
僕がいないと言ってからしばらく間が空いた。
話そうとしてもどうしても言葉が出ない。
すると、花梨さんは僕に話し始めた。
「私さ、夏祭りの時ある人に告白したんだ」
「えっ」
「一年生の時にその人を見て単なる一目惚れで好きになってさ、いつか告白しようってずっと決めてて、同じクラスになった時はすごく嬉しかった。同じクラスで話すことも多くなって、嬉しい反面ちょっと辛かった。胸が苦しくて、切なくて、優しくされたらちょっと泣きそうになったりしてて、こんなんじゃ耐えきれなかった。だから思い切って告白したら、見事に振られちゃって・・・そこから何でもいいやってなっちゃって、ご飯とかも喉を通らなくて、勉強も全然はかどらないし、何より夢でその人が出てきて夢の内容は覚えてないけど起きたら涙出てるし、その日はずっと体がしんどくなっていて・・・苦しくて・・・辛くて・・・」
花梨さんはうつむいて、震えていて
「ごめん、冬君!」
僕を通り越して走り去ろうとした時、僕は何も考えずに
「待って!」
の言葉と同時に走り去る花梨さんの腕を掴んだ。
なんで僕は止めたんだろう、励ます言葉も出ないのに。ただ、ただここで止めないと行けない気がした。根拠も何も無いけど。
「か、花梨さん」
今の僕が言える言葉はこれだった。
「どっかで、休もう」
一人には出来ない、頼りない僕だけど今は頼って欲しい。誰かがそばにいるだけで心は安らぐんだから。
僕の顔も何も見ずに静かに
「・・・うん」
と、だけ言った。
それに安心して腕を離して、花梨さんと近くの公園に向かった。
誰もいない公園のベンチに何も話さない僕と花梨さんは静かに座って時間だけが過ぎた。
花梨さんはずっとうつむいて横からだと髪であまり顔を見れない状態だ。
一人にさせないだけで止めたはいいけどこの状況をどうしよう。この重たい空気をどうしよ。
何を話したら・・・
「なんで止めたの?」
花梨さんがうつむいた状態で言葉を発した。
いつもとは違う声、低くてこもっているような声だ。
顔を合わせる事は出来ないが僕は花梨さんの方を見た。
「突然あんなこと言って、冬君を困らせて、勝手に走って逃げようとした私を、どうして止めたの?」
小さな声でぎりぎり聞こえるぐらいの声だった。
即答はできなかった。止めた理由は一人にはさせてやれなかった・・・理由になっていないか。
花梨さんの心は今深く傷ついて、多分一生残る傷。癒すことも出来ない、思い出す度に傷は広がっていく、心の傷はやがて闇になって心を蝕んで行く。
今のままじゃもう昔の花梨さんには戻れない。
なんとかしないと、僕がなんとか。
綺麗事ばかり並べるじゃなくて、今僕が本当に思っている事を言う。
「実際のところ僕もよくわからないんだ。なんで止めたのか」
「理由もなく止めたの?」
「そうかもしれない、今一人にはさせておけなかった、ただでも気づいて欲しかった」
「何を?」
「花梨さんは一人で抱え込みすぎているんだよ、皆を頼っていいんだよ。
誰も笑ったりしない、誰もバカになんてしない、皆真剣に聞いて真剣に答えてくれる。皆暖かい人たちなんだ。
だから、もっと笑っていいんだよ」
一度深く負った傷は二度とは元の状態には戻らない。だったら次はもっと幸せな心を持ったらいい。そんな傷を忘れるぐらいの大きい心を持てばいいだけの話なんだ。それは自分だけでは作れない、友達がいて初めて出来ることなんだ。
花梨さんは僕の事をどう思っているのかわかないけど、僕は花梨さんのことを大切に想っているんだ。
そう言って綺麗事のように聞こえる言葉だった。こんなんで励まされるわけ・・・
花梨さんは突然僕の肩に手を置き顔をうずめた。
そういう経験が無い僕は顔が赤くなり
「か、花梨さん!?」
と、声を出してしまった。
すると、すすり泣く声がした。
えっ、と思った。
花梨さんが泣いているんだ。
僕の言葉で泣いている・・・なんだろう、何も声をかけられない。
思い当たる言葉が見つからない、どうしても傷をつけてしまうだろう。
今はそっとしておこう、落ち着くまで僕もこのままでいよう。僕がそばにいるだけで落ち着くならずっといるよ。
花梨さんはしばらくの間僕の肩で泣いていた。・・・僕は何も言えずにいた。
そこからしばらくもたってはいないけど体感では20分ぐらい感じた。
ずっと泣いていた花梨さんは僕の肩から離れて涙目の目をこすって、僕にいつもの笑顔と明るい声で
「冬君、ありがと〜」
その笑顔は曇り無き、吹っ切れたような笑顔だった。
その時、僕は今まで感じたことのないような感情に襲われた。心臓の心拍数、身体が熱くなる、胸が苦しくなる・・・何より今の花梨さんの笑顔が気持ち悪いと思われるけど、そこら辺のアイドルより何倍も可愛い。
前から花梨さんは可愛いとは思っていたけど今は別格すぎる、悩み事なんてもう無い、そんな感じだ。
感謝されるのはもう何回目だろうかわからないけど、すごく嬉しい。今日だけ特別に嬉しい・・・なんだ、花梨さんを見ていると理性が保てない。
何か言葉をかけて花梨さん、じゃないと僕は・・・僕は・・・
「でも冬君は本当に優しいよね、いっそ私と付き合っちゃおうかな〜、なんてね〜」
どうして今に限って、そんな冗談の言葉を・・・花梨さん!!
僕は理性を保つことが出来ずに、花梨さんの手首を掴み、そのままゆっくりと押し倒してしまった。
この時の僕はわからないけど、多分獣のような目で、息も荒くて、今までの僕では無い状態だったと思う。
理性を保っていないから花梨さんが今どんな気持ちなのかわからない、頭が回らない、今なんでこんなことをしたのかすらわからない。
でも、離したくない、今花梨さんをもっと見てみたい。花梨さんを・・・
「ふ、冬君・・・なんだか、怖いよ」
その一言で僕は我に返った。
急いで花梨さんから離れるために、手首を離して、ベンチから立ち上がり距離を取った。
我に返ったから今なら冷静に考えられるけど、今僕がしたことは一般人からでは考えられない行動をしたのだろう。いきなり友達を押し倒して、離したくないとか思ってしまった。何を考えていたんだ僕は!
まずい・・・嫌な思いをさせてしまった。単なる怖い人に成り下がったんだろうな僕は。
花梨さんはもう起き上がっていて、何が起こったのかわからないようになっていてぼうっとなっていた。
何を考えなきゃいけないのかはわからないけど、今やることは謝らないと。
距離を取った花梨さんの元に行き、頭を下げて
「ご、ごめん!謝罪の言葉が出ないけど謝るよ!本当にごめん!!」
言い訳する言葉も出ない、完全に僕が悪いんだから。
どうしよ・・・普通の関係にはもう・・・
「もうびっくりしたよ〜いきなり押し倒すなんて〜」
やっぱり怒ってる。
「でもなんだか、違う一面の冬君を見れてちょっと嬉しかったよ〜」
僕は頭を上げて
「それってどういう・・・」
「冬君って大人しいイメージがあったからさ、あんなにグイグイ来るとは思わなかったよ〜」
「それでなんで嬉しいの?」
「ん〜なんだろね?私もわからないや〜」
・・・もぉ、花梨さん、今さっきまで落ち込んでいたとは思えないね。
この感情はわからないけど大切な何かだってことはわかった。
その後は花梨さんも明るなってちょっと話して、僕達は別れて、僕は歩いて家に帰っている。
これで良かった、僕は達成感に浸った。友達の悩み事を少しでも緩和したんだから。
こんなこと初めてだから、なんだか嬉しいな〜。
・・・そういえば一体誰なんだろう、花梨さんの好きな人って?
僕達と一緒のクラスの人だよね?・・・誰だろう?
僕は歩きながら帰っていると、前から来た人に話しかけられた。僕の知り合いだったけど。
「冬?」
ぱっと見たらそこにいたのは渉だった。
「渉、どうしてここに?」
「単に用があってここら辺を通っただけだ」
「そうなんだ。あっ、さっきさ」
この話をしてみよう、渉だったら何かしら知ってるかもしれない。
「花梨さんに会ったんだよ」
花梨さんの名前を言うとそこまで感情を表に出さない渉が急に少し熱が入ったようになり
「花梨に、何か言ってたか?」
と、詰めかけてきた。
別に友達に隠すつもりは無いから今さっき話していた内容を話した。
「会ったときは花梨さんかわからないぐらい病んでいて、悲しんでいた。僕がなんとか話し相手になって少し元気にはなったけど・・・何か知ってるの?」
明らかに分かるけど、渉は何か知ってる。感情を表に出す渉なんてあまり見ないから・・・
「そうか・・・」
静かに声を出した渉は次に僕にこんなことを言ってきた。
「花梨がそうなったのは、俺のせいでもあるんだ」
「えっ、それってどういう・・・」
渉は僕にはまだ理解出来ない発言をしてきた。
「よく聞け冬。
俺は、今の俺は誰一人幸せにすることが出来ない。一人を幸せに出来なかった俺に二年で変わることなんて出来ない、そんな状態で人と付き合ったとしてもどうすることも出来ないだろ。だから、もう一度夏休みに花梨に会うことがあったら言ってくれ、俺のことはもう諦めてくれって」
聞いた最初は何を言っているのかわからなかった。ここまで追い詰められてる渉を見たのは初めてだった。でも、冷静に考えたら・・・花梨さんの好きな人って渉?
訪ねようとしたら渉はもうその場にはいなくて、僕の後ろで行こうとしていた。
急いで振り返り、聞こうとした。なんでこんな話をしたのかを、別に普通に言えばいいだけなのに渉はわざわざ回りくどい言い方でそう言った。何か絶対意味があるはずなんだ!
「渉!どういう・・・」
渉は立ち止まらずにただ一言
「考えてくれ」
それだけ言って立ち去った。
渉が人を幸せにできない?一人の人を幸せにできない?2年で変わることが出来ない?・・・何が言いたいんだろう。
・・・花梨さんの好きな人は恐らく渉だ。でもその、渉は今は何かを悩んでる。この件は多分僕では解決出来ない事なんだろう。
でも・・・唯一、多分解決してくれる人はいるだろう・・・あの人しかいない。
僕は渉がその人に相談すること信じて家路に着いた。
なんだか今日は色々あったなぁ・・・夏祭りにはもっと色々あった。僕的にはこの世に天使がいることに驚愕したけどね。
とりあえず今回僕の語りはこれで終わるんですけどね。ちょっと短めでしたけど・・・口下手ですのですいません。
これからまだまだ色々ありますけど、夏休み編は次とその次で終わります!
長いような短いような夏でしたけど、楽しかったですか?なんかちょっとドロドロしていましたけど、僕的には楽しい夏でしたよ。
・・・まぁこれが僕にとって一番安静な夏になるんですけどね。
さて、次まで待っていてくださいね〜




