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インステッドラブ  作者: 小椋鉄平
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第5話

 みんなで夕飯ということになった。


 みんなは俺が戻ってきたことがとても嬉しそうにそれまでのことを面白おかしく語ってくれる。俺はウンウンと頷いてはいるが、正直言ってまだこの人達を信頼は出来ない。


 それは何故だろうか? 自分ですら疑問になっていた。なので考える。


「たぶん、まだこの身体の違和感が有るからだろうな」


 この今いる自分がこんな顔でこんな形になっていてという印象が俺には無いからだ。それは無意識下で自分を自分たらしめるものなのだろうと思っているが、それが無いということはやはりこの身体は自分のもので無いか、あるいは本当にそこまで記憶が失われてしまったかの二択であるが……。


 正直言って、二つ目の考えは否定できそうだった。


 これは偶然による発見だったが、脳に障害を負った人が一命を取り留めて意識を取り戻した時、ある事が起こった。


「記憶の上書きが出来ない…か」


 そう、新たに入ってくる出来事を覚えていないのだ。しかしながら、家族や友人の名前などは覚えている。不思議な出来事に感じるかもしれないが、これによって新たに入ってくる記憶と昔から蓄積されている記憶は保管される場所が違う事が分かった。


「つまり、何を言いたいかというと」


 自分自身で整理するように独り言のように話す。


 つまり、もし俺がその状況なら周辺の記憶は残ってるはずだ。ましてや、自分の事を忘れていることはあり得ない。


 だからこそ、本当の記憶の喪失はあり得ないだろうと考えられる。


「ふぅ、少し疲れた」


 いろいろな事があったせいで、やけに身体が重かった。結局のところ、俺があの物置を片付けるしか無さそうだった。というのも千尋さんはさすがというか、なんというか料理が上手かったのだ。それに忙しそうにまだ一階したでけたたましく動いていた。


 さすがにそれでお願いするのは気が引ける。


 しかし、今日やりたくは無かったので、明日にして寝る事にした。


 と、ベッドに潜る。


 うん、やっぱり違和感。こんな匂いは俺は知らない。俺のベッドだというのに……。


「忘れよう」


 そう、受け入れるしかないんだ。俺は本当に記憶がなくなってしまってこうやって五体満足で生きている事自体が奇跡かもしれない。だとすれば、これ以上の幸せはないだろう。


 深く毛布を被り、目を瞑った。



 …………


 ………


 …



「お・に・い・ちゃ・ん!」


 何か、可愛らしい声が聞こえる……。そうか、ついに俺にも変な夢が見える様になってしまったのか。存在もしない妹キャラからの定番イベントが夢にまで起こってしまうなんて。


 夢から覚めたくないので、しばらく眠る事にする。


「しっかりしてよ〜。はい、起きる!」


 毛布をひっぺがされる。


「寒いだろ? やめろよ〜」


 力無い声で訴える。もう、三月らしいのだが、それにしては随分と空気がひんやりしている。故に、毛布から離れるのも一苦労なのだ。


 俺は隙を見て、毛布を奪い再び眠りにつこうとする。


「ちゃんとしてよ! 今日から学校だよ! 初日から遅刻したいの⁉︎」


「ま、まじか⁉︎」


 慌てて飛び起きる。さっきまでの毛布への愛は何処へやら、吹っ飛んでしまった。


「んもう、やっと起きた。 いつも起こすのは苦労するよね」


「悪い。今日から学校なんて聞いてなかったから…」


「ん、あっ、さっきのは嘘だよ」


「嘘だったんかい⁉︎」


 自称、妹が舌を出して笑う。


「でも、いい加減どうにかしたいと思わないの? 目覚まし掛けても起きれないのは後々まずいでしょ? その…社会に出てからとか…」


 どうやら、その点に関してはさっきの事もありしっくりきている。実際、昨日目覚ましは掛けたはずだった。今はそれの三十分後を指している。


「うーん、でも俺では何ともならないからな…」


「うん、分かったよ。今度から私が起こしてあげるね」


 美凪から思わぬ提案を貰う。ありがたい事ではあるけど、異性に起こしてもらうのはどうかと思う。


「目覚ましがうるさかったら起こしに来てくれ」


「分かった」


 そういう事なら大丈夫だろうと思った。俺にとっても相手にとっても多少なりとも利益はあるだろう。


「じゃあ、降りてきてね」


 と、美凪は部屋を出て行く……と思ったらひょこっと顔だけ出して、


「お着替え…手伝おうか?」


 ニヤニヤしながら聞いてくる。


「絶対にお断りだ」


 そう答えて早速着替える。俺は上から脱ぐ。


「見てるのは、いいんだ……」


 美凪が呟く。


 別に男の裸くらい見たって、何が良いんだろうか?とか思いながら見ると…。


「……じー」


 マジで見てるわー。 食い入るように見てる。


「はぁ……あの、そんなに見てもいいことないと思うんだけど?」


「女の子は気になるんですよ。 特に異性の身体は」


「そんなもんですかねー」


 その間に着替えを終える。



 美凪と下に降りる。台所を見ると千尋さんの姿はなく、代わりに琴美がそこに立っていた。


「あっ、おはよう圭太。気分はどう?」


 ふと、テーブルを見ると色とりどりの朝食が並んでいた。


「ああ、悪くはない……かな?」


 正直、眠気がまだ残ってるのでいいわけではなかったが、まぁ、じきに良くなるだろう。


「ん……オッケー」


 美咲におでこを触られる。


「うん、なら大丈夫ね」


 みんなが席に着く。俺は昨日と同じ席に座る。


「じゃあ、いただきます!」


 みんなは、素知らぬ顔で日常を過ごしているみたいだ。なんか、俺だけが抜け殻のように取り残されている感じがした。


「……い、いただきます」


 俺も箸をつける。


「今日のはどう?」


 琴美が尋ねてくる。


 どう、と聞いてくる辺り美味いかどうかを訊いているのだろう。さて、どう答えればいいものか………。



 選択肢


 1、ああ、美味いよ


 2、いつも通りだな


















まだ、途中ですのでゆっくりやってますから時間を置いて読んでいただいた方が早いと思いますが、一応出しておきます。

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