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インステッドラブ  作者: 小椋鉄平
4/10

第4話、はじめの一歩

「それで、美凪は何しに来たんだ?」


 俺は純粋に質問したつもりだったのだが…とても不服そうな顔でさらに頬を膨らませている。

 今時、そんなポーズするか? その時代遅れっぽい怒り方にぷっと笑ってしまう。


「ちょっとー! どこに笑うところがあったのよー!」


 我が従妹が当然だといった感じで抗議する。


「いや、悪い悪い、今時そんな怒り方するんだなって笑えてしまった」

「どんな感じよそれ!」

「こんな感じ……」


 と美凪にやって見せる。


「そんな顔してるわけ無いでしょ! 本当失礼ね!」


 とそっぽ向かれる。

 その中でも冷静に情報を分析する。


 うん、多分これくらいでもいいはずだ。

 なんていう美凪への簡単な性格を分析している。


 ただえさえ相手のことがはっきりしないのに迂闊にからかったりはできない。

 どうやら身内なら大丈夫なようだ。


「はいはい。ごめんなさいでしたぁー」

「反省してる気が全く伝わらないんですけどー?」


 もう一度確かめるつもりで言ったが、大丈夫なようだ。

 美凪が一旦咳払いをする。


「それで…さっきの質問の答えだけど…」

「ああ、何聞いたっけ?」

「…………」


 ジト目で俺を見る。

 もう一度怒ってくれると思ったのだが…。


「嘘だよ。それで、なんでここに来たんだ?」


 もう一度、覚えてると証明することも兼ねて、そう、答える。


「あなたが目覚めたって聞いたので飛んで来たんじゃないですかぁ」


 あー、そういうことか。という感情しか出てこなかった。

 いくら、自称“従妹いもうと”とはいえ、自分と少しでも血が繋がっているという証なのかもしれない。


「でも、元気そうで良かったー。私も4月からはここに通うから、一緒だしね」


 ん? なんか変な発言があった様な……?


「ちよ、ちょ、ちょっともう一度言ってくれないかな?」


「え? 元気そうだし良かった?」


「その後」


 美凪は首をかしげながら、


「私も4月からはここに通うから?」


「そう、それ!」


 俺は【なんで、こっちに来るんだ!】という表情を作るが、当の美凪はキョトンとするだけで、まるで俺の表情から俺の言いたいことを読み取れていない。

 溜息をついて、再び口を開く。


「なんで、こっちに来るんだ?」


「え? あれ? 聞いてるはずだけど…?」


 今度は表情を表に出さずに後悔する。


 また、地雷を踏んでしまった。


 美凪には今の俺の表情に不満らしく、ぷんすかしている。


「さっきから冷たいんじゃあ無いかな⁉︎ いくら私の鉄壁メンタルでもそこまでされると壊れちゃうよ」


「わ、悪い。 久しぶりだったんでな、つい…」


 さすがにやり過ぎたかと思い美凪に謝る。


 だが、俺が誤った時の美凪の反応はとてつもなく不可解であった。


 美凪はなんか妙に身体をくねらせて、なんか独り言らしきことを呟いている。

 しかも、顔も赤い。


 本当に大丈夫なのだろうか、我が従妹は……。


 俺の無事を見に来た従妹を逆に心配してしまう。


「そういや、みちるちゃんもすっごく心配してたよ。何で生き返って連絡1つ無いんだーって」

「ああ、そうなの」


 どうやら、俺の家系は女が多いらしい。このことですら、違和感を感じる。


「ん? どったの?」

「いや、何でも無いよ。 …ああ、実は俺の部屋片付けられちゃってて何も無かったんたんだ。だから、今から千尋さんに聞きに行くところだったんだ。 携帯が手に入ったらまた連絡するからって言っといてくれ」


 美凪は「うん、分かった」と頷き、部屋にあがる。


 あいつ、どの部屋にするか分かってんのか?


 前にも言ったと思うが、俺と琴美と美咲以外に幾つか空き部屋がある。でも、おそらく口ぶり的に言って、あいつが選ぶ部屋はだいたい予想がつく。


「まぁ、いっか」


 俺的には実害がなければ別に向かい側だろうが、どうでもいいのだ。


 俺は台所にいるであろう千尋さんのところへ向かう。


 そして、千尋さんに俺の部屋のいきさつを話して荷物がどこにあるかと聞くと。


「まぁ、ごめんなさい。気づかなかったわ……ええと……」


 千尋さんは今、料理中でその場所に行きたいのだけれど目が離せなくて、困ってる感じだった。


「良いですよ。場所だけ教えてもらえれば。行きますから」


 そう、千尋さんに言うと、「あらそう」と場所を丁寧に教えてくれた。

 まだ、この家の間取りを完璧に把握出来ていない自分にとってはこんな丁寧に教えてくれるのはありがたかった。


 俺は千尋さんに「ありがとうございます」と頭を下げてその場所へ向かう。

 どうやら、というか二階のたくさんある部屋の中の一つを物置きにしたらしく、そこに眠っているらしい。


「んーと。……ここか……」


 そこは、位置的に言えば俺の部屋の二つ隣だった。

 早速、開けてみる。ここの部屋は各々全てに鍵は無い。

 だからこそ、勝手に入るのはタブーとされている。

 と、千尋さん以外の住人に言われたが…はっきり言って、「そんなの当たり前だよね」と思った。

 ここでの俺の生活がどれほど男として荒んでいたかが、分かるシーンだったと思う。

 そいつが居たら、殴ってやりたいと思うよ。羨ましすぎて……。


 開けてみる。


 そこには、物置らしく散らかっていた。

 いや、バラバラになっていたわけでは無い。

 段ボールだらけで、足場が無いほどに段ボールが敷き詰められていてどれが自分のものか全く分からない。


「やっぱり、千尋さんに頼むか……」


 俺は戸を閉める。

 なぜだか、一発芸人が一発芸を完全にミスった様なシーンとした空気になっていた。


 仕方なく、自分のベッドしかない部屋に戻る。


 結局、あの物置みたいなとこからパソコンを開けられたとして何が入ってるのかが気になっていた。何か情報が得られると思って開けようとしたパソコンだったが…とてつも無く胡散臭かった。


 まず、他の物とかは物置に移動されたのにパソコンだけは残っているというのが一つの理由だ。

 後の理由はそれに基づいた俺の勘が告げている。


 ーこれはヤバイとー


 ってなわけでとりあえずの目標はパソコンの中身を閲覧することにした。


 そんな時、ノックの音がする。


「ねぇ〜。にぃにぃ〜。いる〜?」

「ああ、入れよ」


 扉の外にも聞こえる大きさで答える。


「へへ、おっじゃましまーす!」


 美凪が嬉しそうに……ってよだれが出そうな顔だよあれは⁉︎

 このもなんとかしないとじゃね⁉︎


 危機感を覚える。

 なんか、今まで記憶がない中で会ってきたけど…どうやら千尋さんの情報はあてにならない説が俺の中で浮上しつつある。

 どう考えても、美咲より美凪の方が要注意人物だろ⁉︎



 俺の頭の中


 私の計画に一番の危険人物


 美咲≪美凪



 そう、固定された。


 それと同時にやはり頼りになるのは自分自身だけだと感じた瞬間だった。


 そんな事している間にも、美凪は俺の部屋を体を回しながら、見てる。そして、同時に眉をひそめ、納得いかないといった表情をしている。


「ねぇ、なんで何もないの? にぃにぃの部屋ってこうだったっけ?」

「どうっていうんだよ?」


 この瞬間を俺は逃さなかった。

 第三者から今の俺を見たら、おそらく目からスターが出てたっていうだろう。

 そんな事はいい。

 これはチャンスだ。今、パソコンが見れない中またとない情報を手に入れる絶好の!


「もっと…なんていうか……散らかってて……なんか機械ばっかあった様な…分かんない」

「そうか……」


 それで十分だ美凪! お手柄だ!


 数少ない、俺という名の中にいたはずの本当の俺に一歩近づけた気がする。

 そう。俺は確信している。ここにいるのは俺じゃない。俺が何かしらの形で身体を貰ってるもしくは借りてるものだと。


 だが、俺には記憶がない。

 正確には交友関係の、だが。


 だからこそ、今考えなければならないことは本当の俺をこの身体に戻す事だ。



















いつも読んでいただきありがとうございます!

小椋鉄平です。


いや、大変長らくお待たせいたしました?

更新です!


少し、私用でバタバタしてしまって、当初の私の予定より遅くなってしまって申し訳ありません。

でも、約束を守ってるので勘弁してください!


今後ともよろしくお願いします!

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