第1話
目が覚めたら、病院でした。
(あれ?俺はどうしてここに…)
特に、何か病気をわずらわせた、とか、交通事故にあった記憶もない。
もしかしたらそこの記憶だけ飛んでいるのではなければ…だが…。
「圭ちゃん!」
俺の真上にまるで今にも泣きそうになっている女の人がいる。
「ああ…、もうダメかと思ったのに…目覚めて良かったわ…」
そう言って抱きついてくる。俺には何のことだか分からない。
何でだ?圭ちゃんというのは俺なのか?分からない。
だが、俺が圭ちゃんと呼ばれるのに違和感があるということはよく分かった。
なんか、その後、医師の先生が現れて、とびきり驚いた顔で肩を揺すって、まるでおかしいとでも言いたそうな顔で質問される。
私のことは見えるか?とか、声は聞こえるか?とか、体は動くか?とか。
頷くのも面倒になるくらいの質問をくらった。正直この先生はウザいと思った。
だけど…
「では、最後に…あなたの名前は?」
「お、俺の…名前…圭ちゃん?」
「いや、正確に答えて」
「え、ええと…」
自分なりに思い出そうとするが分からない。
やがて、
「わかりませんか?」
先生がほぼ断定するように聞いてくる。
「う、うん…」
頷くしかなかった。全く思い出せない。
「そんな…」
“家族らしき人”。前述での彼女は、喜びで泣いている途端に血を抜かれたような表情をしていた。
「お母さん、目覚めただけでも天文学的な数字です。これから、またつくっていけばいいですよ。記憶は」
医者にそのように言われた“母”はまた泣いた。
「あの…ここは病院ですよね?何で俺はここに…?」
先生が“母”と目配せした。母が頷くと先生が口を開ける。
「君は脳死だったんだよ。一週間前に君は車にひかれた。我々は、君を脳死だと判断した。家族の方と判断し、その結果、1ヶ月の延命治療をし、それでも目覚めない場合。君を正式に脳死という“死”だと判断し、臓器を移植してくれるドナーにするという約束を交わした。君が目覚めるのが後三週間遅ければ君は死んでたね。僕としても、君を殺すことにならなくて良かったよ」
先生は「ここまでは分かった?」と聞いてきたので、頷くと、俺に近づき
「さて、問題は君の記憶がなくなったあるいは、一部欠損してしまったことだ。今のところ、喋れてることからして日常に影響が出るわけではなさそうであるが…交友関係で少々難ができるかもしれないな」
「それは、ご家族との対話などである程度補完できる」
連続で話し出す。さらに、
「念のため、もう一週間入院してもらって、検査をしよう。それでよろしいですね」
“母”は「はい」と言った。それで先生は一言言って帰ってしまった。
「本当に大丈夫?どっか痛いところはない?」
「大丈夫だよ。ほら」
そう言って、腕を曲げ伸ばしする。
“母”はひとまずといった感じて息をはく。
「でも、記憶がないものね。…ええと、どこから説明すればいいのかしら…ちょっとあなたの周りは複雑なのよ」
そんなことを言って、考え出す。なんか、「うーん…」とか言いながら唸ってる。
それが、何分たったろうか、少なくとも、1分はたったと思う。
「まず、名前は?」
ジビレを切らした俺が先に切り出す。
「あっそうだよね。私は、山名 千尋よ」
「じゃなくて、お れ の」
千尋はハッとして「そうだよねー」と肩を落とし
「あなたの名前はー………」
言おうとして、黙り込んでしまう。
「お、おい…どうしたんだよ?」
そんなに俺の名ごときで何か厄介なことが起こってるのか?と不思議に思ったが。
「あなたの名前は圭太」
「苗字は?」
「みょ、苗字は………“今は山路”よ」
「え……………」
俺は思考停止してしまう。だって、“母”って呼ばれていたくらいなんだから俺も同じ苗字なのが普通だと思っていたから。
俺は慎重に言葉を選ぶために一拍おいて、
「その…“今は”について聞かせてもらってもいいかな?」
これが、精一杯の考えて出した言葉だった。
いかがだったでしょうか。自分の初の恋愛ものを書いてみました。
正直言って、恋愛ものは苦手ですが、やっぱり好きなので書いてみたいと思ったので書くに至りました。
あわよくば、なんでもいいので(エロゲーでも)なんかキャラがつけばいいかな。なんて、到底かないそうにない想像しながらやってます。
何か、疑問点などありましたら、ツイッターでもなんでもいいので知らせてもらえればと思います。
それでは。
妄想主義万歳! 小椋鉄平