『日本改造計画外電』その弐拾肆『多夫多妻』ドラマ(10)結婚しない男に刑罰を与える
今日のリモート会議参加者は、またもピロユキ氏だ。
「本日は、ネットで話題になっている事柄に法的見地からお答えを願います。」
「ピロユキさん、私は専門家ではありませんが、善処します。」
「では、最初の話題です。『結婚しない男を処罰するべき』です。」
「分かりました。ならば、無期禁固刑にしましょう。
四十歳になっても独身の女性全てを対象にします。
そうすれば、国家予算で一生食べるに困りません。
しかも働く必要は無い。只飯を喰らうのみですよ。
しかも、労働して報酬を受け取る事も許されています。
ベーシックインカムの支給こそ停止しますし、
あらゆる娯楽、スマホ、読書も禁止ですが、
全ての問題は、解決しますね。」
「………………………………………………………………………………
まあ、確かにそうなんですが、良く分かりますね。」
「ん? 大体男叩きをする連中の思考に外なりません。ならば、
『婚期を逃した売れ残り女性の生活費』を負担しましょう。
ですが、只でとはいきません。これくらいの対価を払いなさい。」
「で、刑務所の運営費ってどうなっているのです。」
「勿論、税金です。既に、就職氷河期世代を作った連中をぶち込みました。
今、刑務所の不足分を増産している最中です。勿論、税金で。」
「いっそ、死刑にした方があと腐れなくてよかないですか。」
「それは、なりません。日本帝国の民は、全て陛下の私物。
陛下の私物の命を奪うなど、越権行為に外なりません。」
「あぁ……そう言えば、そんな記述がありましたね。憲法に。」
「一応念のために言っておきますが、就職していれば無罪とします。」
「そうですね。それくらいは、御目こぼしするべきでしょうね。」
「但し、年金受給者は、有罪です。請求権放棄の書類に署名すれば無罪。」:
「つまり、『男性だけ16時間働け』『共働きを強制する男を処罰』
も同様。要するに、『女性も働け』と言う訳ですね。」
「当たり前です。『働かざる者食うべからず』。常識です。
勿論、人工透析やステージ3以降の癌であれば、
障碍者認定されますから、様々な保障をしています。」
「そこまで特殊な事情でもなければ、『女性も働け』と言う訳ですね。」
「そういう事です。回答は以上です。」
「はい。ありがとうございました。」
* * *
今日のリモート会議参加者は、またもピロユキ氏だ。
「今日も質問が、来ています。ピロユキさんにお答え願います。」
「はい。何でしょう。」
「質問者は、ミセス・メリー。三三歳の共稼ぎ主婦です。夫が、いわゆる『食い尽くし系』です。結婚一年未満ですが、分かって良かったです。もし、子供が産まれたら、大変な事になるでしょう。どうすればよいでしょうか? 以上です。」
「あぁ……最近耳にしますね『食い尽くし系』。まず、『食い尽くし』とは、何なのか。全く分かっていません。原因、メカニズム、治し方、全て不明です。」
「取り合えず、精神疾患の一種でよいのですね。」
「分かりません。それすらも不明です。が、現実に発生している。その現象に対して、対処療法するしかありません。ここまではいいですね。」
「分かりました。話を続けて下さい。」
「で、現実に発生している現象から逆算し、私なりに分析しました。
つまり、『食い尽くし系』とは、自身の食欲を制御できない。
そう言う性質を持っている。そう定義しましょう。」
「で、その制御できない理由は、不明。でも、できない。
そこだけ分かっている。そう言う定義ですか。分かりました。」
「ですので、対処法は、二つあります。両方実施して下さい。
一つ、『食い尽くし』とは、同じ食卓を囲まない。
まず、『食い尽くし』以外の人達だけで、食事をすませる。
その後、『食い尽くし』の方々が、食事をする。
そもそも、制御不可能な部分を我慢しても良くない。
後で、ドカンと反動が来る。みたいになりかねない。
ですが、『家族一緒に食事をする事』は、制御可能です。
ですから、制御可能な部分を我慢すればいいんです。」
「では。外食とか、夫婦の会話は、どうします。」
「まず、外食はしません。『食い尽くし』以外の人達だけで、外食する。
また、『食い尽くし』は、家で食べるなり、別な店で外食する。
夫婦の会話は、食事中にする必要ありません。食後でも良いのです。」
「……分かりました。では、お話を続けて下さい。」
「では、二つ目、『食い尽くし』の胃袋の大きさを計る事。
そして、胃袋の大きさに等しい量の食事を提供する事です。」
「……分かりました。東アジア系民族、特に日本人は、胃袋が満タンになると、脳が『満腹になった』と認識し、それ以上食べなくなる。確かにそうですね。」
「そこで、『食い尽くし』が、米を何合食べるた時点で『満腹』と言うかで、計るのです。
具体的には、家庭用炊飯器の上限って、米五合が標準なんですよ。そこで、丼一杯に炊いた米一合をよそう。おかずは、レトルトで十分です。牛丼、中華丼、親子丼、カレー、ビーフシチューなどです。
生米一合で、約150グラム。炊くと約200グラム。これが目安です。」
「……分かりました。それで、『食い尽くし』が、満腹になる量だけ食事を提供する。我慢する必要がなければ、ストレスもない。ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。今後もよろしくお願いします。」
* * *
今日のリモート会議参加者は、またもピロユキ氏だ。
「今日も質問が、来ています。ピロユキさんにお答え願います。」
「はい。何でしょう。」
「質問者は、ミセス・マリア。三一歳の共稼ぎ主婦です。年収百万円の仕事を今は育休中です。第一子の育児に孤軍奮闘しながら、家事もこなしています。しかし、ここで問題が発生しました。
夫が、家事を手伝わないのです。
『何の為の育休だ。』『誰に食べさせてもらっている。』
『お前の育児が下手だから子供が夜泣きする。安眠妨害だ。』
等と理由を付けています。夫に家事を負担させて私を育児に専念させるには、どうすればよいでしょう。よいアドバイスをお願いします。」
「まず、旦那さんの年収を明記していませんね。これでは、旦那さんの言い分を完全に判定できません。よって、ミセス・マリアのアドバイスに注力します。
ここまでは、いいですね。」
「はい。分かりました。お話を続けて下さい。」
「こういう時は、『競争原理』です。今から言う事は絶対に口にしないで下さい。但し、念頭に置いて交渉をしてください。いいですね。」
「はい。お話を続けて下さい。」
「お前が愛する妻は、他の男に寝取られる。嫌なら、家事を負担しろ。」
「……分かりました。それが、『競争原理』なのですね。お話を続けて下さい。」
「ですから、家事を手伝ってくれる男性を家に入れるのですよ。
家事を負担しない夫に代わってヤッテくれる男性を第二夫とします。
『多夫多妻』なのですから、誰とセックスしても合法合憲です。
如何でしょう。」
「……分かります。ですが、家政婦を雇えばよいのでは。」
「その場合、夫に全額負担させます。払いきれなければ、第二夫。」
「もし、夫が、妻に愛想を尽かして失踪した場合は?」
「子供の養育費を請求する為、訴訟を起こす事はできます。また、第二夫と結婚して新しい家庭を築く事も可能です。こんな所でしょう。」
「……分かりました。」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ……アリーヴェデルチ!」
ピロユキ氏の「今は、何でも『多様性』。こう言う『生き方』もあり。」は、「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ……アリーヴェデルチ!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某運命の奴隷とも無関係に相違ない。
「……分かりました。本日は以上です。ありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。今後もよろしくお願いします。」
<END>




