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母を求めて三千里。序

 一ヶ月が過ぎた。

 この世界のことがよく分かってきた。

 今俺がいる国はヴァルハールという国らしい。

 そしてこの街はその中の中堅どころのデイイムという街だ。

 最初に来た街で正解とい言わざるを得ないようないい街だ。人も物もそこまでレベルは高くなく、外に出てもあまり危険がないモンスターが出てくるくらいだ。ヤラセと疑われるかもしれない!まぁヤラセなんだけど。

 そしてこの世界の特徴なのか知らんが、なんでもできる魔法があるだの、願いが叶う場所があるだの、とにかく願いを叶えてくれるらしい。

 普通なら元の世界に戻るために冒険するのだろうが、そんな勿体無いことはしない。絶対に戻りたくない!そんな気がする。

 いろんなことは思い出せるが唯一なんで異世界にきたのかは覚えてない。思い出さなくていいんだろう。知らんけど。

 このままこの最初の街にいるのも悪くはないしエリザベスと結婚するにはそうするしかないが冒険したい男心を捨てられなかった。

 ここで天才サトショーくん。まさかの奇策に出る。

 なにか気になるだろう?まあ見てなって。


 「クレハーさん。いやお父様!一つ提案したいことが!」


 「おお。ワシもショウタに用があったんじゃ。」


 「なんと、お父様のほうからも!」


 「ほれ、今月の給料だ。よく働いてくれたな。」


 初給料ほどわくわくが止まらない時はないよな。オラわくわくしてキタァ!いかん冷静に。


 「私からは一つ、お願いがあってきました。」


 「単刀直入にいうと、娘さんを僕にください!」


 「.....ほう。それは殺してくれということじゃな?」


 そうくると思ったさ。だが交渉は俺の得意分野だ。


 「いやすいません。端折りすぎました。」


 「説明させていただきますと、私は冒険に出ようと思ってます。ですが1人では少し心許ないです。しかし、しかしです!エリザベスさんさえいれば、この一ヶ月で築いた信頼があれば!必ず旅が成功すると思います!」


 「それじゃショウタのためにエリーを差し出せと言っているもんじゃないか」


 「いや、エリザベスは言ってました。母の病気を治す為ならなんでもすると。」


 「なっ...エリザベスがそんなことを...」


 「だからお父様。そのお手伝いを私にさせてください。」


 決まったっ!1週間考えた俺の策が!スーパーのバイトで自分の欲に忠実に動いた経験が役に立ったぜ!

 どんだけエリザベスに話しかけたと思ってるんだ。

 しかもお前の目を盗んでな!


 「.....分かった。だが一度エリザベスと話をさせてくれ。話し合った上でまた許可を出す...」


 そう言ってクレハーは出て行った。

 いやぁ我ながら汚くもいい策よ。弱みに漬け込むなんてまさに悪党!

 この計画に至ったのはバイトを始めて3日。

 あの日もいつも通り休憩をしていたら.....


 「ショウタ!いつまでエリザベスと喋ってるんだ!お前だけ明日休みなしでもいいんだぞ!」


 嫌なバイトの店長の真似がうますぎるぞクレハー。

 こんなことを言われたらエリザベスと2人の時間を増やすしかない。そう決心した。

 それからはエリザベスなクレハーの弱みを聞いたり家の事情をそれとなく聞いたりしていくうちに今回の作戦を思いついたわけよ!

 作戦のハマりっぷりの余韻に浸りつつ給料袋を開け、きっちり約25万ミュールもらった。額だけ見たらいいかもしれないが実際は命がかかってるし、早起きだし、割りに少し合わないくらいだ。早起きだし。

 森が危なくないと感じるのも最後の週くらいからでそれまでは全然恐怖。あいつら容赦ねえよぉ。我異世界転生者ぞ。

 そういえばクレハーにスキルを一つプレゼントしてもらった。10000円分くらいのね。べ、別に嬉しくないんだからね!現金なやつだと自分でも思う。

 手を筒状にして覗き込むと遠くまで見える望遠魔法というやつらしい。そのままだな。

 それのおかげでうまく立ち回れている。

 それっきりステータスに変わりはない。

 なぜならなにかを1上がるのに10万かかるからだ。

 インフレか?インフレなのか?今のうちに株でもやっておこうかしら...

 そんなことを考えつつ2人を待っていた。



ー2時間後ー



 「ごめんなさい。旅には1人で行って欲しい。」


 「え」

 

 「ということだ。私達もついていって治るなら行ってやりたいがその間の生活のことを考えると動けなった。」


 「え、話がちが...」


 「言いたいことは分かる。タダだとは言わん。もし本当に治せたら」


 「エリザベスはお前にやろう」


 「」


 「や、やっぱりそんな条件じゃだめ」


「わかりました。絶対に見つけて、そして治してみせます!!!」


 「ありがとう。ありがとうぉ...」


 「旅をするなら微力ながら力を貸そう。」



ーギルド商会ー



 こうしてクレハーに紹介された商会(激うまギャグ)がここ、ギルド商会だ。

 このギルドはよくあるやつで、仲間を集めたり、クエストを受注したり、酒を飲んだりとありきたりな場所だ。なんでもおんなじ系列が国を超えて何個もあるらしい。チェーンギルドでもあるということだ。

 俺は早速旅の仲間を集めるチラシを作った。

 仲間求む。近接系職優先。強者優先。

 ざっとこんなもんだ。上から目線に見えるかもしれないがリーダーになるのは俺だ。それくらいどんとしてなきゃ首領(ドン)にはなれないってね⭐︎(激うま)

 なんか多いな。こういうの。疲れてんのかもな。

 まあ仲間の方はそんな感じだが旅の計画は何も進んでいない。金をもう少し必要そうだしクエスト行ってみるか。

 クエストといえばクエスト嬢!俺はこいつが楽しみだぜ!

 行くクエストは...マームの森のブルーワームを10体倒してこいとのこと。ブルーワームとはでっかい青いミミズみたいなやつ。俺虫超嫌い。

 そしてそして報酬は...ひみつ?こういうの気になるからやめて欲しいなぁ。まぁこれにするけど。やっぱ1番最初に取ったのが運命じゃん?

 てことでクエスト嬢に会いに行く。

 

 「こんにちは。クエストの受注ですか?」


 「うっ...!!」


 俺は心臓を抑えた。たしかにエリザベスが1番好きだ。それは変わらない。だがこの人。俺の初恋の人にそっくりだ。あの幼稚園の先生にそっくりなんだ...

 まあ同じ園の若いイケメンの先生に盗られたけどな。はいはい撤収撤収〜。

 少し違うのは髪が青いことぐらい。ただロングで、タレ目で優しい目。身長は大きめでそして何より.....

でっっっかいのだ。これに尽きる。しかも決まりなのかみんな同じような薄い服を着ている。ここの社長の好みが知れるな。分かってらっしゃる社長。


 「は、はい!このブルーワームのやつなんですけど」

 

 「はい。わかりました。では今回の任務のサインをお願いします。」


 「サイン?」


 「はい。こちらでは怪我や死亡した場合の保険として本人の意思でクエストを受注したかどうかを確認するサインです。」


 「あーすいません。特にサインとかないんですけど。」


 「ギルドに登録してないようですね。でしたらこちらの紙に手形とこれから使うサインの記入をお願いします。それでギルドへの登録が完了です。」


 「じゃあサインは...(サトショー)これでお願いします。」

 

 「あとは手形をおしてもらったら完了です。」


 手形を押すとか紙が光り、今書いたサインや手形が消えていった。多分魔法だろう

 意外としっかりしていてびっくりした。その辺はもっと曖昧なものかと。確かにこれだったら悪いことは防げそうだ。さすがシャッチョさん。


 「登録は完了です。今回は依頼主はこない形でのクエストなのでここからは頼まれた内容をお願いします。」


 「これってどう証明すればいいんですかね?」


 「こういう場合は死体を持ってくるか、本人が直接赴くかなどが多いいです。」


 「虫直掴みはちょっと...」


 「でしたらこちらで現場に行ってもらうよう連絡しておくのでそこはお任せください。」


 こうして無事クエストは受注した。

 それにしても初クエが虫とはいかにも最初のクエストって感じ。でもあんまりこのタイプのジムリーダーいないよね。いかにも最初っぽいのに。



ーマームの森ー



 そんなことを考えてるうちに森の入り口についた。

 そこには金髪のいかにもな女がいた。


 「おっそい!どこほっつきまわってたのよ!」

 

 見た目はJKくらいだろうか。受付嬢を見たあとだとその高低差で風邪引くくらい人当たりがきつい。こいつのポリシーは多分攻めて攻めて攻めまくることだろう。

 ただそんな見た目とは裏腹に、ごっつい剣を持っている。すごく、大きいです。

 

 「あ、すいません。えっと、依頼者の方ですか?」


 「そうよ。悪い?」


 「いや別に大丈夫ですけど...」


 このツンツンした感じ。先が思いやられるな。

 だがこれも悪くない。むしろ結構いい方だ。


 「じゃあ早速倒しに行くから。着いてきなさい!」


 道中なんとか話してみた。聞いたところ、その地のモンスターを狩る修行中だが虫がキモく、この街から出られず3ヶ月が経過してたらしい。そこで焦りを感じてギルドに依頼したそうな。

 なんだよ可愛いとこあるじゃんかこのギャル。

 ここまで王道をいかれると逆に好きになってしまうな。


 「!。上よ!」


 「な、いきなりだな。」


 「私は前に行くけどあんたが倒しなさいよ!あんま近づかないから!」


 1秒で矛盾しやがったぞあの小娘。

 まあいい、移動中新しいスキルを覚えたんだ。今回は魔法じゃない。スキルだ。

 

 「当たれっ!」


 そう言って放たれた矢は炎を纏い、ブルーワームに刺さり一撃で仕留める。


 「効果抜群ってとこか!」

 

 「一体程度で満足するな!まだ上...やばいめっちゃ降りてきたーー!!!」


 「任せろっ!」


 今のところ人生で2番目にカッコついてるだろう。

 ちなみに1番は小学校の時のバレンタインだ。唯一母親以外からもらえるチャンスを拒否したのだ。最高にダサいぜ。


 

 だいたい片付いたな。

 調子乗って20はいっただろう。おれは遠いとこから撃ってるだけでよかったが彼女は違う。あんなキモいのに近づいたのだ。2度とここには来ないと涙目になっていたのも俺は見逃さなかった。恐ろしいほど可愛い顔俺でなくてもみんな見ちまうよっ!


 「あ、あのー大丈夫ですか?」

 

 「別に平気よ!それより早く帰りましょ!報酬!渡さなきゃだし。」


 たしかに。こんな年下の子だが貰えるもんは貰っとこう。サトウ家のモットーだ。結構な量の日本人がそうなってしまうな...やめよう。



ーギルド商会ー



 (またあの受付嬢さんに会えるのか。)

 そう思いながらギルドへ帰った。


 「お疲れ様でした。クエストは無事達成できましたか?」


 「はい。証言者には依頼主の...名前なんでしたっけ?」


 「言ってなかったわね。ミウよ。」


 「ミウさんに見てもらいました。」


 「わかりました。ではこちら依頼者です。報酬はミウさんにお任せします。クエストを利用する時はまたお声がけください。」


 「じゃあ私の宿いくから。着いてきて。」


 「えっ...」


 私の家、今誰もいないから。この言葉、男が聞きたい言葉一位ですよね。いやまあ言われてないけどさ。

いきなり日本人っぽい名前が出てびっくりしたのも束の間、すぐに家に招待されてしまった。

 ま、まあ?俺としては?そんな報酬も悪くはないっていうか?

 ソワソワした気分でミウに着いて行った。



ーある宿ー



 「し、失礼しまーす」


 女の子の部屋に行くのなんて初めてだ。宿だけど。

 それでも一応作法をね。紳士たるものですよ。

 ミウがベットに座るや否やすぐに言った。


 「報酬は私がなんでも言うこと聞いたげる。」

 

 「な、なんでも...?」


 「そう、なんでもよ。」


 俺の心の中の天使と悪魔が戦い出した。

 天使曰く、「ここで始めてしまってはダメ!あなたにはエリザベスがいるでしょう!」

 悪魔曰く、「全員喰らっちまえばいいだろ!それがお前の望んだ異世界転生だろ!」

 「そうだそうだ!」「これはお前のためでもあるんだぞ!」「いい加減素直になれ!」

 俺の中悪魔多くね?天使がかわいそうよ?

 だが両者の言い分わかってしまう。まあ自分だし分かるのは当たり前だけど。


 悩んでいるとあることを思い出す。

 (俺そういえば仲間集めてるんだったなぁ)

 (こんな娘と旅できたらほぼ旅の目的変わってないしオールオッケーっしょ)


 本当の俺は悪魔寄りの天使らしい。


 「わかった。じゃあ俺の仲間になってくれ。今ちょうど前で戦えるやつ探してたんだよ。」


 「え?!そんなんでいいの?」


 「ああ。まあ嫌ならほかのにするが...」


 「いいわ。なってやるわよ。仲間に。」


 多分夜には後悔するだろうが新しい仲間ができたっぽい。

 頼む夜の俺。後悔するなら色々済んだ後にしてくれ...



続きを書いてみたので評価やブックマークをお願いします。

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