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死んで、笑って、(2)



 塔の仕掛けを調べ、合言葉を放つ。どれも今までやってきたゲームとかアニメに則ったいわゆるお約束をやってみた訳だが。

 

 自分が勤勉な日本人であることを、まさか恨む日が来るなんて.....


 「当たり前だ。この塔作ったの俺なんだから。」


 この一言を言われた時ムカつきと、そりゃそうかという感情が競ったが腑に落ちる方向で考えた。

 

 薄目に張られた藁の上で大の字になる。

 目を狭めなければ、塔の窓など到底見えない。


 ため息混じりに、起き上がる。髪を掻き上げながらこの世界での正攻法、そしてカズマサが言っていたこの塔唯一の侵入方法全てに辻褄が合う策を考えた。

 ただこの方法自体あまりショウタは好ましいと思ってない。

 

 その方法は金によるステータスの強化だ。

 と言っても今は、生活費を抜くともはや小学生のお小遣い程度にしか自由に使えるお金はない。

 そもそもなぜ好ましくないのかといえば、一言で言えば人間で無くなっている気がしたからだ。見た目は変わらないし、言動もユニークたっぷりの減らず口のまま。

 ただ明確に、日本にいた時の自分と今の自分にズレを感じてしまうからしたくはないんだ。


 ここで寝っ転がったままでは何も始まらない。

 そう決心し、ひょいっと跳ねて穴から脱出する。勢いがついたせいかもう一度背中から落ちそうになると今度はカズマサが手を取ってくれた。


 「ようやく、正面から行く気になったか?」


 「ああ、どうやら本当に登るしかねえようだな。」


 楽な手段はない。腹を括るか。


 「まあ頑張れっ、よ。」


 応援の言葉と共にショウタの腕を引き穴から遠ざける。

 案外力が強く、少しよろけた。

 その間にカズマサは家に戻りながら餞別だと言わんばかりに手を振る。自分の背中側にいる人に軽く手を上げカーブの持ち方のような手を振っているが果たしてあれがかっこいいのかは分からない。

 

 「さっ、邪魔者もいなくなったことだしゆっくりと攻略していく———」


 か、と言い切るタイミングでここでまさかの再会を果たす。

 これでもかと主張するモヒカン、熊と間違う程発達した見せ掛けのガタイ、パンクな衣装を見に纏った奴こそ俺の異世界生活の第一歩の落とし穴に嵌めた奴だ。

 あの時に侍らせた女2人をまだ横に置いて悠々と観光してやがる。そうか、あの時の酒代だけではもちろん使いきれず、街を転々と回り人の金で遊んでやがるのか!許さん!


 あの遊び人、まだ金は残ってるんだろうな?

 怒りに沸々とどころかもう沸騰寸前。蒸気で塔へ登れるくらいには怒っている。

 塔の周りは広場となっていてくつろぐスペースが設けられている。今まではな。これからここは地獄と化すのさ!

 広場の端にある木陰に隠れたベンチでいちゃついてるいつかのヤンキー目掛けて一歩、また一歩とどんどん速度を上げて近づく。

 残り100mほどの地点で、ショウタは一気に走り出す。


 奴にめがけて走り出した———


 かのように思えたが、すぐに人にぶつかってしまった。それも女性らしくショウタは正気を戻し急いで謝る。


 「あ、悪い!今正気じゃ無くって.....じゃあないよな。ほんとにごめん!」


 全身をローブに包まれた彼女はフラフラと立ち上がりショウタに対して指をさす。

 そもそもなぜ女性と見抜けたかと言えば華奢で綺麗な腕や脚がローブの隙間から見えたからではない。いや本当に。

 

 「お前.....テツジの匂い.....する。」


 ローブの女の色白い肌を覗き見ているとショウタは指を差される。


 「え?テツジさん?テツジさんなら上司というか友達というかなんというか.....うわぁ!」


 全身ローブの女はショウタがテツジの知り合いだとわかるや否や飛びかかる。


 攻撃をなんとか避けたが、相手は追撃の手を緩めない。


 

 ローブの女は魔法によって攻撃の出力を強化された腕や脚を力いっぱい叩きつける。ショウタは防戦する一方で反撃の余地はない。何度も攻撃を喰らうと、胸の前でガードしていた腕が門を開くように弾かれる。

 そしてガードが崩れた衝撃に動揺した瞬間ローブの女は鳩尾に蹴りを入れ、ショウタを塔の壁に叩きつける。


 叩きつけられ、座り込んだショウタは自分の背中と塔の安否を確かめる。後ろを振り返ると塔は無事、だが背中が無事じゃない。


 「けほっ...なんだあの女、いきなり殴りかかりやがって.....」


 ローブの女は獣のように一歩一歩にじり寄る。まるで今の攻撃でまだくたばってないだろうな、と言わんばかりに。


 「次.....いくよ.....」


 ぼそぼそと言葉を吐くのとは裏腹に俊敏な攻撃がショウタを襲う。


 しかしショウタは一度見た速度は見破らんばかりにひらりと躱す。無論まぐれである。


 まぐれに避けたショウタは策を思いついたように塔の壁のあるポイントに向かう。

 そのポイントとは.....


 「ここだろ!」


 そう言ってポイントについた瞬間、ローブの女もすぐに追いつきショウタに向かって鋭いパンチを繰り出す。その腕はまるで魔物のようなオーラを纏って攻撃する。


 「んがっ!.....」


 ショウタが向かい、ローブの女に攻撃させた場所は

先ほど塔の仕掛けを調べた時に、レンガが射出された場所だった。見事額のあたりにヒットした瞬間ローブの女はよろけてしまう。


 その隙にショウタは絶対に壊れないと確信がある塔を基盤に足を置く。もし地面に対して足を基盤にしたら綺麗に整備されているコンクリートが割れ街を壊してしまうからだ。クラウチングスタートの要領で足に力を溜め、相手がよろけた瞬間、常人ではなしえないようなタックルをローブの女にかます。


 「んぼぇ!.....」


 抱きつき合う形になりながら10メートルほどぐるぐると2人して転がる。

 ショウタは馬乗りの状態でローブ女と対峙する。


 「これで勝負はついたな、なんで急にこんなことするんだ?」


 ショウタはローブ女の両手を押さえつけなるべく冷静に尋問をする。


 「おまえ.....テツジの匂いする.....殺す!.....」


 「何いってんだこいつ.....」


 話にならない、とショウタは呆れてしまう。

 だがふいに、ローブの中身の顔が見えてしまう。

 美人だ。顔立ちは大和撫子を体現したような日本美人。黒髪が伸ばされているが手入れがされてないのか毛先がボサボサし、水分をあまり感じない。だがそれと同時にもう一つ考えが浮かぶ、どこかで見たことがあると。


 考え込んでいると近くの地面がモリモリと唸る。音の方向を見ていると、急にボコっとブロック状の岩が飛び出し、ショウタだけを狙う弾丸になる。

 ショウタは初撃を躱すが、2発目、3発目は押さえつけてる腕と頭に激突しローブの女から話されてしまう。


 「先に行くなといっただろ。まったく、扱いがわからん。」


 今のショウタに匹敵する呆れを放っているのは恐らく今の攻撃の主だ。


 「なんだよ、2人目か?しかもお前ら美男美女じゃん...カップルじゃん.....」


 軽口をたたきつつ、周りを見渡し住民が避難してることを確認する。この冗談に対し男は冷静、というよりなんとも思ってない感じがするがローブ女の方は立ち上がったまま顔を下げ、真っ赤にして直立不動でいる。


 今なら戦える。というかそろそろちゃんと反撃しないとやられる。

 相手の男はメガネをしてるから目が悪いんだろう。

 よしそのメガネを割ろう。

 ローブ女の方は冗談に弱いんだな。

 大得意じゃねえか。


 「我々はカップルなどではない。つい数日前に任務につき仕方なく組んでるだけだ。」


 おいおい、本当にそんなこと言って良いのかよ。相方めちゃくちゃ落ち込んでるじゃん。野生的に見えて意外にナイーブか?


 「私達.....仕方なく.....」


 「仕方なくだってよー!テツジもお前と仕方なくかもなー!」


 「.....死ね」


 軽口で相手を倒すつもりがむしろ逆撫でしてしまったらしい。テツジの名前を出した瞬間ナイーブが怒りの炎で燃やし尽くされてしまった。こちらも反撃として鞘に収めたままの刀を構える。


 再びローブ女の猛攻が襲う。一度見た攻撃だからか先ほどよりかは対抗できる。しかしメガネ男のサポートもあり攻撃がより複雑と化す。


 「お前の攻撃はさっき見たからな!」


 ローブ女が鋭いストレートをショウタの顔に目掛けて打つがそれをギリギリで躱され、反撃に刀をバットのように使いローブ女を吹っ飛ばす。


 「ロガン!」


 「分かってる」


 ローブ女がメガネ男、ロガンに合図を送る。ロガンは岩の魔法を主に使うようで、吹っ飛ばされた先に岩の壁を出現させローブ女をそこに着地させる。

 次の瞬間には壁を蹴り地を走るよりも速いスピードでショウタに再び向かう。


 「自分から向かってくるボールか?面白いバッセンじゃねえか!」


 再び向かってくるローブ女に、刀をホームランでも出すような構えで振りかぶる。


 「何度も正面からは行かない。獣も生きるためなら学ぶんだ」


 そうロガンが言った瞬間、ショウタの周りには先ほどの岩の壁と同様のものが様々な距離、場所に出現し、囲まれる。

 ローブ女は出現した岩の壁をピンボールの要領で飛び回りショウタを翻弄する。

 ショウタの構えが崩れ、見失った瞬間、死角から突撃。その突撃はタックルのお返しであり、その威力はショウタなんかよりも何倍もの威力である。


 「ぐふぅ!.....」


 当然岩の壁を貫通しながら、吹き飛ばされる。階段から落ちたほど体が転がり地面を這う。

 ジリジリと近づかれ、ついにローブ女に馬乗りし返される。


 「尋問する.....お前.....何モノ.....?」


 「サトウショウタ...サトショウって呼んでくれていいぜ....」


 絶体絶命だが強がりを言う。頭をフル回転させてるが今の戦況じゃ、どう小細工しても勝てるビジョンが見えない。


 そもそも数の暴力じゃあなぁ...

 くそ、こっからどう勝てばいいんだよ.....


 再び仰向けになったショウタの視線の先には塔唯一の、外と繋がれる窓がいつからか開いていた———

 


 

 

 

 

続きを書いてみたので評価やブックマークをお願いします。早速投稿期間を守れませんでした。猛省です。

次の投稿は来週中を目標にする予定です。

また読んでくれると嬉しいです。

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