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成長


 何ヶ月ぶりだろうか。こんなふかふかなベットで寝たのは。この街にあるのはどこも日本にあるようなもので溢れている。ただ明日から仕事だ。元社畜として初日に遅刻などあってはならない。いつも通り部屋を暗くして、携帯で目覚ましをセットし、いざ就寝。

 明日は一体どんな仕事をさせられるのだろう?

いや、仕事をもらう立場なのだ。そんな心持ちではいかん!それにミウのお友達にも挨拶しに行かなきゃだしな。どんな子なんだろう?綺麗系か?可愛い系か?いやいやミウの同級生に欲情するほどダメな大人じゃない。いや友達としか言ってなかったから男もあり得るのか。...男だったらちょっと厳しく行っちゃうかもなぁ〜あはは〜。いやほんとに。なんでこんな長話をしているのかというと目覚ましのセットの仕方がわからないからである。ガラケーむずいんだよ!さっきから設定してるのに使えない雰囲気醸し出しやがって!まあ電子機器ってできてないように見えてる時が1番できてるからな。何言ってるんだ。疲れてるんすよ、俺。もういい、寝よ。


 

 「初日から遅刻とは随分と肝が据わってるな」


 朝から驚くほどの渋い声をベットの上で眠い目を擦りながら聞いた。こんな嫌なセリフを目覚ましにしたっけと思いながら携帯を探すとそこに本物のテツジさんがいた。日本にいた頃そんなに働いていた期間は長くはないがこんな経験はある。その経験のおかげかわずか0.1秒でこの状況を理解した。


 「すいませんでしたぁ!」


 ベットから飛び出てすぐに土下座の体制になり今出せる最大の音量で謝罪を開始した。あのクソガラケーが機能してなかったことの怒りと今更になってこの世界に機械があることに怒りが湧いてくる。なんで異世界に機械があんだよ!テンプレはどうなってんだよ!普通発達してないもんだろ!今どうしてこんな長い話になっているのかというとテツジさんが説教かなにかを話しているのだが聞きたくない!働くのはいいが怒られたくない!だから心の中をうるさくすることでなんとか回避しようとしているのだ。


 「と、いうわけでこれなら1時間くらいかけて北の地ノースカイへ向かう」

 「さっさと準備しとけよ」


 説教が終わったようなので土下座の体制を崩す。

この感じ久々な感覚だ。またこれをしなきゃいけないんだろうか。毎日...毎日....。

 

 いやするわけないだろ。なんでこんなのを毎日。前の俺はどうかしてるな。俺の死因がどうか悲しいものじゃなければいいことを願うばかりだ。




 ここはクーニッヒより少し先の空の上。気温は北に向かうにつれ寒くなっている。気がする。まだ大して動いてないのでとくに気候に変化はない。今回もテツジさんの黒馬にお邪魔させてもらっている。仕事の内容は俺へのレクチャーを一緒にするそうで簡単なものだとしか伝えられてない。メンバーは俺、テツジさん、他黒馬の騎士団2人の豪華メンバーだ。部下2人は白馬と呼ばれているいわゆる量産機の空飛ぶバイクに乗ってテツジさんの後ろを並んでついてきている。

 ここでさっきの仕事が気になったのであまり詳しく聞けなかった仕事の内容を聞いてみる。


 「あのー、今回はどういった仕事をしに行くんですかね?」


 自分ができる精一杯の先輩に好かれる後輩を演じてみた。職場ではなによりも人間関係これに尽きる。仕事の辛さもあると思うが人間関係をうまくいかなきゃこれもきつい。ただ話をするだけではなく、聞いた話に冗談いれたり、ほんの少し持ち上げてみたり、共感して一緒に上司の悪口でも言ってみたりとある。

 あと顔。俺はあんまり後輩はいたことないけど基本顔良ければ挨拶してるだけでいいと思う。


 「そうだな。いわゆるヒーローになりに行く」


 テツジさんからヒーローという単語でたのが意外で笑いそうになったのを堪え、他の先輩にも話を回してみる。


 「お、お二人は普段からヒーロー的なことをしてるんですか?」


 あまり聞いたことのない単語だったのか2人して顔を合わせてヒーローとは何か聞き合っていたが2人が納得した答えを出して親身に答えてくれた。

  

 「そうだね、私達はよく人を助けに行って色んな国を繋ぐ仕事をしているよ」


 優しく教えてくれた後もいろいろ教えてくれて、さらに話の輪を広げてくれた。俺のやりたかったことを簡単にやってのけるところにコミュ力の高さがわかる。その中には最近彼女ができたとか、もっと強くなりたいだとか、最近また子供ができたとか。


 アットホームな職場づくりをしているとそろそろ到着しそうだとテツジさんから報告を受けた。

少し下を覗いていると思わず呼吸を止めてしまった。

歴史の教科書やテレビでしかみたことがない惨劇が広がっていた。戦争だ。

 意識した途端血の匂いがした気がする。なんとか効果だろうか。だが下を見ると当然人が死んでいる。錯覚なんかじゃない。意識してなかったわけじゃないがこうも現実を突きつけられると意識せざるを得ない。俺は戦いに行くんだ。


 まだよく見えてないがおそらく魔物と人が争っている様子が見える。それをみた瞬間少しホッとしていた自分がいた。人と人が争ってなくてよかった。そんな考えが浮かんでいた。こんな時ばっかり頭がよく働く俺は一瞬、人を殺さなきゃならないのか、そう考えてしまう。


 そんな考え事もすぐにテツジさんは後ろの2人に呼びかける。あたりの生物全てが雷に打たれたような衝撃を声だけで与えた。


 「突撃ぃぃぃ!!!」


 この声と共に進行方向をグッと魔物がいる方向へ変えて部下2人と共に敵の本陣へ飛び込んで行く。部下2人もテツジさんに負けまいと雄叫びを上げながら白馬の上でなるべく姿勢を下げて空気抵抗をなくし自分が1番最初に行くんだと言わんばかりにスピードを上げている。

 

 魔物がノースカイの騎士をトドメを刺そうとした瞬間訓練されたような芸術的なバイク捌きでトドメを刺そうとした魔物に体当たりし、周りにいた魔物も白馬によって蹴散らされた。この戦争によってなのか荒れてしまった大地にテツジさんが降り立つ。魔物たちは恐ろしいほど強いテツジさんを前にしてかお互いの顔を見合い驚いている。


 「ざっと100ってところか。じゃあ俺が半分やるから残りは適当にお前らでやっとけ。」


 そう言ってテツジさんは助走をつけてジャンプをして周りの魔物の群れの中に飛び込んで行った。何が起こっているのかわからない。なんの理由もなしにたとえ魔物であってもあそこまで躊躇なしにいけるものだろうか。若干気分が悪くなっていると白馬に乗っていた先輩が俺の背中をさすりながら状況の説明をしてくれた。


 「こいつらは何も危害を加えてないノースカイを攻撃しようとしたんだ。それで俺たちが助けに来た。なにも心配することはない。正当防衛だ。これテツジさんに説明されなかったか?」


 説明なんてされてないっすよ。そんな言葉が出る前にいやもしかしたらと思う場面がある。まさか説教の時にこんな大事な情報を話していたんではないだろうか。だがそんなこともここにいる時点でどうでもいい話。今は生き残ること第一にしなきゃならない。

 とにかく武器を探してみる。何か落ちてれば少しくらいは戦えるはずだ。


 「武器なら俺たちが持ってるよ」



そう言って渡されたのは見たらわかる強そうな弓と一本の矢をもらった。弓の方は金ピカでいろんな装飾がされていて、何よりデカかった。だが矢が一本しかないのであまり使えなさそうだ。矢が一本なのは信頼のなさか?それとも残りは自分で揃えろという自分の子供を谷に突き落とすみたいなことか?

 もらった武器にあたふたしているとまたまた白馬の先輩が教えてくれた。


 「その弓は使用者の攻撃力に比例して矢の威力が強くなる、そして矢の方は特別な魔法が何重にもかけられた矢でどんなところにあっても必ず手元に帰ってくる矢らしいぞ。じゃ、それ託したからな。」


 そういって白馬の2人もテツジさんに続いていった。なるほどこれが初仕事と。こんだけ良い待遇してもらったなら死ぬわけには行かないな!





 私はこの人が嫌いだ。あの時正体を明かされた時から自分でもわかるくらい不機嫌になっていた。

 イガラシテツジ。強くて、お金持ちで、頭も良くて、みんなから慕われている。でも私は好きじゃない。だから周りの人が少し気持ち悪く思えてしまう。あいつがテツジさんと仲良くなろうとしてるのをみたときそれがやっぱり普通なんだと思うことにした。


 街に着いてすぐ私には会いたい人がいた。家族でここに来たときに一緒に遊んでくれた友達だ。別荘に着いてすぐ何よりも先に会いに行った。


 いつみても驚く大きさの家にある小さなボタンを押すとピーンポーンという音がした後あの子の声が聞こえる。


 「え?なんでここにいるの?」


 今思えば冷たい言葉だし低い声だった気がする。でもここに着いた時は会える喜びでその冷たさは感じられなかった。最初に伝える言葉を決めてなかったからかすぐに言葉は出てこなかった。だがそれも一瞬、すぐに嬉しい気持ちが溢れてしまう。


 「近くにきたから会いに来たよ!」


 いつもならこの一回で走って迎えてくれるはずのあの子は今日はなかなか来てくれない。

 忙しかったかな?自分の来るタイミングが悪かったかもしれない。でも今更引き返せない。次にいつ会える機会があるかわからないから。


 「会うのって今日じゃなきゃダメかな?」


 どうやら本当に今は私と会いたくないらしい。必死に前回会った時のことを思い出し喧嘩をしたか、私が何か言ってしまったかを考える。

 いやどう考えてもそれはない。なぜなら前回は私の14の時の誕生日に一緒に買い物に行って夜には両方の家族と一緒にご飯を食べた。そこで仲良くテツジさんが作ったお寿司を食べたことも覚えている。


 なにか自分に非はあったかと回想した。

 家の前で唸っていると聞いたことのある、だが抵抗感のある低い声が聞こえてきた。


 「ソラ、そう頑固にならなくていいだろ」


 後ろを振り返るまでもなく、そこにいたのはテツジさんだった。さすがにあの子もテツジさんがいたのは知らなかったのか声に緊張が乗ったように聞こえる。


 「.....今から開けるから待ってて」


 あの子も嫌がってただろうがその気持ちだけなら負けない。テツジさんは私たちの中では嫌われ者なのだから。

 門を抜けた先にある豪華な扉からひょこっと顔を出しているあの子。ほんとにいるのか確認するようにこちらを見ていた。そんな怯えた様子も関係ないというような足で我が家に帰るテツジさんを見て、それに続いた。


 「いらっしゃい。.....久しぶりね」


 ああ、この子は今頑張ってるんだ。

 私に、私達に気づかれないように歓迎しようとしてくれてる。ほんとはしたくないのに。

 こんな感想が最初に出てしまって悔しい。これが成長というのだろうか。それとも簡単に人の気持ちがわかったような気になっている最低な人間かもしれない。

 それでも気づかないであげたい。今だけ。

 あーあ、明日はあいつに買い物でも付き合わせてみよーかな?


 「誰かきたのー?」

 

 その言葉が聞こえた方を見てみると数人のあの子の友達がいた。服は可愛くて高そうな服を着て、かと思えばみんなお揃いの靴下を履いていて。昔からこんなのが多かったからあまり気にしてなかったが今思うと随分と酷い仕打ちだ。

 仲良し集団が集まったと勘違いしたテツジさんがその場にいるみんなに向かって言った。


 「俺は明日も仕事があるんだ」

 「騒ぐんなら端の方の部屋でやれよ」


 あの子はそんな騒ぐ子じゃないんだけどな。

 それぞれが適当に返事をするとテツジさんは自室へと戻って行った。私とあの子以外はテツジさんをあまり知らないのか適当な返事をしたが私とあの子はそうはいかなかった。ただお互いを見つめていた。

 テツジさんが消えた後、あの子は集まってきた友達に一旦部屋に帰るように軽いノリで促した。


 「あそこにいたやつってミウでしょ?」

 「やっぱりそうだよね!服とかでなんとなくそうだと思ってたー!」

 「前からあの子変だったよねーあーゆーとこ」

 「わかるー!」


 半分笑いながら、こちらを意識しながら...

 私の成長した部分で色んなことが分かってしまう。

 2人だけになった時にあの子が言い訳がましく、憐れむように、仕方がないように、私に言ってくれた。


 「これからか...」


 「今までありがとう!あとごめん!それじゃあさよーなら!」


 あの子が何か言ってくれそうだった言葉を遮って我慢してた言葉が出てしまった。でもこれでいいと思う。私がこれ以上傷つかなくていいし。それに一連の流れで、頑丈だと思ってたものが実は脆くて、この世にこれしかないと思ってたものが実は相手にとっては周りを見渡せばクローゼットの服を探すようなものだと分かった。

 最後の言葉を放った瞬間シルベストの時に使った笑顔をここで使ってやった。嘘っていうのはこうやって使うんだって教えてあげる。驚いた顔をしながら私の方に手を差し伸べる仕草をしても足がその場から動いてない。そんな下手くそな嘘はいらないって言ってんの!


 どれくらい時間が経っただろうか。気づかないうちにフラフラ街を歩いて、気づかないうちにあいつがいるところに帰ってきていた。途中変なムキムキな人たちが盛り上がってたのを見たが今はあんなのに混ざりに向かう気分ではなかった。


 しばらくリビングのソファでぼーっとしているとあいつが帰ってくる音がした。私の顔を見た途端数秒困ったような顔をしていたのでからかうように質問してみた。


 「ねえ、私って変かな?」


 「ヘ、ヘンジャナイヨ」


 わかりやすい嘘。思わず少しニヤけてしまったがバレてないかな?こういうおもしろい反応をされるとつい続けてしまう。


 「私さ、今日久しぶりに会う友達のところ行ってきたのね」

「そしたらちょっとぎこちない感じで喋っちゃってさ。久しぶりなんだからしょうがないけど一緒にいた他の子もあんまりでね。さりげなく聞いてみたらミウは昔からちょっと変わってるからじゃない?って」

「だから私って変なのかなーって」


 ちょっと嘘ついたかな?別にこいつにはつく必要ないのに。

 こんなどうでもいいことなのに首傾けて真剣に考えちゃってさ。そんな考えなくても普通わかるでしょ。


 「わかったそのお友達の名前教えてくれ明日聞きに行ってやる」


「いやそういうの恥ずかしいからやめて」

「別に普通に友達だから」


 少し前まではね。

 キッパリ言ってくれるなり、適当にあしらってくれたりしたらいいのに。そうやって手を差し伸べられると握りにいってしまいたくなる。なんでだろう。

 これは自分が未熟だからかな。

 それとも成長できてるからなのか。

 

少し遅くなってしまいました。続きを書いてみたので評価やブックマークをお願いします。

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