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憩いのひととき


 街をぷらぷら歩いてみたら周りの人はみんな服装がちゃんとしてる。街は端から端まで建物、道で綺麗に整っている。きっとこれを建てさせた人は血液型A型なんだろうな。

 和菓子っぽいものを食べ歩きながら探索中。やっぱり異世界歴が長そうな人でも日本のものを再現するのは難しいんだな。若干味が違ったり食感のコレジャナイ感がある。


 あっちいったり、こっちいったりしてるとなにやら野郎の雄叫びをあげていた。なんだ?喧嘩か?

 そう思って近づき屈強な男達の群れの中を覗いてみる。その瞬間ガシャーン!という音が鳴り周りの男達がそれに呼応するように盛り上がった。よくみてみると2人の男が向かい合い真剣な表情をしながらお互いのある部分を握り合ってどちらが先に果てるかと勝負をしている。この説明でもう分かっただろう。そう、腕相撲で彼らは勝負しているのだ。

 別に興味はないが格闘技や相撲とかがあるとついちゃうような人間の俺はこの後の勝負もつい見入ってしまう。そして周りの人たちがあらかた倒された後ついに俺が指名されてしまった。

 相手は勝ち残りで今のところ9連勝している金髪のムキムキマッチョ。背もデカくて陽気な人だ。一回勝つたびに自分の筋肉を観客に見せびらかすくらいの筋肉美。負かした相手にも最後には握手をして気持ちのいい勝負の演出。なるほど、こいつは手強いな。

 だがこっちだって朝に試せなかったがとんでもない大金で強化したんだ。あっさり負ける気はない。ちなみにさっきの音は勢い余ってリングの樽を壊してしまった音だ。ただ周りには何個か予備の樽があり壊すのは前提らしい。

 腕相撲にはちょっと自信があるんだよな。19で腕相撲では親父に勝ったし。6年でムキマッチョに勝てるだろう。


 「貴様が俺の10連勝目の相手か。お互いベストを尽くそう」


 「ああ、そうさせてもらう」


 お互いに見つめあって樽に肘を置き握りしめた。

 観客の中から適当に選んでジャッジをしてもらう。

 審判が2人の握りしめた手の上に手を置き合図をする。


 「よーい、始めっ!」


 合図とともに金髪が握る力を強めタルの左側に俺の腕を倒そうとする。耐えろ!耐えるんだ俺ー!


 .....あれ?弱い。いや弱くはないがあんまり動く気配がしない。いくらフィジカルが強くなったからってまだ20くらいしかあげてないんだぞ。ていうか自分の強さにひく。ないわーこんなひょろっとしてるやつが。まあこれ以上やっても意味ないし一応倒しとくか。


 「えいっ」


 そういいながら右側に倒したら今まで「ふぎゅー!」とかいいながら頑張ってたタンクトップが声を裏返らせながら倒されてしまう。だが初めて強くなってから力を入れたせいかうっかり勢い余らせちゃった。


 ガシャーン!


 「うおおおお!!!」

 「つえーー!!!」


 今まではヤジしか飛ばさなかった観客が俺への賞賛一色になった。その歓声を浴びるがままに俺も叫んだ。まさかここまで自分がやれるとは思わなかった。

 周りが少しずつ俺の話をしながらそれぞれ散っていく。ほんとに突発的に始まったらしくなんの合図もないのにそこにいた20人くらいはすぐ消えてしまった。

俺も帰ろうとした時背後から呼び止められた。


 「待ってくれ」


 振り返るとさっき倒した金髪がよろけながらもこちらへ向かってくる。

 おいおい、襲われるんじゃないかこれ。


 「貴様、名はなんという」

 

 「サトウショウタ、サトショウってみんなから呼ばれてるぜ」


 「サトウ単刀直入に言う」

 「俺を鍛えてくれ」


 この呼び方はこの世界に来てからずっと紹介してるのにいまだにエリザベスしか呼んでくれたことがない。そんなに嫌なあだ名じゃないと思うんだけどな。

 

 「鍛えるっていっても俺大して強くないぞ?」


 「いやここで1番強い俺をあんな簡単に倒したんだ」

 「そんなに謙遜はしなくていい」


 見た感じたしかに強そうだと思うがまさか1番強いとは。なるほどこれはなかなかそれっぽいことが初めてできてるんじゃないか。こういう無双感を味わいたかったのよ。


 昼食を奢ってくれることを条件にさっきの金髪タンクトップのラージャと和食屋に入った。

 話を聞いてみたところさっきは仲間内で戯れていただけらしい。その仲間というのが黒馬の騎士団という。この厨二臭い集団がテツジさんの弟子の集団でいわゆる警察の役割もしてるそうな。しかも他の主要な都市にも散らばっている。間違いなくこの世界で1番強いのはテツジさんだということがわかってしまった。

なぜならラージャが副団長でテツジさんが団長だからだ。


 「今はこんなことしか話せないが後できて欲しいところがある」

 「そこでもっと深いところまで話したい」


 「あんまり人気がないところは勘弁ね」


 

 俺はきたことがないところはすぐに迷ってしまう人間である。だから人についていって自分の方向音痴をよく紛らわしてきた。そしたらいつのまにか人気のない路地裏まで連れてこられてしまった。そして行き止まりまで連れてかれた時後ろから何人かラージャの仲間が来て八方塞がりになった。

 

 「俺含めここにいる奴らはあの人のことを信用していない」

 「誰もあの人に勝てないから従っているんだ」

 

 テツジさんまさかの部下から総出で嫌われている模様。そんな嫌われる要素あったかなぁ?


 「俺はテツジさんは信用できると思うんだけどなにか理由でもあんのか?」


 「少し長い話になる」

 「あの人は10年前突然やってきて勇者と一緒に魔王に立ち向かって行った人だ。だが勇者と魔王の最後の戦いでいきなり勇者がいなくなってしまってからあの人は変わってしまった。国の主に名乗り出て、黒馬の騎士団をつくり、同郷の者にこの世界での生き方を学ばせた。そのおかげでこの国の主要な都市は大体あの人の仲間が支配し都合のいいようにしている。その中の一つの例がシルベストの一件だ。シルベストの事件はあの人がリーズをはめた犯人だったんだ」


 長々と新情報が出てきたが1番驚いたのがお前らリーズさん知ってんのかよ。リーズさんは案外有名だったのかもな。それとこの世界には勇者や魔王がいたのか。結構この世界にいるがいまだにその話は耳にしたことがなかったから驚いたな。この話は禁句だったりするのだろうか。


 「色々気になる情報を渡してくれるのはありがたいがまさか俺にテツジさんと戦えってことじゃないよな?」

 「そんなん絶対に無理だからな!」


 「今すぐにとは言わない」

 「だがいずれ協力しなきゃ行けない時が来ると思う」


 勝ち馬にしかならない俺があんなでっかい黒馬から降りるわけないだろ。ましてや俺がちょっとステータス上げただけで帰るようなやつに乗り換えるなんて。

 まあこの場はめんどくさそうだから適当に話合わせて屋敷に引きこもろう。


 「じゃあわかったから、その時が来たらよろしくな」


 「ああ感謝する」


 そういって強面の奴らはラージャが引き連れてそれぞれの業務に戻っていった。あいつらこえー。

たしかに俺の目的を考えたら将来テツジさんとぶつかるかもしれないがそんなのはなるべく避けたい。

 やることないし増やされたくないから屋敷帰るか。



 無駄に広い屋敷の玄関に着いた時ミウの靴があったから先に帰ってきてるらしい。リビングに入って辺りを見渡したらソファに虚無顔をして寝ているミウがいた。明らかに落ち込んでいて、ここまでくる山道で笑わせたのに前の状態戻ってしまって悲しい。あれ以上にマイルドで笑える話のストックがもうない。しょうがないもう一回同じ話を擦るしか...


 「ねえ、私って変かな」


 「へ、ヘンジャナイヨ」


 わかりやすく嘘をついてしまった。こういう時の女の子の扱い方なんて習ってないし。とりあえず肯定しとくが吉だと思われる。


 「私さ、今日久しぶりに会う友達のところ行ってきたのね」

 「そしたらちょっとぎこちない感じで喋っちゃってさ。久しぶりなんだからしょうがないけど一緒にいた他の子もあんまりでね。さりげなく聞いてみたらミウは昔からちょっと変わってるからじゃない?って」

 「だから私って変なのかなーって」


 これはどちらとも捉えられるな。少なくとも今は大して変じゃないと思うが昔は相当変だったのかもしれない。もしくは...ハブられているんだろう。というか思春期の女子なんて十中八九そうだ。だれか1人が無視を始めたら他の子もそれに共鳴するように無視し始めるなんてざらに聞く。この事例を聞くと話してくれるだけミウの友達はまだマシなのかもしれない。

 俺はこれの解決方法は知らない。自分で受けたわけじゃないしな。こんなのは他のやつに標的が変わるか自分がその状況から抜け出せるほどのなにか大きな出来事があれば見直されたりされる。まあまずは俺が直接聞きに行っちゃおっかな。いいお兄ちゃんすぎる。


 「わかったそのお友達の名前教えてくれ明日聞きに行ってやる」


 「いやそういうの恥ずかしいからやめて」

 「別に普通に友達だから」


 くぅー!思春期!反応が高校の時の俺をみているようで感動する。こんなことを言われちゃったがやっぱりこっそり助けに行こうと思う。明日から仕事があるんだけどね。


続きを書いてみたので評価やブックマークをお願いします。

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