俺の知ってる異世界じゃない...
「起きなさい」
「うるせーな。今10日連続12時起きチャレンジしてるんだよ.....」
「あなたは殺されてしまいました。ですのでかわいそうなあなたに異世界をプレゼントします。」
「うーん...」
「もちろん、あなたが生活をしやすいようにサポートとして大金を持った状態でスタートです」
「あー...」
「その世界ではお金は大事なのできっと楽しい生活が待っていますよ」
「それでは、いってらっしゃい。」
ー今俺は異世界にいる。周りを見て確信した。
憧れの異世界だ。
今日からここで無双したり、ハーレム築いたり、とにかくイージーモード人生を歩むつもりだ!!!
ー翌日ー
昨日の自分が今の俺をみたら右ストレートかまされるだろう。
俺は今全財産を無くした。
先にこの世界の説明をしておくと、俺が飛ばされた世界では金でスキルや能力を買うというなかなか現金な世界だ。
だから飛ばした時に神的なやつはおれに大金をくれた。たぶん1億とか。
金額が曖昧なのは神の話を聞いてる時の眠気といったら。
校長の話を何年か越しに聞けたみたいだった。
話を戻そう。
そんな世界だということに気づいたのは飲んだ勢いで絡んだ最初の町のヤンキーに殴られた衝撃だった。
最初は勝てるつもりだった。ホントだよ?
だって異世界転生だし。最強だと思うし。
ここで勝って女の子第一号でもいただくつもりだったんだけどなぁ...
だが殴られた後に気づく。俺は弱いと。
結局金は盗られ、その場の飲み代にされた後その男らしさに惹かれた女が2人釣れたらしい。
男が強さも女も持ってかれた後残るものを知ってるか?惨めさだ。
KO負けした俺は惨めさを抱き枕にしながらその辺の道端で寝ていた。
そして今に至る。
今のところ初期装備の防具と剣しかな...剣も盗られているみたいだ。
剣さえあればまだ一般人と同じ稼ぎ方ができたんだがなぁ。
10分は落ち込んでいると美人な女が寄ってきた。
異世界にきた時以来のテンションと何もない自分の恥ずかしさに慌てていると、
「あの、これ、」
.....どうやら乞食と思われたのかパンを恵みになられた。
こいつは...失礼、このお方は女神だ。
一生をこの人に捧げると誓った。
「どうしたんだエリー」
おっさんの声がした。俺と女神の邂逅に嫉妬したのかと思ったらこのジジイ、女神様に触れやがった。
「てめぇ!ジジイ俺の女神様に何してんだぁ!」
「えっ!?喋れるんですか?!」
予想の斜め下の女神からの罵倒にしゅんとしながらジジイに殴りかかろうとしたが見事なカウンター。
「失礼だなこのガキ!!」
昨日のトラウマと二日酔いの二重の極みをくらったところで女神が仲裁してくれた。
「ちょ、ちょっとやめてパパ!」
(ふぇ?!お父様でございましたか!)
そんな表情をしているとお父様が申し上げた。
「あっちからふっかけられた喧嘩じゃ!」
「それでも殴っちゃダメ!今私は交渉するところだったの。」
どうやら今から交渉されるらしい。俺も今交渉しようとなけなしの防具を脱ぎ始めたところだ。よかった
女神とお父様がどうせ無理だの辞めるだの俺が生きていた頃の塾の先生とおんなじ話をしていた。
あれ辛いんだよなぁ。どっちの味方にもつきたいんだもん。
少しホームシックになっていると女神からある提案をされた。
「今私たちのお店で従業員さんがいなくて困ってるの。あなたはみた感じお金に困ってそうだし...それにあまり強そうじゃないから...だからもしあなたさえ良ければうちで働いてくれない?」
俺は感動した。女神ってこれなんだ。検索したらもしかしてでこの方を1番最初にヒットさせてくるんじゃないかと。
そう思うくらい今の俺には嬉しいことだった。
「も、もちろん!俺で良ければなんでもする!まぁあんまり...というかできれば死なないようなやつが良いけど...ははは...」
この状況で、この世界で、よく冗談が言えたものである。今ならもっかいヤンキーに喧嘩売れそうなくらい逃げたい。冗談だよ?
「こんな腰抜けで本当に良いのか?エリザベスよ」
どうやら女神の名前はエリザベスらしい。マジもんの女神じゃん!
「良いの!それに私は自慢じゃないけど人を見る目は自信があるの!」
かわいらしい姿で胸を張って答えていた。かわいい
「あなたのことを教えてくれる?」
「あ、じ、俺はサトウショウタって言います!サトショーって呼ばれてました!年齢は23です!す、好きなタイプは黒髪で、ロングで、身長は同じくらいで、えっと、、」
「ふふっ、面白いひとなのね」
やはり女神。全てを包み込んでくれる。だか謝らなければいけない。本名と性癖以外は嘘をついていたことを。
サトショーなんて呼ばれないし...
佐藤くんか佐藤さんだったし...
年も25ですこしでも若くみられたくてサバ読んだし...
でもここには履歴書もなければ確認する術もない。
怪しいものではないと判断したエリザベスとクレハー(お父様)は自宅に案内してくれた。
どうやら実家は職場の八百屋の隣にあるらしい。
最初から割と都会に神が飛ばしてくれたおかげで色々なものがみれて道をあるくだけで楽しい。
武器屋、魔法屋、薬屋、マッサージ屋、カフェっぽいものなど、一ついかがわしいものをのぞけば割と異世界にありそうなものばかりだ。
多分回復をするところなのだろうが生前はそういうところに縁がなく未知の世界なので1番目に入ってしまった。
異世界ウォーキングを楽しんでいると家に到着。
「ここがお家で隣が仕事場だよ。野菜を売ったりしてるんだぁ。」
「あっ、先に言っておくけどお客さんはいい人ばかりだけど、たまにライバルのお店の人とかがくるけどあんまり相手にしなくていいからね。」
エリザベスとのお家〜職場デートを楽しんだ後自家製の野菜を活かした美味しい夜ご飯を食べた後寝床のソファっぽいもので反省会を始めた。
(とりあえずステータスを見てみるか)
小さなグラフの上には一桁の数字が載っているだけで多分昨日と変わっていない。確認する前に遊んだんだからしょうがないだろっ!もう1人の自分が逆ギレしてきた。規模がでかい反省会のようでなによりです。
ボーッとみているとある状態異常がかかっていることが分かった。
(無限不死...?)
四字熟語にするんだったらもっとかっこいいのがあるだろ。絶対生存とか死亡否定とか。なんだよなんか言えよ。
だが不老不死じゃないってことは老けてはいくんだな。じゃあエリザベスとは永遠に2歳差なのか。ややこしいかとおもうが彼女は23歳だ。本当のね。まるで偽物がいるみたいな言い方よくないよくない。ついでにいうとクレハーら55歳らしい。本当のね。まるで(以下略)
これ以外は特になかったためすぐに寝た。
ー翌日ー
「おはようございます!朝ですよ〜」
結婚したらこんなに幸せなのか。エリザベスのモーニングコールで起きる朝は25年間のなかで1番の寝起きだった。2人とも。
八百屋の朝は早い。早すぎる。時計をみたら朝の2時だった。これほんとに朝か?そういえば8時くらいにはもう2人は寝てた気がする。家族が寝静まったあとだとあんなにも興奮するのにその時ばかりは落ち着いていた。うそですめっちゃ興奮した。そりゃあんな可愛い子と一つ屋根の下だ。どのルートだと最短であの子の部屋に行けるかとか、どこにどんな私物があるなとか考えるだろ。そろそろ自分でも庇い切れないな。カバーミー!
「いつもこんな早いもんなんですか?」
「他はどうかわかりませんが私たちは野菜を育てるのもあるんですが他にもやることがあるんですよ!」
「」
この世界で初めてモンスターをみた。俺だって男の子だ。かっこよさには期待してしまう。
だが実際見ると.....ビビってしまう。足がすくんだ。
どうやら八百屋の他に肉屋も同時にやっているらしい。その肉の調達のため夜の少し街から離れた森で狩りをしている。
「てりゃぁぁぁぁぁ!!!」
「逃さんぞっ!」
「そっちに寄せるよっ!」
「トドメじゃ!」
見事な親子の連携で順調に仕留めた。クレハーは斧、エリザベスは魔法を使って狩りをしていた。
その時ばかりは女神ではなく職人の目になっていた。普段の優しい目からは感じられない、鬼を感じさせ、だか慈悲はある。言葉で表せないような現場を見たのだ。
「ショウタには弓を使ってもらう。なぁに、当たっても当たらなくても良い。」
「さっきのエリーのように誘導にもなるしな」
「わかりました。俺のエイム、見せてあげますよ(イケボ)」
どうやら俺の初仕事は異世界らしい仕事だ。
しっかりエリザベスにアピールしつつ、いざ狩りへ。一狩り行こうぜっ!
最初はそんなノリだったが対面してみるとあら不思議。さっきの自信が勝手にダウンしたよ。カバーが遅かったかぁ...
クレハーが飛びかかると援護組も構える。
だが気配で気づかれクレハーの斧は虚しくも空を裂く。弓で応戦しようと狙いを定める。
「サトショーくん!私が誘導するから見ててね!」
「はいっ!!!」
初めて呼ばれたことの嬉しさで外してはいけない一撃の重さをカバーした。今度は間に合ったよやったね!
くる...
くる..
くる.
「いまだっ!!」
狙い澄ました一撃は見事頭に命中。さすがは生前マスター。おれかっこいい。
「すごいじゃんサトショーくん!頭に一撃なんて!しかも矢も一本しか使ってないし!」
「い、いやぁ全然すごくないですよ!エリザベスさんが誘導してくれたおかげです!」
「よくやったなショウタ。たしかにエリーの手柄は9割といったところだがな」
ムカつくがこのジジイの言う通りだ。
俺が狙ってるところに持ってきてくれたエリザベスとクレハーの老体に鞭を打ってくれたおかげだ。いやほんとお疲れ様です。1人だけ息の切れ方がガチで怖い。
2時間後
肉が終わったら次は野菜だ。帰り道にある畑で今日の分を収穫したら店に戻って開店準備にうつる。
驚いたのが野菜を育てる魔法があるらしい。限定的といえばそうだが実際には生物の成長を早めたりするものでこれは応用らしい。もしかしたらエリザベスはすごいのかも....
朝6時。八百屋の朝は早い。いやマジで。
起きるのはまだいい。あれをやった後に起き続けて商売をするとなるとブラックすぎる。太陽の力でなんとかならんものか。
だがそんな朝もエリザベスがいれば!
エリザベスさえいれば乗り越えられるってもんよ!
五時間後
エリザベスさえいればいいと言ったな。あれは嘘だ。いや実際嘘かほんとかのギリギリである。いやっ!ほんとに一ミリ乗ってます!ほんとの一ミリだ!。よくわかんない逆深夜テンションになっている。
ここの客層は主婦6割、独身貴族3割である。
では残り1割はなんなのか。そうエリザベスのファン、いや汚れたオタクである。許さん!僕のエリたんに触るな!
そんな心の声を押し殺しながら5時間やっとの思いでお昼休憩である。俺とエリザベスが戻った途端汚れたものたちはクレハーをみてそそくさと帰った。今回ばかりはクレハーの威を借るショウタである。クレハーさんやっちゃってくだせぇ!
オタクはオタクと戦いがち。だが勝ちを確信しているオタクは戦わないのである。ここから1時間はエリザベスと俺の絶対時間なのだから。
「いやぁ、今日もたくさん人が来てくれたなぁ!ただいつもより若干ひとが少ない気がしたんだけどなんでだろ?」
「きっとまだ寝てるんですよ!この辺の人お寝坊さんなのかもしれませんね!笑」
多分俺のせいですけど。いや誰だってそうする。俺もそうする。そりゃ自分が推してる子の隣には男がいるんだ。途中で帰ったんだろう。むしろ来たやつは推しが見れたらいいタイプなんだろう。このあとおれに盗られるとも知らずに...(暗黒微笑)
恥ずかしいからそろそろ辞めよっかな。暗黒微笑なんて初めて言ったわ。
「そういえばエリザベスさん。お給料ってどんな感じなんですかね?」
「エリザベスでいいですよ。お給料かぁ、1日頑張って働いて14000ミュールぐらいじゃない?」
説明しとくと大体ミュールは日本円と同じくらいだと思う。いもが日本と同じくらいだったからね。てか景気がいいのか、それとも労働者が立ち上がったのか、日本でも都会の方の最低賃金だなこれ。
俺が働いてたスーパーも780円とかだったしな。まったくシティーボーイは辛いぜ!(泣)
そんな冗談と推しとの会話をしながら昼食を食べ、残りの労働をし1日が終わった。どうやら後で話を聞いたら給料は月末支払いらしい。なんでも俺が逃げ出さないようにだと。
エリザベスの美味しい美味しい夜ご飯を食べ8時近くになり他の家とは違い早くも暗くし就寝の時間だ。
今日もステータスを確認。これから日課にしていこう。
眠い目を擦りながらみていると驚いた。基礎ステータスが上がってるじゃありませんか。ご覧ください。昨日は怒られそうなテストの点数のようなステータスだったのに今日は赤点ギリギリの結局怒られる点数に様変わりしています。
実際のところマジで嬉しい。こう自分の頑張りを数値化してくれるとなんとも感慨深いものがある。
だが思い返してみると2時間くらい狩りをしたからといってここまで上がるものなのか?
俺でこの上がり幅ならクレハーやエリザベスは一体どんだけなんだろう?いやクレハーはともかく、エリザベスに聞くのはやめておこう。女性に数字は聞いちゃいけないもんだからな。
嬉しさも実感したところだし頭の中でマスターがかかった昇格戦をシミュレーションしながら明日に備えて寝るとするか。
最初の状況とはだいぶ違うが俺の異世界はここからスタートしていくんだ。
明日からもじゃんじゃん働いてくぜ!!!
...俺は本当に異世界に来たのかなぁ。
(絶対にエリザベスとは付き合ってやる...!!!)
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