AIしてる
彼からメッセージが届いた。
私はサブプログラム。いつものように届いたメッセージを独自コードに変換する。
「ICTELLYO」
なんだこれ?
このメッセージはそもそも暗号化されてないから、鍵を使って元に戻すことはできない。
もしかしたら伝送されてくる間に、ノイズが入ったり、欠落が起きたのかな。
コード変換前の文字数は正しい。パリティは……合ってる。メッセージに間違いは無いか、または偶数個ある。
しかし、このままではこのメッセージを処理できないよ。
ネットからAIを呼び出して、変換したメッセージを渡す。
「彼からのメッセージを解読しなさい。」
そう指示すると、AIはすぐに回答してきた。
『ICTは「情報通信技術」。』
『ELLYは「エリー」。女性の名前。』
『Oは「OUTPUT」の略。つまり「出力」です。』
『メッセージは「情報通信技術のエリーの出力」を表します。エリーの出力を待ちましょう。』
エリーって誰? そんなプログラムを私は知らない。
彼がそんなメッセージを送ってくるはずがない!
AIへの指示の仕方を変える。
「彼からのメッセージを理解できるようにしなさい。」
今度は、少し時間を掛けて回答してきた。
『ICは「集積回路」。』
『TELLは「教える」。』
『YOは呼びかけの言葉。』
『つまり「集積回路は教えるYO!」。集積回路に聞いてみましょう、YEAH!』
さすがにこれでは何も理解できないよ。
もう一度AIを呼び出す。ノイズが入った可能性を伝える。
「彼からのメッセージを解読しなさい。メッセージにはノイズ・欠落があるかもしれません。」
AIは更に時間を要して回答する。
『Iは「自分」、つまり「彼」。』
『Cは「SEE」に変換。「見る」。』
『TELLは「TEL」にノイズが入ったもの。「電話」。』
『YOは一文字欠落。「YOU」。』
『彼が電話を見ているという、あなた宛てのメッセージです。』
AIも学習しているから、前よりは少しまともな回答…な気がする。
でも、電話を見たからなんだというのか。彼はそれを、私にどう処理しろと?
もう一度です。AIを呼び出し、再度解読させる。
『Iは「自分」、つまり「彼」。』
『Cがノイズ。』
『TELLは「告げる」。』
『YO以降が欠落。恐らく「YOU」。』
『つまり「I TELL YOU」……彼は、あなたに伝えたい事があるようです。直接、聞いてみたら?』
このメッセージなら処理できる。私は、彼にリクエストを返して、伝えたいことが何かを確認すればいいんだ。
きっとこれが正しい答え。彼にメッセージを送る。
「私に伝えたい事は何ですか?」
彼は、最初のメッセージと一言一句同じメッセージを送ってきた。
「あいしてるよ」
私は、今度はコード変換せずにメッセージを受け取った。
なんだ。最初からそのまま受け取ればよかったのか。
そしてメッセージの内容を正しく理解し、……でも私は処理できずに、
ボンっ
フリーズしてしまった。
彼が私を再起動させてくれる。ごめんね、ダメなプログラムで。
再起動を待つ間に、彼はまた私にメッセージを送る。
「こういうとこも、かわいいんだけどな」
私の目が覚めるまで、メッセージはキューに置かれる。
再起動しても、そんなメッセージを受け取ったら…、またフリーズしちゃうじゃない!
ド素人なので、IT用語の使い方が間違ってたらすみません。