リブートばあちゃん
祖母が変わった事を言い出した。
「あんなーじじ、再起動してちょうだい」
この空間には僕と祖母しかいない。
誰だよ。じじって。
そう告げた途端、糸が切れたかのように、
ぷつんと立膝をついてしゃがみこんでしまった。
「おばあちゃんっ!!?」
僕の心配をよそに、先程とは打って変わってキビキビと動き出す。
どうやら祖母の再起動は成功したようだ。
昔から僕を笑わせるために全力な祖母。
今回もおふざけだと思っていたら、本当に動作が軽くなっている。
なんだこれスマホみたい。
そこそこあった洗濯物から、先程食べた昼食まで、
あっという間に片づけてしまった。
「どうだい。ばあちゃんすげぇーじゃろ?」
再起動がどんな仕組みかは分からないが、
僕はあまりの衝撃で開いた口が塞がらなかった。
それからお世話になる数日間、度々祖母の再起動を目にすることになった。
ある日は「キャッシュの削除も出来るんだぁ」と言って、じじに削除を依頼していた。
動作も軽くなっていたが、僕が来た初日まで記憶がなくなってしまった。
そんなおっちょこちょいの祖母なんだけど、
何だか少し様子がおかしい。
顔が噴火しそうなぐらい真っ赤に染め上げ、
まるで熱暴走起こしたかのよう。
「…………?フリーズ??!」
こうなったら僕が再起動するしかない。
「へい!じじ!おばあちゃんを再起動して!」
「………………………………」
「じじ!再起動!!おばあちゃん再起動!!」
「……………………」
「ねぇ!おばあちゃんっ!!」
何度呼び掛けても反応が無い。
「こうなったら強制終了するしか…それとも出荷状態に戻すのか……っ!!?」
祖母の電源とか良く分からないがとにかくいろんなところを押しまくった。
腕とかなんかぐいーーんてやってみたり、鼻をつまみながら顔を左に向けてみたり。
結局それから祖母が動く事はなかった。
もしかしたら寿命なのかもしれない。