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リッカ・ハウプトは俺っ娘。騎械召喚士  作者: 黒竹
異世界ライフ俺って女の子編
8/18

作戦会議

 ナガトラに魔王討伐パーティへ参加する旨を伝えると、驚いた様子で握手を求められた。


 デカイ手だが、この手でゴブリン達を守ろうとしていると思うと、尊いなとも同時に思える。

 

 勢い任せ……ではあったが、ルールーと約束したのだ。


 スタイレムに取り残された、ゴブリン救助をする事を。

 

 ちなみに村で行方不明となっているゴブリンの中に、ルールーのお爺さん、つまりスタイレムの村長も混ざっているらしい。

 ルールーがその事を口にしたのは、ついさっきだ。

 お爺さんを助けて欲しい。

 そう彼女が言わなかった気持ちは何となくわかる。

 個人ではなく全体を助けたかったのだろう。指導者としてあの若さで立派だと思う。

 

 にしても俺が本当に魔王と戦い、時間を稼ぐなど出来るのであろうか?

 

 いくつものルートを考えてみるが、個人で決めるには無理がある。

 なので、皆で情報交換をしたほうが良いだろうという事で作戦会議をする事になった。

 

 メンバーはこちら側から俺、ダンテ、エイチの三人とゴブリン側からナガトラとルールー。

 それにゴブリン戦士リーダーのブブルを交えた6人だ。

 

 ちなみに場所は外ではなんなので、こちらへということで、邸宅に案内される事となった。

 

 ダンテは邸宅の扉を鍵で開くと前室へと進み、更に大広間へと案内してくれた。

 人が200人ほど入れそうな大広間の先には立派な中階段があり、階段と繋がった中二階の踊り場から、ようこそ我が屋敷のパーティへと言いながらお姫様が出てきそうである。

 

 そんな想像を膨らませている俺を他所に、皆は階段を登り切った角の部屋へと入っていく。

 

「ここは執務室になります」

「お邪魔しまーす」

 

 執務室の中には本やら書類などが綺麗に整理されており、旧ナグラル領全域の地図が壁一面に貼られている。


 別荘といえども充分この場所で政務が行えそうだ。

 まぁ、それもそのはずでダンテの父親である、ナグラル侯も夏の間は涼しいこの場所で政務を行っていたそうだ。

 

 立派な邸宅に見惚れてしまったが、別に美術館に来て見学している訳では無い……。

 

「ダンテ。魔王の情報について何か分かった?」

「はい。一応ナグラル家の書斎で関連資料なども調べたのですが、今のところ何も」

「そうか……」

 

「しかし、その魔王なるもの南の魔族領から来たものであるとは思いますが、魔族軍が動いたにしては規模が小さいかと思います」


「えっ。何。魔族領なんてあるの?」

 

「勿論で御座いますが……」


「ダンテさん、すみませんリッカ様は先の戦いで記憶の一部を失っておられまして」

 割って入ってきたのはエイチだった。

 

「それは……大丈夫です。このダンテがリッカ様の記憶となりましょう」


 なんてエイチの時とほぼ同じようなセリフを言ってくれた、なんだか面白かったが感謝はしているんだ。

「有り難う!ダンテ」

 

「んでリッカ、皆を全員集めたんだ何が知りてぇんだ」

 そう切り出したのはナガトラ。

 

 俺が主要メンバーをここに集めたのは、他でも無い。

 魔王への対策と人質救助への作戦を練る為であるけど、目的はもう1つあった。

 

「まず1つ目なんだけど、この中で魔王を見た者は?」

「俺は見たぜ」

 

「じゃあナガトラ君。どんな奴だったかな?」

「君って何だよ……まぁいい。奴の身長は5Mくらいだったな、真っ黒な負の魔力を放ちながら、王国騎士どもを喰らってやがった」

 

「まじか……ちなみに他になんでも良いけど、見た目とかの特徴があればもっと聞かせて欲しいな」

 

「そうだな……全身が針金のような黒い体毛に覆われていたな、それに頭からは尖った角……顔は牛のようにも見えたが鳥のようにも見えた、目は真っ赤だったぜ」

 

 ……怖い……タカトラの話を聞くだけでマジで怖い。

 背中が冷や汗でびっしょりになりそうだけど、恐怖心を抑える。

 パッと見た感じビビって無いタカトラを尊敬。


「タ……タカトラ君。有り難う」

「おう!」

 

「じゃあ、次なのだけど魔王以外にも魔族はいたかな?」

 

 魔王がスタイレムを占領しているということは、一人じゃない可能性が大きい。

 

 当然指揮官や兵隊がいると考えるべきだ。

 

「それは私が」

「ルールーか。じゃあ説明をお願い」

 

「あの夜わたしは、タカトラさんに言われて住民の皆さんを西の教会へと避難指示を出していたのですが、その時に王国騎士と魔王配下の戦いを目撃しました」

「ふむふむ」

 

「王国騎士と戦っていたのは、骸骨騎士。多分あれはアンデットだと思います、最初はそのアンデットも十数体だったのですが、倒された騎士達もそのまま蘇り仲間であるはずの王国騎士を攻撃していました」

 

「それは多分死霊魔術ですね」

 エイチは発言すると、そのまま詳細の説明をしてくれた。

 

 どうやら死霊魔術とは高位の聖職者のみが使える魔術だそうだ。

 

 特に蘇り魔術のように生命をどうにかしようとするような魔術を使えるのは、神との契約を済ませた高位の聖職者のみが使えるらしく、ノーザンブリンを見渡しても限られた数しかしないらしい。

 

 つまり魔王の部下に聖職者がいると見るべきだ。

 

 更に死体をすぐにアンデッド化して活用出来るのであれば、よほどずば抜けた魔力を持った相手というのが魔王と一緒にいるという事となる。


「にしても聖職者って、神に使える神官のことだよな、魔王に手を貸すってどういう事なんだろう。普通敵対してそうだけど」


「それはですね、恐らくその聖職者は悪魔教会の悪魔神官(マイスター)なのだと思います」


 確かこの世界……ノーザンプリン……じゃないやノーザンブリンには南の奥地に悪魔の国家群があるって言っていたな。

 つまりそこから来た魔王と悪魔神官(マイスター)の可能性が高い訳だ。

 

 にしても気になるのは何で、こんな田舎に?


「悪魔が襲いそうな都市なら他にあるんじゃない?」


 ちなみに、ルールー曰くここ数年スタイレムでは野党やモンスターの襲撃は一切無いらしい。

 勿論その前は、年に1度くらい外敵の侵入を許してしまった時期もあるそうだが、ここ数年は平和だったらしく、資源の乏しい事が付近の悪意を持った者達に伝わったのではとの事だ。


 そうなると、ますますスタイレムを占領すつ意味が無いと俺が発言すると、


「その通りですね。何故スタイレムなのでしょうか?検討もつかないのです」


 そう言ったのはダンテである。


 それについて、数十分話し合ったが的を得た予測どころか、全然わからなかったので、その事は一旦おいて置こうという結論に至った。


 そしてダンテは次の報告へと話しを進めた。

 

「先程私とタカトラ殿で話した内容をまとめたのですが、王国騎士約80騎。スタイレムの住人約200人。初期の魔王の配下20人ほどと考えるなら、全員アンデッド化してた場合敵数は300ほどかと思われます」


 全員アンデッド化なんて考えたくも無いが……。


 ダンテの発言にルールーは明らかに動揺しているが、その可能性は限りなく高いと思うと気が重くなる……。


「もしもの時の確認なんだけど……」

 

 俺の一言に周囲は静まる。

「もし、救出が困難と判断した場合。仇討ちをやるかい?」

 

 ………………。

 

 これは非常に大きな決め事であった。

 

 どこを第一目標にするか。

 当然本来の目的は救助が優先だ。

 そして勝てそうならスタイレム奪還という目論みがあったが、3つ目のルートである住民全滅の場合どうするかを決める為に、この会議を提案したというのが本音だ。


 当然俺の問いに辺りはなんとも言えない沈黙に包まれたが、


「もしもの場合……撤退して下さい」


 ルールーは震えながらそう言う。

 

 村長の孫ルールーが決めた事は、ナグラル庭園にいるゴブリン達の総意と決めたのは他でも無くゴブリン達だ。


「わかった。じゃあわたしが救助失敗と判断したら、ゴブリン達も撤退するでいいね」


 俺は戦場でゴブリン達を率いる事になるブブルへ同意を求める。

 ブブルは深く頷くのを見て俺も頷く。

 冷酷なようだが、感情は抜きにして犬死は出したくないのだ。

 

 厳しい決断だとは思ったが、誰かがやらねばならない話題であった。

 この話しを切り出切り出す適任者は外部から来た魔術師、つまり俺みたいなのが適任だと思ったからだ。

 

 ルールーにはその責任は重すぎる。

 ナガトラという選択肢もあったが、俺のほうがやはり適任であろう。


 一先ずこれで会議の目的は果たしたのだ。

 

 重い空気になってしまったが、住民の安否が絶望的と決まった訳ではない。

 あくまでもしもの時を想定しただけなのだ。

 なので、重い空気を解消する為にみんなを励ましながらも、もう1つの課題。

 デモンストレーションというべき実験を企画していた。


「それじゃあみんな。外へ出るよ」



 ――――――――――――――――――――――――



 ナグラル庭園の裏庭。

 

 ナガトラ戦の時。

 もっといえばツイストリア(竜巻昇剣)で上空に吹き飛ばされた時、確認したのだが、中央の庭園とは違い裏庭には、だだっ広い空間があったのだ。

 

 一見した時この場所に新しい邸宅でも作るつもりだったのかと思うほど広い場所だったので、次の目的の為、皆にここへ集まってもらった。

 

 そして俺はエイチから預かっていた輝石を、辺りをざっと見渡して丁度良い石の上に置いた。


 何の為に?それは実験をするためだ。


「じゃエイチ頼むよ」

「わかりました、やってみます」

 

 エイチは集中状態に入ると魔力がグングンと上がって行く。


 面白い事にどうも魔力を溜める際、身体の部位のどこを起点として魔力の渦を作っていくかが、人によって違うらしく、エイチの場合頭に生えている猫耳のようだ。

 

 ちなみにナガトラは剣や鎧と思いきや、両腕と鎖骨の辺りで魔力を溜めていた。

 剣や鎧が見せかけなんて、とんだポーカーフェイスだ。


 ちなみに俺は右目。

 なんでかというと中二病っぽくていいからだ。

 とわいっても何処の部位でも溜める事は出来るが、ノーザンブリンでの俺は()()()()が無いので、右目よ!魔力を生成するぞ!みたいのをこだわって、やってみるつもりだ。


「リッカ様準備完了です」

「おう!エイチ右目を解放するんだ……」

「はい?」

 

「すまない間違えた……そのままどうぞ」


 恥ずかしい……エイチ達に中二病の概念が無くって良かった。

 

「了解致しました。パンドラ(騎械)召喚。フラワールーム」


 エイチの召喚に応じるように、時計仕掛けのような扉が現れる。

 その扉にはギコギコと回る歯車が付いており、その回転が扉の解放の動力になっているのだろう。

 

 扉はゆっくりと開いていく。

 

 ちなみにエイチから輝石へと供給される魔力が動力源のようで、魔力量の少ない召喚士だと扉が開ききらないとの事だ。

 

 そして扉が開き切ると、開いた先の空間が歪みだした。

 それを見て俺は納得した。

 なぜ召喚物が過去の機械と呼ばれているかを。


 それは歪んだ空間から見た事もない物質が現れるからで、それは多分ノーザンブリンの人から見れば聖なる物なのだろう。

 そして媒体となる輝石自体は長年の歳月をかけて生成された過去の物質。


 つまり騎械とは聖なる者の所有物。

 言い換えると過去の聖人の機械という感覚なのだろう。


「召喚完了です」


 俺の目の前にその聖なる騎械が現れた。

 

 そう。それはエイチの大切にしている。

 花畑仕様の大破戦車だった。

 

 ちなみにこのパフォーマンス的な召喚は俺がエイチに無理を言って頼んだのだ、皆の呆気に取られた表情とは対照的に、なんだか恥ずかしそうな表情を見せているエイチには悪いと思いながらも、必要な事なのだ。

 

 何故なら俺はパンドラ(騎械)召喚をした事がないので見て覚える必要があるのです。


「確認なんだけど、一度召喚したパンドラ(騎械)は召喚者であれば、何回でも再召喚出来るのかな?」


「はい。けれど半分正解で半分間違いですね。リッカさま輝石をお持ちですか?」


 俺は所持している赤い輝石を2個手のひらに置いて、リッカに見せると、リッカも小袋から緑色の輝石を1個取り出し、俺の手に乗っけた。

 

 俺が以前エイチに預けた分だ。


「赤色の輝石が3等級。緑色は4等級になります。この他にも5等級の青色に、2等級の金色。そして1等級の紫色。そして一番価値が高い真珠色(パールホワイト)の特級聖輝石があります」


「という事は私の持ってる輝石は3等級が2個と4等級が1個か」


「そうですね。召喚後、騎械を維持出来るのは聖輝石だけです。リッカ様の手持ちで聖輝石と呼ばれるのは3等級の赤色だけですので2個という事になりますね」


「そうなんだ、じゃあ3等級以下の緑の輝石はどう使えばいいのかな?」


「それは以前私がリッカ様を治療した。医療回復鏡(ヒーリング・ミラー)ですとか、フェアリーズ・エリア(精霊の加護・防御)のように騎械魔術を展開する時に輝石を対価として使用する訳です」


「じゃあ三等級以下の輝石は手に入り易いのかな?」


「いえいえ、一番手に入り易い五等級の青色輝石でも、馬10頭は買えますよ。参考までにリッカ様のお持ちの三等級の赤色輝石ですと馬に加えて広大な牧場まで買う事が出来ますよ」


 清々しいまでの笑顔でそんな事を言う。

 

 つまり俺を助ける為に10匹の馬を諦めた訳だ……すみません。ありがとうございます。

 

 そしてお花畑戦車の為に牧場を捨てたと思うと……。


 けれども俺のポケットには異世界で生きていけるように、きっと神様が大金を忍ばせていてくれたのだ……それに気づかないなんて、親の愛情に気づかない子供のようでは無いか。

 

 俺は手の中でコロコロと転がる輝石を見つめながら。


「なぁ……エイチ。これだけあれば……」

 本題を言う前にエイチは。

「駄目ですよ」

 そう笑顔で言った。


 如何。

 つい現実的な考えに戻ってしまった。

 俺がやりたかったのは、輝石を片手に逃亡……では無く。

 ナグラル村の住人を助ける為の新たな力。

 

 そうパンドラ(騎械)召喚をする為にここへ来たのだ。

 正直いうとかなり惜しい気もするが!

 やるしか無いのだ。

 召喚をせず魔王に殺されようものなら、そもそも金の使い所も無いのだから。


 俺は腹を決めた。


「リッカ、てめぇ。まさかとは思うが……」

「うっさい!」

「なんだ!いきなり噛み付こうとすんじゃねぇ」


 ナガトラの奴が急に、チャチャを入れてきたので噛みついてやろうかと思ったが避けられた。


「さてっ。仕方ないしやるか!」

 

「皆さん下がってくださーい。リッカ様の召喚なので何が起こるかわかりませーん」


 ユーキ……そんな暴走するみたいに言わないで。

 

 俺は右目に魔力を集中する。

 

 渦を作るように、深く、深く。

 練って、練って。

 

 そして凝縮する。

 そう慌てず少しづつ。

 小指の先端ほどの大きさまで凝縮する。

 

 完璧だ。

 

 俺は赤い聖輝石を2個同時に指で弾く。

 

「これならいける。パンドラ(騎械)召喚。鐘を鳴らせ」


 晴天の青空に強い風が吹くと。

 どこからか高らかに鐘の音が3回鳴り響く。

 どこから鳴っているのかはわからない、この場所のようでもあり、遥か遠くのようでもある。

 

 鐘の音オーケストラが短い曲を終えると同時に、リッカの背後に巨大な魔法陣……。

 

 時計の盤状を模した魔法陣が現れると、ガチガチと歯車が回り出す。


 俺は詠唱の時に魔眼のくだりを言い忘れたなんて思っていた為、背後で時計仕掛けの魔法陣が完成されている事に気づいていなかったのだったが。


挿絵(By みてみん)


「凄い……」

 そう言ったエイチの視線は俺の背後に向けられていたので、咄嗟に振り返るとすでにバチバチと時空が歪み出していた。


 そして、バチンという音共にパンドラ(騎械)が現れ勢い良く排出される。

 

 最初は両手サイズの鉄の塊が飛んできた。

 

 ていうか飛んでくるもんなの?流石にゴツゴツした鉄の塊が時速30キロほどで排出されるなんて聞いてない……が。

 一先ず重力軽減魔術を発動して空中でキャッチ。

 並の人間なら直撃したら死にそうだ。


「どれどれ」


 俺は鉄の塊を品定めしてみる。

 

 それは俺の良く知っている物だった。

 懐かしくもあり、見るとなんだかホッとする。

 

 服屋の相棒。

 少し見た目は未来的でありスチームパンクっぽくもあるが、間違い無くこれさ()()()だ!


「何故ミシン!」


 嬉しいさの裏腹にツッコミを入れる俺。

 

 それでも色々と細部を観察する俺に、周囲から声が。


「リッカ様危ないです!」

「馬鹿野郎、ボサっとしてないで避けろ」

「リッカさん逃げて」

「危ない。早く動いて下さい!」


 エイチ。ナガトラ。ルールー。ダンテの声が一斉に聞こえたが4人共言っている内容は同じようだ。

 

 俺は忘れていた……聖輝石を2個同時に使った事を。


 それは顔をスレスレをかすめて、ドンっと地面に激突した。

 飛んできた物体の風圧で自慢のツインテールが舞い上がったほどだ。


「嘘……危なかった」


 魔王と戦う前に死ぬ所だった。

 

 俺は恐る恐る落ちてきた物体を確認すると。

 

「これはなんでしょうか?先日戦ったパンドラ(騎械)カノン砲に似つますが、幾分小さいです」

「そうだね。自走しなさそうですしね」


 エイチとユーキは呑気に話しながら、不思議そうにその物体を見つめている。

 

 しかし俺はそれを知っている、つい最近イタリアの旧要塞跡地で見たばかりなのだから。

 

 鉄製の車輪。上向に設置された筒状の砲身。

 

 間違い無く榴弾砲だ。

 

 けれども肝心な弾をつめる場所は無く、変わりに魔力を供給する為の魔操桿(まそうかん)がついている。

 

 しかもよく見ると全体的に機械的というか、まるで昔の武器を未来人が改造して更にそれを、魔術士用に器具を足したかのような雰囲気だ。

 ますますパンドラ(騎械)とは何か分からなくなってくる。


「ほう、榴弾の代わりに魔力を装填する訳か」

「これは当たりだと思われます」


 ダンテの言う通りかもしれない。

 けれども俺が思うその理由は、強力な武器っぽいからでは無い。


 俺は榴弾砲をトレースするとただの武器パンドラ(騎械)では無い事に気づいたのだ。

 残留魔力量は正直俺が閉じ込められていた箱のほうが大きいが、寡兵をカバーする能力がある。


「これなら、魔王相手に戦えるかもしれない」

 

 俺の中で少しだけだが、魔王相手に作戦を成功させる自信が沸いてきたのだった。

 

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