騎械仕掛けクロニクル
王国側のパンドラカノンは魔力散弾を撃った後は動きを止めていた.
帝国側の騎士達は見る限り半分くらいは、やられてしまったようだが。
それでも被害は少ないと言えるかもしれない。
何故なら元々数が少ないうえ、あちらこちらに散っていた為に助かった者も多くいた。
けれど、この辺りで戦っていたオークや帝国騎士は全滅だった。
そしてパンドラカノンが動きを止めたのにはもう1つ理由があるのは明白。
それは砲撃が止むと同時に現れた王国騎士100名だろう。
こいつらの存在は厄介になりそうだ……。
パンドラカノンだけならなんとか生き残った帝国騎士達を守りながら戦えそうだけど、100名の王国騎士がここに雪崩れて来た場合、ほぼ間違い無く、俺達以外は全滅するだろう。
しかし、不幸中の幸いとでも言うのだろうか、王国騎士達は隊列を乱さずゆっくりとこちらに向かって来ている。
まるで恐怖心と絶望感を味わう時間を帝国騎士達に与えているように。
それが甘い考えであったと後悔させてやろうと俺は思っている。
王国軍騎士との距離500m。
パンドラパンドラカノンまでの距離約800m。
俺は持っている輝石のうち緑色3つをエイチに渡した。
本当は持っている分、全て渡しても良かったのだが、エイチがそれだけで良いというので、残りの赤色2つは俺が預かる事になった。
しかし輝石を持っていても、俺は新たにパンドラ召喚は出来ないのだから悲しい。
しかし!俺は既にパンドラを持っている事に気づいた、気づいてしまったのだ。
というより装備している事に気づいて無かっただけの話しなのだが。
さっきパンドラカノンの魔力散弾を防いだ時、なんか魔力の回復と増幅がデカく、即座に高位魔術を展開出来たと自分に関心して少しテンションが上がってしまったが。
良く考えてみると、今着ているボディスーツが既にパンドラでその加護なんだと言う事に、気づいた時は少し恥ずかしい気持ちになった。
そもそもおかしな話だ、パンドラ召喚で現れた箱から出てきたのが、俺なのだから。
多分俺は添えもので、このスーツがメインなのかもしれない……。
そんな悲しい現実は認めないが。
ただ肝心なスーツの使い方が分からなかった。
けれども、それは戦っている内に明確に思い出した訳だが、問題なのは戦闘に使える情報しか思い出せないのだ……。
このボディスーツでいうと、性能的に状態変化に特化したパンドラつまり一応直接的な攻撃用では無いのが、俺が今まで気づかなかった理由なんだろう。
ただこの情報も脳内に直接マニュアルがダウンロードされたみたいに、急に閃くのだから俺がそもそも知っていた情報なのか、それとも誰か目に見えない存在のギフト的なものなのか判断がついていない。
1つ分かっているのは、何故か戦闘中にこのような、閃きが行われるらしい。
不思議な事に戦う為の情報……というより閃く事によって、鮮明に使い方、効果、威力などはわかるのだが、国名、人名、種族などの戦闘以外の事は一切記憶が無いのだから困る。
ちなみに、新しく輝石を使い、パンドラ召喚はどうも戦闘に分類されていないらしく、やり方がわからない。
だから俺が輝石を持っていても意味が無いのだ……。
折角輝石があっても使えなければ宝の持ち腐れな訳で、その分エイチに使ってもらおうと思ったのが経緯である。
「じゃあエイチ、その輝石を使ってもう1回障壁を張れるかな?」
「はい、1つは魔力回復用に、もう1つは障壁用に使わせて頂きます」
魔力回復用にも使えるとは便利アイテム。
「ちなみにパンドラって魔術で倒せるのかな?」
「無理とは言い切れないですが、パンドラ1騎に対して5000名の騎士が必要だと聞かされております」
「5000名か……中々無茶苦茶な数字だね。今こちら側に残されてるのは30名もいないしね」
普通に考えたら絶望的である。
「じゃあ、こっちもパンドラを使用した場合はどう?……というか装備品なんだけどね」
「それは……実は、リッカ様が急に魔力が跳ね上がっている事に驚いています、やはりそのスーツですか?」
「やっぱり、そうだよね。多分これパンドラだと思う」
「そうですか……今のリッカ様なら……私は……確信しています」
よし。
決まりだ!帝国騎士を守りながらパンドラカノンを破壊する。やってやろう!
その為に一番最初の工程として、やらなくてはならない事がある。
「エイチ!まずは、生き残りの騎士達を安全な所に誘導する」
「わかりました」
「スターフラグメント」
俺は光の滝による防御陣を現在地から数百メートル離れた森の入り口に展開した。
少し距離があるが、流石にここは直ぐに戦場になるので防御陣地として相応しく無い。
これで魔力を基礎とした攻撃は結界を通さないだろう。
同時にそれはパンドラカノンの攻撃も耐えられるということだ。
本当は障壁を張りたかったが、内外を完全遮断という性質上、生き残った騎士達が逃げこむ場所を失う事になってしまう。
ともあれエイチはスターフラグメントが発動したと同時に周囲の騎士と従者達に結界の中に入るよう促す。
何も言っていないのに、俺が術式を展開しただけで自分が何をすべきかを明確に理解している、ナイスサポート。
エイチの迷いの無い動きに、プライドの高い騎士達も、素直に従って結界に退避しているのだから話が早くて助かる。
俺は隣にいたユーキを抱き上げると、高速移動術式を展開し、離れた所で呆然としている騎士達を一人ずつ結界の中へと放り込む。
ユーキはハイスピードに面食らったみたいで、顔が引きつっているのに俺が気づいたのは、最後の一人を結果に放り込んだ後だった。
「ユーキすまない……」
最初の一人を運んだ時にこの子も降ろせば良かった。
まぁ一人にするのが心配だったので、抱えたまま救助活動に勤しんでいたのだが……。
「僕は大丈夫です騎士様……」
目をくるくる回しながら答えるユーキ。なんだかかわいい……が、可哀想な事をした。
「リッカ様、全員退避完了しました」
息切れをしながらエイチは報告した。
あちらこちらを走り回ったのだろう。
避難を完了をした騎士の中には、先程ユーキやエイチ。
亜人に対して嘲笑の眼差しを送っていた者もいた。
当然エイチはその顔を忘れてはいないだろうが、分け隔てなく救ってみせたのだから関心だ。
「さてやりますか」
「はい。急がないと王国騎士がこちらに殺到してきます」
その通りだ。こちらに戦う意志無しと思っていたのだろうが、ゆっくりと威圧感と恐怖感を与えるように進んできていた王国軍騎士約100人。
そいつらは、こちらの動きを逃亡と判断したのだろう、一斉に突撃してきたのだ。
「まずはこいつらの脚を止める必要があるな」
「王国騎士達が殺到すれば。結界では白兵戦に対応できません……私がここで障壁を作って食い止めます」
「うんうん。その通り!エイチは結界の内側に障壁を作っておいてくれるかな――けど勘違いしないで、それは保険みたいなものだから。目標第1は王国騎士達が、ここへ来られないよう足止めする事だからね」
俺はエイチの肩に手を乗せると、グッドスマイルを見せた、ちなみに歯が六本は見える最上級の笑顔だ。
「さて。やりますか」
「リッカ様お気をつけてください」
「エイチ、私を信じて」
「勿論です!」
気合い十分!やったりますかいと思ったが、手元をユーキが離さないようにギュッと握りしめている。
弱った。
俺はしゃがみながら、ユーキの頭を撫でる。
「ユーキ大丈夫だから、ここはお姉さんを信頼して待っていて欲しいな」
自分の事をお姉さんなどと言うのはなんだか、恥ずかしくて顔全体が熱くなるが。
ユーキは精一杯我慢するような面持ちで頷く。
しかしそれでも震えながら手を離すユーキを見て、俺は王国騎士軍にお灸を添えてやらねばと思えた。
戦争とは言え子供が巻き込まれるのは、胸糞が悪くなるのだから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
高速機動開始。
砲撃で出来たクレーターの端に立つ俺。
パンドラカノンは動かない模様だ。俺達くらいの人数に使用するまでも無いという訳だ。
「舐められたもんだね」
100対1。流石に銀色のフルプレートで揃えた騎士達は迫力があると思う反面、顔が確認できる距離まで近づくと、これからこいつらの命を奪う事をしないといけないのかと憂鬱さが前に出るが。
既に勝敗は決まっている戦に対して掃討戦を仕掛けてきた以上、同情する訳にもいかない。
「悪いけど消えてもらうよ」
俺は突撃してくる王国騎士に対して、腰に手を当てバシッと指差しながら、短い詠唱をした。
「雷の怒りを知れ!トール・ハンマー」
辺りを数秒静寂が包む。
一切の環境音が消え、王国騎士達の気合と自信に満ちた声だけがノイズキャンセラーをかけたような音で響いていたが、それを掻き消すように空を真っ暗な雷雲が広がり、ゴロゴロと雷鳴が響き出す。
先頭を走っていた王国騎士達は、空の変化に危険を感じたのか、
「全員止まれぇ!」
と叫び。警戒するように空を窺っているが、気づくのが遅すぎる。
もう死線は通り過ぎているのだから。
ドゴーーーーン。
真っ暗な空を一舜眩い光が支配し、轟音をたてながら稲妻が落ちる。
一瞬であった。
先頭を走っていた者達は自分が死んだ事すら気づかないうちに、消え去っていた。
――――――――――――――――――――――――
雷雲の影響なのであろう。
周囲に雨音が響く。
天候すら変えてしまう魔術の威力に何が起こったのか理解すら王国騎士は出来ていないよう、
「状況はどうなっている」
「貴様ら陣形を立て直せ!」
数人の王国騎士の指揮官と思われる男達だけは、指揮を回復しようと努めているが。
残りの者達のほとんどが事の異常さに困惑し。
ある者は尻もちをつき、ある者は狼狽し、ある者はクレーターを横切るように出来た大地の亀裂を覗きこんでいる。
クレーターを半分に分断して、大地に亀裂を作り出す魔術とは人の域を超えている。
こんなのを王国騎士達に直撃させたら、皆殺しにしてしまうのは明白だ。
そして、裂けた大地の亀裂の深さは底知れず、俺自身ここまでの威力とは思わなかった、と云うのが本音だ。
だが。狙い通りの結果と言えた。
これで裂け目から向こう側の王国軍騎士達はこちら側に来る事が、当分の間は出来ないのだから。
しかし一部の集団が王国軍騎士達の中から、大地の亀裂ギリギリまで突出してきたと思ったら、何やら集団魔術の準備をしているようだ。
俺達に近づけない以上、近接攻撃が出来ない。
なら魔術攻撃。
つまり飛び道具って訳だけど、それは無駄な足掻き。
例えその矛先を、俺の弱点ともいえるエイチ達に向けたとしても同じ事。
何故なら俺の張った結界は近接攻撃には何の意味も無いが、魔術師のように魔力を使用した攻撃にはほぼ無敵と言って良いほど頑丈に構成されている。
であるから、足場を失った段階で俺の手のひらで踊るしか無いと云う訳だ。
1つ問題があるとすれば、パンドラカノンから、防御障壁と防御結界。両方の術式の匂いと云うか、魔力の圧を感じる訳だ。
まあトール・ハンマーで倒せるとは思うが、さっきまで動いていなかった、パンドラカノンが大分、前へ出てきている。
俺を危険視してるのであろうが、あの位置でトール・ハンマーを使えば王国軍騎士達も全員消し飛ばしてしまうだろう。
「流石に虐殺は嫌だな」
ならば。
見た感じではあるが、王国騎士達の指揮はそんなに高くなさそうだ、オークの一件。
つまり指揮官を倒しても撤退しないという危惧があったが、王国騎士達はパンドラと撤退をさせない指揮官。
つまり今偉そうに叫んでる奴らを始末してしまえば、総崩れの撤退に持ち込めるだろう。
「さて、いよいよ使う時だ」
俺は魔力を自分の掌に溜めるイメージを固めていく。
貯めて、増幅して、凝縮する。
そしてその魔力をパンドラスーツへと送り込む。
「状態変化――装備換装」
シーフ仕様からサムライ仕様へと変化。
アンチ・ムラマサ展開。
斬撃強化――極。
高速起動――中。
隠密発動。
天下布武発動。
「更に詠唱魔術付与」
ジャックザリッパー
アトラス・ボム
ドック・ファイト
斬撃強化――大。
爆破付与。
スピードアップ――大。
流石にヤバいくらいの魔力を消費しているが、ここまでやると最早俺がパンドラそのものなのかと勘繰ってしまう。
まず裂け目の向こう側の魔術騎士の指揮官を……。
俺は王国騎士達を捉えるるべく、高速起動を発動。
王国軍魔術騎士も集団魔術レッド・フォールを発動するが、正直防御魔術を発動するまでも無い。
そもそもレッド・フォールなんて魔術は対城用の攻撃なのだから。
なので俺に当てるのは難しいだろう、俺はリズミカルに火の玉を避ける。
正直、音ゲーレベル初級な感じだ。当たる要素が無い。
俺は最後の火の玉を避けながら、アクロバティックに避け目を飛び越えると、紫色のケープに身を包んだ魔術騎士指揮官の目の前に着地、
「きっ貴様!くら……」
俺は魔術指揮官が喋り終わる前に首を刎ねる。
「なんだ!どうしたんだ!」
後方から目立つ金の鎧を纏った指揮官が剣を抜いて駆け寄ってくる。
さっき味方を鼓舞しようと叫んでた指揮官だ。
「何をしている、相手は一人だ。抑えろ!」
俺はその場で地面を踏み込んで、居合斬りで指揮官の動体を両断すると、爆破付与の影響でそのまま吹き飛んだ。
目も当てられない状態だが……仕方が無い。
「次は」
王国騎士達のど真ん中で何合か斬り合い、4人ほど斬り伏せながら、パンドラカノンの目の前で陣形を維持している騎士達の塊を見つけた。
間違い無く本陣である。
背後の脚付きも魔力が高まっているようだが、今魔力散弾を撃てば味方を巻き込む訳だ。
「なら!」
俺は姿を数秒消せる、隠密のスキルを使うと本陣へと入り込む。
王国騎士長までの距離は30メートル。
姿が現れるまで、
3秒。
2秒。
1秒。
俺は王国騎士長の目の前、鼻先がくっつく距離まで飛び込む。
「うわぁぁぁ!貴様ぁぁ」
俺の存在に気づいた時にはすでに、アンチ・ムラマサが王国騎士長の腹部を貫いていた。
そして叫び声をあげながら爆散する。
そこからは王国騎士達は混乱をおこしていたが、流石にパンドラカノンはまだやる気らしく、俺を飛び越えると中央へドスンという音と共に着地。
その衝撃で数人の王国騎士達が圧死したようだ。
しかしその選択は正解であると思う。
これで砲身が向けられている先は、俺と本陣の騎士達10数名だけになるのだから。
けれども、俺の周りにいる騎士達の恐怖に引き攣った表情は見るに堪えないなんて思ってしまうが、
「止めてくれ!撃たないでくれぇぇ」
という懇願を無視するように、パンドラカノンから魔力散弾が発射される。
同時に俺は|アトラス・インテンション《アトラスの意志》を発動。
ドドドドドドン――発射された散弾は6発。
全弾俺を目標にしていた。
最初の弾は俺の足元へ着弾。
直撃では無いが、酷い衝撃だ。
そこから先はどこに着弾したかさえ、わからなかった。
凄まじい土煙が舞い上がり、空を埋めている。
周囲の地面を削り取り、いくつものクレーターを作ってしまう魔力散弾の威力は勿論知ってはいたが、至近距離での被弾はヤバかったが、
「流石に初見じゃないからね」
2度目はその魔力量も破壊力も分かっていたので、全て対応済み。
残りの魔力は半分ほど、土煙が薄まったと同時に勝負をかける。
俺はあれを、どうやって潰すかを考えていた……。
今までパンドラカノンが、ビル5回ほどのデカさがあるとはいえ、イマイチ弱点を見つけられ無かったが。
至近距離まで近づいた事で、ある事に気づいた。
パンドラカノンの強さは剛鉄の装甲に練り込まれた障壁と結界術式によって作り出された、完璧な防御力だが、
「確か砲身に穴空いてたよな……」
魔力散弾を放つ砲身にはしっかりと、マズルとバレルがあったのだ。であればその先にはチャンバーがある訳で。
「そこに魔力溜まりがあるなら……そんなオチってあり?」
マズルからパンドラカノンの属性である炎とは逆の性質である、氷の属性の魔術を流し込んでやれば、暴発確定なのでは?
視界が戻ると同時に俺は、パンドラカノンに向かって飛び掛かる。
途中で何人かの王国騎士達とバッティングしたけど――無視だ。
当然俺に怯えているようだったけど、安心して欲しい。
戦いはこれで終わりだ。
俺はパンドラカノンの脚部に跳び登る。
最初のジャンプでビル2階分、そのまま更に1階分を登ると目的地である砲身のマズルへと手をかける。
その頃には階下にいる、王国騎士達は俺の存在に気付き慌てているが、もう遅い。
この時点でだれが、どんな手を使っても俺の勝ちは揺るがないだろう。
ちなみにこのパンドラカノンの謎なのだが、最後にもう1つの疑問が晴れた。
それはこいつを召喚して、動かしているのは誰?問題だ。
まぁ、隠れているとは思ったが、痺れを切らしたみたいで俺の足下に現れた。
やたらと派手な奴。
金の糸でドラゴンが刺繍されたマントなんて羽織っている上に、屈強な男達が護衛に付いているあたり、よほど自意識過剰なパンドラ召喚騎士なのだろうが。
けれど俺は召喚騎士は放っておく事にした。
そして指を銃の形に曲げ、その先端に魔力を溜める。
別にそんな風にしなくても、魔力は貯められるが、見た目は大事だ。
「全てを凍らせろフロスト・ワーク」
指先から放たれたボール1個分ほどの氷の塊はパンドラカノンの魔力炉であるチャンバーへと到達。
俺は全力のジャンプでその場から退避する。
フロスト・ワーク。
見た目は全然ヤバそうでないが、実は結構な上級魔術だ。
炎の炉心に氷の魔力をぶつけるだけでは無く、小さな氷の塊が魔力を食らい増殖していく対軍防衛術式だから、今頃パンドラカノンの炉心では、魔術散弾を作り出す用の膨大な魔力を氷へと変換しようとしているはずで、それがやがて大爆発を起こすのだ。
俺の思惑通りパンドラからピーピーという音が鳴りだす。
俺からしてみれば明らかに危険を知らせる警報なのだが、召喚騎士はアタフタしているのみで、避難しようとしていない。
その辺り、もしかしたら元の世界の生活や知識が活かせているのかな。
明らかに警報音なのだから。
俺は更にパンドラカノンから距離を取る。
鳴り響く警報に焦る召喚騎士は、
「この音はなんなのだ!あいつ何をした!」
なんて叫んでいるが。
パンドラカノンはバリバリと装甲が裂ける音を鳴らし、周囲を巻き込みながら大爆発。
そしてドゴゴゴゴンと爆散していった。
召喚騎士も爆発に巻き込まれていく姿を確認した、最早放っておいても良かったが、自分が召喚したパンドラに対して情報を知らな過ぎだ。
閃きがある俺が異常なのかもしれないけど……。
爆炎が上がる中パンドラカノンの脚部が吹き飛んでいくのが見えたが、あの爆発だ……砲身や炉心は跡形も無いだろう……。
周囲がようやく落ち着きを取り戻し、そこに残ったのはおよそ60名ほどの呆然と立ち尽くす王国騎士達だった。
そして指揮官を失った彼らは、誰に命令される訳でも無く、一人……二人と戦場から逃走を図り、やがてそれは大きな波となっていき、総崩れとなっていった。
主人公忍者みたいーーー今回で最初の戦闘は終了です。
次回からは、新展開になります。






