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ろーまの休日の詩

11/29 2部へ繋がるように、詩からストーリーに変更しました。

    少し読みやすくなってると嬉しいです。

その日は晴天だった。

 少し寒さは感じるが、パーカーにチェスターコートを羽織って、昼くらいからミラノ市内を散策していた。

 宿泊していた三ツ星ホテルからは、そんなに離れていない。

 

 明日は朝から仕事だから、観光という訳では無いのだが。初めての海外一人旅なんだし、少し近所を冒険してみようくらいの気持ちだった。

 手荷物は無い、ただお洒落なスーパーで買った安いワインの入った紙袋を抱えている。

 

「Fratello, puoi aiutarmi con i soldi? 翻訳←兄さんお金恵んでよ?」

「grazie buona giornata 翻訳←ありがとう。いい天気だね」


やたらと、民族衣装っぽい服を着た女性達に声を掛けられたが、イタリア語はほぼわからないので、知ってる単語を並べながら。

 俺はキラリと光る笑顔を見せる。

 笑顔は世界共通だ! 民族衣装の女性達もきっと、あのアジアン・グットメン素敵ね。みたいな会話を今頃しているだろう。


「ふむ、イタリアの女性は積極的というし、俺に気があるのかな?」


 ちなみに、俺の名前は布屋八雲。

 洋服のデザイナーだ。昔から良くモテたでしょと言われる事もあるけど。

 何を隠す事があろうか、俺は20代後半のナイスメンなのは認める、しかし彼女がいた事は無い。


 どうしてたかって?

 いやいや、彼女なんていらないでしょ。

 

 ハサミと生地。それとエロゲがあれば人生楽しいのだから。

 つまりジャンルが違うだけで、ただの美少女好きのナイスメン(おたく)だ。

 ただ性癖的なものは、美少女に着せる服へと偏った。言い換えると希少種なのだ。


 ただ世の中とは変なもので、そんな俺の感覚に需要があったらしく、イタリアまでわざわざ仕事で呼ばれたわけだ。


 それにしてもイタリアは面白い。

 神やら悪魔やらがまるで存在しているようで、あちらこちらでその痕跡を見る事が出来る。

 

「まるでファンタジーだよなー。ただ巨大な像は巨像恐怖症の俺としては些か受付けないが」

 

 ただもう少し脚を伸ばすだけの興味がミラノにはあった。

 俺は買ったワインを嗜むのは少し我慢して、エルフ探し……じゃなくて感性を磨く為に、中心部から南に向かおうと、路線バスに乗りこんだのだ。


 人生の分岐点になるとは知らずに……。


 ――――――――――――――――――――――――


 俺はパチパチと炎が燃え上がる音で目覚めた。

「なんで燃えているんだ」

 俺が乗っていたバスは真っ赤な炎を上げて燃えていた。

 車に轢かれた?

 そんな訳は無い。俺は……バスに乗って……。


 意味が分からなかった、もしかしたら夢とも思ったが、確かにバスに乗り込んだ記憶はある。

 中心部から北に数分、3個目の停留所に着いた時だった気がする。

 車体が大きく傾き、慌てて手摺りをつかんだが、爆発音が鳴り、爆風に吹き飛ばされた処で気を失ったのだ。

 

「早く逃げないと」


 俺は薄らぐ意識の中で、そう思った。

 バスの車体に引火した火は、他の車体にも移っており、俺が横たわる目の前で今にも爆発しそうなのだから。

 もしかして、これテロなのでは……そう思ったら急に恐ろしくなり起き上がろうとするが。


「腹が燃えるように熱い……」


 火が身体に燃え移ったのかと思い、ゆっくりと身体を仰向けに動かして確認をするが、俺の身体はどこも燃えていない。


 その代わり、エル字に曲がった鉄パイプが、腹に突き刺さっている。


 嘘だろ。

 俺は擦れた声で助けを呼ぶが、周囲に生きてる人間はいないようだ。



挿絵(By みてみん)

 

 ……これ死ぬな。

 

 俺はそう思った……。

「まだ転ゴブやREセカンドの最終話も観て無いのに」

 しかも俺が死んだら、エロアプリ対魔軍団の攻略ウィキの更新止まるな、ユーザーのみんな……。

 あっ……。

 家のパソコンのデータ、壊れたのも含めれば5台あるから、どうにもならないか。


 俺は最後に空を目に焼き付けたいと思い、ゆっくりと目を開くと、曇空からポツリと雨が数滴落ちてきて顔を濡らす。

 

「雨か……さっきまで晴天だったのに……」


 そして白い教会のようなゴシクック調の建物が視界に入るがなんとも言えない違和感を覚える。


「教会の上に悪魔の象……あれってガーゴイルっていうんだっけ?」


 壁から突き出すように作られた悪魔の像が、俺を見て笑っているのだ。

 ケラケラと笑う悪魔が見えるなんて、多分幻覚だろうが、笑われる筋合いは無い、けれど教会に悪魔がなんでいるんだ……。

 礼拝に来た訳では無いだろうに……。


「まぁ、いいか」


 どうやら最後まで、爆発には巻き込まれなかった……。

 良かった……痛いのは嫌だからな……。

 俺は薄れる意識の中でそう思った。

 

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