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神殺しの機動隊  作者: 雪ソソギ
本編
2/2

欲求不満の神童

第1話です

「神殺し・・・本当に行うんですね?」


 アベルの後輩、ミライが不安そうに尋ねる。神殺しは反乱軍を完全に鎮静化させるために必要不可欠であるということは機動隊員ならば重々承知だがそれでも神に対する畏敬の念を振り払うことはできない。


「いずれやらなければならないことだ。それを俺たちが請け負うというだけのことさ」


 アベルは一歩も引く気はない様子だ。彼は幼少期に両親を反乱軍に殺されているため人一倍反乱軍に対する敵意が強い。完全に反乱軍を滅ぼすためならば危険を承知で神殺しを遂行することだえ躊躇しない。それに、彼は属性魔法を全属性使うことができ魔力係数が2800を超える。これは魔力係数が高いものにしか入隊できない機動隊員の一般的な魔力係数である1200を大きく上回る。さらにどれだけ勤勉に学んだ者であったとしてもせいぜい3属性の使用が限界である。そういった値をすべて覆すか如く力を持つ彼にとって神殺しは十分遂行可能な任務なのだ。


「無駄話は終わりだ。前方の建物内に動きがあった。透視能力を使えるか?」


「うん。ちょっと待っててね」


 アベルの友人、アーロンは得意の光属性魔法で建物の透明化を試みる。建物内には4人の反乱軍兵士がいた。彼らもこちらに気づいていたらしく迎撃の体制をとっている。


「このまま攻め込みますか?」


 あのような雑兵であっても戦果につながる。手柄をあげてよりアルハザードの役に立ちたいと考えるミライにとっては格好の相手だ。


「魔力係数2000前後が20人か。アーロン、ミライ、バリアの準備をしろ。このまま突っ込むぞ!」


「「了解!」」


 アベルの一言で二人は盾に魔力を流し込み突撃の準備をした。敵は迎撃のため無属性魔法を連射するがアベルの白魔法による移動速度の大幅な向上により3人はほとんどの弾を回避する。


「く、来るなァァァ!!!」


 雑兵達は半分泣きながら無属性魔法を連射するが数少ない命中弾も盾によって弾かれてしまう。


「喰らえ!」


 ミライは指先から炎属性魔法を矢のように繰り出し敵の魔力鎧を破壊する。鎧の破壊には一定数の負荷をかける必要が、必要魔力数はそこまで大きくないため攻撃魔法の連射が得意な彼女は魔力鎧の破壊を担当することが多い。鎧の破壊どころか魔力係数2000前後の敵であればアベル一人で一掃できるのだがこういった雑兵戦では仲間の戦果のために彼はサポートに徹することが多い。部下や同じ部隊の隊員から彼がすかれている理由はこうした謙虚な姿勢にある。


「これで終わりだ!」


 アーロンは光属性の全体攻撃魔法を使い雑兵を一掃する。反乱軍の兵士は低い魔力を外神の与えた力である「神像の加護」によって補っているため元の魔力に依存する魔力耐性はたいてい低い。そのため攻撃力の低い光属性魔法を得意とするアーロンでも簡単に一掃することができるのだ。


 任務を終え偵察任務A班に分類された彼らは寮へと戻る。いつ攻めてくるのか分からない反乱軍に対抗するためには彼らも常に待機していないといけないため寮での生活を余儀なくされる。初めは自宅に帰れないことを不満に思う者もいたが寮には快適に生活できるよう高水準な設備が完備されているため次第に不満を言うものはいなくなった。


「透視魔法を使ってみたがこの辺にはかなり敵の基地が多いな」


 空を移動しながらアベルはそうつぶやくと指先に力を込め、強力な闇属性魔法を眼下の建物に放つ。魔法は建物に命中し周囲の地形を変化させる。


「最近雑兵ばかりで力を使う機会が少ないからってあんまり暴れるなよ。被害もでかいんだからさ」


 アーロンが笑いながらに注意する。アベルのフラストレーションの原因の一端を自分が担っていることを知っているため少し遠慮がちが。ミライはまたいつものことかと少しあきれた様子で笑う。


「敵基地にあてたんだ。別にいいだろ」


 アベルは面倒くさそうに言い訳をする。いつもの光景だ。


「お前また派手にやったらしいな!ったく、あそこお前の任務外だろ?」


「呆れた。外面だけクールに見せても欲求不満が隠しきれてないよ?」


 B班として敵基地の探索と破壊を行っていたカーティスとツクヨミがアベルに毒づく。


「仕方ないだろ。部下の昇進のために俺は全然戦えないんだ。いい加減雑兵共の相手も飽きた」


 尋常じゃない力を持つ彼にとって力を開放できないことは若干の苦痛でありそうした欲求不満が例の問題行動につながってしまう。被害は甚大だが基地を1つ丸ごと葬り去ることは神像の位置の絞り込みに役立つので誰も注意ができない。


 「お、おいあれってC班の連中じゃないか!?」


 無駄話を遮るようにC班が帰ってくる。皆重症で寮に戻ってくるのが精いっぱいといった様子だ。


「そんなに傷だらけになるまで戦うくらいだったら私たちを呼べばいいのに」


 ツクヨミは冷淡に言い放つ。通信魔法にはそこそこの魔力を必要とするが形勢不利と判断した際には仲間を呼んだ方が勝率が高い。


「よ、呼ぶ暇が・・・なか・・たんだ・・・」


 C班の一人が血を吐きながら途切れ途切れに話す。アベルはアーロンに治癒魔法をかけさせ彼らに事情を説明するよう要求した。


「はあ、はあ、神像を発見したんだ・・・!もう、逃げてくるのが精いっぱいだった・・・」

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