威勢の悪夢
数分の睡眠を取りながら何十時間も歩き続けて漸く旭が登り始める。
我の最高神、あれが祖国の皇祖神であるというので有れば我々に加護を与えください。
そう思いながら長時間の運動に膨らんだ筋肉、棒となった骨はそろそろ活動停止に近かった。
「軍曹、三時の方向に敵影を発見致しました。如何致しますか」
聞きたくも無い報告だ。
敵であろうとも今は誰一人として殺したくないし、殺されたくもない。
だが、もう良かった。
戦場で正しい倫理観は欠如しており、狂に落ちた。
「何名だ」
そう何人か聞きたい。
五人程度なら俺が三人殺し、残りで殺せれば、我々の所在地が知られる事も無いだろ。
これが最後の|殺し合い(戦争)にしたい。
「目視確認では一○○名ほどです。如何致しますか、撤退しますか」
彼等の目は絶望を表しながらも、死への覚悟を決めた光を持っていた。
交戦する気か。もうここまで逃げても意味がないと、この島中は囲まれ増援は来ないと、もう我々は死ぬのだということ。
そしてどうせ死ぬのならば数人、数十人道連れにしてやろうと、自爆特攻も兼ねて敵を翻弄させてやる、銃弾で蜂の巣にされても、重装砲で身体が粉になろうともな。
齢二〇にもなっていない青年達が此処で死を覚悟する事になるとは、この懺悔の念は死んでも在り続けるだろう。
「いや、撤退は無しだ、斬り込むのみ。良いな」
俺も覚悟を決めた。元々は俺は自殺願望者だったがどうせ死ぬのなら戦功を上げ〈海軍武官進級令〉での恩給で孝行するつもりであったが本当の生死の狭間を見て、生を望む彼らを見て思った。
「もう少し、強ければ生きられたのだがな」
しかし今では後の祭りだ。
生きる希望は捨て、戦場の鬼へと成ろう。
「では、行くぞ戦友諸君。大和武士の英霊の力、見せつけてやるぞ」
「応ォォォォァ」
残り数名の小隊が出しているとは思えない戦士の咆哮。
生い茂った森林から障害物の無い砂浜へと駆け抜ける。
歩けない者は自決用の手榴弾を持ち、背後から弾切れまで撃ち続ける。
俺と数名は軍からの贈呈品、ニ○○○年錬磨の結晶、日本で疾風の如く突撃し、鎌鼬のように敵を斬り殺していく。
身体は残りの手榴弾、煙弾を括り付けて自爆覚悟の行動だ。
古来より西洋諸国は日本刀を愛でていたと同時に恐れていた。
噂では処刑する際、「銃殺刑と斬首刑どちらが良い」と刀をチラつかせて行ったら全員が銃殺刑を選ぶと言う。
その噂が本当だったのだろう。敵は誰も近づかず、銃を構える前に俺に斬られていく。
苦悶、般若の顔を見ながら敵の鍛え上げられ万全の巨大な胴体を斬り込む。
敵の散弾、大砲の砲撃により音が散乱、半日以上の過労をものともせずに敵を無尽に斬り捨て続けた。
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