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蓋世の巨人   作者: ヒョーゴスラビア総統
3/5

無尽の悪夢

 残った戦友は文字通りの満身創痍の状態だ。


 情報部による無線が落ち軍長は負傷し口が開けない状態である。


 顎が敵の銃弾が直撃し破壊され顔下半分は焼失している。


 ヒューヒューと液体が気管に入り呼吸の阻害を行いながらも息をしている事は確かであった。


 いや他の奴等も同じような者だ。自分で動けるのは俺を入れて七、八名。


 数ヶ月前までは三桁を超える大隊であったのにも関わらず、圧倒的物量、技術の差で覆された。


 敵への上陸作戦は行われた成功はしたが束の間そこからは本土防衛前線が敷かれ丸く鎮圧された。


 この大戦まで殆どの戦争を観戦していたアメリカは第一次世界大戦後に疲弊した欧州各国を抜かすのは容易であった。


 お陰で世界大国と化し全世界で相手しても勝てる程の工業力、経済力、資源力を誇っていた。


 対して我々の皇国はご先祖様が数十年かけてやっとの思いで列強に組み入った国家だ。


 あの国力が数十倍ある帝国ロシアを幾ら今敵国である英、米からの支援があったとしても完璧な勝利だった。


 いや有れは戦術によっては勝てる戦争である。


 だが今戦は違う。


 工業力があるだけでそれ以外は無い。


 しかも資源が無ければ世界に誇る工業力も化石と化す。


 そのような国に石油と呼ばれる次世代エネルギー且つ国という身体に流れる輸血と同等の物を閉鎖されれば誰で有れ戦争へと踏み込む。


 この経済封鎖は皇国民の敵愾心を煽るのに充分の効果を発揮した。


 お陰で初期ではハワイだけではなく東南アジア、太平洋諸国の植民地を叩き潰すべく上陸作戦が決行し成功したが我々は政府はここから間違えてしまった。


 多方面に移動した兵站、補給運搬までを考えておらず今現在、俺は敵の包囲戦に嵌められた。


 政府様々で敵の奇襲攻撃によって重体となる。


 一つの胴体に何十と弾丸が食い込んだ者、投擲弾により内臓が溢れ落ちている者、地雷により脚を失った者、感染症に罹り虫の息の者。


 まさに生地獄そのもの。


 早くこの地獄より抜け出せるなら抜け出したい。


 皆そう思いながら負傷兵を背負い引っ張って前進を進める。


 骨が見えた、肉が見えた脚を引きずって歩き続ける。


 彼等の命令でいつでも自決できるように手榴弾を持たせている。


 弱い者は死に方をも選べないと偉人書に書いてあったがこれが最後の人権である。


 後世ではこれは人権問題に繋がると言われている問題であるが、外国による捕虜に対しての方が人権問題に引っかかるものが多いのである。


 現にシベリア勾留、朝鮮失踪、イギリス、フランスによる過去の捕虜に対してのものは過去より国際問題へと化していた。


 我軍も捕虜への扱いが酷いものだというのは後から知ったが。


 過去の戦を経験した先公からは捕虜になれば地獄行き、死ねば即極楽行きと言われている。


 だがそれは想像し、確定に近い仮定であった。


 何処の軍が数秒前まで自身の命、財産、愛人を殺し、犯そうとした敵を生かすと言うことか。


 そもそも戦時中に捕虜を生かし続けるのも難しく、捕虜の衣食住と言う手間がかかる。


 よってそれらを少しでも削減する為に粛清するという者だ。


 これが南京事件へと繋がるかは不明ではあるが。


 しかし戦争と言うものはこう言うものだ。


 勝てば官軍負ければ賊軍となるが故にどのような方法でも勝たなければならない。


 そのような思いで戦っている。


 手には敵と戦友の血が何層にもなって赤黒く朱に染まっている。


 肩に広がる銃槍は敵国で製造され銅が纏った鉄の弾丸に打ち込まれ創られた。


 数十分の一の瞬間に化合反応を起こし赤化した三千火力(ジュール)、七粍米(ミリメートル)(くろがね)の弾丸は光一閃で俺を貫いた。


 あと少しずれていれば胸骨を破壊して気管を塞いでいただろう。


 水の沸騰点の三倍、三百度の鉄片が肉を挽き裂き、骨を曲げ砕く。


 経験した事も経験したくもない悶絶に値する痛み。


 しかしそれは不幸中の幸いだった。


 五(キログラム)の歩兵銃を長時間、長距離を持ち歩き続ける為に鍛え上げていた筋肉によって骨の手前で止まっている。


 出血は相変わらず酷いが死ぬほどでは無い。


 先程まで強烈だった眠気を覚まし、生きている実感を起こしてくれる。


 そして夜間の間、負傷兵を率いて前進し続けるしか無い。


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