◇若いおばあちゃん◇
(2020/03/24 本日の更新はここまでです)
「ここがユリエルの実家……?」
遠くから見て小さかったから、近づいたらさぞ大きく見えるのだろうと思っていたが、普通の小屋だった。
家の隣についている縦長の小さい建物は恐らく、トイレかお風呂かどちらかだろう。
……あ、『トイレ』って書いてある看板、普通に立てかけてある。
「うん。今はおばあちゃんが1人で暮らしている」
1000歳とか軽く超えてるのかな。
「ユリエルさんのお母様とお父様はどちらへ?」
クラリスが頬杖をつく。
「両親は戦争で亡くなった」
「あら……、すみません」
「いやいや謝る必要はない。なんせ100年以上前の話だからね」
ユリエルの母親と父親は戦いに参加していたんだな。
……ユリエルはその頃、世界樹の管理人をしていたと。
「当初は酷く泣いたが、もう大丈夫だ」
そう言って、ユリエルが小屋の扉を開けた。
「ただいまー。おばーちゃーん?」
扉を開けた先には小部屋が1つ。
中央には火のついている囲炉裏がある。
その囲炉裏の近くには、綺麗なエルフの女性が。
「……あら、どちら様?」
「えー、私の顔忘れたの? なに、認知症? おばあちゃん大丈夫?」
え、この人おばあちゃんなの……?
まだまだ見た目若いんだけど……。
私から見たら、まだ26、27歳くらいの女性にしか見えない。
「あたしは、その人らについて言ったのよ。ユリちゃん」
「あー……、この人たちは私の友達。えーっと、世界樹の跡を見せたくてね」
「あらそう……。どうもこんにちは皆さん。私はメリーナ。ユリちゃんと友達になってくれてあんがとね」
まるでユリエルに友達がいなかったかのような言い草。
「やめて、おばあちゃん。私に友達がおらんかったみたいに言わないで」
「あはは。事実なのに否定するっちゃないでしょうさ」
「くっ……! 話せる人はいたから!」
「へっへっへ、強がっちゃってさあ」
メリーナがゲラゲラと笑う。
――高らかに笑うメリーナに地団駄を踏むユリエル。
どこからどう見ても、若者の会話にしか聞こえない。
おばあちゃんなのに見た目若いって何なんだ……。
「まぁいい。で、これから世界樹のとこ行くんかい?」
「……うん。そうだけど、なに」
「魔物がいるけ、気を付けな。最近は変な魔物も棲みついている」
「分かった」
ユリエルがメリーナに背を向ける。
「そうそう……。さっき2人組の冒険者が森の奥にはいったけ、もし途中で会ったら一緒に行動するように伝えておくれ。この森ではなるべく纏まって行動した方が良い」
「分かった分かった。というか分かってるから」
「そうか……。ならいいんだ」
メリーナが少し物寂し気にしていた。
「うん。さて、行こうか。――ユーノちゃん」
私の顔をじっと見つめるユリエル。
顔に何かついてるのかな?
それから私たちは村を後にして、森の奥――世界樹の跡へと向かった。
次話もよろしくお願いいたします!




