◇2日目の浴室◇
外伝スタートです。主人公と他のキャラの交友。
スライムのナズミは一切登場しません。できないので。
「ユーノさん。服脱がしますよー。はい、手を挙げてください」
「ナズチさん。私、手ないんですけどね」
「あはは、すみません。冗談です」
ナズチが私の服を脱がせる。
「よし。私も脱いじゃいます。あ、先に浴室に入っていてください。すぐにいきます」
ナズチが浴室の戸を開ける。
――昨日はユリエルと入った浴室。
この浴室は助手の部屋同様に綺麗だ。
シャワーもあるし、浴槽も2人が入れるくらいの大きさだし。
ボディーソープもシャンプーも、なんならトリートメントまである。
お金の使いどころさん、ちょっと違わない?
「凄く綺麗ですよね。家のお風呂とは大違いです」
ナズチの家は水しか出なかったからな。
水浴びも悪くはないけど、やっぱ温かいお風呂はいい。
「ここに座ってください。体洗ってあげますからね」
「うん、ありがとう」
ナズチが私にお湯をかけ、タオルにボディーソープをつけた。
「よいしょと」
ゴシゴシと背中をタオルで擦られる。
少しザラザラとした繊維が火傷の跡に当たり、少し痛む。
「……いたっ」
「あ、ごめんなさい! 大丈夫ですか?」
「うん。火傷の部分がちょっとね……」
「それなら手でやりましょうか」
「じゃあ、それでお願いします」
「……はい!」
私の体を手で洗う。
ナズチの手って結構ゴツゴツしてるな。
少し擽ったい。
――体を見る限り筋肉質とは思えないんだけどな。
リンゴとか握りつぶせたり、鉄棒で大車輪とかできたりして。
「治癒はしっかりと施したつもりですが、まだ痛むんですね」
「……ヒリヒリする時もある」
あの時は運が悪かったからなぁ。
クラリスの責任もちょっとあるしなぁ。
……今更責めるつもりはないけど。
「そういえば、私の家にいた時にどうやって水浴びを?」
「言わなかったっけ? ナズミにやってもらっていたこと」
「あ、そういえばそうでしたね。すみません、少し忘れっぽくて」
「ううん、大丈夫。重要なことじゃないから」
「いやいや重要ですよ。……たぶん」
「なにそれ」
「あはは」
ナズチが小さく笑った。
私の体を洗い終え、小さな風呂桶で体の泡を流す。
「髪も洗いましょう。……あ、髪から洗った方が良かったですね」
「……確かに」
「まぁ、私たちが最後ですから。最後の汚れは湯船につかって落としちゃいましょう」
「だね」
いつも一緒にいるけど、こうやって2人でお風呂に入るのは初めてだから、やっぱ少し恥ずかしいな。
修学旅行とかで大浴場に行くのはそこまで抵抗感ないんだけど、2人っきりだとなぁ。
ユリエルとお風呂に入った昨日は、あまり恥じらいがなかったけど……。
何だろうな、この変な気分。
「ユーノさんって、髪綺麗ですよね」
「えっ? ……そ、そうかな?」
唐突。
少し動揺した。
「ですです。金髪も似合っていますし」
「ナズチさんも綺麗だよ? 角も可愛い」
「わあー! 嬉しいです!」
髪を洗っている途中で、ナズチが私に抱き着く。
体も結構ゴツゴツしてるんだな……。
「……すみません。つい嬉しくて。痛くありませんでした?」
ナズチが体を離す。
「え? いや、うん。大丈夫だよ」
何なら、もう少しそのままでもよかった。
ゴツゴツとした感じが最高に気持ちいいのだ。
……決してそういう癖を持っている訳ではない。
「髪の泡を流しますね。目を瞑っていてください」
「うん」
私は目を閉じた。
お湯を頭上から何度も掛けられる。
「……ふぅ、終わりました。それではユーノさんは湯船に浸かっていてください。私も体を洗ったらすぐに入ります」
ナズチが私の体を持ち上げ、お湯の中にゆっくりと入れた。
丁度いい湯加減だ。
ナズチが髪を洗い、ゴシゴシと体を洗う。
かなり早いな。
適当にやっているのか、それとも最適化されすぎているのか。
「よし、終わりました!」
「早っ!」
「いえいえ、もう慣れているので」
「そ、そっか……」
腰にがっつり泡残ってるけど。
「よいしょっと……」
ナズチが浴槽に足を入れ、体を少しずつ沈める。
ナズチのお腹まできたあたりで、一気に外に漏れ出るお湯。
結構漏れちゃうものなんだな。
体積の問題か。
「何秒数えたら出ましょうか?」
「え?」
魔族にもそういうのあるんだな。
「30秒くらいでいこっか?」
「さ、30(さんじゅう)ですか……?」
「うん」
正直10秒でもキツいよね。
分かる、超分かる。
でも大人になるにつれ気づくんだよ。
長湯はいいなって。
「15秒じゃダメですか……?」
「……よし、30秒数えるよ。いーち、にー、さん、し――」
「うわぁーん! もう分かりましたよぅ……。いーっち、にーぃ、さーん、しーぃ――」
――そんなこんなで、私たちは30秒をゆっくり数え終えた。
数え終えるとすぐ、ナズチが逃げるように浴槽から出てしまった。
「うわぁぁん、あっついですぅ」
結構いい湯加減だったと思うけどな。
「私はもう少し入ってるよ。ナズチさんは?」
「私はもういいです! これ以上入ると死んじゃいます!」
そう言って、浴室から出て行ってしまった。
「あはは、ナズチさんはまだまだ子どもだなぁ」
「あーっ、ひどい! ユーノさんもまだ子どもですよね! 10秒以上もお湯の中に浸かるなんておかしいです! どうかしてますよ!」
私にもそう思う時期がありました……。
親が30分間湯船に浸かっている時は、死んでるんじゃないかと思っていたことも多々ありました。
「長湯はいいよ。体はあったまるし疲れがよくとれるから」
「いーやーでーすー!」
「いつか分かる日がくるよ」
「絶対に来ません!」
「あはは。頑固だなぁ、ナズチさん」
「か、揶揄わないでください! 嫌いになりますよ! ユーノさん!」
「はは……」
割と傷つくな。
ちょっとやりすぎたか。
「あ、でも――」
戸の隙間から小さく顔を覗かせるナズチ。
「また一緒に入りましょうね、お風呂。ユーノさんとお話しする時間、楽しいので」
少し気恥ずかしそうにしている。
こういうシチューー良い。
あと嬉しい。
「……うん。また入ろう」
そう言って、私は小さく頷いた。
次は3日目です。
次話もよろしくお願いいたします!




