◇鉱山を探検しよう④◇
分かれ道も躊躇なく進むキース。
超音波で構造を把握できるとはいえ、奥に何があるかを知っているかのような戸惑いのなさだ。
「先ほどから気になっていたのですが……」
クラリスが唐突に口を開く。
「明るくなりましたよね」
「確かに」
ずっと目が慣れてきたのかと思っていたが、確かに明るくなっている。
出口が近いのか、魔力の浮遊量が増えたのか……。
いずれにせよ、何かに近づいていることに違いはない。
「……あら? 行き止まりみたいですよ」
「ほんとだ」
順路通り進んできたと思っていたのに、まさかの行き止まりとは。
『キッ!』
「『憤怒』だそうです」
「そういうのは翻訳しなくて大丈夫だからね」
『キ、キューキ』
「『あ、○ーモ!』……? 何のことですかね」
急に現実逃避するな。
私たちはコントをしに来てるわけじゃないんだぞ。
いや、そもそも○ーモを知っていること自体おかしい。
『キュ、キキキ』
キースが天井に止まった。
「『ごめんなさい、閉じてる』と」
「……この奥には何があったんだろう」
『キッ』
「……お宝があるらしいです」
「お宝かぁ、お宝ねぇ……宝――っ!?」
この奥にはお宝が眠っているのか!
『キキュ、キキ』
「『僕たちの、お宝』と言ってます。この子、男の子なんですね!」
そこ触れる必要なくない?
「お宝と言えばお金や歴史的な骨董品ですが――。僕たちのというのは、この鉱山にいる他のコウモリさんのことでしょうか」
「キースたちのお宝なんて想像できないな」
烏みたいにキラキラしたものを収集する習性なんてないし。
魔物たちの宝となると……うーん、やっぱり想像できないな。
それにしてもこのキース、何故この道を知っていたのか。
「引き返しますか……?」
クラリスが心残りがあるような顔をする。
するとナズミが、
「……いえ、道がなければ作りましょう」
と、ツルハシを片手に岩を削り始めた。
「キースの言っていることが事実であれば、まだこの奥に続く道があるはずです。諦めてはいけません、皆さま」
そういえば、ナズミにはキースの言葉が翻訳できないのかな?
今度訊いてみよ。
「そうですね! ナズミちゃんの言う通りです! 私もやります!」
ナズチが私を降ろし、ツルハシで岩壁を削る。
「……皆さん、お元気で羨ましいです」
「え? どしたのクラリス」
「いいえ、何でもありません。私もお手伝いします!」
スコップを持ったクラリスが、裏側の平たい部分で力任せに壁を叩き始めた。
クラリスの病気って嘘だったはずだよね。
あの時は『冗談』って言っていたし。
「……あ! 穴が開きましたよ!」
ツルハシをボトッと落とすナズチ。
その小さな穴から奥をじっと覗いている。
「青い光が見えますね。何でしょう?」
「……青い光? ナズチさん、私にも見せてもらえない?」
「ええ、どうぞ」
少し屈んで、穴を覗いた。
……間違いない、あの場所だ。
水晶もある。
「ナズミ」
しゃがんでいるナズミを見た。
「ええ、間違いありません。『世界樹の空洞』でしょう」
さすがナズミ。
名探偵コ〇ンくんみたいに、思考の中で場所や人物を『あの〇〇』と焦らす私とは違う。
「世界樹……? 美味しいんですか、それ」
ナズチは知らないのか。
「ナズチさん、世界樹は食べ物ではありませんよ。とても大きくて立派な偉い樹木のことです」
「なるほど。クラリスさんは物知りで羨ましいです」
クラリスの説明が機能しているかどうかはさておき、まさかこの通路が世界樹の枝がある空洞に繋がっているとは思わなんだ。
お宝って世界樹のことだったのか。
納得できなくもない。
「よし、一気に崩そう。私も手伝う」
次話もよろしくお願いいたします!




