◇鉱山を探検しよう①◇
鉱山の中に入った私たち。
殆どの冒険者が奥へと進んでいく中、道中にいるのはカップルばかり。
爆ぜろ!
それにしても、鉱山が鉱石の輝き――もとい魔力の輝きのおかげで明るいな。
いや、内部が煌めいているというべきか。
鉱山自体がダイヤモンドのような白い輝きを放っているようだ。
「もう殆どないですね……。保険として掘られてしまったのでしょうか」
クラリスが残念そうな顔をする。
「なんか始まってから暫く詰まってたからね……」
「多少仕方ないとは思いますが――。結局深く潜るしか、私たちの道は残されていないのですね」
話し合いの意味は殆どなかったわけだ。
「あ、この鉱石綺麗ですね。私、候補として持っていくことにします」
半透明な緑色の鉱石を岩から力ずくで取るナズチ。
それができるのなら、ツルハシ不要なのでは。
「〝えめらるど〟によく似ておりますね」
ナズミが大きな本を捲る。
「ナズミ、それなに?」
「ユリエルからお借りしました。鉱石図鑑です」
そう言って、私に表紙を見せてきた。
『世界の鉱石大百科』……?
リュックサックを借りてまで持っていきたかったものはそれだったのか。
「ユーノも読みますか?」
「あはは、私はいいよ」
「そうですか……」
こうも悲しい顔をされるとね……。
「あ、あとで見せて?」
「はい」
ナズミが一転、嬉しそうに微笑する。
「進もう。鉱石が全て掘りつくされる前に」
私たちは顔を見合わせて頷いた。
◇
――一体どれくらい歩いただろうか。
鉱石はチラホラ残っているものの、人の姿は全くと言っていい程ない。
「魔物が倒れていますね。……可哀そうです。――ヒール!」
クラリスが倒れた魔物たちに治癒魔法をかける。
「いきなり大量の人間が入ってくるからビックリするだろうね。だから、魔物は人に対して反射的に攻撃してしまうのかも。大半はその争いで、人も魔物も怪我を負うんじゃないかな」
「死んでいる魔物がいないということは、おそらく手加減しているということでしょう。私が見るに、殆どの魔物にある程度の治癒魔法が施されているようですから、行動不能な状態にされているだけだと思います」
一応、人間側は配慮をしているのか。
「もう大丈夫です。傷は治りましたよ、キースさん」
茶色の皮のコウモリが目を覚ました。
だけど、私たちを見るなり飛んで逃げて行ってしまった。
「怖がっているみたいです」
「うん。仕方ないのかな……」
「魔物にも理解が深まれば、もっと平和的な催しになるのに――」
壁に付着したキースの血を見るクラリス。
「魔物にも自分たちの生活があるからね。いきなり人間に合わせるのは難しいと思う」
小さい世界樹もあるし、人の出入りはそこまでないだろうし……。
統率できる人でもいれば、話は別だけれど……。
「倒れている魔物は回復させてあげながらいきましょう。ナズミちゃんも協力してくれますか?」
「ええ。もちろんです。クラリス」
ナズミが頷く。
そういえば、メルトスライムの体液には治癒の効果があるんだっけか。
今更だけど、ナズミってかなり重宝される存在なのでは……。
「では、行きましょう」
私たちは再び歩き出す。
「……見たことがあるような鉱石が結構ありますね」
ナズチの言う通り、さっきまで珍しいと思っていた鉱石が何個も岩肌から突き出している。
魔力の量が増えてきた証拠だ。
長い間歩いたはずなのに、疲れもあまり感じないし……。
世界樹の成長ってスゴい。
「あ、わっちこの鉱石が欲しいです」
ナズミが豆粒ほどの水色の石を指さす。
「うわ、よくこんな小さいの見つけたね」
「掘ります。キリッ」
ナズミが変な効果音を言って、シャベルで岩をつつく。
「……あれ、おかしいです」
「どうしたの?」
「全然削れません」
そらそうよ。
なんならスコップだって無理よ。
「私に貸してください。小さいツルハシを作ってあげます」
ナズミが先端の折れ曲がったシャベルをナズチに渡す。
「さて……、こうしてこうやってこれで――はい、できました!」
ナズチの手によって、小さいツルハシができた。
持ち手の部分は相変わらず太いが、金属部分の形はツルハシそのものだ。
って、よくよく考えてみれば、私のトンカチ含めこのシャベルも借り物なんだよな。
あとで弁償代請求されたらどうしよう。
「ありがとうございます、ナズチ」
……ナズミは嬉しそうにしてるし、まぁいっか。
「では再び挑戦です。キリッ」
カンカンと音が鳴り、鉱石を囲む岩が少しずつ削られる。
そして、豆粒ほどの鉱石が完全に露出した頃――
「ふぅ……。最後です」
ナズミが鉱石を撮んで、ツルハシを軽く振る。
……鉱石が取れたようだ。
「――おめでとうございます、ナズミちゃん!」
「はい、やりました」
クラリスとナズミが手を合わせて喜ぶ。
ナズミもすっかり女の子だな。
……私もやりたい、それ。
「クラリスさんはどうするんですか? 私は何個か別の鉱石を採りましたけど」
そういえば、ナズチは道中でいくつか鉱石をとっていたな。
まるでいちご狩りをするかのように。
「私は余りもので大丈夫です」
「ええ!? 勿体ないですよ!」
「いえ、もちろん気になったものがあればすぐに採ります。でも、私にとってはこの時間こそが貴重な鉱石のようなモノなのです。なので、採れなくても凹んだりしません」
「……?」
ナズチが口を押さえて横を見る。
「なるほど、分かりました!」
絶対に理解してなさそう。
「さ、もっと奥に行きましょう!」
クラリスがナズミと手を繋いで鼻歌を歌いながら行ってしまった。
「少し足場が悪いですね。気を付けてください、ユーノさん。私が見ているので大丈夫ですが……もし怖いのであれば、私が抱っこしてあげますからね!」
ナズチが胸を張る。
「うん、ナズチさんありがとう。その時はお願いするよ」
「はい!」
そうして、私とナズチは先に歩いて行った2人を早足で追いかけた。
次話もよろしくお願いいたします!




