◇鑑定屋のたしなみ②◇
(2020/02/23 本日の更新はここまでです!)
※前回に引き続き、ナズミ視点となります。
わっち、先ほどの部屋に連れてこられました。
「これとこれとこれと……」
壁に飾られている服からタンスの服まで、ユリエルが様々な服を持ってきました。
あのきつね色の帽子が……麦わら帽子でしょうか。
「さ、そこに立って、ナズミたそ」
……たそ?
「あの、たそとは一体?」
「めんこい女の子の名前に付ける愛称のようなものかな」
「めんこい……?」
「可愛いという意味」
なるほど勉強になります。
「よし。じゃあこれを被って」
麦わら帽子を渡されました。
「次にそこに立って」
部屋の奥、壁が真っ白で少し開けた場所に連れられました。
『さつえい』なるものをここで行うようです。
「はい、そこ後ろで手を合わせてお茶目なポーズ!」
「こ、こんな感じでしょうか?」
「あーいいね! うん素晴らしい! ちょっと恥じらいがあるところが更に良い!」
ユリエルの持つ機械がパシャパシャと音を立てています。
「次はこれ着てみようか。【子猫ちゃんセット】」
何かの生物の耳や尻尾、そしてふさふさの毛皮の服やぷにぷにの何かがついた手を渡されました。
「ああ、溶けてしまいますよ」
「大丈夫。それ特殊加工してあるから」
「そ、そうですか……」
「ああ、着替えるのはそこの小さい部屋でね。私は裸を見るよりもコスプレをしている子を見る方が好きなんだ。いやでも着替えをしている様子を撮――いや、やっぱりその部屋で着替えて」
わっち、やはり不勉強なのでしょうか……。
それから服を着替えて部屋を出ますと、ユリエルが鼻を抑えてどこかへ行ってしまいました。
すぐに戻ってきましたが、鼻に白い生地を詰めている様子。
……ちょっと、赤くなっています。
「だ、大丈夫ですか? ユリエル」
「大丈夫。大丈夫。異種に異種を混ぜると破壊力あるということがわかった。さぁそこに立って」
価値観が難しいです。
「手をこうやってくれる?」
言われた通り、両手と肘を曲げて上げました。
「次は膝を曲げてあげる」
「はい」
「仕上げに首をちょっと傾けて」
「は、はい」
ユリエルの鼻息がかなり出ています。
「いやぁ、めんこいめんこい超絶めんこい! 肉球がちらっと見えている所がまた良い! はーいそのままニコっと笑って!」
パシャッ、パシャッ。
「うーん、いいなぁ。特にお腹周りが見えるところがいい」
「はぁ……」
「そんじゃ次は、こういう女の子座りで行こうか」
「ふむ……」
地面に両手をついて膝を曲げる姿勢……。
女の子座りと仰っていましたか。
「そのままこのレンズを睨みつけてみよう」
わっちはれんず呼ばれる透明なものを見つめました。
「唸って睨んでみて」
「……うー、うー!」
「ああいい! 反抗的な感じ、素晴らしいなぁ!」
パシャパシャ、パシャパシャ。
「お次は……ああそうだ。こうやってお尻を地面に、それから膝を曲げて足を前に出して」
「ふむ」
慣れない姿勢です。
でも、少しずつ分かってきた気がします。
「あ、それいいね! 片方の肩をちょっと手前に出してそこに頭を乗せる感じ! 片足の位置をずらすのも素晴らしい!」
パシャ、パシャ。
「両手を地面につけてるのもいい! 幼ない見た目なのにセクシーさも出てる!」
パシャパシャ。
「じゃあ次これ。童貞を殺すセーターいってみよう!」
「あの、真っ赤ですよ、鼻」
「取り替えてくるから着替えて待ってて!」
柔らかな生地の服を渡されました。
このふさふさの毛皮よりも、生地の面積は狭いようです。
……なんだか、顔が熱いです。
――着替えを終えて部屋を出ると、ユリエルが機械を構えて待っていました。
「おぉ……。裸エプロンとは違った良さがあるね」
裸えぷろん……。
「よし。それじゃあまずは立ちポーズ。ふつーに立ってみて」
「は、はい」
「うん、オッケ」
パシャパシャ。
「次はちょっとだけ背を向けてみよう。それで、首だけを振り返らせるんだ」
「こうした方がよいでしょうか?」
手を軽く握って、胸の近くに寄せました。
「おぉ……。ちょっと恥ずかしさを見せてるところもベリーグッド! 大人な魅力も相まってママみもある。天才的!」
なんでしょう、この胸が熱くなるような気持ち。
自然と顔が綻んでしまいます。
「それじゃあ次は、膝で立って胸の前で手を合わせるポーズ!」
「は、はい!」
「おぉぉ、いいねぇ! 神様メルシー! 可愛い、ただ只管に可愛い! 自然な笑顔が輝いてる! まるで宝石のようだ!」
パシャパシャパシャ。
機械音が更に激しく鳴ります。
「……ふぅ。それじゃあ次は――」
――その後、ユリエルの言っていた裸えぷろんや、ふりふりのドレス、騎士の鎧などを着せられました。
わっちもお部屋の服を物色しましたが……。
ユーノが着ていたようなパーカーもありましたので、着せて頂きました。
一時ではありましたが、ユーノと同じ服を着ることができて嬉しかったです。
「それじゃあ次――メイド服、着てもらおうか……。たそ」
めいど服に着替え、白壁の前に。
「うーん、やはりとびっきりキュート! 私の見込んだ通りだ」
「あ、ありがとうございます」
「最初はちょっと表情が固かったというのに、短時間でここまで馴染むとはねぇ……。まったく名前の通りだ。名前を付けた人は、本当にナズミたそを理解していると思うよ」
「当然です。『ユーノ』は人一倍理解があって優しい子なのです」
「ユーノねぇ……。どんな子だい?」
「わっちと同じく、小柄な子です。髪がきらきらの」
「あぁ、あの子かぁ。ふふ、こりゃ面白くなりそうだ」
「……はい?」
何でしょうか。
「いいや何でもないよ。さてと、撮影の続きを――」
『――ナズミ!』
おや、ユーノの声が。
「……帰ってきたのか。……もうこんな時間。少々熱くなり過ぎたかな。さて、ナズミたその服は、と――」
ユーノ、心配しているようです。
早く向かわなければ。
ただの性癖暴露話でしたね。
次話もよろしくお願いいたします!(次話は視点が変わります)




