◇鑑定屋のたしなみ①◇
※(メルトスライムの)ナズミの視点になります。
……わっち、現在進行で鑑定屋さんに預けられています。
ユーノやナズチ、クラリスがアンデッドを討伐しに行くそうで。
わっちは怖かったので行きませんでした。
仕方がないのです。
だって、あの白くて長くて硬い歩く棒……怖いですから。
……こんなこと、前にも言いませんでしたか。
それはともかく、ユーノたちが帰ってくるまでこの方にお世話になるようです。
名前は存じ上げませんが、耳が長いという特徴から、森の守り人――エルフであると推測しました。
ユーノと同じく綺麗な金色の髪ですが、大人びた魅力がありますね。
「……君の名は?」
「わっち、ナズミと申します」
「ふむ、ナズミちゃんかぁ。良い名前だ」
もちろん、ユーノに付けてもらった名前に悪いものなどありません。
「私はユリエルだ。……ナズミちゃんは~、人間ではないよな?」
「ええ。メルトスライムです」
「メルトスライム――あぁ、快星の草原にいる、あの?」
「故郷は違いますが、その通りでございます」
そうかそうかと言い、頬杖をついてニコッと笑っています。
「……あぁ、服は耐溶性質なんだね」
服とはこの白いわんぴーすのことでしょうか。
「そこに麦わら帽子とかつけたらもっと可愛くなるだろうな……」
「麦わら帽子?」
「……そうだナズミちゃん。お腹減ってないか? いや減ってなくても食べさせてあげるからついてきな」
そう言って奥の通路に入っていってしまいました。
何でしょうか。
特にお腹は減っていないのですが……。
食べれないこともありませんので、ついて行くことにしましょう。
「ナズミちゃん、その服以外に何か着るもの持ってる?」
「いいえ、このわんぴーすのみです」
「そっかそっか。よしこの部屋に入って」
ユリエルが扉を開けると、部屋の中には様々な服が飾ってありました。
白と黒を基調として作られた綺麗な服。
ふりふりが付いたピンク色の可愛らしいドレス。
波が立っているようなスカートに、リボンのついた白いシャツ。
他にも様々な服が飾ってあります。
しかし、ユリエルが着れそうなものは見当たりませんね。
どれも大きさがあっていない模様です。
「御馳走あげる代わりに、私のお願いを聞いてもらってもいい?」
ユリエルが座って、わっちの目線に合わせます。
預かっていただいているわけでもありますから、断るわけにはいきません。
「はい。何でしょうか」
「……ちょっと、〝コスプレ〟してみない?」
「こすぷれ?」
わっちは首を傾げました。
「簡単に言えば、色んな服を着ること。私的な言葉で言い表すと萌え」
「萌え……?」
萌え――初めて聞く表現です。
「とりあえずやってみない? いやお願い! あとそれを撮らせて欲しい!」
「は、はぁ……」
「……いい?」
よく分かりませんが、新たな経験をすることは悪いことではないです。
「ええ、了解です」
「よっしゃ! じゃあ、まずはご馳走をあげよう。ナズミたそ——あぁ、ナズミちゃんは何が好きかな?」
たそ?
「わっち、お野菜が好きです」
「うん、なら沢山あるからこっちおいで」
「はい」
わっちはコクリと頷きました。
ユリエルがわっちの手を取り、そのままリビングへ行きました。
お野菜の独特なにおいが漂っております。
ユリエルもお野菜が好きなのでしょうか。
「さて、今からパパッと料理するから待っといておくれ」
服の袖をまくって気合を入れたようです。
木箱から沢山のお野菜を取り出し、慣れた手つきでササっと包丁を入れていきます。
クラリスよりも上手かもしれません。
……ちょっぴり期待しています。
――数十分後、ユリエルが沢山のお野菜料理を運んできました。
「どう? 塩胡椒で味付けした彩り野菜炒めに、私の故郷の新鮮トメィト。ベジタリアンコースだ。さぁ食べてくれ」
わっちは手前に出されたフォークを握り、シャキッとしたお野菜を突いて口に突っ込みました。
「うめ、うめ、うめ」
「おかわりもいいぞ」
お野菜を食べるわっちを、ユリエルが涎を垂らしながら見ています。
ユリエルも食べたいのでしょうか。
「ユリエルは食べないのですか?」
「ああ。私は今ご馳走させてもらってるから大丈夫」
「……そ、そうですか」
イマイチ意味が分かりません。
わっちが勉強不足なだけでしょうか。
「ユリエル、あの……」
「いいねぇ……。清楚で純粋っぽいのに呼び捨てにする感じが特にいい。新たな性癖植え付けられちゃうなぁぐふふっ」
「あ、あの」
「ん? なんだい?」
「涎が垂れていますよ」
「ああ……、これは失敬」
ユリエルが垂れた涎を布で拭き取っています。
「あれは絶対似合う……。あぁ、あれもいいな……。耳つけて、尻尾つけてビーストっぽく――」
ユリエルは独り言が多いです。
ユーノも独り言が割と多いのですが、それ以上でしょうか。
「食べ終わりました。美味しかったです」
「早いね。美味しかった?」
「とても美味でした」
「そりゃよかった」
クラリスほどではありませんでしたが、引けを取らない美味しさでした。
特に、噛むと酸味のある甘い液体が飛び出す〝とめぃと〟が、新触感で美味しかったです。
「さて、お次は撮影会としゃれ込もうか、ナズミちゃん」
次話もよろしくお願いいたします!




