◇机上人形戦争 ~擬音戦線(序)~◇
(2020/02/21 本日の更新はこの1話のみです)
2章外伝。
※今回の視点は三人称になります。
「デュクシ! デュクシ!」
時は滅暦121年。
小鳥が囀り、柔らかな風で木々が自然の音色を奏でる閑静な森――
その森のとある木造小屋の内部で、戦いは繰り広げられていた。
「ズッバアアアアァァン!!」
机上で繰り広げられる争いは時間と共に激しさを増す。
「デュクシ! デュクシ!」
机上には、水色のプニプニな3人の戦士がいた。
――1人は、角が生えた大人な子ども魔族。
――1人は、可憐で煌びやかな人間の女性。
――1人は、つぶらな瞳の魔物少女。
それぞれの名を、『オセチ』、『クラリナ』、『ナスミ』という。
その3人が机上で戦っていた。
……彼女らに目的はない。
ただ〝擬音〟に取りつかれた者たちなのである。。
「ふっふっふ、そんな甘ちゃんな攻撃は通用しませんよ」
オセチがクラリナにそう言った。
「くっ、ならばこれならどうでしょう! タッタッタッタッ、パコオォォン!」
オセチにテチテチと近づき、ペチッと手の甲をぶつけるクラリナ。
「や、やりますね……!」
一歩二歩と後ずさるオセチが額の汗を小さな手で拭う。
「隙ありです! どーーん!」
ナスミが突進してクラリナを押し倒す。
「わっ――!」
クラリナが藻掻く。
抜けるのは許すまいと、ナスミがクラリナの両腕を押さえる。
まさに絶体絶命――
「はぁ、ふぅ」
自分を落ち着かせようと、クラリナが一度深呼吸をした。
「こうなれば、禁じ手を使わせていただきます――! パリイイイィィィン!」
ナスミが上空に吹き飛ばされる。
「それはまさか――!」
ナスミが地面に着地し、目を見開く。
「伝説技能――≪パリィ≫ですか!」
「ふっふっふー! ご名答です、ナスミちゃん」
クラリナが立ち上がり、ぴょんぴょんと跳ねる。
「まさかパリィを使えるなんて……! ふふっ、面白くなってきましたね」
ナスミが片方の口角を上げてニヤっと笑う。
「隙あり! ナズ――オセチカッター! ズパッ!!」
いつの間にかクラリナの背後にいたオセチ。
腕を横に振り、クラリナの首にチョップを食らわす。
「はぅぅっ……! バタッ――」
クラリナが横に倒れる。
「な、なんて卑怯なことを! 本体の力が結構あるから威力高いのですよ!」
ナスミがちょっとメタいことを言った。
「ふっふっふ……。勝てばよしなんですよ。ナスミちゃん」
「……ならば私もやらせていただきます――! ナスミウェーブ! ずばっ! ずばっ! ずばあああぁぁん!」
「――っ! シュッ、シュッ! シュッ、シュッ!」
オセチが水色の斬撃を跳ねながら避ける。
「この前のようにはいきません!」
「くっ……! ならば肉弾戦をしかけるのみです! とおおぉっ! ぽこぽこぽこぽこ!」
ナスミがオセチの体を乱打する。
「私だって! デュシュ、デュシュッ!」
オセチがナスミに拳で殴り返す。
延々と続くその攻防は、クラリナが目を覚ますまで続いた。
「わ、私は……確か、オセチさんにやられて――」
2人が互いを叩き合っているのを見、クラリナは畏怖する。
「(な、なんて激しい攻防なの……!)」
そう、クラリナが小さく呟いた。
「このままでは埒が明かない……必殺技でケリをつけてやります!」
オセチが後ろに引いて距離を取る。
「いきますよ……! 古くより伝えられし魔族の伝説技能――【サイコビーム】! シュウゥゥゥゥ――ズドオオオォォン!!」
「ひゃぁぁっ!」
圧倒的な力で吹き飛ばされるナスミ。
体はもう傷だらけだ。
「こ、こうなれば、あの技能を使うしかないみたいです……!」
ナスミが手を合わせる。
「――ナスミヒール!」
天から落ちる一滴の液体。
その液体を頭部で受け止めた途端、ナスミの傷がスッと消えていった。
「ナスミちゃんにのみ許された技能――ですね」
クラリナがそっと起き上がる。
と、次の瞬間――
ドン――ドン――!
大きな物音がした。
魔界の門を叩く音――
(((ユーノが――帰ってきた!!)))
3人は互いに顔を見合わせ、魔界の門の前に立つ。
「……開きましょう。争っている場合ではありません。強力してヤツを倒すのです」
3人は決死の覚悟で魔界の門を開いた。
「……え? どうしたの、みんな」
門より出づるは、魔界より来たりし全身に火傷を負った魔王――
ユーノ――もとい【魔王ユノー】である。
ユノーは3人を見てきょとんとしていた。
「現れましたね――魔界の王!」
クラリナが宙でぴょこぴょこと跳ねる。
「え、なに? どういうこと?」
「(合わせてください! お願いします!)」
クラリナの中の人が頭を下げる。
「う、うん……。はーっはッは! 我は魔王ユーノなり!」
「(あ、ユノーでお願いします!)」
オセチの中の人が手を合わせてお願いする。
「え? うん、わかった……。わ、我は魔王ユノーなり! えぇと……貴様らを倒した暁には、この世界を喰らい尽くしてやるわー!」
そう言い、ユノーはふんぞり返って高笑いをした。
「――はっはー……っと。それからどうすればいいの?」
「くっ、ついに現れましたねユノー! 貴女を必ず倒し、世界を救って見せます! オセチさん、ナスミちゃん、今こそ手を取り合って戦うときです!」
クラリナ、オセチ、ナスミが手を繋ぐ。
「ユノー、いざ尋常に勝負です!(あ、奥の席に座ってください!)」
「うーん。うん……、分かった」
魔王ユノーは3人に誘導され、戦場を挟んだ逆側の席に座らされた。
【滅暦】:魔王が討伐されてから経った年数のこと。
次話もよろしくお願いいたします!




