◇とりあえず、解決◇
かなり短めです。
……結局、迷いに迷って町に帰ったのは夕方頃になった。
快星の草原のアンデッド量、かなり減っていた。
大体が死霊の森に戻って行ったらしい。
あの統率能力の恐ろしさがよく分かる。
何の策もなかったら、逆にミイラにされていた。
「お、おかえりなさい!」
突然受付から飛び出してきた受付さん。
「大丈夫ですか、お怪我はありませんか!? なんか火傷の数増えていません!? ハッ――なんですかその真っ赤な服は!? あれ、それってカザネさんの冒険者証明手帳ですよね!! 一体どうしたんですか!?」
私の体を大袈裟に揺さぶる。
「う、受付さん! 落ち着いてください」
クラリスが受付さんの体をガッチリホールドする。
「お部屋でゆっくりお話ししますから。一回深呼吸をしましょう」
「はぁ、ふぅ――」
受付さんが深呼吸をする。
「取り乱してしまい、すみませんでした」
深呼吸ってすごい。
1、2回やるだけでここまで落ち着けるものなのか。
それから私たちは、受付さんの部屋へと歩いて行った。
◇
「なるほど。やはり、カザネさんが犯人だったのですね……」
私は事実を全て受付さんに伝えた。
「それにしても、世界を征服なんて……このご時世という感じはありますね」
その通り。
魔族長はいても魔王なんていないのに、よく言うよって話。
悪い心を持った魔物や魔族以外は皆平和に暮らしている。
正直、世界を手に収めるなんて古いのだ。
「そうなんですよね。数百年も前に戦争は終わったというのに」
クラリスと受付さんがうんうんと2回頷く。
あれ……ナズチ、ナズミ?
まさか知らないのか?
まぁ、2人とも平和主義だからいいか。
「では、私は情報屋さんに色々と伝えてきますね! すぐに記事を作ってもらわなければ! すぐに戻ってきますね!」
受付さんが立ち上がり、カザネの手帳と服を持って行った。
「戻ってくるまでの間にご飯を食べよう。さすがにお腹空いたよ」
――ぐるるるる。
誰かのお腹が鳴る。
「そ、そうですね。そうしましょう!」
クラリスが顔をほんのり赤くして、部屋からササッと出て行った。
……クラリスだな。
「いきましょう。私もお腹すきました!」
ナズチが小走りでクラリスを追いかける。
部屋に残った私とナズミは顔を見交わし、吹き出すように笑った。
「行きましょう、ユーノ」
「うん」
そうして、私たちも続けて部屋を出た。
――それから少し経って、昼食兼夕食を摂っている間に受付さんが帰ってきた。
「信じてもらえました! これで酒場の評判も戻ると思います! ありがとうございました!」
なんて綺麗なお辞儀だ。
腰から90度ピッタリで、しかも丁寧に手を重ねて。
「ああそうです。解決のお祝いに今日は宴を開きましょう! ここではなんですから、私の部屋で!」
それは宴というよりも打ち上げだろうと言いたい。
いや……、ただの飲み会なのでは?
――その後、町でお酒や夜食を買い漁り、受付さんの部屋へと戻ってきた。
そして、私たちの宴が始まりを迎えたのだった――
次話もよろしくお願いいたします!




