◇再・死霊の森へ◇
天気変動装置とサンノレ鉱石よし。
ナズミは壺に入っている。
食糧も一応持ったし、使えないけど武器も持った。
ついでにおやつのバナナも持った。
……バナナはおやつではない? 知るかそんなこと!
さぁ準備は万端。
天気も晴れだし大丈夫!
ピクニックに行くんじゃない。
転生者へ制裁を加えに行くんだ。
――翌日の早朝、私たちは町を出た。
できるだけ早い方が気分的にいいからとかではない。
まず、見つけるのに時間が掛かりそうだから。
次に死霊の森は出るのに時間が掛かるからである。
「ここのアンデッドは無視しよう」
快星の草原の魔物を何とか無視して死霊の森へ。
だが、死霊の森ではアンデッドが無差別に襲ってくる。
数は少ないものの、強さが違う。
何とか見つからないように進もう。
草木に隠れながら、見つからないように進む私たち。
誰かに見られたら確実に不審者だって思われる。
「(……あっ、アレを見てください!)」
ナズチが壺を片腕で抱えて、奥を指さした。
「(え、なになに?)」
背が小さくて見えない。
「(ほら、あそこです)」
クラリスが私を持ち上げる。
「(ああ……あの宝箱――)」
一昨日に見たものと同じ箱だ。
「(――! 見てください。奥から人が来ましたよ。あれってまさか……)」
あの赤いドレスのような服……。
――間違いない、カザネだ。
隣にいるのは……あの男か。
「いない。つまらない。なんでかな」
「主、もう十分かと思われます」
「そう?」
「名のある冒険者の死体もあります故……」
「ただのアンデッド以外にも沢山いるなら、まぁいっか」
「はい」
一日の全てを以て行動できないネクロマンサーが、世界を手中に収めるなんてできるはずないと思うんだけど。
ガサッ――
「きゃっ!」
クラリスが唐突に声を上げ、私を突然離した。
後ろから死者系のアンデッドが這い寄ってきていたらしい。
そして、クラリスの足を掴んでいた。
「この変態め!」と言わんばかりに、私はゾンビの腕を蹴り飛ばして顔を踏み潰す。
「……誰?」
まずい、気づかれた。
いや……、タイミングとかどうしようって思っていたからむしろよかった。
「主! お下がりください!」
男がカザネの前に出て戦闘姿勢をとる。
「貴様ら、ここに何をしにきた!」
男が声を張り上げる。
それにしても掠れているな。
人間の声とは思えない低さだし。
「えーとですね。ここらへんで起きている事件を解決しにきました」
「……何を知っている」
「うーん」
私は考えるフリをしつつ、ナズチにアイコンタクトを送る。
ナズミを壺から出すように、と。
「早く答えろ!」
「あーもう、分かりましたから怒鳴らないでください。色々と聞いちゃったんですよ」
「聞いた――だと?」
さて、ナズミが諸々の準備をし終えるまで、時間を稼がせてもらおうか。
「私、一昨日くらいにこの森に来たんですけども……。そこであなた方の会話を聞いてしまってですね……」
「…………」
男が黙りこくる。
「一番気になったのは、〝生まれ変わった〟という点なんですけども……」
「――貴様らには分かるまい」
「……は?」
男が構えるのをやめ、静かに語り始める。
「主は別世界で死に、この世界に生まれ変わってきた」
「……」
「生前、働いている途中に死んだという。人間の人間に対する扱いが正しく成っていなかったためだ」
過労死……。
なんだ、私と殆ど同じじゃないか。
シチュエーションは全く違うと思うけど。
「主は孤独であった私に恐れもしないで声をかけて救ってくれた。それから私は、自分の辛い記憶を一切取り払って生きる主の姿を見、主に付いていくと決めたのだ」
なにそのB級物語。
私でもすぐ思いつくぞ。
「うーん。そっか、なるほど」
「貴様らに何が分かる!」
うわ、逆ギレだ。
少し適当に返し過ぎたか。
「いや、なんというか……。それと『世界を掌握する』のはどう繋がるんです?」
「貴様なぜそれを!」
「一昨日聞きました」
「…………人間に知らしめてやろうと考えたのだ。主の素晴らしさを。そして、主の怒りを憎しみを――」
なんて自分勝手な話だ。
「え、そんな話だったの?」
驚きのあまり呆然と男を見つめるカザネ。
……ん?
「私はただ、この微妙な力を使って世界を征――」
「主、我々は必ず果たさねばなりません。この世を――世界を掌握することを!」
変な空気が漂い始めたな。
けれど、冒険者を争わせたのは事実だし、アンデッドを使って人を殺したこともまた事実。
なんか混沌としているけれど、やるべきことは変わらない。
「とりあえず、このまま見過ごしておくわけにはいきませんから……倒します、あなた方を」
私は少しずつ近づいていった。
「邪魔をする者は排除する――!」
男が再び戦闘態勢をとる。
ナズミの準備が完了するまでの間、私が時間を稼ごう。
……あと、この微妙な空気から早く抜けたい!
次話もよろしくお願いいたします!




