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◇束の間の休息◇

 森から帰ってきた私たちは、すぐに町の酒場へ。

 ナズミの好きな物を沢山食べさせてあげた。

 全部野菜系だったのに、硬貨を20枚くらい使ってしまった。

 こんな過剰なベジタリアンだったっけ、ナズミって。


 それはともかく、多くの冒険者が死霊の森で姿を消したという事件の記事が、今更ではあるが町で出回っていたらしい。


 ――『酒場の責任』。


 記事の見出しはそればかり。

 なぜみんなウラを見ようとしないのか。


「今日は全く冒険者が全然入ってきませんでしたよ。なので、お昼には受付閉じちゃいました。はぁ……暇です」


 そう言って、受付さんがベッドの上で脚をバタバタ。

 受付さんの私服。短パンに黒タイツに花柄のブラウスって、なかなか個性的だ。


「まぁ、あんな記事が出ちゃうと酒場自体の評判が悪くなっちゃいますよね」


 依頼を貼った酒場の責任というのは何とも理不尽な話。

 まぁ、普通あの女冒険者が主犯とは思わないからな……。


「それで、何か情報は得られました?」

「……そうですね。あのSS級冒険者さんの名前が〝カザネ〟さんだということくらいでしょうか。冒険者登録表でも調べたので、間違いないと思います」

「カザネですか……」


 カザネかぁ……これまた日本人っぽい名前だ。

 そういえば、外国人って転生してこないの?


「酒場の名誉を回復しないと、これからもずっとこのままですよぅ」


 変な疑いを取り払わないと、冒険者の数はこのまま減るだろうな……。

 酒場というのは、町において大切な機関。

 このままにしてはおけない。


「大丈夫です。犯人の証拠をばっちり掴んできますから」

「それはありがたいです」


 枕に顔を埋めながらそう言った。


「今日は明日に備えて休みたいからね。そうだな……。何かゲームでもしよっか」

「ゲーム? ええと……パズルとかタロスとかのことですか?」


 タロスってチェスみたいな戦略ゲームのことだっけか。


「受付さん、大きい紙とかありませんか? あと、紙を切る刃物なんかも」

「ええ。ありますけども……。どうするんですか?」


 受付嬢がベッドから起き上がり、近くの引き出しから丸められた大きな長方紙を取り出す。


()()()()で様々な遊びができるという魔法の道具の作成です」

「は、はぁ……」

「さてナズミ。これ切ってもらえる? 一定の幅に折って64枚にして」

「はい、ユーノ」


 机に広げられた長方形の紙を四つ折りにする。

 折り目を切って再び折り目を作って……という作業を繰り返すと、合計64枚の紙ができる。


「できました」

「ありがとう。それじゃあ、13枚ずつにわけて。別枠に1枚を」

「全て使わないのですか?」

「うん」


 私がこれから作ろうとしているのはトランプ。

 異世界になかったのは驚きだったが……まぁ、普通こんなの思いつかないよね。

 ホント考えた人天才だと思う。


「わけたら、まずは13枚ごとに同じマークを中央に描く。1つはハート、1つはひし形、1つは三つ葉、もう1つは――あぁ、こん棒の絵かな」

「……了解です」


 私以外の4人が協力し、ペンでマークを描いていく。


「そしたら、1から13までの数字をそれぞれのマーク別に書く」


 3人がササッと数字を書く。

 ナズミは数字の書き方が分からないらしく、代わりにクラリスに書いてもらっていた。

 言葉としては理解できるけど、書くことはできないのか。

 今度教えてあげようかな。


「できましたよ、ユーノ。これをどうするのです?」

「ああ、そうだ。別枠の1枚に二重丸を描いて」

「は、はい」


 その1枚をワイルドカードとしよう。

 さて、準備は整った。


「よし、それじゃあこの計53枚を使って、色々なゲームをしよう」


 大富豪、ババ抜き、神経衰弱、BJ(ブラックジャック)……。

 これだけで遊べるゲームは無限大。

 既存のものでなくたって、新たに考えることもできる。


「何ができるんです?」

「これ、〝トランプ〟っていうんだけどね――」


 それから、私はトランプについて諸々説明をした。

 で、まずはババ抜きをすることに。

 そこでやっと気づいたのだが、『私、手ないからできなくない?』ということ。

 2週間くらい経っても抜けない。

 あった頃の癖が。


「……4人でやっていいよ。私は見て楽しむ派だから」

「それなら、わっちがユーノの手となりますよ」


 ナズミが私の隣に座る。


「ナズミ……」

「一緒の方が楽しいですから」


 うぅ、泣きそう。

 なんて良い子なんだ、まったくもう。


「う、うん……。ありがとう、ナズミ」



 ――それから、私たちはトランプのゲームを幾つかやった。

 ナズミは、私が言った通りのカードを出したり交換したりと、色々手伝ってくれた。

 そんな感じで飽きもせず続けているうちに、いつの間にか夜になっていた。


「今日はこのくらいにしてお開きにしましょう。ユーノさん、確か明日は死霊の森に行くんでしたよね?」


 そう言って、カードを纏める受付さん。

 端を揃えるために机の上でトントンってやるの、かなり点数高い所。


「そうです」

「それなら、今日はゆっくりお休みになった方がよろしいかと思いますよ」

「そうですね。お気遣い感謝します」

「ご武運を――お祈りしていますね」

「……ありがとうございます。それでは、また!」


 私たちは荷物を持ち部屋から出て、酒場で夕食を済ませて宿屋へ向かった。

 そこで、最終確認を済ませ、私たちは早めに眠りについた。

次話もよろしくお願いいたします!

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