表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/68

◇新たな敵◇

 ふ、ふぃぃぃ……。

 やっと出られた。

 目印の1つや2つ付けるのって、冒険者の基本事項なのに。

 小石でも蹴って、少しずつ道を残しておくんだった。

 もう真っ暗だわ。


 それにしても、快星の草原の夜ってこんなに綺麗なんだ……。

 本当に草がキラキラしてる。

 月光は雲で隠れているというのに、すごいな。


 さ、早く帰らないと。

 みんな心配しているかもしれない。

 道中の魔物を刺激しないようにしながら、少し駆け足で行こう。





「あっ! ユーノさん!!」


 酒場全体に響くような声で、ナズチが私の名前を叫ぶ。


「し、心配しましたよ!」


 私を抱きかかえるクラリス。


「ユーノ、おかえりなさいませ」


 ナズミは相変わらずだ。


「いやぁ、森で迷っちゃって」

「もう……でも、無事に戻ってきてくれてよかったです」


 ほっとしているのか、クラリスが「ふぅっ」と息を吐く。


「ユ、ユーノさん!」

「ああ、受付さん」

「いやぁ、無事に帰ってきてくれて何よりです。それで、何か情報は?」

「……座って話しましょう」

「それなら、私の部屋でお話しましょう! 丁度、今日の受付は閉じようと思っていた所なので!」


 と言って、笑顔で手を合わせる。

 その後、受付嬢が掲示板に『今日の受付は終了』の看板を取り付けた。


「さぁ、こちらへ来てください!」


 私たちは受付嬢に連れられ、受付の裏の通路へ。


 よく見る受付裏。

 通路って調理場とか倉庫とかに繋がってるんだな。

 ……それにこの人の部屋、酒場にあったのか。

 というかここに住んでいるのか……?


 ――完全に女の子の部屋だ。

 ピンクと白が多いな。

 私の真っ黒な部屋とは全く違う。


「今紅茶を持ってきます。適当にくつろいでお待ちくださいね」


 そう言い、受付嬢は部屋から出て行った。


「わぁ、ベッドもありますよ。本当にここで住んでいるんですね」


 座らずに部屋の中を見回るナズチ。

 くつろいでと言われたんだけどな。


「可愛い部屋ですね……ほら、あのクマのぬいぐるみとか」


 本当だ。シロクマのぬいぐるみがある。

 デフォルメされてて可愛いな。

 ……なんでここに住んでるんだ。


「お待たせしましたっ」


 受付嬢が、ティーカップを5つ、トレイに乗せてもってきた。


「ありがとうございます」

「それで、森はどんな様子でしたか?」

「ええと……一言ひとことで言うと、〝冒険者の死体だらけ〟でした」

「ど、どういうことですか?」


 ――私は森で見た内容を全て話した。


「――! なんと、あの冒険者さんが……っ!?」

「そうです。恐らく、その人が依頼主だと思います」

「酷い話ですね……。誘い出して争わせるなんて。すみません、私の責任でもあります。冷静に考えればおかしな依頼ですからね……。ただのアンデッド討伐で1000枚なんて」

「いえ、そんなことはありません。少なくとも受付さんは悪くありません」

「……ありがとうございます」


 受付嬢が俯く。

 正直、転生者にはもう会いたくなかった。

 このまま4人で一緒に過ごせて、何もない平穏な日々を送れれば良いと思っていた。

 ……けれど、私が決めた道だ。

 残虐な行いをこのまま見過ごしておくわけにはいかない。

 やらなければ……。


「ではどうぞ、報酬のお金です」


 受付嬢が硬貨の入った茶色い布袋を机の上に置く。


「クラリス、お願い」

「はいっ」


 クラリスはポーチの中にその袋を入れた。


「それで、どうするんです?」


 ナズチがそう訊いた。


「その人たちを倒す。これ以上の犠牲は増やしたくない」

「ですよね」

「それに……転生者だと思うから、益々ね」


 私以外、皆驚愕した。

 受付嬢はよく分かっていないようだが……その場に合わせたのか。


「みんな、もう一度手を貸してくれるかな。私の勝手で悪いけども……」


 ナズチ、クラリス、ナズミは真剣な眼差しで頷いた。


「端から約束していたことですから。もちろんです」


 クラリスが優しく微笑みかける。


「うん、ありがとう。みんな」

「あの……みなさん?」


 そういえば受付さんのこと忘れてた。


「受付さんも力を貸して戴けませんか?」

「まぁ、私にもできることがあるのであれば……」

「感謝します」


 私は頭を下げた。


「それじゃあ、詳しい話はまた明日。今日はみんな休もう」


 ――それから、私たちは4人は受付嬢さんと別れ、町の宿屋で休んだ。

 さて、策戦を考えなければ。

次話もよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ