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◇珍しい鉱石◇

 中は暗く、壺や絵画などの骨董品が棚に並んでいる。

 どれも歴史を感じさせるような色合いばかりだ。


「あら、いらっしゃい」


 奥から出てきたのは、眼鏡をかけたエルフの女性だった。

 エプロンをつけているということは、まさか家事中だったのか?


「鑑定をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「うん、いい。そこの椅子に座って、モノ出しな」

「は、はい」


 なんて鋭い目つきなんだ。

 クラリスは席に座り、先ほどの石を取り出した。


「ふむ……。こりゃかなり珍しいな」

「え? そうなんですか?」

「これは【サンノレ鉱石】という」

「サンノレ……?」

「ああ。北にある〝ルナノ鉱山〟で極めて稀にとれる鉱石だ」

「ルナノ……?」


 首を傾げるクラリス。

 クラリスは知らないのか?

 ルナノ鉱山は、最も鉱石採掘量が多いとされる鉱山で、現在でも採掘作業が進められている世界有数の山だ。


「あんたら、これどこで見つけた?」

「ウラビノが持っていました」

「――ウラビノが?」

「ええ。町から少し離れたところにいたウラビノです」


 エルフの鑑定士は腕を組む。


「そりゃおかしな話だな。ここらへんのウラビノが持っているはずがない。それに鉱山近くにはウラビノがいないはずだ。……誰かが持たせたのか――? もしそうだとしたらこれを採掘したやつは相当な成金か運がいい奴か、でもそれをウラビノに持たせるなんて意味が分からないしそれに――」

「あの」

「――ああ、すまない。勝手に話を進めてしまった」


 いや、たぶん進んでない。


「これって、いくらくらいで売れます?」


 期待しながら訊いてみた。


「んー、これはどこも買い取れないと思う」

「えぇ……」

「全く出回っていないからね。恐らく誰も価値がつけられないだろう。自分らで持っておくといい」


 クラリスに石を返した。

 嘘はついていなさそうだ。


「ありがとうございます。ではそろそろ失礼しますね。……ああ、鑑定料はおいくらでしょうか?」


 クラリスが硬貨の入った袋を取り出す。


「いらないよ。初回サービスだ」

「いいのですか?」

「うん、いい」

「ありがとうございます。それでは――」

「あ、ちょっと待ってくれ」


 と、エルフの鑑定士は手をパッと出して、部屋の中にある木箱の中を探り始めた。


「あれー、どこだったかな」


 木箱の中にあるものを1つ1つ見て、「これも違う、これも違う」と適当に放り投げる。

 謎の既視感があるな。


「ん……? ああ、これだ、これ」


 埃を掃って何かを持ってきた。

 球体の――機械か何か?


「これ天気変動装置ラミザポッドって言うんだけど、その石をこの中に入れると――おっと、これ以上はいけない。それはやってからのお楽しみだ。受け取ってくれたまえ」


 ナズチが球体の機械を受け取った。

 そういうのいらないから説明してほしい。

 こう思うのは私だけだろうか。


「あの、お金は……?」

「それの代金もいらない」

「でも……」

「うーん、あんたはまだ子どもだろう? 遠慮せずにとっておきな」

「私、21歳なんですけど……」


 え、クラリスって21歳だったんだ。


「じゃあ……お姉さんからのプレゼントだ」

「……それなら、ありがたくいただきます」

「それでいいんだ。はーっはっは!」


 エルフは腰に手を当て、男っぽく大声で笑った。

 一体なんなんだ、この人……。


「それでは失礼いたします」

「ああ、何かあればまた寄ってくれ。特に君と君は歓迎するよ」


 私とナズミを続けて指さす。

 ……なぜ?


 鑑定屋を出ると、外はもう暗くなっていた。


「早く帰ってご飯にしましょう」


 いつの間にか松明を持っていたナズチ。

 一体どこから取り出した。


「そうですね」

「はい、そうしましょう」


 クラリスとナズミが頷く。

 それから私たちは、他愛もない話をしながら帰宅した。

次話もよろしくお願いいたします!

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