◇採取と捕獲の依頼◇
町へ入り、パーカーのフードをナズチに被せてもらった。
……視線が気になるのだ。
毎度のことだが、町に行くと周囲の目線が飛んでくる。
魔族と魔物を連れた人間が2人なんて珍しいし。それに4人中3人が女だ。
特に、肌の露出が多い恰好をしたナズチを凝視しているような気がする。
――初めの1日は私とクラリスで来ていたが、「一緒に行きたいです!」というナズチの発言から、結局みんなで行動することになった。
魔族と魔物なんて町に入れたら……なんて思っていたが、実際はそうでもなかった。
案外、普通に扱ってくれた。
酒場に入ると、私たちへの視線が益々集中する。
視線恐怖症というわけではない。
ただただ恥ずかしい、それだけ。
「あ、これがいいのでは? マクノ草の採取です」
ナズチが掲示板の依頼書を手に取る。
マクノ草は原っぱによく生えているため、比較的楽なものだ。
依頼者は恐らく薬師かな。
「報酬も良さげです。【カルドナ硬貨】が2枚。相手方も太っ腹のようで」
「うん、1つはそれにしよう。もう1つないかな?」
マクノ草だけを採取するだけでは、時間を持て余してしまいそうだ。
「……あ、これいいですね。ウラビノの捕獲だそうです」
「ウラビノって、あの小動物の?」
「そうです。耳の長いヤツです」
「うーん……」
子どもからの依頼だろうか。
「あっ、報酬はカルドナ硬貨5枚ですって!」
子どもの依頼にしては報酬が多いな……。
でも、ウラビノなんて大人が飼うようなものでは――
まぁいっか。
お金が沢山もらえることに越したことはない。
「よし、じゃあ2つ持っていこう」
いつものようにクラリスと受付に向かう。
「これお願いします」
クラリスが依頼書を手渡した。
「はいっ。いつもお疲れ様です」
受付の女性がにっこり微笑む。
毎日顔を合わせているものだから、顔を覚えられてしまった。
この顔は覚えられたくなかったのに。
……火傷をした顔はあまり見られたくない。
爛れてはいないからまだマシだが……。
一部分が赤くなっていると、どうも鏡で見た時に違和感がある。
顔の火傷はやはり辛い。
一応女の子だから。
「承諾しました! それではよき冒険者ライフを――リバ!」
そう言ってウィンクをする受付嬢。
毎回思うけど、その〝リバ〟って何?
そうして、私たちは酒場を後に草原に出た。
まずはマクノ草。
草原にまあまあ生えている。
難易度は高くない。
▽
「マクノ草、いっぱいとれましたね!」
数時間後、赤い草を大量に抱えたナズチが嬉しそうにしていた。
それ毒あるんだけどな……。
――マクノ草は別名【痺れ草】ともいわれている。
うまく調合すれば、麻痺直しとして使えるようになる草だ。
「ウラビノ、いませんね。もう少し遠くに行ってみましょうか?」
大きな籠を背負ったナズミがそう言った。
草原は広く、町付近だけでは見つからないものなんて山ほどある。
仕方がないと言わざるを得ない。
――もう少し歩くと、ウラビノが数匹、野原を駆けまわっていた。
ウサギみたいな容姿であるのに、全然速く走れないという残念な小動物。
いわば、弱肉強食の最低点に位置する動物だ。
人懐っこく、攻撃をしてこないため、よくペットとして飼われている。
「待て待て~!」
クラリス楽しそうだな。
「どういった方法で捕まえましょうか」
そう口ずさむナズミは、「ふむ」と頬杖をついていた。
「あれ、絶対普通に捕まえられるよね」
ウラビノに追いつこうとしているのではなく、クラリスがウラビノの速度に合わせている――うん、そうにしか見えない。
「いえ……もしかしたら、クラリスさんは高度な心理戦を繰り広げているのでは――?」
ナズチ、それはないと思う。
「ナズチさん、あれ完全にウラビノの速度に合わせてるよ」
「わざと速度を合わせることで、『自分自身に敵対の意志はない』ということを間接的に示している――さすがクラリスさんです」
違う、そうじゃない。
「……ふぅ」
クラリスが戻ってきた。
ウラビノを1匹抱えて。
「さすがクラリスさんです! もう打ち解けているのですね!」
ナズチがクラリスに近寄る。
「ええ、可愛いです。あっ……ユーノさん、この子、こんなものをお腹の袋に入れていましたよ」
クラリスが見せてきたのはオレンジ色の石だった。
角ばっているものの、中が透き通っている綺麗な石だ。
陽の光に当てると輝いて見える。
かなり高値の鉱石だろう。
そんな気がする。
「後で鑑定屋に行こう」
「そうですね」
クラリスは優しく微笑み、自分のポーチにその鉱石を入れた。
「それじゃあ、まずは依頼の達成からやろう」
――私たちは町に戻った。
1件目のマクノ草は町の薬師の家に届けた。
2件目は、〝ウラビノ愛好会〟とかいう意味不明団体の主の元へ。
報酬が高かった理由は、『最近可愛がっていたウラビノが死んでしまって飢え死にしそうだった』から。
(……どこに命懸けてんだ)
(自分で捕まえに行けよ)
心の中ではそう思っていたが、結局言えなかった。
チキンだ、私。
「――いつの間にか夕方ですね。愛好家さんの話長かったです。さて……鑑定屋に行って、暗くなる前に早く帰りましょう」
ナズチが息を漏らす。
愛好家の話ウンザリするぐらい聞かされて、その件忘れてた。
「よし行こう。今すぐ行こう」
――町の端っこにある質素な木造の家に来た私たちは、その家の前で息をのむ。
「ここが、鑑定屋……? 一気に異世界にきたみたいですね。石造りの家が多い中、木造なんて……」
私にとって異世界だが、ナズチたちにとっては普通の世界。
これだけは一生ツッコめない。
「……入りましょう」
クラリスが先導して扉を開けて中へ入る。
私たちもそれに続いて、鑑定屋へと入って行った。
次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告お願いいたします!)




