◇気づき◇
2章、スタートです!
――私は最近、あることに気づいた。
「ドゴオオオオオオオォォォン!! ナズチカッター! ナズチカッター! グワイイイィィン!」
ナズチ、クラリス、ナズミ、私――
「私だって負けません! ズバアアアアァァァン! スオオオオォォォン!」
私たち4人の中には――
「びゅうううぅぅぅ、びりりりりりり! どっかーん! ナズミウェーーーブ!」
まともな攻撃役を担える人物がいないということを――!
▽
「ああ……! ナズミちゃん、斬るなんて反則です!」
「ふふふ、私にのみ許されたワザなのです。ナズミウェーブは」
で、この人たちは一体何をしているんだ。
私が思慮を巡らせているというのに。
「もう1回です!」
――この4人で共同生活を始めてから1週間。
かなり打ち解けてきたのは良いことだし、酒場の依頼もこなせることはいいのだが……。
未だに魔物討伐という依頼に手を出せないでいる。
理由は単純だ。
ナズチは防御系の技能しか使えずで、攻撃する手段がグーパンしかない。
クラリスは完全に回復&(アンド)支援役で、そもそも攻撃に向いていない。
ナズミは完全に防御特化型。攻撃はできなくないが、かなり弱い。
私は一応戦えるが、足しか使えないから役に立たない。
ナズチが攻撃要員としてグーパン戦闘……というのも一応考えたが、戦いなれていないこともあって、無理に前線へ出すわけにいかない。
それに、防壁がかなり優秀だから、防御要員に持っていきたい。
というか本人に拒否された。
つまり、攻撃要員のいない微妙なパーティなのだ。
くっ、やはり私が武器を持つしかないのか……!
「よーし、もう1――」
「待った!!」
と、矛盾に気づいた弁護士並みの声を出した。
3人は手を止める。
ナズミの粘液で作られた個々を模した人形が、3人の手にそれぞれ握られているようだ。
そして、目を点にして首を傾げた。
「どうかしましたか? 今日の依頼活動はお昼から……ですよね? あともう少しですけども……。あれ、違いましたっけ」
自分の頬を掻くナズチ。
今日の活動は昼からだ。それは当たっている。
だが、そこではない。
「私、ずっと考えているんだけど……」
「ずっと考えている……?」
クラリスがオウム返ししてきた。
「私たちの組み合わせ、攻撃要員いないよね」
3人は顔を見交わす。
結局何もせずに、再びこちらをじっと見てくる。
もしや、自覚がないのか……?
「ユーノ。採取の依頼しかしていませんし、特に困らないのでは?」
「ナズミちゃんの言う通りです。考えすぎではありませんか?」
クラリスがナズミに続いた。
「今のところはまだないけど……冒険に出たら、絶対に魔物に襲われる機会が出てくるから。それに備えないと」
それに、私の個人的な件もある。
自分から見つけにはいかないが、見つけたらチート転生者を潰すという目的。
それも達成していきたいのだ。
……非常に自分勝手ではあるけれど。
「確かに……。そう言われればそうですね。私は回復しかできませんし……」
ため息をつくクラリス。
「わっちも攻撃ができればしたいですが……」
俯くナズミ。
「私は戦えませんが、壊すことならできます!」
なぜか自信ありげなナズチ。
「うーん……、私は普通の冒険者並みのことは大抵できるけど、武器が扱えないからなぁ……」
結局、話はまとまらない。
――あれ? 昨日もこんな感じの話なかった?
とか思っちゃいけない。
だってしてないから。
「あ、陽の光が綺麗な長方形になりましたよ。そろそろいきましょう、町へ」
ナズチが、窓から差し込む光に指をさす。
……そろそろ、魔石式時計買おうかな。
そして、私たちは軽く支度をし、町の酒場へと向かった。
次話もよろしくお願いいたします!(誤字があればご報告お願いします!)




