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◇叶った願い◇

1章外伝最終話です

 寄生した後、服を着直して森へ出ました。

 その前に、クラリスにはどのような口調でいけばいいかなどを教わりました。

 ゴブリンを殺した男に対してはどのような発言をすればよいか、メルルという女性の対処方法なども教わりました。


 魔力減殺(デリートエロウ)……これを、強力魔法の使用前に使うのだそうです。


 ――ドオオオオオォォン!


 ――っ!?

 ば、爆音が……?

 ゆっくり歩いてはいられません。

 急がねば。





 草原に着くと、女と男がユーノたちに囲まれていました。

 紫髪の女性――メルルが、杖を構えて震えていました。

 カミジも共にいるようです。


『――メルル、やれ!! 俺のことは構わないでいい!』


 ……何か、嫌な予感がします。

 メルルが魔法を唱えようとしているのやも。

 止めなければ。


 わっちは焼野原を駆け、メルルを止めに行きました。


「――――待って!」


 杖を掲げた瞬間に大声をあげ、メルルの詠唱を止めました。

 危機一髪、危なかったです。


「……待ってください、メルル。お願いします」

「ナ、ナズミ!」


 と、目を大きく見開くユーノ。

 遅れてしまい申し訳ありません。


「ク、クラリス……? なんで……」


 カミジ――

 わっちはあなたを許しませんよ。


「……ごめんなさい、カミジくん。森であんなに頑張っていたのに、私……気を失っちゃって」

「い、いや――それよりも、何でここに」

「実は、カミジくんに伝えたいことがあったの」

「え……なにかな?」


 その照れ顔殴りたいです。

 クラリスに言われた通り、まずは()()ますか。


「私、カミジくんのこと……好きだよ。出会った時から今まで、ずっと」


 どうです、わっちの演技力。


「――! ……そうか。なら、こっちに戻って――」

「――ふふ、ふふふふふ」


 メルルが不気味に笑っています。


「あは、はは、あははは……、なんで戻ってきたのかなぁ……。もう、ずっと戻ってこなくてもよかったのに……」

「ど、どうしたんだ、メルル」

「クラリスさえいなければ、私はずっとカミジさんの傍にいれる……。何が貴族の子? 出会った時から? ふざけないでよ。私はその前からずっと、カミジさんと一緒にいたんだよ?」


 貴族?

 そんな話ありましたか?


「クラリスが戻ってこなければ、私たちは2人きりだったのに。何で今更戻ってきたの?」

「メルル――何を言っているんだ!?」

「クラリスなんて、ここで死んじゃえばいいんだ。そうすれば、私がカミジさんと――! あは、あははは、はははははは――!」

「やめろ、メルル!」


 再び、杖に魔力を集中させている様子。

 さて。


「我が咒力をもって命ず。エクスプ――」

「それを待っていました! 魔力減殺!」


 今だと思い、わっちは魔力減殺を使用しました。


「ロー、ジョ……ン…………」


 メルルは倒れました。

 素晴らしい技能ですね。


「ふぅ、危なかったのです」

「ほ、本当に……ナズミなんだよね、ね?」

「(……ええ)」


 遠くから駆けてきたカミジが、私の足元に。


「ク、クラリス! ありがとう! まさかメルルがあんな怖い奴だとは思わなくて……」


 さぁ、()()ますか。


「ねぇ……カミジくん」

「どうした?」

「私、さっき言ったことで訂正しないといけないことがあるの」

「へ?」

「さっき、『好きだよ』って言ったけど、あれ、()()()()()()に訂正させてくれるかな」

「な――っ!」

「私ね、この人たちと一緒にいようって決めたの。今までできなかったことができるし、それに――凄く楽しいから!」

「ク、クラ、リス……?」


 ふっふっふ、面白いことをしてやりましたよ、ユーノ。


 ――その後、カミジは装備を壊されたり脱がされたりしました。

 ユーノの要望で、私たちはメルルを持って後方へ。

 下着をつけたカミジを、ユーノがボコボコにしています。

 気分爽快です。





 戦いを終え、帰路につきました。

 ……どうしましょう。

 いつ始めればいいのか……。


「それはそうとナズミちゃん。もう洗脳を解いてもいいのでは?」


 ナズチ、ありがとうございます。


「……そうですね」


 よし、脱ぎましょう。

 服が溶けてしまってはいけません。


「ゴブリンさんたち! 少しの間あっちに行っててください! ここは今、女の子の領域ですから!」


 ……へ?

 ナズチがゴブリンを押して森の奥に行ってしまいました。

 一体なぜ……。


「い、いいでしょうか?」

「うん、大丈夫。これからは気を付けよう」

「は、はい……」


 よく分かりません。

 それから、普通に服を脱ぎ終えたというのに、ユーノの鼻からは血が。

 クラリスから抜けた後も、血が。

 〝大丈夫か〟という問いかけに、「うん、大丈夫じゃない」と支離滅裂なことを言っていた気がします。

 ご馳走様、とも言っていましたか。


 程なくして、わっちは皆を呼びました。

 さ、ここから始まりです。

 抜ける際に粘液を残しました。

 クラリスからは『よろしくお願いしますね』とまで言われました。

 緊張は特にしません。

 ただ、期待はしております。


 わっちは皆の前に出て、クラリスの病気のことなどを話しました。

 ……実際にやってみると、罪悪感が多く積もりますね。

 騙す気分、とはこのことでしょうか。

 皆、涙を流しています。


 クラリスの願い通り、土葬の意を皆に伝えました。

 どこにあったのか、ゴブリンたちやナズチがスコップを取り出し、穴を掘り始めます。

 掘った穴にクラリスを丁寧に入れ、土を少しずつ穴に入れていきました。

 とても、現実離れした光景です。

 生きている人を埋めるなどと……。


 あっ、クラリス。今少しニヤっとしましたね。

 ダメですよ、黙祷までは笑ってはいけません。


「……皆さま、黙祷しましょう」


 皆、頭を下げて目を閉じました。

 (いち)()(さん)――これにて〝土葬完了〟です。


 クラリス、堪えきれずに笑っています。

 何が面白いのか分かりません。

 確かに、非現実的ではありますが……。

 わっちとしては、笑いというより〝絶句〟というか、何というか。


 クラリスの笑声が大きくなり、皆に気づかれました。

 皆、「え!?」と驚愕しておりました。


「ふふ、作戦通り。土葬――やってみたかったことリストの1つです」


 嬉しそうですが、かなり不謹慎ですよ。

 ……本当に亡くなってはいませんから、まだ許されるでしょうか。


「ナズミちゃん、ありがとうね」

「……ええ、クラリスの夢が叶って何よりです」


 このまま、わっちの夢も叶ってほしいです。


「ナズミ――どういうことなの!?」


 わっちはクラリスの顔を見ました。

 ……素敵な笑顔です。


「ふふ、()()です。ね、ナズミちゃん」

「ええ、()()です」


 すると、ユーノが小声で何かを言い――

 子どもっぽく、落涙しながらクラリスに飛びつきました。


 ああ、叶いました。


「――クラリスのバカあああっ!」


 ……可愛らしい1枚をありがとうございます。

 わっちの願い、叶ってよかったです。

 ユーノの嬉しそうな泣き顔を見れて――

 ……ドッキリをしてよかったです。


 ――皆、輝かしい涙を流しております。

 このようなあたたかな場にいれること……わっち、誇りに思います。

 出会った時からこの瞬間まで――そして、これからも幸せに過ごしたいです。

 共に、楽しく尊い一時ひとときを過ごしていきましょう。 

 よろしくお願いいたしますね、みなさま。




 ――大好きですよ。




         ―1章外伝 終 ―

1章の外伝が終わりました。ナズミのこと、少しだけでも知っていただけたでしょうか。

さてと、次からは2章(本編)です!

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